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2巻
2-3
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僕はミスリル鉱石を手にすると、さっそく錬金術の「分解」「抽出」「合成」してみる。
魔鉄の錬成に比べて魔力をかなり消費したけど、それほど多い消費量でもない。錬成が終わった僕の手のひらに、白銀に輝くミスリルの塊が残った。初めて鉱石から取り出した純度の高いミスリル、何だか感慨深い。
そこから、ドガンボさんと僕で壁を掘りまくることにした。途中、ドガンボさんは僕に採掘を任せて、掘り出した石の選別役になった。
「タクミ! 次の場所に行くぞ!」
「はい!」
ドガンボさんが選別した鉱石を、僕はアイテムボックスへ片っ端から収納していく。
その後、何ヶ所かで採掘を進め、かなりのミスリル鉱石を採掘することができた。
しばらく進むと、周囲の雰囲気が変わってくる。それまで銀色がかっていた壁面が黒くなっていた。
「タクミ、そろそろアダマンタイト鉱石が採掘できる場所だ」
「じゃあここで試掘ですね」
ドガンボさんはアダマンタイト鉱石を一つ拾い上げると、僕に手渡す。真っ黒いその鉱石は、ミスリル鉱石のように魔力を感知でき、ずいぶんと重かった。
「アダマンタイトはミスリルや魔鉄よりも硬くて粘りがあるが、とにかく重いんだ」
なるほど、だけど重さに目を瞑れば硬度と靭性が高い優秀な金属なんだな。防具には難しいけど、武器には最適なんじゃないか?
僕がそれをドガンボさんに言うと、「アダマンタイトの上はオリハルコンしかないんだから当たり前だ」と呆れられた。
それはアダマンタイト鉱石を採掘している最中のことだった。
「マスター! 何か来るよ!」
地面に意識を向けていたカエデが声をあげる。
「ソフィア! マリア! アイアンモールだ!」
僕はカエデの示した場所を警戒しながら、鶴嘴を収納すると剣を取り出して構える。
そこで僕は、相手はモグラだよなぁ……と考え、ダメ元でとある思いつきを試してみることにした。
ゴバァッ!!
地面から何かが飛び出した瞬間。
「ライト!」
僕は、光属性魔法のライトを唱えた。
「キュゥゥゥゥーーーー!」
鋭いショベルのような前脚を持ち、大型犬ほどもある大きさのアイアンモールが、その場で横になって気絶していた。
「マリア、トドメお願い」
「…………はい」
ザクッ!
「なぁタクミ、何したんだ?」
「マスター、どうやってモグラさんやっつけたの?」
ドガンボさんもカエデも、何が起きたのかわからず不思議がっているようだ。
「いや、ずっと暗いところにいる魔物だから光に弱いかなっと思って」
まあそうじゃなくても、急に強力な光を浴びさせられたら、どんな生き物でもびっくりするだろうけどね。
「タクミ様、こんなに簡単に魔物を斃せても良いんですか?」
「さすがタクミ様です。発想が天才的です」
マリアから微妙な反応を、ソフィアからは褒め殺しをもらい、何だかいたたまれない気持ちになってしまった。
「まぁ、楽にアイアンモールを斃せたんだから良いんじゃねえか。じゃあ、さっさとアダマンタイト鉱石を掘るぞ!」
ドガンボさんにとってはどうでも良かったらしい。何食わぬ顔で採掘を再開する。
それからアダマンタイト鉱石の採掘を頑張っていたんだけど、一定量採掘するのは結構大変だった。
魔鉄鉱石やミスリル鉱石ほど量が採れない。しかもアダマンタイト鉱石は重いため、運搬するにもコストがかかるとなれば、この三番坑道が不人気だというのもわかってきた気がする。僕には重量を無視できるアイテムボックスがあるから、いくらでもアダマンタイト鉱石を持ち帰ることができるけど、これを人が運ぶのなら大変だろう。
アダマンタイト採掘に精を出していると再びカエデが――
「マスター、またモグラさんだよ!」
「オーケー!」
カエデが指示する場所でライトの準備をして、アイアンモールが地面から飛び出してくるのを待つ。あ、出た。
「ライト!」
「キュゥゥゥゥーーーー!!」
ザクッ!
