いずれ最強の錬金術師?

小狐丸

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二十六話 娘達の装備

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 エトワール用に、以前アカネとレーヴァが使った結界を張り、法撃を放てる装備を造る事になった。

 あの旧シドニア神皇国で起こった、黒い魔物の叛乱時に使ったやつだ。

 あの時は、急拵えだったからデザイン性もなくシンプルな形だったけど、エトワール用に造るなら、そのままという訳にはいかない。

 あと、エトワールだけに造ると、春香とフローラが拗ねるかもしれないからと、二人にも何か考える事になった。

 レーヴァと二人、作業を始める前に、色々と話し合って方向性を決める。

「エトワールちゃんの装備は、魔法使いらしくローブの上に胸当でありましたね」
「ああ、動きを阻害しないように作られたローブの上に、軽量化のエンチャントを施したオリハルコン合金の胸当だよ」
「ほいほいとオリハルコンを使えるのも、聖域だけでありますな」
「だね。ただ、その辺は妥協したくないからね」

 僕は、子供達の装備には自重はしない。命を預ける装備に、妥協したりわざと性能の低い物を使う意味はない。それで命を落としたり、大きな怪我をしては本末転倒だからだ。

「例の浮かぶ結界装備を造るんでありますよね?」
「うん。素材と形は変えるし、色々と変更はするけどね」
「う~ん。エトワールちゃんは、オリハルコン合金の杖だから、武器に追加は難しいでありますな。そうなると防具でありますが、アイテムボックスからっていうのは無しでありますよね?」
「うん。咄嗟に展開出来るようにしたいからね」

 レーヴァやアカネなら、アイテムボックスからでも瞬時に展開可能だろうけど、エトワールはまだそこまでに至れていないからね。瞬時に展開出来る形が望ましい。

「では、ショルダーアーマーか、籠手、あとはバックラーに仕込むかでありますな」
「ショルダーアーマーか籠手かな。バックラーも悪くないけど、エトワールは杖術を使うからバックラーとは相性がね」

 エトワールは、長さ百八十センチあるオリハルコン合金製の杖で杖術を使う。オリハルコンがメインでミスリルを合金にした杖は、魔力発動体としてもエルダートレントに負けないくらい優秀で、しかも近接武器としてはアダマンタイトを混ぜた場合より若干落ちるが、それでも魔鋼やミスリル合金などよりもずっと強靭だ。

 そのオリハルコンの杖を振るう時、小型のバックラーでも邪魔になる。今は籠手を付けているから、その籠手を改良するか、ショルダーアーマーが分離して展開する形にするかがいいと思う。

「ではサイズと魔晶石をどうするかでありますな」
「ああ、属性付与した魔晶石にするかって事だね」

 僕は創世の女神ノルン様の創った体だからなのか、全属性に適性が有るが、子供達はそうじゃなかった。

 それでもエトワールは、エルフだから精霊に力を借りる精霊魔法に加え、三属性のトリプルだったし、種族的に魔法が苦手な獣人族のフローラもトリプル、春香も基本属性のトリプルに加え、水属性の派生属性と言われている氷属性に適性があった。

 これはバーキラ王国だったら大騒ぎになる事案だ。

 でも、そんな適性属性なんて関係なくされちゃた。聖域に暮らす大精霊達のお陰でね。

 最初、闇の大精霊ニュクスが、ボソッと加護を与えたから、子供達は闇属性魔法を使えると言われた時は、そんなのアリなのと呆然とした僕は悪くない。

 前置きが長くなったけど、要するに魔晶石に属性を付与するかどうかという事だ。前にアカネやレーヴァが使ったモノは、無属性だったからね。

「六つにする予定だから、火、風、水、土、光、闇の六属性にしようかと思ってるよ」
「エトワールちゃん専用装備らしくていいと思うでありますよ」
「うん。それに全てのエレメンタル由来の攻撃を減退する効果も期待できるからね」
「なかなか面白そうなのが出来そうでありますよ」

 結界の強度は、アカネやレーヴァに作った無属性のものと同等になると思う。ビットというか、ファンネルになるのか、それの大きさが変わるからね。だけど今回は、素材をオリハルコンメインの合金にする事で、前に作った物と同等の能力は得れると考えている。

 それに加え、六属性の魔晶石を使う事で、張る障壁が、エレメンタル由来の攻撃。ようは属性魔法の攻撃を減退してくれる。結果的に、アカネやレーヴァ用に作った物よりも防御力は上がるだろう。

「自在に操れるナイフのようにしても面白いであります」
「だな。そうなるとショルダーアーマーに仕込むか。いや、ショルダーアーマーが分離して飛ぶようにするか」
「その方がいいでありますな。片方の肩に三つ合体したアーマーが、分離して宙を舞う。うん! かっこいいでありますよ!」
「お、おお、そうだね」

