伯爵令嬢の手紙

夜桜

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伯爵令嬢の手紙

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 最近、周辺国で話題沸騰中の隣国の王子・スコット。彼を振り向かせる為、多くの女性が手紙を送っているらしいと、わたしも風の噂で聞いた。わたしも最初はほんの出来心で手紙を送った。
 三日、一週間、一ヶ月と『手紙』を送り続けた。多分、たくさんの女性から手紙を貰っているだろうから、わたしは相手にされていないだろうと思った。

 それでも、熱い想いを込めて送り続けた。

 今日もお返事はない。毎日送り続けてもその兆しはない。それが余計にわたしを焚きつける原因となった。


 三か月も経過すると、きっと良い人を見つけてその方と手紙を交わしているのかなと考え始めるようになった。でも、それでもわたしは諦めなかった。

 この恋心は覚めなかった。
 どうしても返事が欲しかった。
 どうしても会いたかった。


 毎日、毎日送って……送って。


 半年が経った。


 もうダメかも。
 諦めよう。


 これ以上はわたしの精神も持たない。人生、諦めが肝心だとお父様もおっしゃっていた。その通りかもしれない。


 一度、手紙を送るのを止めた。


 その次の日だった。


 早朝、玄関前が慌しかった。
 何事かと二階から見守っていると、お父様が“早く来い”と大声で読んだのでわたしは向かった。その先には王子・スコットの姿があった。

 彼は泣きそうな顔で「どうして手紙を止めてしまったんだい、アリス! とても心配したんだよ!」と言った。


 わたしはびっくりした。


 もしかしてスコットは、ずっとわたしの手紙を読んでくれていたの? そう聞くと彼は「そうだ、僕はずっと君の手紙を大切に読んでいた」と震えながら言った。あまりに予想外で、あまりに突然な出来事にわたしは混乱した。


 けれど、同時に嬉しくもあった。


 わたしの『手紙』は無駄ではなかったのだから。……そっか、わたしの想いは伝わっていたんだ。良かったぁ……。


 どうやら、スコットは早い段階でわたしの手紙だけに注目していたようだった。でも、どう返事をしていいか悩んで半年が経ってしまったようだった。そんなある日、わたしが諦めて返事を返さなかった事に焦ったようだった。


 その結果がこれだった。


 まさか直接会いに来てくれるだなんて……心臓が飛び出るほど驚いたし、感激でもあった。今度は彼から愛の告白をしてくれて、わたしはそれを了承した。


 ようやく、わたしと彼の想いは繋がった。それから猛接近。ゴールインまでそう遠くはなかった。わたしとスコットは半年も掛からず幸せになった。
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