こんな感じで、あとは流れ作業で斃していった。
「タクミ様、アイアンモール三匹目です」
「解体が上達しそうです」
さすがエルフ、祖国でもよく狩りをしていたこともあって解体も得意なようだ。
「おう! タクミ、この鉱石を頼むわ!」
もうドガンボさんはアイアンモールが出てきてもスルーしたまま。採掘したり、鉱石の選別をしたりしている。
「はい!」
僕は、ドガンボさんに指示されたアダマンタイト鉱石をアイテムボックスに収納する。
「ドガンボさん、もう結構な量を採掘できたんじゃないですか?」
僕が個人的に使用する分量は余裕で確保できたと思う。ドガンボさんが自分の工房で使う分量を考えても十分だと感じたんだけど……
「あと少し、あと少しだから」
このやりとりが何度か続く。
ドガンボさんの「あと少しコール」のおかげで、三番坑道を出たときには、日はとっぷりと暮れていた。
お昼も食べずに採掘とアイアンモールの討伐をしていた僕達は、お腹ぺこぺこだった。
穴熊の棲家亭へ急いで戻り、ノーラさんの料理をたらふく食べて、この日は泥のように眠りについたのだった。
6 テンプレは忘れた頃に
僕らが欲しかったミスリル鉱石とアダマンタイト鉱石は、両方とも必要量以上に確保できた。
依頼の達成報告と討伐証明部位の爪を納品しに、ギルドへ行く。
一番空いていた受付に向かう。その受付に座っていたのは、丸太のような筋肉質の二の腕を、ギルドの制服から窮屈そうにのぞかせた髭もじゃのドワーフだった。
……まあ、そりゃ空いてるよな。
可愛い女の子じゃなかったことを少し残念に思いながら、鍛冶場や坑道の方がしっくりきそうな、そのギルドの受付を相手に手続きを済ませる。
報酬を受け取りギルドの受付を離れようとしたとき、腰にドンッと何かがぶつかった。
振り向くと小学生くらいの可愛らしい女の子が尻餅をついていた。僕は慌てて手を差し伸べて声をかける。
「ああっ、ごめんね、お嬢ちゃん。怪我はない?」
すると女の子はムッとした顔をしたと思うと、急に立ち上がって僕のすねを蹴り上げた。
「イテッ!」
「アタシは子供じゃねえ! 大人だバカやろう!」
すねをかかえてしゃがみ込む僕にそう言い捨てて、そのままぷりぷり怒って去っていく。
ああ、しまった。この世界のドワーフの女性は小柄な合法ロリバージョンだったんだ。ギルドの受付が男性だったから忘れてた。
そこにドガンボさんの笑い声が響く。
「クックックックッ……ガッハッハッハッ!」
「笑わないでくださいよ、ドガンボさん」
「すまんすまん。ドワーフの少ないボルトンや辺境の村出身じゃあ仕方ねえよ」
そう言いながらもくすくすと笑い続けるドガンボさんをほっといて、ソフィアとマリアにすねの心配をされながら、僕はそそくさとギルドをあとにした。
最後はしまらなかったけど、この町ですべきことは達成した。慌ただしいが、このままボルトンへ戻ることにする。
「これで僕もDランクだな」
ガラガラと馬車の車輪が立てる音を聞きながら、生産職なのに冒険者ランクがDランクになることを不思議に感じていた。
僕はまだこの世界「ミルドガルド」に来て一年も経っていない。それなのに、レベルは60代半ば。
この世界の冒険者で一握りしかいない一流と呼ばれる人達のレベル帯に届いてしまった。
他の冒険者に、このステータスで生産職だと言ったらキレられるかもしれない。
◇
「で、どうする? 帰りに死の森でもう少しトレント狩っとくか?」
野営を挟んで死の森が左手に見えてきたとき、御者をしているマイペースドワーフのドガンボさんが、背後を振り返って聞いてきた。
「時間に余裕があれば少しだけ寄っていきますか? ソフィアとマリアはどう思う?」
僕としてはどっちでも良かったので、二人に振ってみる。
「ボルトンの町は今でもトレント材不足ですから、少しでも多い方が喜ばれるのでは」
「私ももっと強くなりたいです」
二人ともやる気なので、少しだけトレントを狩ることにした。馬車を停めてもらい、死の森の外縁部に向かう。
「「はっ!」」
ガンッ! ガンッ!
