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3話 愛があれば大丈夫!
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オズワルドがいつものように書類を整理しながらクッキーの入った皿へ手を伸ばすと、指が宙をかいた。おや? と思いながら皿の方へ視線を向ければ、普段ならあるはずのクッキーがもう消えている。いつも決められた数あるはずだから、もしかして普段よりも早いペースで食べていたのだろうか?
(確かに――)
確かに書類の中にあの内容のものが少しずつ混ざるようになったし、貴族たちがオズワルドに取り入ろうと様々な報告書を上げるようになってきた。しかし、それくらいだ。あまり変わってはいない。
ううん、とオズワルドが首を傾げていると、コンコン、と扉が叩かれた。入室の許可を出す前に、レオンが大量の書類を抱えて入って来る。あまりにも毎回許可を出すのがめんどくさくなったため、許可なしでも入っても良いことにしたのだ。けれどつい数時間前にあの王女に入られたことを考えると、入り口の前に衛兵を置いて、許可がない者は入れないようにしたほうがいいかもしれない。
そんなことを考えているオズワルドの方を見ることなく、レオンは机の上に書類を置き、ふぅ、と息をついた。生まれたころからずっと自分に付き従っていたため彼もそれなりに体力はあるが、元が文官基質。それほど体力はない。
疲れたように手首を振りながら、レオンは空になった皿を見つけ、これまたおや? と首を傾げた。だけど理由を知っていたのか、納得したように頷く。
そしてそのまま部屋を去ろうとして――。
「レオン、何を知っている?」
オズワルドが声をかけた。すると彼はあからさまに肩をはね上げ、誤魔化すように笑顔を浮かべる。……気まずい沈黙が落ちた。
それを破ったのは、やけに明るい声だった。
「失礼するわ!」
数時間ぶりに聞いた声に、思わず眉を寄せた。午前中にも彼女は現れ、そしてオズワルドの集中力を削るだけ削って帰っていった。正直煩わしいので早く帰ってほしい。
はぁ、と重たいため息をつきながら、視線を先ほど入ってきた人物に向け、――首を傾げた。かの王女はなぜかメイド服を着ており、しかもその手にはカートがあったのだ。そこにはオズワルドがいつも食べているベリーのクッキーがある。
(何をやってるんだ? こいつ……)
バカだろ、と思いながらもとりあえず様子見していると、王女はこちらに近づいてきて、机の上にあった空の皿をカートの上に移動させ、代わりに持ってきた皿を乗せた。新たな皿を見つめる。正確にはその中身を。そこには――。
「……おい。なんかすっごい不味そうなのが混ざっているんだが」
皿に乗っているクッキーのうち、三分の一ほどがいつものとは違って形が崩れていて、焦げ目も均一ではなく、さらには端の方がボロボロと崩れていた。いつもと同じクッキーに混ざっていると、その酷さがより際立つ。
そのことに思わず苦言を呈すると、よくぞ聞いた、とでも言わんばかりに王女はほとんど断崖絶壁の胸を反らした。
「ふふん、それはね……私があなたへの愛をこめて作ったのよ」
「…………は?」
思わず間抜けた声を出してしまう。いや、だけど仕方がないだろう? とオズワルドは誰に対してでもなく心の中言い訳をした。一国の王女がお菓子を作るなどと、いったい誰が思うのだろうか? しかも絶品料理ならともかく、恥となるだけのものすっごい不味そうなものを。
(いや……王女ならば、というかだからこそ不味いものを作るのかもしれないが……)
――果たして、誰が自らのアピールポイントになるどころか、むしろ悪印象を抱かせるようなことをするのだろうか。特に女は醜く、他人の成果を横取りして好印象を抱かせるようにしたり、逆に失敗を押しつけたりするのに。
オズワルドは改めて王女を見つめる。彼女の瞳はキラキラと輝いていて、強い意志がそこにはあった。今まで会ったことのある女たちと同じように。
だけど……少しだけ、違和感が拭えなかった。彼女は今までの女どもとは違う。そんな予感がした。
