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10、左手の指輪の話、続き。
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「これは俺のではない。と、いうか、俺に送られたものではないんだ。」
「……」
右手で左手薬指を指差しながらドヤ顔で喋るハヴィに、まるで嘘つくなやと言わんばかりに、さらに目を細め眉を寄せるアンセル。
納得出来てない顔を一旦置いておいて、まあ落ち着けってとアンセルを制しながら、話を続けた。
「団長が送ってきたもんなんだけどさ。
オルトと俺指のサイズ一緒じゃん。
こないだ団長にプレゼントあげたんだけどさ。」
「プレゼントをあげただと?
……というか今キミが言った3文全てに脈略がなく、意味がわからない。
団長が送ってきた物なのに、オルトとサイズが一緒で、何でキミが団長にプレゼントあげたんだ?」と、ますます目を細め首を傾げるアンセルに、ハヴィは得意げにフフンと鼻を鳴らした。
「もーちゃんと最後まで聞けよバカアンセル!聞かないなら話さないぞ?」
若干イラついてきたハヴィを見て、拗ねたように口を尖らせ黙り込んだ。
よしよし、では話を続けますよ、と。いい子いい子と、水色の大型犬を落ち着かせた。
「こないだお前にあげるって言ってたカフスあるじゃん?」
「あれもしかして、あげちゃったの!?」
「だから別の新しいのあげたじゃん!」
「どっちもくれたらよかったのに!」
うわっと叫ぶと、ベッドにうつ伏せるアンセル。
ガチで泣いたりはしてなさそうだけど、これは後々面倒くさい事になりそうな?とか思いつつ、流石にヤバいと思い直し、言い訳に切り替えた。
「でもあん時喧嘩したじゃん。お前の態度にムカついてその勢いで団長にあげちゃったから、新しく作り直して、もっといいやつ渡したじゃん。」
「でも私にくれようとしたのを誰かにあげるとか……」
「お前が悪いんだからもうそれはいいじゃん。」
「確かに私が悪かったんだけど……」
最近できた趣味というか、流行と金儲けに敏感な姉達につられて、アクセサリー作りにはまっているハヴィ。
大体どっちかの姉がハマるともう一方の姉もハマるので、絶対的に自分も巻き込まれる。
大概すぐ飽きて放置することが多いんだけど、アクセサリー作りに関してはハヴィ自身がメチャクチャハマってしまったのだった。
それでアンセルに作ってあげると約束したのだが、その前にアンセルと喧嘩をしてしまった。
原因は些細なことだったのだが、アンセルがハヴィとの約束を破ったことが原因。
それにも王太子が関係しているのだが、そんなの知ったこっちゃない。
約束をすっぽかされ怒ったハヴィは、遅れて来ると言っていたアンセルを放置し、そのまま仕事に行ってしまったのだ。
その時にちょうどいた団長に押し付けた、という流れだった。
押し付けた物だったのに、団長はびっくりするぐらい喜んでいた。
そんなに喜んでくれるならあげてよかったかなと思っていたが、なんであそこまで喜んでいたのか、未だに謎だった。
そんな事があってからか『お礼』と称してよく団長からご飯を誘われる事が多くなる。
でもハヴィとしては団長は憧れた人だったが、流石に上司と二人きりで食事とか気が引けたので、オルトも誘って3人で会っていた。
そのまま3人でよく食事に行くようになってから、何だかオルトが団長をよく見てるなぁと気がついて。あれそういえば、話をしていると二人の視線がよくぶつかる事も多いな、と。
ぶつかった後に照れたように笑う二人もまんざらじゃないように見えていたのだ。
ま、まさか二人って!?
こういう恋愛話に鈍いと言われているハヴィでも気がついたこの変化に、余計な横槍は入れずに見守ろうと心に誓った。
自分から見てもオルトと団長はお似合いだなと思っていた。
二人が付き合うようになったら嬉しいなぁ。
オルトは内気で奥手なところがあるから、俺が協力してやらなければと。
ハヴィは勝手にそんな事を思っていたのだった。
なので勿論、ハヴィはまさかプレゼントを押し付けた日が団長の誕生日だとは知らなかった。
そしてハヴィを気にして視線を合わせられない団長が、オルトを見るしかなかったことも。
美味しいご飯をたらふく食べたオルトが、お腹いっぱいで何も考えてなかったことも、ハヴィは全く気が付いてなかったのだった。
ここで誰も思いつかない、大きな勘違いがハヴィの中で生まれてしまう。
団長は実はオルトが好きなんじゃないかと。
そしてオルトももしや団長に淡い恋心を抱いているんじゃないかと。
壮大な勘違いから、どんどん話はずれていくのをこの時は誰も知らなかっただろう。
そんな時、アンセルと王太子の婚約式の会場警備の準備をしていると、団長に呼び止められる。
『ちょっと大事な話があるから、いいか?』と。
大事な話だと?もしや団長はオルトに告白するのか!?
