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第02話 お見合い
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昨日はついお見合いをするって言ってしまったけど、本音を言うともちろんしたくない。
だってお見合いをするくらいだよ?いくらお金持ちなんていっても、相手はその他になんの取り柄もないただのぼんぼんに決まっている。それに、私には好きな人がいる
「まったく…私の両親は頭のネジが緩いのかしら。 普通、借金の連帯保証人になんかならないわよね。 本当にお人好しなんだから!それに、自分がやったことなんだから、自分で責任とって何とかしなさいよ!人を巻き込むなっ!…あ、ごめんなさい」
ブツブツと呟きながら会社内を歩いていると、誰かにぶつかってしまった
「こちらこそ…ん?君は佐倉さんじゃないか!朝から会えるなんて奇遇だね」
「よ、吉岡さん!おはようございます」
彼の名前は吉岡秀。あの鬼部長の兄で、この会社の社長の長男だ。吉岡さんは弟と違い、優しくて紳士的な人。そして、私の片思いの相手でもある
「あぁ、おはよう。…それにしても浮かない顔をしているね。何かあったの?」
「あ、いえ。大丈夫です。ご心配をおかけして申し訳ないです…」
「そう?…それならいいけど。じゃあ、また」
「はい!」
本ッ当に優しい。自分の部下でもないのに、何かあると気づいて心配してくれる。アイツは私がどんなに悩んだりしていても気にしないだろう。…吉岡さんは今こそ次期社長になるため、現社長の秘書をしているが、その前は営業課で素晴らしい業績を挙げていたらしい
「あぁ、好きな人に会えるだけで、何故こんな幸せな気持ちになれるんだろう」
さっきまでの嫌な気持ちは彼の爽やかな笑顔で一瞬にして吹き飛ばされてしまった
「佐倉、この資料間違いが何ヵ所かある。 付箋貼っといたから直せ。後、昨日渡した書類の整理は出来たか?」
幸せな気持ちのまま、仕事をしていたのに、目の前に現れた人物のせいで、一気にテンションが落ちてしまった。顔を見るだけでここまで気分を落ち込ませられるのはもはや才能だと思う
「…おはようございます、部長。わざわざ直してくださったんですね、ありがとうございます。 …書類の整理は終わっていますよ。」
資料を受け取り、書類を差し出しながら部長を見つめる。 やっぱり、兄弟なだけに顔だけは少しだけ似ているのよね
「…人の顔をジロジロ見てる暇があったら、仕事しろ。」
「…はーい」
部長はそう言って、私を一瞥すると、自分のデスクに戻っていった
「…ただいま…え?どこかに行くの?」
家に帰ると、両親がよそ行きの格好をして玄関で待ち伏せしていたので、何事かと思っていたら、母が話してくれた
「いきなり貴女のお見合いが今日に決まってね。…この後、とくに用事ないでしょう?」
「まぁ…。でも、それにしても急すぎない?」
「私もそう思うのだけど…先方の方がどうしても早く貴女に会いたいっていうものだから…」
「えぇ?」
「とりあえず、この服に着替えて。お待ちさせるわけには行かないから、急ぐのよ」
「あ、うん」
まだ帰ってきたばかりなのに、すぐに着替えさせられ、髪型も綺麗にセットし、親子三人で車に乗り込む
「ねぇ、今日のお見合いの相手ってどんな人?」
「父さんの知り合いの社長の三十代の息子さんだよ。 茉莉の見合い写真を見て、一目惚れしたらしい」
「へぇ…」
三十代って…。まぁ、吉岡さんも今年三十になるって言ってたし…そう変わらないか
「茉莉、相手がどんな人でも、丁寧に応対するのよ?」
「分かってるわよ」
古風な老舗風の店は、よくドラマに出てくるような、まさにお見合い!という感じのところだった
中に入ると、店の人がある個室の前に案内してくれた
部屋の中には、すでにお相手とその家族らしき人が座っていた
「遅くなってすみません」
「いえ。 こちらがいきなり連絡をしてしまいましたから」
「それにしてもお久しぶりですな、川崎さん」
「そうですね、佐倉さん。どうぞ、おかけになって下さい」
お父さんたちの挨拶が終わり、私たちも腰を下ろす
「はじめまして」
「あ…はじめまして」
お見合いの相手に話しかけられ、初めてその人をよく見た
決していい男というわけではないが、センスのいい服に身を包み優しそうな笑みを浮かべている
「…茉莉さん、と呼ばせてもらってもいいですか?」
「はい」
「僕のことは貴幸と」
「貴幸さんですね」
私が名前を繰り返すと、嬉しそうに「はい」と答えてくれた
「じゃあ、後は若い二人に任せて我々は隣の部屋で待っていましょうか」
「そうですね」
…いや、待って!初対面の人と二人きりとか、無理だから!
