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番外編 IF 野猿な囚人 24-1.分岐1(セリウスルート)別人
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分岐1
こちらはセリウスルートになります。
セリウスが苦手な方は、分岐2からお読みください。
ーーーーーーーーーーーーー
セリウスらしき人物は、舞台上のリーリアに声をかけてくる。
「リーリア、あの者達は仲間だから、解放して」
「へ?え?あ、はい」
リーリアが鳥籠に閉じ込めた者達を指しながら、冷静な声で言ってくる相手に、リーリアは、条件反射のように解放してしまう。
「リーリア、怪我は?」
「特にありません!」
「事前情報では、足に傷を負ったと聞いていたが?」
「あ、それはすぐに手当てをしていただいたので、大丈夫です。
もう完治しております」
「そうか。自力で魔力封じの腕輪は外しているね。
今、持っているよね?」
「はい」
「じゃあ、それを渡して」
リーリアは相手に言われるままに腕輪を渡そうとするが、ここで、さすがにはっと思いとどまった。
腕輪は解錠してあるが、見かけだけでもしておかないと怪しまれるため、フェイクでつけているふりをしていた。
もしまた施錠されるとまた自分が無力化するため、すぐに渡さずに確認するリーリア。
「あ、あの、なぜ、セリウス様がこちらに?
えっと、変装されているようですが、間違いなくセリウス様ですよね?」
「婚約破棄したとはいえ、幼馴染でもある僕の顔も声も忘れたのかい?
薄情だね、リーリアは……」
「いえ、セリウス様とわかっておりますが、髪色と口調がいつもと違うので、そっくりな別人だと危険ですので確認です……」
「リーリアは本能で人を見分けるから、わかるだろう?」
「……口調は、いつもの仕事時のセリウス様風ですが、いつもとちょっと違いますよね。
わざとでしょうが、随分と冷静にふるまっていらっしゃいますね?」
「ふっ、くくく、そうだね。
今の僕は、とても冷静だよ、リーリア」
リーリアは、笑いだした相手の様子を見て、やはりセリウス本人で間違いがないと確信した。
でも、セリウスがいつもとは別人のような感じがしてしょうがないリーリアであった。
セリウス独特の何かが足りない。
それは、リーリアに対する執着や行き過ぎた愛情のもとに生じるものである。
リーリアも、一瞬、冷静なセリウスが仕事モードだからか、または正式に婚約破棄し、離別宣言したためにリーリアに対するその感情が失われたものなのかと考えた。
本当は、これがいつもの他の人間に対するセリウスらしい態度なのかも知れないとも思えた。
ただ、リーリアの本能は、「セリウスだろうけど、前のセリウスとは何かが違うぞ?何かおかしいな?」と疑問に思っていた。
「……る、ルクレナ様もすぐにこちらに?」
「いや、ルクレナはアグワリーという人物の方をあたっているから、来ていない。
アグワリーのことは?」
「存じております。
魔力封じの腕輪と足の怪我の張本人です。
そのせいで抵抗できなくて、こちらに捕まってしまいました」
「そうか……。
この人身売買の潜入捜査は、もともとルクレナの仕事だったのだが、リーリアが行方不明になるからルクレナが呼び戻されて、君の捜索にあたっているよ。
それで、僕がルクレナの代わりにこちらの方へ潜入捜査で赴くことになったんだよ」
「そ、そうなのですね。
ご迷惑をおかけして大変申し訳ございません」
しょんぼりするリーリアを見て、セリウスがクールに微笑む。
「そんなに落ち込む位なら、アルーテ王宮で大人しくしていれば良かったのに。
ああ、保護者が助けに来ていなくて、がっかりしているの?」
「いえ、そういうわけでは……」
「まあ、詳しくは、また後で説明するから、この事態を収拾するよ。
基本、指示があるまで捕らえられた者達の拘束は解かないで。
今はとりあえず、ここをすぐに我々で制圧するから、大人しく指示に従って」
「……はい、わかりました」
リーリアもいきなりセリウスが現れて驚き、焦ったが、前回、会った時のセリウスと違って、パニックにもならず、恐怖も感じなかった。
むしろ、こんなに冷静なセリウスなら従っても大丈夫だろうと、安心感すらあった。
とりあえず、会場の外で待機していたセリウスの仲間達を、リーリアの結界を解いて中に入れて、セリウスが彼らに指示を与えながら無駄なく、その場を制圧する。
もっとも、リーリアがほぼ拘束しているので、物理的移動による処理が主である。
捕まえた者達を相手別に、すぐに尋問行きか、投獄行きかに分類して、どんどん外に運んでいく。
ちなみに、セリクルド王国からきたサリュー王子の従者や宰相の手の者達には、捕まえてすぐに、セリウスが直々に対応していた。
もちろん、リーリアにはやりとりが聞こえないように配慮して行われた。
「おい、貴様ら。
先程は、ここでリーリアを手に入れたらどうやって嬲るかで、随分と楽しく盛り上がっていたな?
