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5話 王都、陥落
これでいいんでしょうか、本当に
しおりを挟む慌ただしく走り去る足音を、取り残された男二人が疑惑とともに見送りました。
「あれは本当にエリーゼ姫なのか……? 何もかも違う、完全に別人じゃないか……」
「いやしかし、自ら姫と名乗って……。だったら、ロキ。あれは一体何者だと言うのだ?」
いくら考えようと交わることのない結論。
言い争う二人。
そこへ切羽詰まった声が飛び込んできます。伝令の兵士です。
「冒険者の方、緊急事態です! 至急応援願います!」
「何だ、騒がしいな」
「たった今、城壁の見張りから知らせが入りました! 魔神王の森の奥から怪物の軍勢が押し寄せてきます!」
「何だと! ちっ、魔神王め、姫を取り返しに来たってことか。……どうだ、ロキ? まだ疑わしいか?」
「……すまん。くだらないことを言ってしまった。行こう、今度こそエリーを守り抜いて見せる!」
「よし、それでこそ勇者だ」
息を合わせて頷き合い、勇猛果敢に飛び出して行く背を最後に、私は彼らから視線を外しました。
正直、後ろ髪引かれる思いはあります。
私だって冒険者。
怪物と戦い、市民を、街を守ってこそ。
もちろん、ついさっきまで見習いだった私の力なんて何の役に立たないかもしれません。
けれど……、これでいいのでしょうか、本当に。
「アルル様、急いでください!」
「……」
……リンネさん、本当にこれでいいんでしょうかねえぇ。
そんな疑惑を残しつつ、迫り来る猛威から逃げ切るため、私たちは薄暗い廊下をひた走りました。
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