いずれ最強の錬金術師?

小狐丸

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二十八話 授業の再開と試験

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 久しぶりの聖域での日々もあっという間に終わり、私達は王都に戻って来た。

 戻る時、パパが寂しそうだったけどね。


 夏休み明けは、試験から始まった。私達姉妹は、もともと準備もしてたし、それ以前に学園で学ぶ範囲は、ずっと前に終わった部分なので、確認の為におさらいした程度。勉強嫌いのフローラでも余裕だからね。

 今日は、部活の皆んなで、来たる郊外演習について話をしてる。だけど、その前にどうしたって試験の話題になってしまう。

「エトワールさん達は、試験余裕だったみたいぢね」
「ユークス君もあのくらい楽勝だったんじゃない」
「いやいや、大半の授業の単位を取得済みのエトワールさん達と同じにしないでよ。エトワールさん達が受けた試験、二学年のだよね」
「まあ、一学年の分はパスしてるからね」

 ユークス君は、流石に将来的にパヘック商会を継ぐ人なので、学園の試験程度は余裕がある。パヘックおじさんは、聖域の学校のレベルを知ってるものね。お孫さんの教育に熱心になるのは当然よね。

 そこに、少し顔色の悪いルディ君が合流する。

「いいよなぁ。エトワールさん達は兎も角、ユークスも頭が良いから」
「ルディも赤点は免れたんだろう?」
「赤点なんてとったら親父に勘当されるよ」

 ルディ君の家も王都で商会を営んでいるけど、ルディ君は次男だから甘えがあるのかもしれないわね。

 そこにサティやシャルル、ミュゼが合流する。

「もう。試験の話なんてどうでもいいのよ。それより来週の郊外演習でしょう」
「そうよね。私はポーションでサポートするしかないから不安なんだけど」
「私だって、エトワールちゃんに魔法を教わり始めたばかりだもの。簡単な魔法しか使えないんだよ」

 男爵家の四女で、子供の頃から剣を振っていて、武術研究部に入部してから成長著しいサティは、郊外演習が楽しみで仕方ないみたいだけど、薬師志望のシャルルや平民だったから入学してから魔法を学び始めたミュゼは、少し不安らしい。

「それより、班分けはどうなるのかな?」
「普通科の私達は同じ班になれると思うよ」
「普通科は二クラスしかないし、一クラスの人数も少ないから、多分皆んな同じ班になれると思うよ」

 シャルルやミュゼが不安がるのは理解できるけど、私は郊外演習での班分けの方が知りたかった。私達姉妹と成長著しいサティがいれば、アクシデントがあっても何とかなると思うから。

 ただ、シャルルとミュゼが言うには、私達は一緒に行動できるらしい。普通科は、ほぼ平民だから人数が少ない。二クラスあるとはいえ、その一クラスの人数も、教養科や騎士科に比べると少ない。

 平民の子供が高等教育を受けるのは、聖域の外ではまだまだ難しいみたい。そんな所為で、普通科はかろうじて二クラスあるって感じ。無理したら一クラスに纏める事も出来るんじゃないかな。

 そこで私は、武術研究部と薬学研究部で連携出来るよう訓練が必要だと提案する。

「私達が一緒なら問題ないわね。それなら私達で連携を取れる訓練をしておいた方がいいかもね」
「時間はないけど、しないよりマシかな」
「エトワールお姉ちゃんを護りの要として、春香お姉ちゃんと私が遊撃で動く感じかな」

 春香とフローラも賛成したので、緊急時の立ち回りの確認も含めて訓練する事が決まった。


 ユークス君とルディ君、サティが前衛。全員、片手剣と盾で堅実に戦う。

 シャルルとミュゼは後衛で、私の側にいて魔法やポーションでのサポートが仕事になる。

 そして私は、全体を観ながら指示を出し、魔法での攻撃と防御を受け持つ。

 春香とフローラは二人で組んで自由に動いてもらい、時には防衛、時には攻撃と、遊撃の役割りを担ってもらう。

 ここで抜けた実力のある春香とフローラを、わざわざ二人ペアで行動させるのは、パパやママ達からの教えだから。

 パパやママ達でも、単独で戦闘する事は少ないらしい。どんなイレギュラーがあるか分からない状況で、お互いをサポートし合える存在は必須だと繰り返し教えて貰ったもの。




 そこにクローディア様とメルティアラさん、バスク君が遅れてやって来た。

「郊外演習のお話ですか?」
「はい。普通科は人数が少ないので、他の生徒をサポートする必要もありそうなので」
「ああ、普通科の平民は、学園に入学するまで剣を持った事もない奴が多いからな」
「そうですね。魔法教育など望むべくもないでしょうし」

 バスク君やメルティアラさんが指摘するように、普通科の生徒の大半は裕福だけど平民なので、貴族の子息子女みたいに幼い頃から剣や魔法を教えられていない。そもそも魔法に関して言えば、平民で魔法使いと呼べる魔力を保つ者がいない。ミュゼはとても珍しい例だ。

「姫様やメルティアラさんの教養科は、護衛が付くのでしたっけ?」
「ええ、流石に王族や高位貴族の子供が多い上に、戦いとは無縁な方が一定数いますから」

 教養科は、王宮から騎士が派遣されるらしい。学年は違うけど、王子もいるのだから当然か。それに、近衛騎士団の人間が派遣されるなら安心だ。聖域騎士団に鍛えられているもの。

「その点、バスク君の騎士科は安心だね」
「まあな。でも騎士科なんて言っても、サティより弱い奴も多いからな。そう安心もしてられないのさ」
「……騎士を目指しているのに、それで大丈夫なの?」

 騎士科もほぼ貴族だけのクラス。ガラハットおじさんがそうなように、近衛騎士団はほぼ貴族家出身の人間だし、王族の護衛を務める騎士を平民が担うのは辛いだろう。

 ただ、その騎士科の実力はそれ程高くないみたい。

「まあ、それでも腐っても騎士科だからな。全員が、小さな頃から剣を振ってた奴らだ。何とかなると思うぞ」
「まあ、教養科に近衛騎士団から護衛が付くなら、騎士科もついでに守ってもらえるでしょう」
「近衛騎士団だしな」

 バスク君も近衛騎士団には、絶対の信頼があるみたいだ。実際、この国で近衛騎士団とボルトン辺境伯家の騎士団、そしてロックフォード伯爵家の騎士団は、実力が抜けているものね。

 言うまでもなく、聖域騎士団との合同訓練をしている騎士団だ。


 それに私はそんなに心配はしていない。

「まあ、未開地と言ってもウェッジフォートやバロルから遠くない場所だし、巡回の騎士もいるしね」
「それより聖域に近い未開地だもんね」
「強~い味方が駆け付けるよね」

 私と春香、フローラは確信している。私達の危機には、必ずパパが駆け付けてくれるってね。




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いずれ最強の錬金術師?の15巻が発売されました。

よろしくお願いします。


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