15歳から始まる悪女人生計画。

🐾🐾

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彼女になった理由

訪いかけ、問いかけ。

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――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「違う、違うよ姉さん、姉さんは―――じゃない」

必死そうに弟は私の肩を揺さぶった。
言い聞かせるように吐くその言葉を、私は鵜呑みにできない。
音に乗らないその言葉は世界が拒絶している証。

「あー、ごめんね、話を変えるんだけど・・・」

そういって、唐突にナルロス王子は別の話を切り出す。
わたしに触れようとして間に入る弟が邪魔をする。
残念そうに右手を挙げたまま、苦笑いを零せば手を戻す。

「君に王宮に来てほしい」

その答えに、私は間髪入れません。

「お断りします!」

私はとっさに弟の手をとって駆け出します。
急なことに弟も体制を崩しそうになるかと思えば、
そんなことはなくむしろ私が引っ張られます。
この体力差がうらやましい。
駆け出せば、ナルロス王子は置いてきぼりになります。

「ああ、ちょっと待ってよ!」

そういって背後から追いかけてくる彼。
いやいや、私からすればあの人は何を言っているのだ。
妹で十分だろう。
なぜ、姉を訪ねてきた。
はっ、まさか15年分のあれそれの事情で拘留こうりゅうとか、そんな。
なら一度捕まったほうがいいのだろうか。
このままでは父さまに迷惑をかけてしまうことに、なるのだろうか。
いや、でもそんなことはないはず。
拘留が目的ならば、ファーストコンタクトからあんなことはしない。
なら理由は?




「一体なんだったの、あれ」

私が不満げに言葉を漏らせば、少し驚いた顔をした。

「姉さん口調、いつもと違うね」

手を引く彼が言った。
そうですね。なるべく印象よくしようと、敬語を使っていましたからね。

「そっちのほうがいい」

そういわれましても、変えませんよ?
と断ればすこししょんぼりとした顔をする。
まるで子犬、確信犯でしょう。私が動物好きなのを分かっているくせに。
ところで背後の彼、なかなか撒けません。

「姉さん、ちょっとごめんね」

弟はいきなり立ち止まります。
私は突然のことで手を引かれていますが、勢いでそのまま前に倒れそうになります。
腹に手を回すように支えてくれて、私は倒れずに済みます。
弟はそのまま膝あたりにも手を回し、優しく抱きかかえられました。

「ちょ、ま、え?!」

流石にこれは恥ずかしい。
抗議の目を向けても、言葉を言っても彼は無視してきます。
なんて子だ!反抗期だろうか。
しかしさすがというか、運動神経がいいだけあります。
あっという間にナルロス王子が見えなくなります。



父さんに聞かないと、なぜ、王子が現れたのか。
嫌な予感がします、私の平穏は妹が王宮にいったがため確実なはずなのに。
音を立てて日常が崩れていくような、そんな感覚。
今更ながらに、不安定な足場に立たされているのだと私は実感しました。





「所でどうしてここにいるの」

「父さんから言伝、今日は家から出るなって」

「え?!今朝と言ってること違うじゃない!!」

「本人に文句いってよ姉さん」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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