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アデル様が幼いのに、私が捕らえられているような場所を見せるわけにはいかなかった。だから、必死で情報をかき集めて私を探し出した、と彼は言う。
「本当に、間に合ってよかったって、思った」
「オリヴァー……」
「あんな姿、もう二度、見たくないんだ。君が、血だらけで倒れているのを見て、どれほど奴らが憎いと、思ったことか」
「でも、オリヴァーは私のことを優先してくれたよね」
「当たり前だ。君の、命がかかっているんだから」
それほどまでに、私を一生懸命に探し出してくれた彼は、今も心に傷を負っているようだ。私のあの姿で。
「オリヴァー、怖いよね」
「ああ、そうなんだ。怖いんだ……恐ろしいんだっ! あの日の君を、ふとした瞬間に思い出す…………もっと早くに助けに入れなかった自分に、怒りだってある」
「みて、オリヴァー」
「ユーフェミア?」
私の傷は、オリヴァーや彼の手配してくれたお医者様、オギさんたちの協力があって、消え去った。もう傷痕はどこにもない。
「私、元気になったよ。今までずっとオリヴァーやみんなが、私のために頑張ってくれたから。まだ、辛いことを思い出すことはあるし、悔しいって怒鳴りたいくらい、感情が荒れることだってあるよ。でもね、
今があるのは、他でもない、みんなのおかげだし、助けに来てくれたオリヴァーのおかげでもある」
苦しい記憶も怒りも、持っていて当然だと教えてくれた彼のおかげで、今の私が存在することができるのだ。
「ありがとう、オリヴァー」
「ユー、フェミア……」
私の生きている証を聞かせるように抱きしめれば、オリヴァーはおずおずと、私の身体に腕を回した。
「大丈夫だよ、オリヴァー」
「うん、ありがとう」
そうして、私たちの思いが通じ合った夜、互いの存在を刻むように、夜は更けていった。
****** ******
「ユーフェミア姉さま!」
「アデル様!」
翌朝、少しの気だるさを感じながらも、遊びにやってきたアデル様とお話をする。
「今日はユーフェミア姉さまにこちらの本をぜひ、ぜひ! 見ていただきたくて!」
急遽、来訪したアデル様は、皇太子殿下と一緒にやってきた。そして、アデル様の持ってきたという本を見た瞬間、私は紅茶を吹き出してしまうところだった。
「ア、アデル様……そ、それはいったい……?」
「ああ、これは! もちろん! ユーフェミア姉さまとオリヴァーの物語ですわ!」
ルンルン、語尾におんぷでもつきそうなほどにご機嫌で、笑顔いっぱいの皇女殿下。
思わず、なんだって、と聞き返さなかった私、偉い。
「ちなみに、今月の末には劇も上演予定ですのよ!」
「げほっ! ごほっ!」
気管に入り込んだ紅茶に、噎せる。それほどまでに持ってきていた本の威力がでかすぎた。
「お姉さま?」
「だ、だいじょうぶ、です……」
「何か、嫌なことでも、ありましたでしょうか?」
「い、いえ! ただ、その、とても恥ずかしいな、と思いまして……」
「あら、大丈夫ですわ! わたくしと、お姉さまの物語も劇になりますし、本にもなりますから!」
————全然、大丈夫じゃないんだが。
本や劇場で上演されることに対して、キラキラで、可愛らしい笑顔を浮かべるアデル様に、皇太子殿下は楽しそうな表情、オリヴァーはいいね、と肯定的。
————いや、それなんて地獄?