「グゥォォォォォーーーー!!」
ソフィアとマリアが斧をトレントへ打ち込む。僕とカエデは、触手のように地面から突き出す根を、片っ端から切り落としていった。
今回は、僕とカエデがサポートに回り、ソフィアとマリアがメインである。
僕は右手に剣、左手にナイフを握り、ソフィアとマリアを狙う根を切り落としていく。
僕の剣術スキルのレベルは7に上がり、一流の域に片足を突っ込みはじめていると言っていいと思う。剣さばきも堂に入った感じがする。
「このくらいにしようか」
ソフィアとマリアがトレントを五体討伐したのを見届けた僕は、そろそろドガンボさんが留守番している場所まで戻ることを提案する。
「はい、今から行けば、日が落ちる前に次の野営場所までたどり着けるでしょう」
「私もトレントはしばらくいいです」
「カエデも飽きたのー!」
ルーチンワークになりかけていたというのもあって、全員賛成してくれた。
倒したトレントをまとめて収納すると、ドガンボさんが待つ馬車へと戻った。
「ただいま戻りました」
「おう、どうだった?」
「はい、ソフィア達が頑張ってくれたおかげで、トレント材を五本確保しました」
「それだけあれば少しはマシになるな」
「はい」
まだまだトレント材が足りていないのはわかっているけど、もう少しすれば冒険者が今かかりっきりになっているブラックバッファロー狩りの依頼も落ち着くだろうしね。
そうすればトレントを狩る冒険者も出てくるはずだ。
それは、死の森を真横に見ながら走り続け、そろそろ森の切れ目が近づいてきたな、と油断していたときに起こった。
ソフィアが緊迫した表情で告げる。
「タクミ様! 精霊が、この先で二十人ほどの人間が待ち伏せしている、と言っています! 弓を持って遠距離から狙おうとしている者もいるようです」
僕が目に魔力を集めると、ごく薄い緑の光を放つ球体がソフィアの側に漂っているのが見えた。光の色から推測すると風の精霊だろう。
おそらく盗賊だ。ヒースさんに言われたことが現実になった。この世界では、当たり前のように盗賊が街道を行く馬車を襲うのだ。
改めて僕は覚悟を決める。
「ドガンボさん、馬車の速度はそのままで。カエデは気配を消してコッソリと弓持ちから仕留めて。僕達の方から魔法で奇襲を仕掛けよう」
「わかりました。魔法のタイミングは私が指示します」
「……頑張ります」
精霊のおかげで盗賊の潜む場所がわかるソフィアが、奇襲開始の合図を出す役割をやってくれることになった。マリアも緊張しているようだけど頷いてくれた。
そのまま馬車で進んでいくと、僕らの進行を阻むように、薄汚い革鎧に身を包んだ男達が剣や槍を持ってゾロゾロと出てきた。
ドガンボさんが馬車の速度を落とす。
そうしている間に、カエデが馬車の後方から飛び出し、弓を持って隠れている盗賊の元へ駆け出していった。
「オラッ! 止まれぇー!」
大きな斧を持った盗賊のボスらしき男が叫んだ。と同時に、ソフィアから合図が送られてくる。僕、ソフィア、マリアは一斉に魔法を放った。
石の礫、風の刃、氷の弾丸が盗賊に襲いかかる。
「ぎゃあぁぁーー!!」
「ガッ!」
「うっ!」
襲おうとした馬車からいきなり魔法が撃ち込まれ、何が起きたのかさえわからずに、バタバタと倒れる盗賊達。
両脇の草むらに隠れていた盗賊達が慌てて出てくる。
「チ、チクショウ! お前ら! 囲め!」
「ぎゃあぁぁぁ!!」
「ひぃ!」
怪我を負いながらも斧を持って襲ってきた盗賊が叫んだとき、後方で悲鳴がいくつもあがった。
「うっ!」
「ぎゃあ!」
馬車の御者席に立ち、出てきた盗賊を弓で射殺していくソフィア。
「オラァ!!」
いつの間にかドガンボさんが、馬車の前に出て槌を振り回している。
僕も馬車を飛び出した。
すぐ近くにいた盗賊の喉を目掛けて槍を突き刺す。
ザクッ。
槍が盗賊の首にゆっくりと食い込んでいく。魔物で慣れてきたはずの感触だったが、人相手に感じるのは別物だった。相手の命を奪ってしまったという感覚に気持ち悪さを覚えながらも、僕は次の盗賊へ槍を繰り出す。
「テメェ! 絶対許さねえ! テメェはなぶり殺して、女は犯し尽くして殺してやる!」
斧を振り回して襲いかかる盗賊のボス。
大振りな斧を避けるのは難しくなかった。
「テメェ! ちょこまかと逃げやがって!」
斧と槍の間合いの違いというのもあって、僕とバカの戦いは一方的なものだった。
一気に間合いを詰めるスピードもない盗賊のボスは、腹、胸、喉への三連突きを受けて、悔しそうな顔をして斃れた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
魔物相手なら息も切らさない程度の戦いなのに、僕の息は荒くなっていた。それに背中は脂汗でびっしょりだ。
初めて人を殺した。
でも動揺しているわけじゃなくて気分が悪いだけだ。それだけで済んでいる自分を思い返してみて、やっぱり変わってしまったと思う。
「うんしょ、うんしょ。マスター! 盗賊持ってきたよー!」