席が近かったので、丸聞こえだったが?」
「ひぃ!セ、セリウス殿下!?何故、こんなところに……?」
「お前らごときが手に入る情報を我々が手に入らないと思っているのか?
セリクルド王国は、随分と平和ボケしているな」
「わ、我々はよく知らずにこちらに招待されまして、まさかこんな……!」
「ははは、もうちょっとましな噓をつけ。
それとも、リーリアのことを知らなかったと言い張りたいのか?」
「そ、そうです!我々もまさか本当に、リーリア・メナード本人がここにいるとは……」
「さっきから、お前らがここで話していたことは全部、聞いていたと言っているだろう。
……まあ、どんな言い訳をしても無事に国へ帰れると思うな」
「そ、そんな!ここはランダード王国ではなく、アルーテ王国ですぞ!?
我々に危害を加えれば、国際問題になりますぞ!」
「……セリクルド王国も、何でこんなに馬鹿共を送り込んできたんだろうな?
お前ら捨て駒か、何かなのか?」
「な、何ですと!?我々は…「おい、黙っていろ!」…ぐっ」
サリュー王子の従者が口を滑らそうとするのを宰相の手の者が止めている様子を、セリウスはとても冷たい視線で見ていた。
「……あれでもリーリアは、我がランダード王家が特別に管理している人物の1人だ。
つまり、お前らが話していたような勝手な真似を彼女にしようとしたら、まずお前らの身は無事なわけないし、最悪、我が国と戦争になる可能性もあることを知っていたか?」
「……?」首を傾ける従者。
「なるほど、そういうことか……」
大方を悟ったセリウスは、セリクルド王国の一味だけを別の場所へ移動するように指示した。
その後は、この屋敷に残党やリーリア以外の商品となる人間がいないかの捜索もする。
「セリウス様、私、まだ余力があるので、捜索のお手伝いをいたします」
「リーリア、無理しなくていい。
終わったら、すぐにアルーテ王宮に連れて行くから、そこで大人しくしていて」
「では、早く王宮に行けるようにお手伝いしたいです。
まだ魔力はあります」
「そうか、さすがだな……。
じゃあ、探索の魔法で、他の人間がこの屋敷に居ないか、探すのを手伝って欲しい。
でも、限界が近くなったら、知らせること。いいね?」
「はい!」
セリウスだけでなく、リーリアの探索魔法も使って、巧妙な隠し部屋を見つけて他の被害者を救出し、また、隠れてやり過ごそうとした犯人一味も見つけて引きずりだし、捕縛することにも成功した。
それから、セリウスの指示から、アルーテ王国の騎士団長に指令系統を移し、外道爺の所有する他の屋敷へも一切捜査に入り、関係者達を捕縛して、誘拐された人間達を救出していくことになった。
ここで、一通り役目を果たしたリーリアは、そのまま保護という形で、セリウスと一緒にアルーテ王宮に専用の馬車で護送されることになった。
セリウスと一緒に馬車に乗り込む前に、リーリアはバーナルの件でセリウスにお願いしてみた。
「あ、あの、セリウス様!王宮に戻る前に、ちょっと寄って欲しい所があるのですが……」
「何のために?」
いつまでも冷静なセリウスも、意外と扱いにくいなと思いながら、リーリアはバーナルが間違って外道爺共の仲間として一緒に捕まらないように、自分と一緒に王宮へ連れて行こうと思った。
リーリアは、バーナルがいつも休みの時にいる居場所について、リーリアに餌付けしている時にバーナルがうっかり口を滑らせたおかげで、知っていた。
「仲間にスカウトする予定の人物がおります。
その人物のところに寄って欲しいのですが、よろしいですか?」
「……その人物は、奴らの仲間ってこと?」
「えっと、そうなのですが、こちらの味方になってくれる方です」
「何者だ?何をしている人間だ?」
「料理人です!それも、極上の!!
