1 / 6
第01話 大嫌いなアイツ
しおりを挟む
「そっか。またあんた吉岡部長を怒らせたんだ」
「違うわよ!…あの鬼部長、私にばっか仕事押しつけるから!!」
会社のカフェでランチをしながら愚痴を聞いてくれるのは、同期で仲のいい美好。会社内ではこの場所、この時間だけが私の癒しだ。
「それは部長があんたに期待しているからじゃない?」
「それはないわよ。 だってアイツ、私にだけなんか態度違うもの」
「気にしてくれてるんじゃない?」
美好はスマートフォンをいじりながら答えてくれる。
「そういう感じじゃないのよ。…やっぱり私のこと嫌いなのかしら…」
「なんだ、あんたも部長のこと気になってるんじゃない」
美好は顔を上げてニッと笑った。
「…まぁ、恋愛対象としてではなく、日々の安息を奪う嫌な相手としては意識しているわ」
「へぇ??…。でも私はあんたと部長お似合いだと思うわよ?」
美好はニヤニヤと笑いながら続ける。彼女は恋愛トークが大好きなのだ。
「だって、吉岡部長、カッコいいし、頼りがいありそうだし、社長の次男だし、あの若さで部長なんてしてるんだもの。きっとお金の方も…」
「イヤらしいわよ、美好。…それに私は、家事が出来て、優しくて健康で頭もよくて、容姿も良くて私をだ・い・じに扱ってくれる人が好みなの!」
「…茉莉、あんた男に夢見すぎ。そんなんだから彼氏もできないのよ。それに、そんな男存在しているならお目にかかりたいわ」
「とにかく、あんな横暴で自分のことなーんにもできなそうで目付きも口も悪い男なんてありえないのよ!」
一気にまくしたて、机をバンと叩いた時、美好が私の後ろを見て、明かに顔を青くした
「何? どうした…あ」
振り向いて見ると、鬼の形相をした部長が仁王立ちをしてこちらを凝視していた。
「茉莉、私この後彼氏と待ち合わせしてるんだった。もう行かないと! じゃ、ごゆっくり!」
「ちょっ…逃げるなんて卑怯よ!」
言い終わるか終わらないかのうちに美好はおぼんを持って、早足で退出していった。
再びそっーと部長のいる方向に身体を向けると、彼は営業用のさわやかな笑みの中にドス黒い怒りをにじませたなんとも…いや、とても怖い顔をして私を見つめていた
「…こんなところで上司の悪口か。佐倉」
「………すみません」
嫌な汗がだらだらと流れるのを感じる
「…お望み通り、仕事、増やしてやろうか?」
「すみません。 それだけは本当にやめてください」
「…まったく。…そんなに俺を悪く言いたいなら、もっと仕事が出来るようになってから言え。」
「はい…」
「あ、それと」
部長は一旦背を向けるが、またこちらを見て、ずかずかと近づき、耳元で囁いた
「…俺もお前なんて全然タイプじゃないから、安心しろ」
そして、言い返す間もなく部長はエレベーターの中へと消えていった
「あー。思い出すだけでイライラするわ!あんの鬼部長め…」
仕事中もずっと昼のあの出来事が頭の中をかすめて、全然集中が出来なかった。帰りの電車でも、もう少しで乗り過ごすところだった。今も、一度家を通りすぎてしまったほどだ。
「……ただいまー」
元気のない声で玄関に入ると、リビングから父母が飛びだしてきた
「茉莉!! 待ってたのよ!」
「早く中に入ってくれ。 話があるんだ!」
ただならぬ両親の様子に、先程まで感じていた怒りはすっと消え、嫌な予感が胸をよぎった
「で、話って?」
スーツ姿のまま、リビングの椅子にテーブルを挟んで両親と向き合って座る。
「……実は…」
父は眼鏡の奥に涙を隠し、肩を震わせながら先の言葉を伝えようと口をぱくぱくさせている
「頑張って!陽くん!」
そんなお父さんをお母さんが励ます
「ありがとう、紗希ちゃん!……よし、話すぞ!」
うちの両親はお互い名前呼びしているが、そんなことは今はどうでもいい。父と母は娘の前なのに手をぎゅっと握りしめ合っている
「いいよ、話して」
大体内容は分かるが、あえて聞くことにした
「…実は……父さんの会社が倒産してしまったんだ。」
「そっか」
やっぱり、と納得してしまう。お父さんは小さい会社の社長で、最近借金の連帯保証人になり、あげくのはてに保証した相手に逃げられたのだ。
私が普通にしているのを見てか、父さんたちが唖然としている
「…茉莉、父さんの渾身のギャグをスルーするなんて…。」
父さんは驚きに満ちた顔をする
「ギャグなんて言った?」
父さんの会社が倒産した…まさか!とうさんをかけている…?