私の心の叫びなど両家族は完全に無視して、ぞろぞろと部屋から出ていく
「……茉莉さんは、趣味とかありますか?」
「えぇ。読書と映画鑑賞はよくします」
「偶然ですね、僕もどちらも好きです!オススメの本はありますか?」
「今一番のオススメは………」
何故か意気投合してしまい、両親たちが帰ってくるまで私たちは語りあった
「それでどうだったの?初めてのお見合いは」
社内のいつものカフェで、美好はニヤニヤしながら質問してくる。彼女にはメールでお見合いのことを相談していたのだ
「…結構楽しかったわ」
「へぇー?いい男なの?」
「優しそうな人だったかな」
「優しいなら、一生あんたのこと、大事にしてくれるんじゃない?」
「うん…」
「浮かない顔ね。…お見合いまでしたけど、やっぱり吉岡さんがいいってか?」
「……なんで分かったの?」
「さぁ?なんででしょう。 」
「……」
「まぁ、あんたと付き合い長いからね」
美好の言葉に頷きながらふと近くのエレベーターが開くのを見ていると、中から部長が出てきた。パッと目が合い、慌てて反らす
「どうかした?」
美好は私の見ていた方向を振り返り、「あぁ…そういうこと」と呟いた
だってお見合いをするくらいだよ?いくらお金持ちなんていっても、相手はその他になんの取り柄もないただのぼんぼんに決まっている。それに、私には好きな人がいる
「まったく…私の両親は頭のネジが緩いのかしら。 普通、借金の連帯保証人になんかならないわよね。 本当にお人好しなんだから!それに、自分がやったことなんだから、自分で責任とって何とかしなさいよ!人を巻き込むなっ!…あ、ごめんなさい」
ブツブツと呟きながら会社内を歩いていると、誰かにぶつかってしまった
「こちらこそ…ん?君は佐倉さんじゃないか!朝から会えるなんて奇遇だね」
「よ、吉岡さん!おはようございます」
彼の名前は吉岡秀。あの鬼部長の兄で、この会社の社長の長男だ。吉岡さんは弟と違い、優しくて紳士的な人。そして、私の片思いの相手でもある
「あぁ、おはよう。…それにしても浮かない顔をしているね。何かあったの?」
「あ、いえ。大丈夫です。ご心配をおかけして申し訳ないです…」
「そう?…それならいいけど。じゃあ、また」
「はい!」
本ッ当に優しい。自分の部下でもないのに、何かあると気づいて心配してくれる。アイツは私がどんなに悩んだりしていても気にしないだろう。…吉岡さんは今こそ次期社長になるため、現社長の秘書をしているが、その前は営業課で素晴らしい業績を挙げていたらしい
「あぁ、好きな人に会えるだけで、何故こんな幸せな気持ちになれるんだろう」
さっきまでの嫌な気持ちは彼の爽やかな笑顔で一瞬にして吹き飛ばされてしまった
「佐倉、この資料間違いが何ヵ所かある。 付箋貼っといたから直せ。後、昨日渡した書類の整理は出来たか?」
幸せな気持ちのまま、仕事をしていたのに、目の前に現れた人物のせいで、一気にテンションが落ちてしまった。顔を見るだけでここまで気分を落ち込ませられるのはもはや才能だと思う
「…おはようございます、部長。わざわざ直してくださったんですね、ありがとうございます。 …書類の整理は終わっていますよ。」
資料を受け取り、書類を差し出しながら部長を見つめる。 やっぱり、兄弟なだけに顔だけは少しだけ似ているのよね
「…人の顔をジロジロ見てる暇があったら、仕事しろ。」
「…はーい」
