公爵令嬢の白銀の指輪

夜桜

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白銀の指輪

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 お城へ向かい、サリエリの居場所を聞いた。
 彼は地下室の研究室でポーションを作っているようだった。その場所へ案内してもらい、向かった。

 薄暗い階段を降りていく。
 ようやく地下に出ると、そこには工房アトリエがあった。まず、ハーブの香りが頭をぼうっとさせた。たくさんの植物に囲まれて、お城の地下とは思えない光景だった。

「……神秘的」
「これはこれは、お客さんとは珍しいですね。む……その美しい白銀の髪。もしや、公爵令嬢のエリザ様では?」

「わたしを御存知でしたのね」

「もちろんです。貴女の美貌は帝国中に知れ渡っておりますよ」


 ゆったりとした暖炉のような笑顔に、わたしはドキっとした。この金髪の青年こそ宮廷錬金術師・サリエリなのね。
 とても整った甘い容姿マスク、穏やかな瞳。身長が高くて、きゅっと引き締まった体躯。清潔感に溢れ、透き通った宝石のようだった。
 なんて綺麗な人なのだろうと、わたしは思わず感心してしまった。感動さえしていた。

「いえ、そんな……今回の件もありましたし、お恥ずかしい限りです」
「――あぁ、例の事件ですか。私の耳にも入りました。伯爵殿に毒を盛られたとか」
「正確には、指輪に毒を塗られたのです」
「それは驚きです。指輪に毒を……まさか」
「なにか御存知なのですか?」

「街には毒を専門に扱う錬金術師もいるのです。もしかすると、そのような輩が調合した毒を伯爵が購入したのかもしれませんね」

 あくまで推測ですがと、サリエリは付け加えた。さすが宮廷錬金術師。そんな情報が出てくるなんて。

「それで、その……伯爵が騎士団関係者の買収を始めたようで……どうにか出来ないものかと相談をしに来たのです」
「なるほど。騎士団もすっかり腐敗したものですね。元老院は汚職に塗れていますし、解任された者も多くいます」

「どうすれば……」

「そうですね、でしたら『白銀の指輪』を差し上げましょう」
「白銀の指輪、ですか?」

 差し出された指輪。
 純度の高い銀。
 シンプルでとても綺麗。『Veritasヴェリタス』という文字も掘られていた。

「その指輪は、私の錬金術の全てを注ぎ込んだ最高傑作。この帝国を変えたくて様々な術式も施しました。今や、それは“真実”のみを告げさせる奇跡の円環リング

「真実……」

「その指輪をめている限り、エリザ様に嘘はつけなくなるんです。つまり、それを使えば、不正を暴けるのです。どうか、この帝国を正して戴きたい。公爵令嬢エリザ様のお力で」


 凄い……それが本当なら、この白銀の指輪があれば伯爵の買収のことや過去の事件も全て明らかになるのね。
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