オリヴァーと身も心も結ばれて幸せだなぁと思っていたところへ、投下されたトンデモナイ爆弾は、私の心に大きなクレーターを作ったのだった。
「本当に、間に合ってよかったって、思った」
「オリヴァー……」
「あんな姿、もう二度、見たくないんだ。君が、血だらけで倒れているのを見て、どれほど奴らが憎いと、思ったことか」
「でも、オリヴァーは私のことを優先してくれたよね」
「当たり前だ。君の、命がかかっているんだから」
それほどまでに、私を一生懸命に探し出してくれた彼は、今も心に傷を負っているようだ。私のあの姿で。
「オリヴァー、怖いよね」
「ああ、そうなんだ。怖いんだ……恐ろしいんだっ! あの日の君を、ふとした瞬間に思い出す…………もっと早くに助けに入れなかった自分に、怒りだってある」
「みて、オリヴァー」
「ユーフェミア?」
私の傷は、オリヴァーや彼の手配してくれたお医者様、オギさんたちの協力があって、消え去った。もう傷痕はどこにもない。
「私、元気になったよ。今までずっとオリヴァーやみんなが、私のために頑張ってくれたから。まだ、辛いことを思い出すことはあるし、悔しいって怒鳴りたいくらい、感情が荒れることだってあるよ。でもね、
今があるのは、他でもない、みんなのおかげだし、助けに来てくれたオリヴァーのおかげでもある」
苦しい記憶も怒りも、持っていて当然だと教えてくれた彼のおかげで、今の私が存在することができるのだ。
「ありがとう、オリヴァー」
「ユー、フェミア……」
私の生きている証を聞かせるように抱きしめれば、オリヴァーはおずおずと、私の身体に腕を回した。
「大丈夫だよ、オリヴァー」
「うん、ありがとう」
そうして、私たちの思いが通じ合った夜、互いの存在を刻むように、夜は更けていった。
****** ******
「ユーフェミア姉さま!」
「アデル様!」
翌朝、少しの気だるさを感じながらも、遊びにやってきたアデル様とお話をする。
「今日はユーフェミア姉さまにこちらの本をぜひ、ぜひ! 見ていただきたくて!」
急遽、来訪したアデル様は、皇太子殿下と一緒にやってきた。そして、アデル様の持ってきたという本を見た瞬間、私は紅茶を吹き出してしまうところだった。
「ア、アデル様……そ、それはいったい……?」
「ああ、これは! もちろん! ユーフェミア姉さまとオリヴァーの物語ですわ!」
ルンルン、語尾におんぷでもつきそうなほどにご機嫌で、笑顔いっぱいの皇女殿下。
思わず、なんだって、と聞き返さなかった私、偉い。
「ちなみに、今月の末には劇も上演予定ですのよ!」
「げほっ! ごほっ!」
気管に入り込んだ紅茶に、噎せる。それほどまでに持ってきていた本の威力がでかすぎた。
「お姉さま?」
「だ、だいじょうぶ、です……」
「何か、嫌なことでも、ありましたでしょうか?」
「い、いえ! ただ、その、とても恥ずかしいな、と思いまして……」
「あら、大丈夫ですわ! わたくしと、お姉さまの物語も劇になりますし、本にもなりますから!」
————全然、大丈夫じゃないんだが。
本や劇場で上演されることに対して、キラキラで、可愛らしい笑顔を浮かべるアデル様に、皇太子殿下は楽しそうな表情、オリヴァーはいいね、と肯定的。
————いや、それなんて地獄?
オリヴァーと身も心も結ばれて幸せだなぁと思っていたところへ、投下されたトンデモナイ爆弾は、私の心に大きなクレーターを作ったのだった。
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良い意味でタイトル詐欺ですよ!
ティッシュ片手に泣きながら更新分一気に読みました。
こう言う系の話しは涙腺が崩壊するので苦手なのですが、今後が気になってしょうがないです。
今後の話も楽しみに待ってます。
えーと…ここでタイトル回収した感じですかね?
ユーフェミアちゃん…これはもう羞恥で邸に籠るしかないかもw
うーん…自主的に「引きこもり」になったら、オリヴァーが監禁(爆)しなくても良くなったか…?(’・ω・‛)
前半のシリアスと後半のコメディのギャップ感が楽し過ぎですw
感想ありがとうございます。
時間はかかりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。
題名から想像してたのと全然違いました。引き込まれてしまい、40話一気に読みました。これからもよろしくお願いします。
感想ありがとうございます。
まだまだ続く予定ですので、よろしくお願いします。