いやもう、素晴らしく美味しい料理を作る方で、天才ですよ~」
リーリアが嬉々としてバーナルのことを言うと、セリウスは、深くため息をついてから額に手をあてて、頭痛がするようであった。
「……つまり、その人物に餌付けされたから助けたいと?」
「いやいや、そんな!
あれ?でも、そうなのかな?
あ、今回、私の魔力がかなり増強されたのは、お気づきですか?
それは、彼の作る料理のおかげなのです。
あの料理が私の魔力の増強をさせてくれたので、今回の成功があります!」
「……彼だと?男かっ!?」
セリウスは、一瞬、とんでもなく凶悪な表情になったが、すぐにまた、冷静な顔に戻った。
「い、いえ!男性ではなく、女性です(中身は)!!」
「……自分を男のように呼ばせている、男装した女性か?」
「いえ、身体は男性なのですが、その中身は女性というか、私よりも乙女で、女性らしい方です」
「それなら、男だろう!?」
「うーん、それは本人に言ってはいけなくて……」
「そんなことはどうでもいい!
奴らの仲間なら罪人だ」
「でも、今回の影の功労者ですよ?」
「たとえそうだとしても、奴らの仲間なら、一度は捕縛して取り調べをする必要がある。
あの会場にいなかった一味は、おそらく今頃、アルーテ王国の騎士団に捕縛されているだろう。
もし仲間に引き入れるつもりなら、罪状を明らかにしてから、その後に交渉するべきだ。
今はまず、パメラ王女にリーリアの無事なところを見せる必要がある。
だから、余計なことをこれ以上しないで、大人しくして欲しい、リーリア」
「……はい、そうですね」
その後、馬車に乗り込み、リーリアを見ないようにして、窓を見つめたまま無言になるセリウス。
馬車に二人っきりで、そんな態度のセリウスは初めてで、ちょっと感動するリーリア。
(うわ~!セリウス様と二人っきりの馬車の中で、膝に乗ることを強要されたり、キスされそうになったり、そういうセクハラがないなんて、本当に新鮮!
うーん、この人、やっぱりセリウス様と別人じゃないの?
……いや、私がもう正式に婚約破棄した他人だからか。
セリウス様って他人には基本、とてもクールだったかも)
セリウスとの距離をとても感じるリーリアであったが、まだ寂しいと思う前に(新鮮!)と思ってしまうリーリア。
そして、リーリアはセリウスの横顔をじっくり観察することができた。
(おお~!凄いな~、本当にセリウス様の横顔って、みんなが褒めるように、彫刻のような美しさというか、整い過ぎているんだね~。
あれ?幼い頃から、お付き合いがあったけど、セリウス様の横顔をこんな長時間、じっくり眺められる機会は初めてかも!?
