雰囲気で読む話

塩バナナ

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霊力兄弟

あっちって

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「ねぇお兄ちゃん、あっちって何で怖いのかな」

それは弟が突然発した疑問。
あっちってどこ、なんて問う必要はない。
怖い此岸こっちじゃない場所なんて一つしかない。
嫌がらせか?聞くと、単純に知りたいだけだと宣った。
俺がそう言う話苦手なの知ってるくせに。
だってお兄ちゃんは何でも知ってるからと無表情で言った。夏の暑さが少し和らいだ気がした。



「なるべくあっちにいかせたくないから」

少し経って、聞こえた答えはありきたりだった。
誰が?問うと、家族とかって予想してた答えをくれた。
つまんない。色々知ってるお兄ちゃんならもっと予想がつかない答えだと思ったのに。
扇風機の前で転がっているともうひとつ疑問が浮かんだ。
ねぇ、じゃあ、あっちってどんなとこ?



「知らないのか」

そう言うと弟はつまらなそうに寝そべっていた身体を起こし、縁側に座っている俺を見た。
猫のような目が獲物を見るように俺をとらえていた。
どういうこと?声の調子は楽しそうで、良い暇潰しを見つけたようだった。顔には現れていないが。
あっちは案外近い。あんま近づくなよ。目を細めて外を振り返った。



「大丈夫だよ」

お兄ちゃんがそっちにいかなければ。
お兄ちゃんの目を塞ぐ。蝉が大合唱して鼓膜を揺らした。
外には沢山の向日葵が咲いて、それ以外はなにもない。隣の家も、神社の大きな木も、我が家を囲む垣根も、何も。
ああ、そういえば。誰だっけ、思い出せないけど誰かが言っていたなぁ。

外は“あっち”なんだって。




「スイカ切れたわよー」
「「はーい」」

母親の声に揃って兄弟は返事をして。
そこで二人して首を傾げた。

あれ?じゃなかったっけ?

手に持つ包丁の赤はスイカか、それとも。
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