「気付かなかったのか?」
「いや…しょうもないわ!…こんな時にギャグなんて…」
「いや、こんな時だからよ。茉莉、あなたが落ち込まないように…」
お母さんはやつれた顔で微笑む
「それで、どうするの?これから。私の稼ぎだけじゃ借金は返せないわよ」
私がそう告げると、二人は気まずそうな顔をする
「茉莉には……お見合いをしてもらおうと思う」
「はぁ!?誰と」
唐突に言われた言葉に驚きを隠せず、大声を出してしまう
「…お前と結婚したいっていう物好きな金持ちがたくさんいるんだよ」
「物好き…?いやいや、それ、どういうことよ!」
「ゴルフ仲間の社長さんたちにな、お前の写真を見せたら、息子の嫁にぜひって言ってくれる人が結構いたってことだ」
「待ってよ!何勝手にやってくれてんのよ!私、そんなのっ…!」
「勿論、お前がお見合いをしてみて一人も合う人がいないっていうなら、お父さんがな、なんとかしよう」
「お見合いすることはもう決まっているのね…」
「…ごめんな。茉莉、父さんが不甲斐ないばかりに」
お父さんはまるで叱られた小さな子供のように、しょんぼりとしている
「……分かった。お見合いくらいならするわよ」
私がそう言うと、二人はホッとしたようにお互いにみつめあった。
「違うわよ!…あの鬼部長、私にばっか仕事押しつけるから!!」
会社のカフェでランチをしながら愚痴を聞いてくれるのは、同期で仲のいい美好。会社内ではこの場所、この時間だけが私の癒しだ。
「それは部長があんたに期待しているからじゃない?」
「それはないわよ。 だってアイツ、私にだけなんか態度違うもの」
「気にしてくれてるんじゃない?」
美好はスマートフォンをいじりながら答えてくれる。
「そういう感じじゃないのよ。…やっぱり私のこと嫌いなのかしら…」
「なんだ、あんたも部長のこと気になってるんじゃない」
美好は顔を上げてニッと笑った。
「…まぁ、恋愛対象としてではなく、日々の安息を奪う嫌な相手としては意識しているわ」
「へぇ??…。でも私はあんたと部長お似合いだと思うわよ?」
美好はニヤニヤと笑いながら続ける。彼女は恋愛トークが大好きなのだ。
「だって、吉岡部長、カッコいいし、頼りがいありそうだし、社長の次男だし、あの若さで部長なんてしてるんだもの。きっとお金の方も…」
「イヤらしいわよ、美好。…それに私は、家事が出来て、優しくて健康で頭もよくて、容姿も良くて私をだ・い・じに扱ってくれる人が好みなの!」
「…茉莉、あんた男に夢見すぎ。そんなんだから彼氏もできないのよ。それに、そんな男存在しているならお目にかかりたいわ」
「とにかく、あんな横暴で自分のことなーんにもできなそうで目付きも口も悪い男なんてありえないのよ!」
一気にまくしたて、机をバンと叩いた時、美好が私の後ろを見て、明かに顔を青くした
「何? どうした…あ」
振り向いて見ると、鬼の形相をした部長が仁王立ちをしてこちらを凝視していた。
「茉莉、私この後彼氏と待ち合わせしてるんだった。もう行かないと! じゃ、ごゆっくり!」
「ちょっ…逃げるなんて卑怯よ!」
言い終わるか終わらないかのうちに美好はおぼんを持って、早足で退出していった。
再びそっーと部長のいる方向に身体を向けると、彼は営業用のさわやかな笑みの中にドス黒い怒りをにじませたなんとも…いや、とても怖い顔をして私を見つめていた
「…こんなところで上司の悪口か。佐倉」
「………すみません」
嫌な汗がだらだらと流れるのを感じる
「…お望み通り、仕事、増やしてやろうか?」
「すみません。 それだけは本当にやめてください」
「…まったく。…そんなに俺を悪く言いたいなら、もっと仕事が出来るようになってから言え。」
「はい…」
「あ、それと」
部長は一旦背を向けるが、またこちらを見て、ずかずかと近づき、耳元で囁いた
「…俺もお前なんて全然タイプじゃないから、安心しろ」
そして、言い返す間もなく部長はエレベーターの中へと消えていった
「あー。思い出すだけでイライラするわ!あんの鬼部長め…」
仕事中もずっと昼のあの出来事が頭の中をかすめて、全然集中が出来なかった。帰りの電車でも、もう少しで乗り過ごすところだった。今も、一度家を通りすぎてしまったほどだ。