「うん、ありがとうカエデ。おかげで助かったよ」
カエデが首のない死体を糸で絡めて引っ張ってきていた。
僕はカエデの頭を撫でてお礼を言う。
魔物とはいえ、小さなカエデに人殺しを指示してしまったことに罪悪感を覚えた。
「タクミ様! お怪我はありませんか?」
ソフィアが僕を心配して、全身をチェックしてくれる。マリアも馬車から降りて僕に抱きついてきた。よくよく考えてみたら、マリアにとっても初めての対人戦だったんだよな。
こんな殺伐とした世界でも、人を殺すことへのハードルが低いわけじゃない。やっぱり人を殺すのは誰だって嫌だ。
殺さないと殺される現実があるから仕方ないのだ。
「おう、取るもん取って、後処理して、行くぞ」
ドガンボさんはどこまでもマイペースだ。
そのマイペースなドガンボさんに、なぜか僕は救われた気がした。
それから手分けして盗賊の死体をあさり、ギルドカードや装備で使えそうな物を剥ぎ取った。その後は、土属性魔法で大きな穴を掘り、盗賊達の死体を埋める。
一通り終えたところで、僕達はボルトンへ走り出した。
7 甘やかされて
盗賊の襲撃というテンプレの王道に遭遇した僕は、初めて人を殺したダメージが思ったほど大きくないことに、逆にショックを受けていた。
決して人を殺すことが平気になったわけじゃない。けど、仕方ないと簡単に受け入れてしまえている心のありように、自分自身驚いていた。
そして、そんな僕が今どうしているのかというと――
馬車の中で、ソフィアとマリアに絶賛甘やかされていた。
僕の両脇に寄り添うように座った二人が、僕の片腕を抱きしめつつ手を握ってくれている。しかも、いわゆる恋人つなぎってやつだ。
「タクミ様、大丈夫ですか? ご気分はいかがですか?」
「心配ありませんよ、マリアが付いてますから」
どうやら、僕が初めて人を殺したことに酷くショックを受けている、と思ったみたい。
僕は、ソフィアとマリアにベタベタ甘やかされるのは嫌じゃない。というか、鼻の下を伸ばしてデレデレしてしまっている。
マリアにとっても初めての人殺しだっただろうけど、マリアは僕の心配をすることで落ち着いたみたいだ。結果オーライかな。
盗賊という存在について、改めて考えてみる。
日本でも中世、戦国時代前後には野盗や山賊がいただろうし、大きな括りで言えば戦国大名や豪族も盗賊とたいして変わらない。
それを思えば、この世界の状況はそれほどおかしくないのかもしれない。誰もが裕福で争いのない世界など無理なのだから。そんなの人間の歴史が示している。
この世界で、盗賊になる人間は様々だ。
冒険者くずれ、傭兵くずれ、飢えて生活に困った農民。
盗賊はデッドオアアライブの討伐対象、つまり生きたまま捕らえても死んでいても関係ないので、殺しても罪に問われない。
それをわかっていながら盗賊になるような人間は、楽な方へ流された奴か、もしくは犯罪行為自体が楽しい奴、その二種類だと思う。
そんな奴らのせいで、僕が悩むなんて馬鹿らしい話なのかもしれない。
と思ったけれど、もしかしたら教育の問題とも言えそうだ。
この世界の人達すべてが、一定以上の教養を身に付ける機会があればもう少し状況は変わる。そんな気がするのは、盗賊に落ちるのは文字も読めない奴が多いらしいからだ。せめて手に職を付ければと思うけどね。
「(あれ? こんな殺伐とした世界で、生産職しながらスローライフなんて無理じゃねぇ?)」
って心配になったけど、まぁ今はソフィアとマリアの二人といちゃいちゃできるだけでいいや。
難しいことを考えるのは僕の仕事じゃないし、そんなのは領主様や国王様がなんとかすることだよね。
ドガンボさんは、僕達が馬車の中でいちゃいちゃしてても完全にスルーしてくれる。
まぁ興味がないんだろうけど。
◇
盗賊の襲撃を撃退してから二日、ようやくボルトンの町に帰ってきた。
さっそく冒険者ギルドへ行くと、僕達を見つけたハンスさんに手招きされ、素材保管所に連れていかれた。
「とりあえずトレント材を出してくれる?」
「はい、ここに出しますね」
僕はヒースさん達から預かった十本と、僕らが討伐した十五本をその場に積み上げる。
「あと、エルダートレントがあるんですけど、それは僕らも素材として欲しいんです」
「エルダートレントなんて出てきたの!? 大変だったんだね。う~ん、できればギルドにも少し回してほしいな」
話し合いをした結果、半分をギルドに納品することになった。
僕としても、あのくらいの大木なら半分も手元にあれば十分だ。それに、ギルドが思ったより高額で買い取ってくれたので僕としても大満足だ。
「タクミ君ありがとう。おかげでブラックバッファローの時期が過ぎるまで何とかなるよ」
てっきりまだまだ足りないと思ってたけど何とかなるんだ。ともかくこれで、僕はDランクに昇格した。本来なら戦闘試験が必要なんだけど、僕の場合は討伐しすぎなので免除になったみたい。
「タクミ様、盗賊の報告を忘れてます」
「あっ!」
ソフィアに言われるまで本当に忘れてた。
僕の心が忘れたかったのか?
