部長と私のカンケイ

桜井 ミケ

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第03話 飲み会

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 何回かお見合いをしたが、みんなしっくり来ない。一生を共に添い遂げてもいいと思える相手が現れないのだ。一応今のとこ、一番良かったと思えるのはやはり最初の貴幸さんだろう。もう、借金の返済期間も近いから早く相手を決めなくてはならない。なのに、決められない。…吉岡さんと結婚したかったな
「なんて…こんな夢みたいなこと言ってられないかぁ」
 そう呟きながら、大分暗くなった空を見上げながら家への道を歩く

「!」
 のんきに進んでいると、後ろから視線を感じた気がして振り返ってみる
 しかし、周りを見渡しても人の姿は見えなかった
「…気のせいか」









 次の日、いつも通りに通勤し、美好にこの話をすると
「うん、気のせいだと思うわ。…でも、もしものことがあるかもしれないからしばらくは早く帰った方がいいかもね」
というマトモな言葉をもらった。私もそうだなーと納得したばかりなのに、こんな日に限って飲み会がある。付き合いがあるからサボれないし
 「はぁ…」
 私がため息をついていると、真後ろから声が飛んでくる
「佐倉…オフィスの士気を下げるな」
「あ、部長」
「…どうせ大した悩みでもないんだろ?」
「私にも色々あるんですよ」
「そうか。でも、プライベートは仕事に持ち込むな」
「はーい」
 今日は鬼部長の嫌味にも言い返す気力が残っていなかった









 飲み会の場所はいつもの美味しい居酒屋さんだった。珍しくいつもは来ない部長が来ていたので、絶対に離れた席に座ってやろうと決意する
「私、吉岡部長の隣がいいなぁ」
「私だって!部長とお話したい!」
 女子社員が周りでこそこそと席争奪戦を始めた。心配するまでもなく、部長は私の近くになることはないなと安堵の息を吐く。…忘れていたけれど、部長はかなりモテるんだった
「良かった良かった」
 結局私は部長とは離れた席につき、気楽な気持ちでメニューを開く
 まぁ、これで一安心だ。今日は色々忘れてたくさん飲もう!









 そしてその結果、完璧に酔ってしまった。皆も帰り始め、私もぼーとする頭をなんとか持ち上げて帰路に着こうとする
「おい、佐倉」
 何故か隣から部長の声が聞こえる
「…ぶちょー?なんでとなりに…」
「お前飲みすぎだ。」
「だっていろいろわすれたいことがたくさんあって…」
「忘れたいこと?」
 ダメだ。意識が朦朧としてる…。
「私、おみあいさせられてるんですよ…おとうさんがつくったしゃっきんをかえすために」
「はぁ?何でお前がそんなこと…」
「かぞくですから…れんたいせきにんです」
「見合いなんてやってないで結婚相手くらい自分で決めろ」
「だって…おかねが…それに私のすきなひと、とおすぎててのとどかないひとだし。でも、おみあいあいてにいいとおもえるひともいないんです」
 私…何言ってるんだろう。部長に全然関係のない話しなのに
「そうか」
「もう、いっそ、ぶちょー、けっこんしてください」
「はぁ?」
「わたしもう、つかれまし…た」
 そこで私の意識は完全に途切れ、部長の私を呼ぶ声がなんとなく夢の世界に響いているだけだった









 目が覚めると、家のベッドに寝かされていた。
「あれ?…昨日私…どうやって帰ったっけ?」
 ズキズキと痛む頭で考えてみるが、自分で帰った記憶がない。それどころか、同期たちと楽しくお酒を飲みまくったところまでしか記憶をたどれないのだ
「…二日酔いだ。これ。気持ち悪いし、頭痛いし最悪…。 今日会社休みでよかった…」
 水を飲もうと、台所に行くと、母親がお昼ご飯を作っているところだった
「あら、起きたのね!よかった…。…大丈夫?」
 微笑みを浮かべながら問いかけてきた母だったが、私の様子をみて心配そうな表情になる
「大丈夫じゃないから、お水ちょうだい」
「分かったわ」
 お母さんはすぐにコップに水を入れ、すでに椅子に座っていた私に手渡してくれた
「ありがと…。ねぇ、お母さん」
「ん?」
 台所に戻った母親はキャベツを千切りにしながら私の声に耳を傾ける
「私さ、昨日どうやってここまで帰ってきたんだっけ?」
「え?覚えてないの!?」
 包丁を置き、母はあからさまに驚いた顔をする
「…うん。なんの記憶もない」
 そう言うと、頷きながら
「あー、確かに貴女、爆睡していたものね」
と言った
「待って、それ、どういうこと?」
「え?あー、あのね、昨日夜の結構遅い時間にインターホンがなるもんだから何事かと思って玄関を開けたら、なんとすごい男前が目の前に!」
「…まさか、誰が来たか確認しないでドア開けたの?」
「…まぁ、それは、ね。うん。それより、ここからがいいトコなんだから!その男前は、貴女のことをお姫様抱っこして現れたの!どうやらタクシーで家まで送ってくれたみたいよ」
「え…ウソ」
「本当よ!しかも、お父さんの力じゃ茉莉を運べないって困ってたら、『では、俺が運びます』って言って、貴女を部屋まで運んでくれたのよ」
「いや…ウソ」
「だから、本当だって!そして、タクシー代を出そうとしたら、『大丈夫です。』って言って颯爽とタクシーで帰っちゃったのよ。…びっくりするほどの好青年ね!」
「その人の名前は…?」
「吉岡さん!」
 恐る恐る聞いてみると、予想は出来ていたがやはり部長だった
「…」
「どうしたの?そんなに青い顔して…」
「ふっ…会社にいきずらくなったなぁって思って…」
 私はよろよろと自分の部屋に戻り、二度寝することに決めた
「…なんでよりになって部長なんだろ…まぁ、とにかく寝よう。 面倒な事を考えるのはその後だ」

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