だって、いつもセリウス様から、すぐ私へちょっかいをかけてくるから、こんなずっと見つめると身の危険があったというか、とりあえず、一緒にいて心休まる時間があまりなかったような……。
そっか、これが他人同士になった距離か~)
うんうんと納得するリーリアをちらっと横目でみたセリウスは、リーリアが無言の空気に気まずく感じているかと思ったが、むしろ何か喜んでいる様子のため、深いため息がまたでるのであった。
こちらはセリウスルートになります。
セリウスが苦手な方は、分岐2からお読みください。
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セリウスらしき人物は、舞台上のリーリアに声をかけてくる。
「リーリア、あの者達は仲間だから、解放して」
「へ?え?あ、はい」
リーリアが鳥籠に閉じ込めた者達を指しながら、冷静な声で言ってくる相手に、リーリアは、条件反射のように解放してしまう。
「リーリア、怪我は?」
「特にありません!」
「事前情報では、足に傷を負ったと聞いていたが?」
「あ、それはすぐに手当てをしていただいたので、大丈夫です。
もう完治しております」
「そうか。自力で魔力封じの腕輪は外しているね。
今、持っているよね?」
「はい」
「じゃあ、それを渡して」
リーリアは相手に言われるままに腕輪を渡そうとするが、ここで、さすがにはっと思いとどまった。
腕輪は解錠してあるが、見かけだけでもしておかないと怪しまれるため、フェイクでつけているふりをしていた。
もしまた施錠されるとまた自分が無力化するため、すぐに渡さずに確認するリーリア。
「あ、あの、なぜ、セリウス様がこちらに?
えっと、変装されているようですが、間違いなくセリウス様ですよね?」
「婚約破棄したとはいえ、幼馴染でもある僕の顔も声も忘れたのかい?
薄情だね、リーリアは……」
「いえ、セリウス様とわかっておりますが、髪色と口調がいつもと違うので、そっくりな別人だと危険ですので確認です……」
「リーリアは本能で人を見分けるから、わかるだろう?」
「……口調は、いつもの仕事時のセリウス様風ですが、いつもとちょっと違いますよね。
わざとでしょうが、随分と冷静にふるまっていらっしゃいますね?」
「ふっ、くくく、そうだね。
今の僕は、とても冷静だよ、リーリア」
リーリアは、笑いだした相手の様子を見て、やはりセリウス本人で間違いがないと確信した。
でも、セリウスがいつもとは別人のような感じがしてしょうがないリーリアであった。
セリウス独特の何かが足りない。
それは、リーリアに対する執着や行き過ぎた愛情のもとに生じるものである。
リーリアも、一瞬、冷静なセリウスが仕事モードだからか、または正式に婚約破棄し、離別宣言したためにリーリアに対するその感情が失われたものなのかと考えた。
本当は、これがいつもの他の人間に対するセリウスらしい態度なのかも知れないとも思えた。
ただ、リーリアの本能は、「セリウスだろうけど、前のセリウスとは何かが違うぞ?何かおかしいな?」と疑問に思っていた。
「……る、ルクレナ様もすぐにこちらに?」
「いや、ルクレナはアグワリーという人物の方をあたっているから、来ていない。
アグワリーのことは?」
「存じております。
魔力封じの腕輪と足の怪我の張本人です。
そのせいで抵抗できなくて、こちらに捕まってしまいました」
「そうか……。
この人身売買の潜入捜査は、もともとルクレナの仕事だったのだが、リーリアが行方不明になるからルクレナが呼び戻されて、君の捜索にあたっているよ。
それで、僕がルクレナの代わりにこちらの方へ潜入捜査で赴くことになったんだよ」
「そ、そうなのですね。
ご迷惑をおかけして大変申し訳ございません」
しょんぼりするリーリアを見て、セリウスがクールに微笑む。
「そんなに落ち込む位なら、アルーテ王宮で大人しくしていれば良かったのに。
ああ、保護者が助けに来ていなくて、がっかりしているの?」
「いえ、そういうわけでは……」
「まあ、詳しくは、また後で説明するから、この事態を収拾するよ。
基本、指示があるまで捕らえられた者達の拘束は解かないで。
今はとりあえず、ここをすぐに我々で制圧するから、大人しく指示に従って」
「……はい、わかりました」
リーリアもいきなりセリウスが現れて驚き、焦ったが、前回、会った時のセリウスと違って、パニックにもならず、恐怖も感じなかった。
むしろ、こんなに冷静なセリウスなら従っても大丈夫だろうと、安心感すらあった。
とりあえず、会場の外で待機していたセリウスの仲間達を、リーリアの結界を解いて中に入れて、セリウスが彼らに指示を与えながら無駄なく、その場を制圧する。
もっとも、リーリアがほぼ拘束しているので、物理的移動による処理が主である。
捕まえた者達を相手別に、すぐに尋問行きか、投獄行きかに分類して、どんどん外に運んでいく。
ちなみに、セリクルド王国からきたサリュー王子の従者や宰相の手の者達には、捕まえてすぐに、セリウスが直々に対応していた。
もちろん、リーリアにはやりとりが聞こえないように配慮して行われた。
「おい、貴様ら。
先程は、ここでリーリアを手に入れたらどうやって嬲るかで、随分と楽しく盛り上がっていたな?