「なに、盗賊が出たの?」
ハンスさんに、盗賊の規模と襲撃された場所、その後に僕らがした対処について報告した。ハンスさんは驚きながらも、冷静に僕の話を聞いていた。
「じゃあギルドカードを回収してるよね。ギルドの方で報償金を調べておくよ。でもこれで、タクミ君も名実ともにDランクの冒険者だね」
それから僕はトレントの指名依頼の報酬を受け取ると、ドガンボさんとも別れて家に帰ることにした。
別れ際ドガンボさんに、明後日からミスリルとアダマンタイトの精錬をする約束をした。朝一からと念を押されて。
魔鉄の錬成に比べて魔力をかなり消費したけど、それほど多い消費量でもない。錬成が終わった僕の手のひらに、白銀に輝くミスリルの塊が残った。初めて鉱石から取り出した純度の高いミスリル、何だか感慨深い。
そこから、ドガンボさんと僕で壁を掘りまくることにした。途中、ドガンボさんは僕に採掘を任せて、掘り出した石の選別役になった。
「タクミ! 次の場所に行くぞ!」
「はい!」
ドガンボさんが選別した鉱石を、僕はアイテムボックスへ片っ端から収納していく。
その後、何ヶ所かで採掘を進め、かなりのミスリル鉱石を採掘することができた。
しばらく進むと、周囲の雰囲気が変わってくる。それまで銀色がかっていた壁面が黒くなっていた。
「タクミ、そろそろアダマンタイト鉱石が採掘できる場所だ」
「じゃあここで試掘ですね」
ドガンボさんはアダマンタイト鉱石を一つ拾い上げると、僕に手渡す。真っ黒いその鉱石は、ミスリル鉱石のように魔力を感知でき、ずいぶんと重かった。
「アダマンタイトはミスリルや魔鉄よりも硬くて粘りがあるが、とにかく重いんだ」
なるほど、だけど重さに目を瞑れば硬度と靭性が高い優秀な金属なんだな。防具には難しいけど、武器には最適なんじゃないか?
僕がそれをドガンボさんに言うと、「アダマンタイトの上はオリハルコンしかないんだから当たり前だ」と呆れられた。
それはアダマンタイト鉱石を採掘している最中のことだった。
「マスター! 何か来るよ!」
地面に意識を向けていたカエデが声をあげる。
「ソフィア! マリア! アイアンモールだ!」
僕はカエデの示した場所を警戒しながら、鶴嘴を収納すると剣を取り出して構える。
そこで僕は、相手はモグラだよなぁ……と考え、ダメ元でとある思いつきを試してみることにした。
ゴバァッ!!
地面から何かが飛び出した瞬間。
「ライト!」
僕は、光属性魔法のライトを唱えた。
「キュゥゥゥゥーーーー!」
鋭いショベルのような前脚を持ち、大型犬ほどもある大きさのアイアンモールが、その場で横になって気絶していた。
「マリア、トドメお願い」
「…………はい」
ザクッ!
「なぁタクミ、何したんだ?」
「マスター、どうやってモグラさんやっつけたの?」
ドガンボさんもカエデも、何が起きたのかわからず不思議がっているようだ。
「いや、ずっと暗いところにいる魔物だから光に弱いかなっと思って」
まあそうじゃなくても、急に強力な光を浴びさせられたら、どんな生き物でもびっくりするだろうけどね。
「タクミ様、こんなに簡単に魔物を斃せても良いんですか?」
「さすがタクミ様です。発想が天才的です」
マリアから微妙な反応を、ソフィアからは褒め殺しをもらい、何だかいたたまれない気持ちになってしまった。
「まぁ、楽にアイアンモールを斃せたんだから良いんじゃねえか。じゃあ、さっさとアダマンタイト鉱石を掘るぞ!」
ドガンボさんにとってはどうでも良かったらしい。何食わぬ顔で採掘を再開する。
それからアダマンタイト鉱石の採掘を頑張っていたんだけど、一定量採掘するのは結構大変だった。
魔鉄鉱石やミスリル鉱石ほど量が採れない。しかもアダマンタイト鉱石は重いため、運搬するにもコストがかかるとなれば、この三番坑道が不人気だというのもわかってきた気がする。僕には重量を無視できるアイテムボックスがあるから、いくらでもアダマンタイト鉱石を持ち帰ることができるけど、これを人が運ぶのなら大変だろう。
アダマンタイト採掘に精を出していると再びカエデが――
「マスター、またモグラさんだよ!」
「オーケー!」
カエデが指示する場所でライトの準備をして、アイアンモールが地面から飛び出してくるのを待つ。あ、出た。
「ライト!」
「キュゥゥゥゥーーーー!!」
ザクッ!
