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彼女になった理由
気づけない、違和感と。
しおりを挟む――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ね、なにしてるの」
男女の間に声を挟んだのは紛れもなく、私の義弟でした。
義弟の姿をみて目の前の王子、ナルロス王子は私と義弟を見比べます。
少し悩んだ末、なにか納得したように手を叩きました。
「ああ、君が例の出来損ない、か」
聞きなれない言葉に耳を疑った。
隣で義理の弟が普段は見せないような顔をしている。
いつもは温厚というか、何を考えているかわからない表情をしている彼が
その瞳を激情に燃やして唇を食みにらみつけている。
出来損ないとは、なんのことだろうか。
「それはどうゆうことでしょうか、
義理とはいえ弟、侮辱するのですか?」
そう義理とはいえ弟である。
ここがゲームの世界と分かっていても流石に私も怒りを覚える。
二人に非難の目を向けられても彼のひょうひょうとした態度は変わらない。
「ああ、だって出来損ないだろう、
君の血筋である力を――」
そこまでいって耳を塞がれた。
恐る恐る上を見れば先程よりも険しくなった顔の弟がいる。
今にも食い殺さんとするその気配は、手負いの獣のようだ。
「姉さんは知らなくていい」
でも申し訳ないです。
耳というものは優秀で、ただ塞ぐだけじゃ音全てを聞こえなくするなんてできないのです。
しっかり聞こえてしまいました。
――力を受け継がなかった子供。
そう私の家系には、血筋には力が宿る。
妹は声の力、私は―――なんだったかしら。
おかしい、知識として知っているはずなのに思い出せない。
あれ、そもそも私は”生前手に入れたゲーム世界の知識”は覚えている。
けれどどうして、私は”私の情報”を覚えてないの?
欠如に気付いて、違和感は存在を示した。
それはかけたピースに今まで気づかなかった、だけ。
気づいてしまったら、どうしよもなく不安が溢れ出た。
「ねぇ」
柄にもなく声が震えた。
どうしてここにいるのとか、いろいろ聞きたいけれど。
何よりも今の私が先に聞きたいことができてしまった。
「私は、本当にーーーなのかしら?」
その一言に彼はひどく狼狽した顔をした。
その顔を私は見たくなかった気がする。
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