(いやいや……何を考えているんだ、俺は)
そんなことあるはずない。女はみんな一緒だ。例外などない。そうだと分かっていても、オズワルドの中からその予感が消えることはなかった。
「あら……どうかしたの?」
思考の海に沈むのを見かねてか、王女が尋ねてきた。その問いに、ゆっくりと首を横に振る。
「……いや、何でもない」
「ふぅん、そう」
それだけ言うと、アルテシアはカートの上にあったおしぼりを取り、自らの手を軽く拭く。そして……。
「なら大丈夫ね。はい、じゃあ、あーん」
不味そうなクッキーを手で掴むと、こちらに向けて差し出してきた。
オズワルドは半眼になって彼女とクッキーをぼんやりと見つめる。……何を考えているんだ、こいつは。そんな困惑に似た思いが湧き上がる。いったい何がしたいのか、まったく分からなかった。
すると、王女が「ふっふっふ……」と不敵に笑う。
「そう。そんなに私のクッキーの出来に感激したのね。ええ、私もそうだったわ。出来上がりはちょっとイメージと違って興が削がれたけれど、食べてみると案外普通だったのよ。ちょっとべとっとしていて粉っぽいだけで、食べれなくはないもの。ということで、あーん」
「…………いやいやいや、それって一般的に不味いって言うんじゃ……」
「つべこべ言わずに食べなさいよ!」
クッキーを食べたくないがために軽くツッコミを入れていると、王女がクッキーを持った手を勢いよく口元に伸ばしてきた。慌てて口を閉じようとしたが間に合わず、歯で二つに割れたクッキーの片割れが舌の上で転がる。オズワルドは仕方なくクッキーを咀嚼した。
……あまり火が通っていないと思われる場所がいくつかあり、さらにはどこか粉っぽいが、確かに食べられなくはない。ベリージャムがたっぷりとあり、そちらに意識を集中すれば、普通に美味しい。なにせ国の特産地から届けられる、王家御用達のものだからだ。
……クッキー自体は率直に言えば不味いのだが。
渋面を浮かべながらも反論することなく食べるオズワルドを見てか、王女がぱぁ、と顔を輝かせた。そしてもっと食べろと言わんばかりにクッキーを差し出してくる。
「やめろ、不味い」
「でも食べれるでしょう?」
アルテシアの言葉に、オズワルドは押し黙った。食べれると言えば食べれるが……そもそもなぜ、彼女はこんなにも嬉しそうに手製のクッキーを食べさせようとするのだろう? こんなの食べさせたら普通は嫌われるだろうに。
(だが……)
――彼女の瞳を見ていると、不思議と嫌いにはなれそうになかった。
(って何を考えているんだ!?)
嫌いになれそうにないなんて……女なんてみんな一緒なのに……。
そんなことをオズワルドが考えていると、王女が突然「あっ!」と声を出した。顔を上げれば、彼女は机の上にある空になったティーカップを見ていた。そしてそれもカートに載せると、「では、侍女の方に紅茶を入れてもらうよう言ってきますね」とだけ残してそそくさと部屋を出て行く。パタリ、と乾いた音が耳朶を打った。
「行ってしまいましたね」
そんな声が聞こえて、オズワルドはそちらを向いた。そういえば忘れていたのだが、レオンが部屋の中にいたのだ。壁の花のように部屋の隅で気配を殺して、ずっと二人のやりとりを見ていたからか、なぜか彼にしては珍しいことにニヤニヤと笑っている。どことなく居心地が悪くて、身じろぎをした。
レオンが言った。
「アルテシア姫は料理なんてやったことないのに、あなた様のためだけに厨房で作ったのですよ。ドレスはダメだから侍女から服を借りて、丁寧に、時間をかけて。先ほどまであった皿のクッキーが少なかったのは、彼女が材料を借りたからですよ」
そう言うと、レオンは言葉を区切る。そしてオズワルドを見つめながら、真剣な声色で言った。
「それでも、彼女はあなた様が今まで見てきた女性たちと全く同じだと言いますか?」
オズワルドは視線をさまよわせる。
彼は前王の時代、末王子でありながら、ほかの王子とは違って将軍の地位についていた。そのため、彼の妻となれば贅沢ができるに違いない、と勝手に思った女たちが勝手に群がり、妻になれるよう様々なことを企てた。その結果、彼は女の醜いところばかりを知り、今のように女という存在を嫌悪するようになったのだ。