こんな感じで、あとは流れ作業で斃していった。
「タクミ様、アイアンモール三匹目です」
「解体が上達しそうです」
さすがエルフ、祖国でもよく狩りをしていたこともあって解体も得意なようだ。
「おう! タクミ、この鉱石を頼むわ!」
もうドガンボさんはアイアンモールが出てきてもスルーしたまま。採掘したり、鉱石の選別をしたりしている。
「はい!」
僕は、ドガンボさんに指示されたアダマンタイト鉱石をアイテムボックスに収納する。
「ドガンボさん、もう結構な量を採掘できたんじゃないですか?」
僕が個人的に使用する分量は余裕で確保できたと思う。ドガンボさんが自分の工房で使う分量を考えても十分だと感じたんだけど……
「あと少し、あと少しだから」
このやりとりが何度か続く。
ドガンボさんの「あと少しコール」のおかげで、三番坑道を出たときには、日はとっぷりと暮れていた。
お昼も食べずに採掘とアイアンモールの討伐をしていた僕達は、お腹ぺこぺこだった。
穴熊の棲家亭へ急いで戻り、ノーラさんの料理をたらふく食べて、この日は泥のように眠りについたのだった。
6 テンプレは忘れた頃に
僕らが欲しかったミスリル鉱石とアダマンタイト鉱石は、両方とも必要量以上に確保できた。
依頼の達成報告と討伐証明部位の爪を納品しに、ギルドへ行く。
一番空いていた受付に向かう。その受付に座っていたのは、丸太のような筋肉質の二の腕を、ギルドの制服から窮屈そうにのぞかせた髭もじゃのドワーフだった。
……まあ、そりゃ空いてるよな。
可愛い女の子じゃなかったことを少し残念に思いながら、鍛冶場や坑道の方がしっくりきそうな、そのギルドの受付を相手に手続きを済ませる。
報酬を受け取りギルドの受付を離れようとしたとき、腰にドンッと何かがぶつかった。
振り向くと小学生くらいの可愛らしい女の子が尻餅をついていた。僕は慌てて手を差し伸べて声をかける。
「ああっ、ごめんね、お嬢ちゃん。怪我はない?」
すると女の子はムッとした顔をしたと思うと、急に立ち上がって僕のすねを蹴り上げた。
「イテッ!」
「アタシは子供じゃねえ! 大人だバカやろう!」
すねをかかえてしゃがみ込む僕にそう言い捨てて、そのままぷりぷり怒って去っていく。
ああ、しまった。この世界のドワーフの女性は小柄な合法ロリバージョンだったんだ。ギルドの受付が男性だったから忘れてた。
そこにドガンボさんの笑い声が響く。
「クックックックッ……ガッハッハッハッ!」
「笑わないでくださいよ、ドガンボさん」
「すまんすまん。ドワーフの少ないボルトンや辺境の村出身じゃあ仕方ねえよ」
そう言いながらもくすくすと笑い続けるドガンボさんをほっといて、ソフィアとマリアにすねの心配をされながら、僕はそそくさとギルドをあとにした。
最後はしまらなかったけど、この町ですべきことは達成した。慌ただしいが、このままボルトンへ戻ることにする。
「これで僕もDランクだな」
ガラガラと馬車の車輪が立てる音を聞きながら、生産職なのに冒険者ランクがDランクになることを不思議に感じていた。
僕はまだこの世界「ミルドガルド」に来て一年も経っていない。それなのに、レベルは60代半ば。
この世界の冒険者で一握りしかいない一流と呼ばれる人達のレベル帯に届いてしまった。
他の冒険者に、このステータスで生産職だと言ったらキレられるかもしれない。
◇
「で、どうする? 帰りに死の森でもう少しトレント狩っとくか?」
野営を挟んで死の森が左手に見えてきたとき、御者をしているマイペースドワーフのドガンボさんが、背後を振り返って聞いてきた。
「時間に余裕があれば少しだけ寄っていきますか? ソフィアとマリアはどう思う?」
僕としてはどっちでも良かったので、二人に振ってみる。
「ボルトンの町は今でもトレント材不足ですから、少しでも多い方が喜ばれるのでは」
「私ももっと強くなりたいです」
二人ともやる気なので、少しだけトレントを狩ることにした。馬車を停めてもらい、死の森の外縁部に向かう。
「「はっ!」」
ガンッ! ガンッ!