ニヨニヨだらしない笑みを浮かべハヴィは元気よく返事をし、団長についていく。
会場を左に行くと小さな東屋のある庭園に出る。
今日はここは使わないので、人も少ない。
遠くでうちの騎士団の警備チームが、真面目な顔で打ち合わせをしているのが見えた。
よしよし頑張っているなと眺めていると、団長がいきなり自分の前にひざまづいたのだ。
「ハヴィ……これを。」
あたりをキョロキョロしていたハヴィの前に小さな四角い箱が差し出された。
「これは……?」
思わず受け取って中を見ると、金色の指輪が二つ入っていた。
「団長、これまさか……?」
団長よ、オルトに告白と同時にプロポーズする気か。
早いよ展開早すぎる。
えーまずは付き合ってからじゃないのかこういうのは。
あ、でも団長もう28だし結婚急いでんのかな、とか一人で考え込んでいた。
ふと団長の視線に気がついて顔を上げる。
もしや団長は恥ずかしがり屋さんなのかな?
これを俺に見せるということは、俺にオルトへ橋渡しをしてくれ、ということなんだろうか?
じっとハヴィを見つめる団長が、ゆっくりと頷いた。
「これ、俺が……(オルトに渡すん)ですか?」
「そうだ、キミだ。私は(結婚相手は)キミしか考えてないんだ。」
団長もハニカミながら頷いた。
その覚悟を見て、ハヴィは微笑む。
「……わかりました。俺、嬉しいです(オルトに婚約者ができるなんて)」
ハヴィの微笑みに、団長もほっとした表情を浮かべ、立ち上がった。
「よかったら(キミの)サイズを確かめるのに、指にはめてみてくれないか?もう片方は、私もはめておくとする。」
「いいですよ。(オルトと俺同じサイズなので)……わ、ピッタリです!サイズ、(オルトも)大丈夫ですよ!」
「(キミが)気に入ってくれたら嬉しい……」
「きっと(オルトも)気に入りますよ!」
「ん?きっと?」
「大丈夫ですあとは任せてください!あ、団長やばい時間過ぎてますよ!」
「すまない、キミは急いで持ち場に向かってくれ、私は一旦事務所に行く。」
「了解す!」
……っていうことなんだよ!と、ハヴィは左手をひらひらとして見せた。
その説明で全てを察した(見えた)アンセルが、盛大にため息を吐き、頭を抱えたままその場に倒れた。
「……」
右手で左手薬指を指差しながらドヤ顔で喋るハヴィに、まるで嘘つくなやと言わんばかりに、さらに目を細め眉を寄せるアンセル。
納得出来てない顔を一旦置いておいて、まあ落ち着けってとアンセルを制しながら、話を続けた。
「団長が送ってきたもんなんだけどさ。
オルトと俺指のサイズ一緒じゃん。
こないだ団長にプレゼントあげたんだけどさ。」
「プレゼントをあげただと?
……というか今キミが言った3文全てに脈略がなく、意味がわからない。
団長が送ってきた物なのに、オルトとサイズが一緒で、何でキミが団長にプレゼントあげたんだ?」と、ますます目を細め首を傾げるアンセルに、ハヴィは得意げにフフンと鼻を鳴らした。
「もーちゃんと最後まで聞けよバカアンセル!聞かないなら話さないぞ?」
若干イラついてきたハヴィを見て、拗ねたように口を尖らせ黙り込んだ。
よしよし、では話を続けますよ、と。いい子いい子と、水色の大型犬を落ち着かせた。
「こないだお前にあげるって言ってたカフスあるじゃん?」
「あれもしかして、あげちゃったの!?」
「だから別の新しいのあげたじゃん!」
「どっちもくれたらよかったのに!」
うわっと叫ぶと、ベッドにうつ伏せるアンセル。
ガチで泣いたりはしてなさそうだけど、これは後々面倒くさい事になりそうな?とか思いつつ、流石にヤバいと思い直し、言い訳に切り替えた。
「でもあん時喧嘩したじゃん。お前の態度にムカついてその勢いで団長にあげちゃったから、新しく作り直して、もっといいやつ渡したじゃん。」
「でも私にくれようとしたのを誰かにあげるとか……」
「お前が悪いんだからもうそれはいいじゃん。」
「確かに私が悪かったんだけど……」
最近できた趣味というか、流行と金儲けに敏感な姉達につられて、アクセサリー作りにはまっているハヴィ。
大体どっちかの姉がハマるともう一方の姉もハマるので、絶対的に自分も巻き込まれる。
大概すぐ飽きて放置することが多いんだけど、アクセサリー作りに関してはハヴィ自身がメチャクチャハマってしまったのだった。
それでアンセルに作ってあげると約束したのだが、その前にアンセルと喧嘩をしてしまった。
原因は些細なことだったのだが、アンセルがハヴィとの約束を破ったことが原因。
それにも王太子が関係しているのだが、そんなの知ったこっちゃない。
約束をすっぽかされ怒ったハヴィは、遅れて来ると言っていたアンセルを放置し、そのまま仕事に行ってしまったのだ。
その時にちょうどいた団長に押し付けた、という流れだった。
押し付けた物だったのに、団長はびっくりするぐらい喜んでいた。
そんなに喜んでくれるならあげてよかったかなと思っていたが、なんであそこまで喜んでいたのか、未だに謎だった。
そんな事があってからか『お礼』と称してよく団長からご飯を誘われる事が多くなる。
でもハヴィとしては団長は憧れた人だったが、流石に上司と二人きりで食事とか気が引けたので、オルトも誘って3人で会っていた。
そのまま3人でよく食事に行くようになってから、何だかオルトが団長をよく見てるなぁと気がついて。あれそういえば、話をしていると二人の視線がよくぶつかる事も多いな、と。
ぶつかった後に照れたように笑う二人もまんざらじゃないように見えていたのだ。
ま、まさか二人って!?