もちろん、例外があると分かっている。特にレオンの母である乳母は、生まれると同時に母を亡くしたオズワルドに情愛の雨を浴びせてくれたため、彼の中ではほかの女たちと一線を画していた。けれど例外なんて今のところ乳母にしか出会ったことないし、彼女だけが特別なのだと、そう思っていた。
だが――。
「違うな」
オズワルドは小さく、呟くように言う。そして気持ちを整理するように、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「あいつは、そんなんじゃない。あいつは、女性である前に――」
レオンが瞳を輝かせた。しかし、その光はすぐに消え失せることとなる。
「――変人だ」
大きなため息が、オズワルドの鼓膜を揺らした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ユイリア、私やったわよ!」
そう言いながら、アルテシアはユイリアの待機していた客室に駆けこんだ。すでに他の王宮の侍女にオズワルドの部屋へ紅茶を持っていくように伝え、皿とかも厨房に届けたため、その手にカートはない。
ふんふんと鼻歌でも歌っていると、ユイリアがいつもの無表情で尋ねてくる。
「本当ですか?」
「本当よ! ちゃんと口の中に入るところをこの目で見たのだから!」
そう言って、アルテシアは胸を反らした。
本来の計画ではいつもの美味しさを凌ぐほどのクッキーを作って、「これを作ったのは誰だ?」とオズワルドが言った直後にネタばらしをする、というものだったが、それほど美味しくはなかったため自らがオズワルドの部屋に届ける、というものにシフトした。そのおかげでちゃんと食べてもらえたし、仲も深められたはずだから、今日はこれで十分だろう。
ふふ、と自分に酔いしれながら笑っていると、「まぁ、もう過ぎたことですから置いとくとして、」とユイリアが言った。
「次の作戦ですが、こんなものはどうでしょう?」
(確かに――)
確かに書類の中にあの内容のものが少しずつ混ざるようになったし、貴族たちがオズワルドに取り入ろうと様々な報告書を上げるようになってきた。しかし、それくらいだ。あまり変わってはいない。
ううん、とオズワルドが首を傾げていると、コンコン、と扉が叩かれた。入室の許可を出す前に、レオンが大量の書類を抱えて入って来る。あまりにも毎回許可を出すのがめんどくさくなったため、許可なしでも入っても良いことにしたのだ。けれどつい数時間前にあの王女に入られたことを考えると、入り口の前に衛兵を置いて、許可がない者は入れないようにしたほうがいいかもしれない。
そんなことを考えているオズワルドの方を見ることなく、レオンは机の上に書類を置き、ふぅ、と息をついた。生まれたころからずっと自分に付き従っていたため彼もそれなりに体力はあるが、元が文官基質。それほど体力はない。
疲れたように手首を振りながら、レオンは空になった皿を見つけ、これまたおや? と首を傾げた。だけど理由を知っていたのか、納得したように頷く。
そしてそのまま部屋を去ろうとして――。
「レオン、何を知っている?」
オズワルドが声をかけた。すると彼はあからさまに肩をはね上げ、誤魔化すように笑顔を浮かべる。……気まずい沈黙が落ちた。
それを破ったのは、やけに明るい声だった。
「失礼するわ!」
数時間ぶりに聞いた声に、思わず眉を寄せた。午前中にも彼女は現れ、そしてオズワルドの集中力を削るだけ削って帰っていった。正直煩わしいので早く帰ってほしい。
はぁ、と重たいため息をつきながら、視線を先ほど入ってきた人物に向け、――首を傾げた。かの王女はなぜかメイド服を着ており、しかもその手にはカートがあったのだ。そこにはオズワルドがいつも食べているベリーのクッキーがある。
(何をやってるんだ? こいつ……)
バカだろ、と思いながらもとりあえず様子見していると、王女はこちらに近づいてきて、机の上にあった空の皿をカートの上に移動させ、代わりに持ってきた皿を乗せた。新たな皿を見つめる。正確にはその中身を。そこには――。