「グゥォォォォォーーーー!!」
ソフィアとマリアが斧をトレントへ打ち込む。僕とカエデは、触手のように地面から突き出す根を、片っ端から切り落としていった。
今回は、僕とカエデがサポートに回り、ソフィアとマリアがメインである。
僕は右手に剣、左手にナイフを握り、ソフィアとマリアを狙う根を切り落としていく。
僕の剣術スキルのレベルは7に上がり、一流の域に片足を突っ込みはじめていると言っていいと思う。剣さばきも堂に入った感じがする。
「このくらいにしようか」
ソフィアとマリアがトレントを五体討伐したのを見届けた僕は、そろそろドガンボさんが留守番している場所まで戻ることを提案する。
「はい、今から行けば、日が落ちる前に次の野営場所までたどり着けるでしょう」
「私もトレントはしばらくいいです」
「カエデも飽きたのー!」
ルーチンワークになりかけていたというのもあって、全員賛成してくれた。
倒したトレントをまとめて収納すると、ドガンボさんが待つ馬車へと戻った。
「ただいま戻りました」
「おう、どうだった?」
「はい、ソフィア達が頑張ってくれたおかげで、トレント材を五本確保しました」
「それだけあれば少しはマシになるな」
「はい」
まだまだトレント材が足りていないのはわかっているけど、もう少しすれば冒険者が今かかりっきりになっているブラックバッファロー狩りの依頼も落ち着くだろうしね。
そうすればトレントを狩る冒険者も出てくるはずだ。
それは、死の森を真横に見ながら走り続け、そろそろ森の切れ目が近づいてきたな、と油断していたときに起こった。
ソフィアが緊迫した表情で告げる。
「タクミ様! 精霊が、この先で二十人ほどの人間が待ち伏せしている、と言っています! 弓を持って遠距離から狙おうとしている者もいるようです」
僕が目に魔力を集めると、ごく薄い緑の光を放つ球体がソフィアの側に漂っているのが見えた。光の色から推測すると風の精霊だろう。
おそらく盗賊だ。ヒースさんに言われたことが現実になった。この世界では、当たり前のように盗賊が街道を行く馬車を襲うのだ。
改めて僕は覚悟を決める。
「ドガンボさん、馬車の速度はそのままで。カエデは気配を消してコッソリと弓持ちから仕留めて。僕達の方から魔法で奇襲を仕掛けよう」
「わかりました。魔法のタイミングは私が指示します」
「……頑張ります」
精霊のおかげで盗賊の潜む場所がわかるソフィアが、奇襲開始の合図を出す役割をやってくれることになった。マリアも緊張しているようだけど頷いてくれた。
そのまま馬車で進んでいくと、僕らの進行を阻むように、薄汚い革鎧に身を包んだ男達が剣や槍を持ってゾロゾロと出てきた。
ドガンボさんが馬車の速度を落とす。
そうしている間に、カエデが馬車の後方から飛び出し、弓を持って隠れている盗賊の元へ駆け出していった。
「オラッ! 止まれぇー!」
大きな斧を持った盗賊のボスらしき男が叫んだ。と同時に、ソフィアから合図が送られてくる。僕、ソフィア、マリアは一斉に魔法を放った。
石の礫、風の刃、氷の弾丸が盗賊に襲いかかる。
「ぎゃあぁぁーー!!」
「ガッ!」
「うっ!」
襲おうとした馬車からいきなり魔法が撃ち込まれ、何が起きたのかさえわからずに、バタバタと倒れる盗賊達。
両脇の草むらに隠れていた盗賊達が慌てて出てくる。
「チ、チクショウ! お前ら! 囲め!」
「ぎゃあぁぁぁ!!」
「ひぃ!」
怪我を負いながらも斧を持って襲ってきた盗賊が叫んだとき、後方で悲鳴がいくつもあがった。
「うっ!」
「ぎゃあ!」
馬車の御者席に立ち、出てきた盗賊を弓で射殺していくソフィア。
「オラァ!!」
いつの間にかドガンボさんが、馬車の前に出て槌を振り回している。
僕も馬車を飛び出した。
すぐ近くにいた盗賊の喉を目掛けて槍を突き刺す。
ザクッ。
槍が盗賊の首にゆっくりと食い込んでいく。魔物で慣れてきたはずの感触だったが、人相手に感じるのは別物だった。相手の命を奪ってしまったという感覚に気持ち悪さを覚えながらも、僕は次の盗賊へ槍を繰り出す。
「テメェ! 絶対許さねえ! テメェはなぶり殺して、女は犯し尽くして殺してやる!」
斧を振り回して襲いかかる盗賊のボス。
大振りな斧を避けるのは難しくなかった。
「テメェ! ちょこまかと逃げやがって!」
斧と槍の間合いの違いというのもあって、僕とバカの戦いは一方的なものだった。
一気に間合いを詰めるスピードもない盗賊のボスは、腹、胸、喉への三連突きを受けて、悔しそうな顔をして斃れた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
魔物相手なら息も切らさない程度の戦いなのに、僕の息は荒くなっていた。それに背中は脂汗でびっしょりだ。
初めて人を殺した。
でも動揺しているわけじゃなくて気分が悪いだけだ。それだけで済んでいる自分を思い返してみて、やっぱり変わってしまったと思う。
「うんしょ、うんしょ。マスター! 盗賊持ってきたよー!」
「うん、ありがとうカエデ。おかげで助かったよ」
カエデが首のない死体を糸で絡めて引っ張ってきていた。
僕はカエデの頭を撫でてお礼を言う。
魔物とはいえ、小さなカエデに人殺しを指示してしまったことに罪悪感を覚えた。
「タクミ様! お怪我はありませんか?」