席が近かったので、丸聞こえだったが?」
「ひぃ!セ、セリウス殿下!?何故、こんなところに……?」
「お前らごときが手に入る情報を我々が手に入らないと思っているのか?
セリクルド王国は、随分と平和ボケしているな」
「わ、我々はよく知らずにこちらに招待されまして、まさかこんな……!」
「ははは、もうちょっとましな噓をつけ。
それとも、リーリアのことを知らなかったと言い張りたいのか?」
「そ、そうです!我々もまさか本当に、リーリア・メナード本人がここにいるとは……」
「さっきから、お前らがここで話していたことは全部、聞いていたと言っているだろう。
……まあ、どんな言い訳をしても無事に国へ帰れると思うな」
「そ、そんな!ここはランダード王国ではなく、アルーテ王国ですぞ!?
我々に危害を加えれば、国際問題になりますぞ!」
「……セリクルド王国も、何でこんなに馬鹿共を送り込んできたんだろうな?
お前ら捨て駒か、何かなのか?」
「な、何ですと!?我々は…「おい、黙っていろ!」…ぐっ」
サリュー王子の従者が口を滑らそうとするのを宰相の手の者が止めている様子を、セリウスはとても冷たい視線で見ていた。
「……あれでもリーリアは、我がランダード王家が特別に管理している人物の1人だ。
つまり、お前らが話していたような勝手な真似を彼女にしようとしたら、まずお前らの身は無事なわけないし、最悪、我が国と戦争になる可能性もあることを知っていたか?」
「……?」首を傾ける従者。
「なるほど、そういうことか……」
大方を悟ったセリウスは、セリクルド王国の一味だけを別の場所へ移動するように指示した。
その後は、この屋敷に残党やリーリア以外の商品となる人間がいないかの捜索もする。
「セリウス様、私、まだ余力があるので、捜索のお手伝いをいたします」
「リーリア、無理しなくていい。
終わったら、すぐにアルーテ王宮に連れて行くから、そこで大人しくしていて」
「では、早く王宮に行けるようにお手伝いしたいです。
まだ魔力はあります」
「そうか、さすがだな……。
じゃあ、探索の魔法で、他の人間がこの屋敷に居ないか、探すのを手伝って欲しい。
でも、限界が近くなったら、知らせること。いいね?」
「はい!」
セリウスだけでなく、リーリアの探索魔法も使って、巧妙な隠し部屋を見つけて他の被害者を救出し、また、隠れてやり過ごそうとした犯人一味も見つけて引きずりだし、捕縛することにも成功した。
それから、セリウスの指示から、アルーテ王国の騎士団長に指令系統を移し、外道爺の所有する他の屋敷へも一切捜査に入り、関係者達を捕縛して、誘拐された人間達を救出していくことになった。
ここで、一通り役目を果たしたリーリアは、そのまま保護という形で、セリウスと一緒にアルーテ王宮に専用の馬車で護送されることになった。
セリウスと一緒に馬車に乗り込む前に、リーリアはバーナルの件でセリウスにお願いしてみた。
「あ、あの、セリウス様!王宮に戻る前に、ちょっと寄って欲しい所があるのですが……」
「何のために?」
いつまでも冷静なセリウスも、意外と扱いにくいなと思いながら、リーリアはバーナルが間違って外道爺共の仲間として一緒に捕まらないように、自分と一緒に王宮へ連れて行こうと思った。
リーリアは、バーナルがいつも休みの時にいる居場所について、リーリアに餌付けしている時にバーナルがうっかり口を滑らせたおかげで、知っていた。
「仲間にスカウトする予定の人物がおります。
その人物のところに寄って欲しいのですが、よろしいですか?」
「……その人物は、奴らの仲間ってこと?」
「えっと、そうなのですが、こちらの味方になってくれる方です」
「何者だ?何をしている人間だ?」
「料理人です!それも、極上の!!
