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第一試験はおもてなし
相手を引き立てる思いやり
しおりを挟む「このガーデンでは、採れた植物や果実はジャムにしているというお話を伺わせていただきました。
そのジャムを、皆様により美味しくいただいていただく方法はないものかと考えましたところ、
ジャムをつけてより美味しくいただけるものはないものかと考え、ジャムを引き立てるのにぴったりな甘さ控えめのお菓子を手作りさせていただきました。
よりジャムの美味しさを感じていただくことのできる焼き菓子となっておりますので、ぜひおひとつお手にとってジャムをつけてお召し上がりください」
リーブ様はそうお伝えすると『これで私の話は以上です』とでもいうように再びおじぎをした。
その流暢なお菓子の説明を聞き終えると、どこからともなくパチパチという手を叩く音が聞こえてきて次第にその拍手の音は大きくなり、まるでスタンディングオベーションのように壮大な拍手の音をリーブ様を包んだ。
そして、割れ先にと焼き菓子を手に取り、ジャムをつけそれにより焼き菓子のおいしさが増し皆が感動していた。
その際に彼女の家のメイドたちとうまく連携してお菓子の準備や空いた皿の片付けなどをテキパキと指示し片付けていたその様子は、彼女たちの信頼関係が言わずとも見てとれた。
これはポイントが高い。
周りの評判も上々ですわ。
「なんと素晴らしい!ジャムを引き立てるために考えられた素晴らしい焼き菓子!」
「まるで、相手を立てるおもてなしの心…まさにリーブ様の人柄を表しているようですわ」
「お妃様の座にふさわしいですわ」
こんなことを口々にしている。
相手を立てる…要は男を立てて自分は一歩下がるということ。
前世の日本ではそのような時代は終わりを迎えつつあり、否定的な意見が増えていたし私もその考え方よりだけれど
この世界の価値観はまだまだ男尊女卑が主流なので、まぁリーブ様のような方は受けるのでしょう。
ただ、リーブ様はすでに婚約者がいる身。
今回もお飾りの参加に過ぎませんので、敵でもなんでもありませんわ。
口々にほめている来賓の方々も、それをわかっていてほめていらっしゃるのですから意地の悪い方々ですわ。
まぁ、とはいえリフロントや今後嫁ぐバクランドのPRにはなったでしょうから、無意味ではなさそうですけれど。
それより問題は…
私は会場の周りを見渡しました。
だいぶ前からリリー様の姿がどこにもありません。
おもてなしの試験なのですから、この会場にいないはずがないのですが…
準備中ということなのかしら。
私には絶対真似のできないこと…自信を持ってそう言っておられましたが
一体なんですの?
私にできないことなどあるはずがないのですのに…
そう思いながら飲み物を口に含んだ時のことでした。
少しだけ離れた噴水からカランカラン、というベルの鳴る音が聞こえた。
そこにはライレイニの2人のメイドと、その中央にリリー様がいらっしゃいました。
そしてリリー様は大きな声で私たちに声をかけました
「ご歓談中の紳士淑女の皆様、ガーデンでのお茶会は楽しんでおいででしょうか?
ガーデンの草木に囲まれながら美味しいお茶とお菓子を楽しむ癒されるこの貴重なお時間を
もっと心に残るものにできればと思い、一つ余興にお付き合いいただければと思います。」
余興?
それが、リリー様のおもてなしとでもいうことなのでしょうか?
ここまで大掛かりにやっているということはそういうことで間違い無いのでしょうけれど…
来賓の皆様方は何が始まるのかと、リリー様がいるところに足を運ぶ。
ある程度のところまで近づくと、ライレイにの使用人たちが、こちらでお待ちくださいと、一定の距離よりは中に入らせないようにしていた。
こちらより後ろでご歓談くださいって…何をするつもりなのかしら…いよいよ分からなくなってきたわ
よく見るとさっきのメイド以外にも至る所にライレイにの使用人が噴水の周りに何人かいる。
そして、何かを持っていた。
それが何かというのはこの後すぐにわかった
「それでは、今からライレイに名物、水芸を始めさせていただきます!」
そう言ってリリー様が両手を空に上げると、真後ろの噴水がザパーンと水飛沫をあげて噴き上がった。
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