 レーヴァが言うように、ショルダーアーマーが分離して展開する方式がいいだろう。籠手じゃ一つ一つのサイズが小さくなり過ぎる。

 少し興奮してテンションが上がっているレーヴァを宥め、実際のデザインに移る。

「とはいえ、先端をナイフや剣のように、尖らせるのは嫌なんだよね」
「タクミ様は過保護でありますなぁ。ですが、確かにナイフや剣のような形では、ショルダーアーマー形態の時に困るでありますか……」

 直接敵に攻撃する手段としても使えるようにするのは確定だけど、ナイフや剣のような物をエトワールの肩に装備するなんて危ないから嫌だと言うと、レーヴァから呆れた顔で過保護だと言われてしまう。

 過保護、結構。僕は、何も悪くない。


 そこで形状について色々とデッサンをしながら考えてみる。

「三つを合体させるとなると……花びらとかどうだろう?」
「花びらでありますか。良いでありますな。聖域らしいデザインと言えますし、エトワールちゃんにも似合うであります」
「うんうん。そうだよね」

 レーヴァの反応もよかったので、僕は早速花びらをモチーフしたデザインを描いていく。

 イメージするのは、ガーベラのような一枚が菊科の長細い形。

 丸い頭状花序に三枚の花びらが付いている感じだ。丸い頭状花序は、花びらが展開した後もショルダーアーマーとして機能してくれるだろう。

「法撃以外の直接攻撃方法は、魔力の刃を形成するのはどうだろう?」
「おお! いいでありますな! 六属性の魔力の刃でありますな! 凄くかっこいいでありますよ!」

 僕は、早速イメージイラストをサラサラと描いていく。

「……カッコ悪いね」
「……カッコ悪いであります」

 なんか不恰好。その一言に尽きる。

「そうだ。いっそ浮かせちゃうか」
「浮かせるでありますか?」
「うん。相対位置に固定すれば、杖を使う時も邪魔にならない。固定用の台座ごと浮かせて、花びらを展開した後は、台座はエトワールの元に留まって護りに徹する。どうかな?」
「おお! 台座は、二種類の位置を登録しておけばいいのでありますな!」

 六枚の花びらをエトワールが直接操作し、台座は自動で相対位置に留まるようにすれば、エトワールの負担も増えない。

「肩に小さめのショルダーアーマーを作って、それと台座に魔晶石を仕込めば完璧じゃないか」
「タクミ様の造る魔晶石は、純度が高く高品質でありますから、浮かせるだけなら一月でも浮いてるでありますな」
「よし! この線でいこう。それと、どうせなら台座は二つに分離して、前後左右に相対固定して護ろう」

 エトワールの結界兼法撃装備はこれでいいだろう。

「で、そうなると春香とフローラに、何を造るかというのが残るんだけど……」
「あの二人は、前衛でありますからな」

 春香は、オールラウンダーだけど前衛より。フローラに至っては、ゴリゴリの前衛だからな。

「武器も防具も、今ので十分だしなぁ」
「フローラちゃんには、マーニさんみたいにデッカイ刃だけの武器でも造るであります?」
「ああ、アレか……」

 昔、僕がマーニに造ったクレセントムーン(三日月)状の巨大な刃。その刃の真ん中あたりに持ち手が有り、鎖が付いている癖の強い重力武器だ。

 僕達は、レベルが高いから何でもないけど、普通の人なら振り回すのも大変だと思う。

「フローラ用に、サイズを変更して造ってみるか。アイテムボックスに収納しておけば、邪魔にはならないからね」
「いいと思うでありますよ。フローラちゃんなら使い熟せると思うであります」
「となると、残るは春香か。春香が一番難しいんだよなぁ」
「春香ちゃんは、近接武器は状況により剣も槍。遠距離は様々な魔法を使うオールラウンダーでありますからな」

 春香は、何でも器用に熟せるから、逆に何を用意すればいいか悩む。



「バックラーに遠距離攻撃手段を組み込むか」
「アンカーとか面白そうであります」
「アンカーかぁ。春香なら使えるかもね」

 今、春香は小型のバックラーを左手に固定する形で装備している。そのバックラーを改良して更新するか。

 法撃を放てるようにしてもいいけど、春香なら自前の魔法があるから、それならワイヤーアンカーを仕込んでも面白そうだ。

「ワイヤーアンカーの射出と巻き上げ機構を工夫しないとな」
「ワイヤーアンカーを撃ち込んで、雷撃を流してもいいであります」
「麻痺効果のある雷撃はありだね。その線でいくか」

 方針が決まったので、僕は実際のデザインから設計へと進む。

 娘達の休みは限られているから、早く造らないとね。慣れる時間も必要だから。




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