「……おい。なんかすっごい不味そうなのが混ざっているんだが」
皿に乗っているクッキーのうち、三分の一ほどがいつものとは違って形が崩れていて、焦げ目も均一ではなく、さらには端の方がボロボロと崩れていた。いつもと同じクッキーに混ざっていると、その酷さがより際立つ。
そのことに思わず苦言を呈すると、よくぞ聞いた、とでも言わんばかりに王女はほとんど断崖絶壁の胸を反らした。
「ふふん、それはね……私があなたへの愛をこめて作ったのよ」
「…………は?」
思わず間抜けた声を出してしまう。いや、だけど仕方がないだろう? とオズワルドは誰に対してでもなく心の中言い訳をした。一国の王女がお菓子を作るなどと、いったい誰が思うのだろうか? しかも絶品料理ならともかく、恥となるだけのものすっごい不味そうなものを。
(いや……王女ならば、というかだからこそ不味いものを作るのかもしれないが……)
――果たして、誰が自らのアピールポイントになるどころか、むしろ悪印象を抱かせるようなことをするのだろうか。特に女は醜く、他人の成果を横取りして好印象を抱かせるようにしたり、逆に失敗を押しつけたりするのに。
オズワルドは改めて王女を見つめる。彼女の瞳はキラキラと輝いていて、強い意志がそこにはあった。今まで会ったことのある女たちと同じように。
だけど……少しだけ、違和感が拭えなかった。彼女は今までの女どもとは違う。そんな予感がした。
(いやいや……何を考えているんだ、俺は)
そんなことあるはずない。女はみんな一緒だ。例外などない。そうだと分かっていても、オズワルドの中からその予感が消えることはなかった。
「あら……どうかしたの?」
思考の海に沈むのを見かねてか、王女が尋ねてきた。その問いに、ゆっくりと首を横に振る。
「……いや、何でもない」
「ふぅん、そう」
それだけ言うと、アルテシアはカートの上にあったおしぼりを取り、自らの手を軽く拭く。そして……。
「なら大丈夫ね。はい、じゃあ、あーん」
不味そうなクッキーを手で掴むと、こちらに向けて差し出してきた。
オズワルドは半眼になって彼女とクッキーをぼんやりと見つめる。……何を考えているんだ、こいつは。そんな困惑に似た思いが湧き上がる。いったい何がしたいのか、まったく分からなかった。
すると、王女が「ふっふっふ……」と不敵に笑う。
「そう。そんなに私のクッキーの出来に感激したのね。ええ、私もそうだったわ。出来上がりはちょっとイメージと違って興が削がれたけれど、食べてみると案外普通だったのよ。ちょっとべとっとしていて粉っぽいだけで、食べれなくはないもの。ということで、あーん」
「…………いやいやいや、それって一般的に不味いって言うんじゃ……」
「つべこべ言わずに食べなさいよ!」
クッキーを食べたくないがために軽くツッコミを入れていると、王女がクッキーを持った手を勢いよく口元に伸ばしてきた。慌てて口を閉じようとしたが間に合わず、歯で二つに割れたクッキーの片割れが舌の上で転がる。オズワルドは仕方なくクッキーを咀嚼した。
……あまり火が通っていないと思われる場所がいくつかあり、さらにはどこか粉っぽいが、確かに食べられなくはない。ベリージャムがたっぷりとあり、そちらに意識を集中すれば、普通に美味しい。なにせ国の特産地から届けられる、王家御用達のものだからだ。
……クッキー自体は率直に言えば不味いのだが。
渋面を浮かべながらも反論することなく食べるオズワルドを見てか、王女がぱぁ、と顔を輝かせた。そしてもっと食べろと言わんばかりにクッキーを差し出してくる。
「やめろ、不味い」
「でも食べれるでしょう?」
アルテシアの言葉に、オズワルドは押し黙った。食べれると言えば食べれるが……そもそもなぜ、彼女はこんなにも嬉しそうに手製のクッキーを食べさせようとするのだろう? こんなの食べさせたら普通は嫌われるだろうに。
(だが……)
――彼女の瞳を見ていると、不思議と嫌いにはなれそうになかった。
(って何を考えているんだ!?)