「……ただいまー」
元気のない声で玄関に入ると、リビングから父母が飛びだしてきた
「茉莉!! 待ってたのよ!」
「早く中に入ってくれ。 話があるんだ!」
ただならぬ両親の様子に、先程まで感じていた怒りはすっと消え、嫌な予感が胸をよぎった
「で、話って?」
スーツ姿のまま、リビングの椅子にテーブルを挟んで両親と向き合って座る。
「……実は…」
父は眼鏡の奥に涙を隠し、肩を震わせながら先の言葉を伝えようと口をぱくぱくさせている
「頑張って!陽くん!」
そんなお父さんをお母さんが励ます
「ありがとう、紗希ちゃん!……よし、話すぞ!」
うちの両親はお互い名前呼びしているが、そんなことは今はどうでもいい。父と母は娘の前なのに手をぎゅっと握りしめ合っている
「いいよ、話して」
大体内容は分かるが、あえて聞くことにした
「…実は……父さんの会社が倒産してしまったんだ。」
「そっか」
やっぱり、と納得してしまう。お父さんは小さい会社の社長で、最近借金の連帯保証人になり、あげくのはてに保証した相手に逃げられたのだ。
私が普通にしているのを見てか、父さんたちが唖然としている
「…茉莉、父さんの渾身のギャグをスルーするなんて…。」
父さんは驚きに満ちた顔をする
「ギャグなんて言った?」
父さんの会社が倒産した…まさか!とうさんをかけている…?
「気付かなかったのか?」
「いや…しょうもないわ!…こんな時にギャグなんて…」
「いや、こんな時だからよ。茉莉、あなたが落ち込まないように…」
お母さんはやつれた顔で微笑む
「それで、どうするの?これから。私の稼ぎだけじゃ借金は返せないわよ」
私がそう告げると、二人は気まずそうな顔をする
「茉莉には……お見合いをしてもらおうと思う」
「はぁ!?誰と」
唐突に言われた言葉に驚きを隠せず、大声を出してしまう
「…お前と結婚したいっていう物好きな金持ちがたくさんいるんだよ」
「物好き…?いやいや、それ、どういうことよ!」
「ゴルフ仲間の社長さんたちにな、お前の写真を見せたら、息子の嫁にぜひって言ってくれる人が結構いたってことだ」
「待ってよ!何勝手にやってくれてんのよ!私、そんなのっ…!」
「勿論、お前がお見合いをしてみて一人も合う人がいないっていうなら、お父さんがな、なんとかしよう」
「お見合いすることはもう決まっているのね…」
「…ごめんな。茉莉、父さんが不甲斐ないばかりに」
お父さんはまるで叱られた小さな子供のように、しょんぼりとしている
「……分かった。お見合いくらいならするわよ」
私がそう言うと、二人はホッとしたようにお互いにみつめあった。
0
あなたにおすすめの小説
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。
まさかあの彼と、こんな関係になるなんて思いもしない。
今日は同期飲み会だった。
後輩のミスで行けたのは本当に最後。
飲み足りないという私に彼は付き合ってくれた。
彼とは入社当時、部署は違ったが同じ仕事に携わっていた。
きっとあの頃のわたしは、彼が好きだったんだと思う。
けれど仕事で負けたくないなんて私のちっぽけなプライドのせいで、その一線は越えられなかった。
でも、あれから変わった私なら……。
******
2021/05/29 公開
******
表紙 いもこは妹pixivID:11163077
旦那様の愛が重い
おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。
毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。
他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。
甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。
本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる