ゆかりさんとわたし

謎の人

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1話 ゆかりさんとわたしと、図書室にて

どうか正義の味方にならないで。

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 浮かれていたわたしがようやく落ち着き始めた頃、ゆかりさんは諭すような言葉をスケッチブックに書きます。


〝調子に乗って推理なんてしてみたけれど、これが合っているという証拠はどこにもないのよ、みぃちゃん。そして仮に証明できたとしても、逢引きをしていた生徒の処分はなくならない〟


 読んで、理解して、わたしも神妙に頷きます。


「そうね。証拠になりそうな風船や針なんてもうとっくに捨ててしまっただろうし、実際にその仕掛けをしていただなんて立証はできない、うん。」

 どのみち、あの逢引きの二人は別件で処分を受けざるを得ない身でした。
 ただ、退学が停学一ヶ月くらいにはなるかも知れない、と思いましたが、あくまで可能性なので黙っておきます。

 ゆかりさんの言いたいことがなんとなく分かりました。
 予想通りの言葉をわたしに伝えてきます。


〝だからね、みぃちゃん。司書の先生の不正を直接糺すことはできないわ〟
「そうね……。できない。うん、それは分かる。なんか納得できないけれど……」
〝私が今回この推論を立てたのは、みぃちゃん、あなたに疑いがかかっているからよ。あなたに降りかかる火の粉は、それがどれほど小さいものでも看過できない。できなかった。だから―――〟


「―――だから、これを正義のために使おうとしないで」


 ゆかりさんは、スケッチブックに書いてある最後の言葉を澄んだ声で伝えてきました。
 わたしの目をしっかりと見つめて、言葉に素直な気持ちを乗せます。


「どうか正義の味方にならないで。あなた自身のために使って欲しいの」
「ゆかりさん……」


 それはつまり。
 もしも今より状況が悪くなった時、わたしがやったのではないかと直接言われたりしたら。
 そうなって初めてゆかりさんの推論を言葉にしなさいと、そういうことでした。

 伝家の宝刀の抜きどころを間違わないでほしいと、ゆかりさんは言っているのです。
 逢引き男女を見捨てて、自分を一番大切にしてほしい、と。

 その想いをしっかり受け取って、わたしはゆかりさんの透き通るような手を取ります。


「うん、大丈夫よ。わたしはわたしを護るために頑張る。正義の味方にはならない。どんな時でも、わたしはゆかりさんの味方だから」
「ありがとう、みぃちゃん」


 ゆかりさんの顔に、ゆっくりと安堵の笑みが広がって。
 それは同時に私の心も癒して……。

 二人で微笑み合いながら、その日のお話を終えたのでした。
 
 
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