嫌いになれそうにないなんて……女なんてみんな一緒なのに……。
そんなことをオズワルドが考えていると、王女が突然「あっ!」と声を出した。顔を上げれば、彼女は机の上にある空になったティーカップを見ていた。そしてそれもカートに載せると、「では、侍女の方に紅茶を入れてもらうよう言ってきますね」とだけ残してそそくさと部屋を出て行く。パタリ、と乾いた音が耳朶を打った。
「行ってしまいましたね」
そんな声が聞こえて、オズワルドはそちらを向いた。そういえば忘れていたのだが、レオンが部屋の中にいたのだ。壁の花のように部屋の隅で気配を殺して、ずっと二人のやりとりを見ていたからか、なぜか彼にしては珍しいことにニヤニヤと笑っている。どことなく居心地が悪くて、身じろぎをした。
レオンが言った。
「アルテシア姫は料理なんてやったことないのに、あなた様のためだけに厨房で作ったのですよ。ドレスはダメだから侍女から服を借りて、丁寧に、時間をかけて。先ほどまであった皿のクッキーが少なかったのは、彼女が材料を借りたからですよ」
そう言うと、レオンは言葉を区切る。そしてオズワルドを見つめながら、真剣な声色で言った。
「それでも、彼女はあなた様が今まで見てきた女性たちと全く同じだと言いますか?」
オズワルドは視線をさまよわせる。
彼は前王の時代、末王子でありながら、ほかの王子とは違って将軍の地位についていた。そのため、彼の妻となれば贅沢ができるに違いない、と勝手に思った女たちが勝手に群がり、妻になれるよう様々なことを企てた。その結果、彼は女の醜いところばかりを知り、今のように女という存在を嫌悪するようになったのだ。
もちろん、例外があると分かっている。特にレオンの母である乳母は、生まれると同時に母を亡くしたオズワルドに情愛の雨を浴びせてくれたため、彼の中ではほかの女たちと一線を画していた。けれど例外なんて今のところ乳母にしか出会ったことないし、彼女だけが特別なのだと、そう思っていた。
だが――。
「違うな」
オズワルドは小さく、呟くように言う。そして気持ちを整理するように、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「あいつは、そんなんじゃない。あいつは、女性である前に――」
レオンが瞳を輝かせた。しかし、その光はすぐに消え失せることとなる。
「――変人だ」
大きなため息が、オズワルドの鼓膜を揺らした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ユイリア、私やったわよ!」
そう言いながら、アルテシアはユイリアの待機していた客室に駆けこんだ。すでに他の王宮の侍女にオズワルドの部屋へ紅茶を持っていくように伝え、皿とかも厨房に届けたため、その手にカートはない。
ふんふんと鼻歌でも歌っていると、ユイリアがいつもの無表情で尋ねてくる。
「本当ですか?」
「本当よ! ちゃんと口の中に入るところをこの目で見たのだから!」
そう言って、アルテシアは胸を反らした。
本来の計画ではいつもの美味しさを凌ぐほどのクッキーを作って、「これを作ったのは誰だ?」とオズワルドが言った直後にネタばらしをする、というものだったが、それほど美味しくはなかったため自らがオズワルドの部屋に届ける、というものにシフトした。そのおかげでちゃんと食べてもらえたし、仲も深められたはずだから、今日はこれで十分だろう。
ふふ、と自分に酔いしれながら笑っていると、「まぁ、もう過ぎたことですから置いとくとして、」とユイリアが言った。
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