転生前から生粋の悪役令嬢は、百合ヒロインから逃亡したい！

第二の試験は危険区域

自分で動くこと

状況は、思ったより深刻でした。

麻で作られた敷布団と掛け布団、うめき声を上げる患者たち。
バタバタと看護師たちが動き回っているけれど、正直手が足りていない。

その証拠に、苦しそうにしているのに声をかけられていない人が何人もいた。

そして何より、ありがちではありますが衛生環境がよろしくありません。
きっと、患者が多く手がそこまで回らないのでしょう。

これは…のんびり患者に声をかけている場合ではありませんわ。
声をかけられるのも邪魔でしょう。

「ローズ様…私怖いです」

リリー様がそっと私の腕に巻き付いてくるのを振り解きました。
彼女を相手にしている場合ではございません。


「思っていた以上の状況ですね、私はここの医療班に話をして参りますので…」

そう言って、その場から離れようとするハロルドを私は呼び止めました。

「試験官、個々の備品の確認をしたいのだけど、ご一緒しても？」

私の申し出が真剣なものだと言うのは一目で分かったらしく、断るそぶりは一切見せずに「それでは私と一緒に」と言って、彼に同行することになりました。

それを見たリリー様が不安になったのでしょう。

「ま、待ってください！私はどうしたらいいのですか？」

と、焦った声で私たちを呼び止めました。

全く、ウブな少女じゃあるまいし。
この状況を見て自分で何か動かなきゃという気持ちにはならないのでしょうか。

もしならないのであれば、彼女にできることは一つですわ。

「邪魔にならないような場所で待機でもしていたらいかがですの？」

彼女にそう吐き捨てて、ハロルドの後をついて行きました。