ソフィアが僕を心配して、全身をチェックしてくれる。マリアも馬車から降りて僕に抱きついてきた。よくよく考えてみたら、マリアにとっても初めての対人戦だったんだよな。
こんな殺伐とした世界でも、人を殺すことへのハードルが低いわけじゃない。やっぱり人を殺すのは誰だって嫌だ。
殺さないと殺される現実があるから仕方ないのだ。
「おう、取るもん取って、後処理して、行くぞ」
ドガンボさんはどこまでもマイペースだ。
そのマイペースなドガンボさんに、なぜか僕は救われた気がした。
それから手分けして盗賊の死体をあさり、ギルドカードや装備で使えそうな物を剥ぎ取った。その後は、土属性魔法で大きな穴を掘り、盗賊達の死体を埋める。
一通り終えたところで、僕達はボルトンへ走り出した。
7 甘やかされて
盗賊の襲撃というテンプレの王道に遭遇した僕は、初めて人を殺したダメージが思ったほど大きくないことに、逆にショックを受けていた。
決して人を殺すことが平気になったわけじゃない。けど、仕方ないと簡単に受け入れてしまえている心のありように、自分自身驚いていた。
そして、そんな僕が今どうしているのかというと――
馬車の中で、ソフィアとマリアに絶賛甘やかされていた。
僕の両脇に寄り添うように座った二人が、僕の片腕を抱きしめつつ手を握ってくれている。しかも、いわゆる恋人つなぎってやつだ。
「タクミ様、大丈夫ですか? ご気分はいかがですか?」
「心配ありませんよ、マリアが付いてますから」
どうやら、僕が初めて人を殺したことに酷くショックを受けている、と思ったみたい。
僕は、ソフィアとマリアにベタベタ甘やかされるのは嫌じゃない。というか、鼻の下を伸ばしてデレデレしてしまっている。
マリアにとっても初めての人殺しだっただろうけど、マリアは僕の心配をすることで落ち着いたみたいだ。結果オーライかな。
盗賊という存在について、改めて考えてみる。
日本でも中世、戦国時代前後には野盗や山賊がいただろうし、大きな括りで言えば戦国大名や豪族も盗賊とたいして変わらない。
それを思えば、この世界の状況はそれほどおかしくないのかもしれない。誰もが裕福で争いのない世界など無理なのだから。そんなの人間の歴史が示している。
この世界で、盗賊になる人間は様々だ。
冒険者くずれ、傭兵くずれ、飢えて生活に困った農民。
盗賊はデッドオアアライブの討伐対象、つまり生きたまま捕らえても死んでいても関係ないので、殺しても罪に問われない。
それをわかっていながら盗賊になるような人間は、楽な方へ流された奴か、もしくは犯罪行為自体が楽しい奴、その二種類だと思う。
そんな奴らのせいで、僕が悩むなんて馬鹿らしい話なのかもしれない。
と思ったけれど、もしかしたら教育の問題とも言えそうだ。
この世界の人達すべてが、一定以上の教養を身に付ける機会があればもう少し状況は変わる。そんな気がするのは、盗賊に落ちるのは文字も読めない奴が多いらしいからだ。せめて手に職を付ければと思うけどね。
「(あれ? こんな殺伐とした世界で、生産職しながらスローライフなんて無理じゃねぇ?)」
って心配になったけど、まぁ今はソフィアとマリアの二人といちゃいちゃできるだけでいいや。
難しいことを考えるのは僕の仕事じゃないし、そんなのは領主様や国王様がなんとかすることだよね。
ドガンボさんは、僕達が馬車の中でいちゃいちゃしてても完全にスルーしてくれる。
まぁ興味がないんだろうけど。
◇
盗賊の襲撃を撃退してから二日、ようやくボルトンの町に帰ってきた。
さっそく冒険者ギルドへ行くと、僕達を見つけたハンスさんに手招きされ、素材保管所に連れていかれた。
「とりあえずトレント材を出してくれる?」
「はい、ここに出しますね」
僕はヒースさん達から預かった十本と、僕らが討伐した十五本をその場に積み上げる。
「あと、エルダートレントがあるんですけど、それは僕らも素材として欲しいんです」
「エルダートレントなんて出てきたの!? 大変だったんだね。う~ん、できればギルドにも少し回してほしいな」
話し合いをした結果、半分をギルドに納品することになった。
僕としても、あのくらいの大木なら半分も手元にあれば十分だ。それに、ギルドが思ったより高額で買い取ってくれたので僕としても大満足だ。
「タクミ君ありがとう。おかげでブラックバッファローの時期が過ぎるまで何とかなるよ」
てっきりまだまだ足りないと思ってたけど何とかなるんだ。ともかくこれで、僕はDランクに昇格した。本来なら戦闘試験が必要なんだけど、僕の場合は討伐しすぎなので免除になったみたい。
「タクミ様、盗賊の報告を忘れてます」
「あっ!」
ソフィアに言われるまで本当に忘れてた。
僕の心が忘れたかったのか?
「なに、盗賊が出たの?」
ハンスさんに、盗賊の規模と襲撃された場所、その後に僕らがした対処について報告した。ハンスさんは驚きながらも、冷静に僕の話を聞いていた。
「じゃあギルドカードを回収してるよね。ギルドの方で報償金を調べておくよ。でもこれで、タクミ君も名実ともにDランクの冒険者だね」
それから僕はトレントの指名依頼の報酬を受け取ると、ドガンボさんとも別れて家に帰ることにした。
別れ際ドガンボさんに、明後日からミスリルとアダマンタイトの精錬をする約束をした。朝一からと念を押されて。
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