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4話 捕らわれの姫君
さすが私、でしょう?
しおりを挟むお三方の野営地は小川の近くにありました。
あのまま進んでいけばやがて辿り着けていたわけです。
当てずっぽうとはいえ、野生児じみた直感頼りも馬鹿にはできません。
幼い頃より経験を培ってくださった盗賊団の皆に感謝。
「……から、……い!」
連行という形で連れて行かれると、行く先の野営地から切羽詰まった声が響いてきました。
神官風の出で立ちの女性が、鎧を身に纏う戦士風の男性に掴みかかっています。
「ですから、今すぐ城へ戻れと言っているでしょう!」
「しかし姫君、先程は逃げろと……」
「どうしてあの場にいる者全員を連れて行かないのですか? それでも勇者ですか、愚か者!」
「し、仕方がないのだ、姫君。さすがの俺も幾人も抱えてあの高さから跳ぶのは容易なことではない。魔城攻略を前にして魔力を使い切るわけには」
「守るべきものを前にしてそんな算段を付けている者が勇者などと名乗るな! 恥を知りなさい!」
猛るリンネさんの激声に押され、たじたじになる鎧の勇者。
あれ、本当に誉れ高き勇者様?
なんだか酷く情けないような……。
語り聞いた〝勇者〟とは、その呼び名が示す通り、勇猛果敢で恐れ知れず。
弱きを助け強きを挫く、優しき強者が冠する二つ名。
何というか、鎧の彼の背中にはその貫禄がありません。
まあ、捻くれ者の穿った見解など横に置いておきましょう。
リンネさんをこのまま放置するわけにはいきません。
自惚れでなければ彼女はきっと、私のために怒っているのですから。
「何でも構いません! とにかく、今すぐ、早急に! もう一度城へ―――!」
「ぎゅう」
音もなく忍び寄り、後ろから抱き付きます。
「いきなり何を……っ、えっ? ア、アルル様?」
「落ち着いた?」
「え? ……ええ、そうですね。おかげさまで……」
「そう」
抱擁を解いて、一歩下がります。
しゃんと二本の足で立つ私を、信じられないと言いたげにまじまじ見つめるリンネさん。
無事であるという事実に間違いがないことを確認し、ややあって肩の力を抜きました。
「えっと、よくぞご無事で」
口調がややぶっきら棒なのは、取り乱した様を見られたが故にでしょうか。
私は「ふふん」と笑みを零し、得意気に薄い胸を張って見せました。
「さすが私、でしょう?」
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