いやもう、素晴らしく美味しい料理を作る方で、天才ですよ~」
リーリアが嬉々としてバーナルのことを言うと、セリウスは、深くため息をついてから額に手をあてて、頭痛がするようであった。
「……つまり、その人物に餌付けされたから助けたいと?」
「いやいや、そんな!
あれ?でも、そうなのかな?
あ、今回、私の魔力がかなり増強されたのは、お気づきですか?
それは、彼の作る料理のおかげなのです。
あの料理が私の魔力の増強をさせてくれたので、今回の成功があります!」
「……彼だと?男かっ!?」
セリウスは、一瞬、とんでもなく凶悪な表情になったが、すぐにまた、冷静な顔に戻った。
「い、いえ!男性ではなく、女性です(中身は)!!」
「……自分を男のように呼ばせている、男装した女性か?」
「いえ、身体は男性なのですが、その中身は女性というか、私よりも乙女で、女性らしい方です」
「それなら、男だろう!?」
「うーん、それは本人に言ってはいけなくて……」
「そんなことはどうでもいい!
奴らの仲間なら罪人だ」
「でも、今回の影の功労者ですよ?」
「たとえそうだとしても、奴らの仲間なら、一度は捕縛して取り調べをする必要がある。
あの会場にいなかった一味は、おそらく今頃、アルーテ王国の騎士団に捕縛されているだろう。
もし仲間に引き入れるつもりなら、罪状を明らかにしてから、その後に交渉するべきだ。
今はまず、パメラ王女にリーリアの無事なところを見せる必要がある。
だから、余計なことをこれ以上しないで、大人しくして欲しい、リーリア」
「……はい、そうですね」
その後、馬車に乗り込み、リーリアを見ないようにして、窓を見つめたまま無言になるセリウス。
馬車に二人っきりで、そんな態度のセリウスは初めてで、ちょっと感動するリーリア。
(うわ~!セリウス様と二人っきりの馬車の中で、膝に乗ることを強要されたり、キスされそうになったり、そういうセクハラがないなんて、本当に新鮮!
うーん、この人、やっぱりセリウス様と別人じゃないの?
……いや、私がもう正式に婚約破棄した他人だからか。
セリウス様って他人には基本、とてもクールだったかも)
セリウスとの距離をとても感じるリーリアであったが、まだ寂しいと思う前に(新鮮!)と思ってしまうリーリア。
そして、リーリアはセリウスの横顔をじっくり観察することができた。
(おお~!凄いな~、本当にセリウス様の横顔って、みんなが褒めるように、彫刻のような美しさというか、整い過ぎているんだね~。
あれ?幼い頃から、お付き合いがあったけど、セリウス様の横顔をこんな長時間、じっくり眺められる機会は初めてかも!?
だって、いつもセリウス様から、すぐ私へちょっかいをかけてくるから、こんなずっと見つめると身の危険があったというか、とりあえず、一緒にいて心休まる時間があまりなかったような……。
そっか、これが他人同士になった距離か~)
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