30 / 64
第一試験はおもてなし
着飾る者と揃える者
しおりを挟む「よし、ドレスはこれで問題ないわね」
お茶会用のドレスを買い終えた私は、アリシア他2名のメイドと共にお店を出た。
「あと他に何を買うんだったかしら、アリシア。」
「靴は先ほど買われましたので、あとはアクセサリーと…香水はいかがなさいますか?」
香水は家にたくさん香水はあるけど、皇后陛下のお茶会だもの
気合入れていかなければ。
「…行きましょう、皇后陛下のお茶会だもの。
新調する必要があるわ。」
そういうと私は香水が売っているお店へと向かった。
その途中
「ありがとうございました」
とあるお店から人が出てくるのが見えた。
見知った人間だ。
「あら、リーブ様」
「まぁ、ご機嫌麗しゅう、ローズ様」
リーブ様は重たそうな荷物を抱えながらも、完璧なお辞儀を見せた。
しかし出てきたお店が、リーブ様らしからぬお店だった。
そこは食料品…主に小麦粉を販売しているお店だったからだ。
普通はこのような店に出入りするのは、使用人のはずですが…
「なぜ…このお店から………何か御用で?」
「えぇ、今度のお茶会の準備ですわ」
リーブ様はなんでもないようにさらりと言いのけた。
でも、そのお店に自分を着飾るものは売っていない
「お茶会?そのお荷物はドレスには見えませんけれど」
「えぇ、だってこれ小麦粉です。」
「小麦?」
私は素っ頓狂な声を出す。
なぜ、この小麦がお茶会の準備になるのか意味不明だったからだ。
リーブ様は小麦を担ぎ直すと
「実は、今度のお茶会…私はお料理を振る舞っておもてなしをしようと思いまして」
と説明してくださった
「お料理!?」
「この前、皇后陛下が自家製のジャムを出してくださいましたでしょ?
あれでヒントをいただきまして。」
なるほど、確かにおもてなしはなんでもいいと言っておりましたものね。
ジャムにあうお料理を振る舞うと言うのは、いい着眼点ですわ。
「でもそれは、すでに皇后陛下もやられているのでは?」
「私は、それで良いと思っております。」
「なぜ?」
「だって、長い間愛されたガーデン。
つまり長い間、あのままのガーデンを皆様好んできたと言うことですわ。
なら、そのままの良さを最大限に使っておもてなしするのが一番ですわ。」
あのガーデンを見て、皇后陛下とお話しして…
すぐにそのような案を出せるなんて。
やっぱり隅に置けませんわね。
あそこを最大限に活かしたおもてなしの心が完璧ですわ。
本当にもったいない…皇后陛下が気に入りそうな令嬢なのに。
「リーブ様も大変ね…お相手がいるようなものなのに、
妃候補として、余計な試験を受けなければならないなんて」
「聖貴族として、仕方がございませんわ。
この義務を放棄すれば、リフロント家はもちろん、最悪バクランド家に迷惑をかけてしまいますから。」
彼女はほんと…苦労人ですわ。
皇太子にあんな扱いされてるのに律儀なことです。
「それでは急ぎですので、私はこれで。」
リーブ様はそういうと私にお辞儀をし、遠くに待たせたメイドの元へ歩いて行った。
私は口に手を添え
「その手がありましたわね」
とそう呟く。
「何か思いつきましたか?」
「いえ、でも確かに豪華で派手やかにすることだけがおもてなしではないと思ってね。」
でも、そうは言ってもすぐに思いつく…と言うわけではなかった。
0
あなたにおすすめの小説
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい
椰子ふみの
恋愛
ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。
ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!
そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。
ゲームの強制力?
何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる