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第三は試験と謎解き

先生の情報

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「絵画の盗難?」


職員室に入って、適当な先生を捕まえて玄関ホールの絵画について質問をすると
そんな素っ頓狂な返事が返ってまいりました。

そして先生は頭をぽりぽりかきながら口を開きました。


「なんだ急にそんなことを聞いて、玄関ホールから絵画が消えたとか言い出すのか?」

「あ、いえ…昨日今日の話ではなくて…
昔、ここでそんな事件があったんじゃないかと思いまして」

「昔…?」


私に割り当てられた事件がいつのものかわからない以上、このように質問するしかありませんわ。
全く、いつの事件かくらい書いてくれてもいいと、心の中で不満に思って黙っていると、
先生は何かを思い出したようで手をポンと叩いた。


「あー、まぁ去年そんな事件あったな。
朝1番に来たアカデミーの従業員が騒いでいたんだ、怪盗に絵画が盗まれたと」

「怪盗?」

「『怪盗ジャック』耳に入ってないか?」


怪盗ジャック…そういえば、新聞でたびたび見かけますわ。
高価な宝石や絵画などを盗んでは、オークションにかけてお金儲けをするという。

その後スラム街の民が少し金回りが良くなるので、義勇軍の一人なんじゃないかと言われている…。
国としては迷惑極まりないですけれど。


「その怪盗が、アカデミーに侵入したと。」

「一応そういうふうに話は聞いているけどね」

「そうなのですか…もう解決した事件なのですか?」

「おそらく」


しかし、そうなると私の課題は怪盗ジャックを捕まえろということなのでしょうか。
いいえ、その怪盗は捕まっておりませんわ。
課題は解決済みのもののはず。


「なぜ、その従業員は怪盗が盗んだなどとわかったのです?」


怪盗を思わせた他の人物の可能性を考慮するべく、私は話を促しました。
すると先生は引き出しから、シルクハットのイラストの描かれている手紙を私に見せました


「これだよ、怪盗ジャックから手紙が届いていたんだ。」


先生はそれを受け取ると、それを読みました。
文章はたった一行。

『玄関ホールの絵画は頂いた』

それだけだった。


「なぜ、先生がこれを?」

「従業員が最初に相談を持ちかけたのが先生だったんだ。
その日その人の次に着いたのが自分だったから。
それで、話を聞いているうちに対応するのが自分の役割になって、なんだかんだそのまま預かってる。
何か調べているのであれば、それを君にかそう。」

「ありがとうございます」


なるほど、事情はわかりましたが、それは重要な証拠のはず…
然るべき場所が保管してそうなものですけれど、なぜ先生が持っているのでしょう。

それに不可解な点はまだありますわ


「盗まれた絵画が今玄関ホールに絵画はあるのはなぜです?」

「絵画は返ってきたからな」


返却?怪盗がせっかく盗んだものを?わざわざ?
おかしな怪盗もいたものですわね。


「ありがとうございます、大変参考になりましたわ。」


そう言ってお辞儀をすると、私は職員室から出ていきました。

一見、怪盗ジャックによる絵画の盗難。

これが本当なら、これで課題をクリアということになりますわ。

しかし、なんでしょう…何か違和感を感じますわ。
それに、そんな回答だとしたら難易度も簡単すぎます。

…今日はもうアカデミーが閉まりますわ。
話を聞けそうな人はもう残っていないでしょうし、
明日、いろいろまた聞き込みをしてみましょう。


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