部長はそう言って、私を一瞥すると、自分のデスクに戻っていった
「…ただいま…え?どこかに行くの?」
家に帰ると、両親がよそ行きの格好をして玄関で待ち伏せしていたので、何事かと思っていたら、母が話してくれた
「いきなり貴女のお見合いが今日に決まってね。…この後、とくに用事ないでしょう?」
「まぁ…。でも、それにしても急すぎない?」
「私もそう思うのだけど…先方の方がどうしても早く貴女に会いたいっていうものだから…」
「えぇ?」
「とりあえず、この服に着替えて。お待ちさせるわけには行かないから、急ぐのよ」
「あ、うん」
まだ帰ってきたばかりなのに、すぐに着替えさせられ、髪型も綺麗にセットし、親子三人で車に乗り込む
「ねぇ、今日のお見合いの相手ってどんな人?」
「父さんの知り合いの社長の三十代の息子さんだよ。 茉莉の見合い写真を見て、一目惚れしたらしい」
「へぇ…」
三十代って…。まぁ、吉岡さんも今年三十になるって言ってたし…そう変わらないか
「茉莉、相手がどんな人でも、丁寧に応対するのよ?」
「分かってるわよ」
古風な老舗風の店は、よくドラマに出てくるような、まさにお見合い!という感じのところだった
中に入ると、店の人がある個室の前に案内してくれた
部屋の中には、すでにお相手とその家族らしき人が座っていた
「遅くなってすみません」
「いえ。 こちらがいきなり連絡をしてしまいましたから」
「それにしてもお久しぶりですな、川崎さん」
「そうですね、佐倉さん。どうぞ、おかけになって下さい」
お父さんたちの挨拶が終わり、私たちも腰を下ろす
「はじめまして」
「あ…はじめまして」
お見合いの相手に話しかけられ、初めてその人をよく見た
決していい男というわけではないが、センスのいい服に身を包み優しそうな笑みを浮かべている
「…茉莉さん、と呼ばせてもらってもいいですか?」
「はい」
「僕のことは貴幸と」
「貴幸さんですね」
私が名前を繰り返すと、嬉しそうに「はい」と答えてくれた
「じゃあ、後は若い二人に任せて我々は隣の部屋で待っていましょうか」
「そうですね」
…いや、待って!初対面の人と二人きりとか、無理だから!
私の心の叫びなど両家族は完全に無視して、ぞろぞろと部屋から出ていく
「……茉莉さんは、趣味とかありますか?」
「えぇ。読書と映画鑑賞はよくします」
「偶然ですね、僕もどちらも好きです!オススメの本はありますか?」
「今一番のオススメは………」
何故か意気投合してしまい、両親たちが帰ってくるまで私たちは語りあった
「それでどうだったの?初めてのお見合いは」
社内のいつものカフェで、美好はニヤニヤしながら質問してくる。彼女にはメールでお見合いのことを相談していたのだ
「…結構楽しかったわ」
「へぇー?いい男なの?」
「優しそうな人だったかな」
「優しいなら、一生あんたのこと、大事にしてくれるんじゃない?」
「うん…」
「浮かない顔ね。…お見合いまでしたけど、やっぱり吉岡さんがいいってか?」
「……なんで分かったの?」
「さぁ?なんででしょう。 」
「……」
「まぁ、あんたと付き合い長いからね」
美好の言葉に頷きながらふと近くのエレベーターが開くのを見ていると、中から部長が出てきた。パッと目が合い、慌てて反らす
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