こういう恋愛話に鈍いと言われているハヴィでも気がついたこの変化に、余計な横槍は入れずに見守ろうと心に誓った。
自分から見てもオルトと団長はお似合いだなと思っていた。
二人が付き合うようになったら嬉しいなぁ。
オルトは内気で奥手なところがあるから、俺が協力してやらなければと。
ハヴィは勝手にそんな事を思っていたのだった。
なので勿論、ハヴィはまさかプレゼントを押し付けた日が団長の誕生日だとは知らなかった。
そしてハヴィを気にして視線を合わせられない団長が、オルトを見るしかなかったことも。
美味しいご飯をたらふく食べたオルトが、お腹いっぱいで何も考えてなかったことも、ハヴィは全く気が付いてなかったのだった。
ここで誰も思いつかない、大きな勘違いがハヴィの中で生まれてしまう。
団長は実はオルトが好きなんじゃないかと。
そしてオルトももしや団長に淡い恋心を抱いているんじゃないかと。
壮大な勘違いから、どんどん話はずれていくのをこの時は誰も知らなかっただろう。
そんな時、アンセルと王太子の婚約式の会場警備の準備をしていると、団長に呼び止められる。
『ちょっと大事な話があるから、いいか?』と。
大事な話だと?もしや団長はオルトに告白するのか!?
ニヨニヨだらしない笑みを浮かべハヴィは元気よく返事をし、団長についていく。
会場を左に行くと小さな東屋のある庭園に出る。
今日はここは使わないので、人も少ない。
遠くでうちの騎士団の警備チームが、真面目な顔で打ち合わせをしているのが見えた。
よしよし頑張っているなと眺めていると、団長がいきなり自分の前にひざまづいたのだ。
「ハヴィ……これを。」
あたりをキョロキョロしていたハヴィの前に小さな四角い箱が差し出された。
「これは……?」
思わず受け取って中を見ると、金色の指輪が二つ入っていた。
「団長、これまさか……?」
団長よ、オルトに告白と同時にプロポーズする気か。
早いよ展開早すぎる。
えーまずは付き合ってからじゃないのかこういうのは。
あ、でも団長もう28だし結婚急いでんのかな、とか一人で考え込んでいた。
ふと団長の視線に気がついて顔を上げる。
もしや団長は恥ずかしがり屋さんなのかな?
これを俺に見せるということは、俺にオルトへ橋渡しをしてくれ、ということなんだろうか?
じっとハヴィを見つめる団長が、ゆっくりと頷いた。
「これ、俺が……(オルトに渡すん)ですか?」
「そうだ、キミだ。私は(結婚相手は)キミしか考えてないんだ。」
団長もハニカミながら頷いた。
その覚悟を見て、ハヴィは微笑む。
「……わかりました。俺、嬉しいです(オルトに婚約者ができるなんて)」
ハヴィの微笑みに、団長もほっとした表情を浮かべ、立ち上がった。
「よかったら(キミの)サイズを確かめるのに、指にはめてみてくれないか?もう片方は、私もはめておくとする。」
「いいですよ。(オルトと俺同じサイズなので)……わ、ピッタリです!サイズ、(オルトも)大丈夫ですよ!」
「(キミが)気に入ってくれたら嬉しい……」
「きっと(オルトも)気に入りますよ!」
「ん?きっと?」
「大丈夫ですあとは任せてください!あ、団長やばい時間過ぎてますよ!」
「すまない、キミは急いで持ち場に向かってくれ、私は一旦事務所に行く。」
「了解す!」
……っていうことなんだよ!と、ハヴィは左手をひらひらとして見せた。
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