不死王はスローライフを希望します

小狐丸

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連載

二百四十三話 いつもの日常

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 ジーラッド聖国が、草原地帯の入り口付近に俺が造った竜人族の拠点に攻め寄せたり、城塞都市とその周辺の農地で収穫祭を開催したりと、良い事も面倒な事も色々となんやかんやあったが、今日も草原地帯は平和だ。

 だいたい、スパルトイのドンナーとベルク。マザーキラープランツとその子達、イモータルトレントとアイアンゴーレムの「鉄男」と「鉄次」が守る竜人族の拠点を攻めるなんて、魔王国でも難しい。ジーラッド聖国如きにどうにか出来るものじゃない。

 それに護られる立場を良しとしない竜人族の人達が、ドンナーやベルクに頼み込んで訓練し始めたらしいからな。

 もともと魔王国でも高い戦闘能力を保つと言われている竜人族だ。それなりには強くなるのかな?

 俺としてもオオ爺サマから属性竜の素材を分けてもらい、ドンナーとベルクを造れたのは楽しかったんだから、面倒はあったけど良い事の方が大きかったかな。

 それに住民からの願いで開催してみた収穫祭も、初めてにしては大成功と言っていいのかな。俺的には、お祭りや夜店って感じだったけど、結果的にみんなが喜んでたみたいだからな。




 そんな収穫祭を終えた草原地帯だけど、草原地帯入り口に竜人族の集落が出来た影響が、ぼちぼち出始めた。

「商人?」
「はい。ローズ商会のバーバラ殿のように、フットワーク軽く、それこそ赤字覚悟で訪れるガッツある者が、ポツポツとで始めています」

 俺の眷属であり執事のセブールから報告があったんだ。ローズ商会のバーバラって女は、色々と思惑があったみたいだけど、結果的に害になる程じゃなさそうなので放置した。セブールが言うには、ああいうガッツある商人がチラホラと来ているらしい。

 俺としても盗賊紛いの護衛を連れて来るくらいなら、何の問題もない。子供達のいい訓練相手になるしな。

 今まで主に魔王国との交易だったが、他の西方諸国から商人が来るのは歓迎したい。

 竜人族の集落を造る事になった理由の交易に関して、竜人族や冒険者ギルドなんかと商業ギルドは揉めているからな。表立って大商会は来にくい。バーバラって女は、聖国や商業ギルドを上手く転がして草原地帯で利を得ようとしたみたいだがな。

「商人かぁ。竜人族の集落までなら問題も起こらないよな」
「はい。あそこにはスパルトイのベルクとドンナーに加え、アイアンゴーレムの鉄男と鉄次もいます。余程の馬鹿でも悪さはしないかと」
「だよなぁ。マザーキラープランツとイモータルトレントも何気に迫力があるしな」
「はい。竜人族の集落で、ある程度篩にかけるように出来ればいいのですが、商人の目的地はここですから」

 草原地帯が栄えると、どうしても人の流入は避けられない。まぁ、どうしても俺が嫌なら排除も可能だけど、そこまで俺も傲慢じゃない。

 で、現状、教会や孤児院のあるこの場所は、俺の眷属であるウッドゴーレムやアイアンゴーレムが護っているし、黄金竜のオオ爺サマやその眷属のギータやグラース達が気にかけてくれている。少し頼りないが、魔王国の兵士も頑張っているしな。

 竜人でも一人、フラフラと何処に居るのか分からない、本当に風任せのようなゲイルは別にして、他の三人の竜人は頼りになるからな。

 それに孤児院の子供達にもパワーレベリングを施して、外からの悪意に打ち勝つ体制は考えているつもりだけど、そこまでしても万全とは言い難い。赤ちゃんまでには、パワーレベリングをするのは無理だからな。

 ただセブールが言うように、商人が用があるのは、総合買取所があるここだ。

「今のところ魔王国みたいなキャラバンを組んで来る商会はいないが、それでも護衛なんかを含めたらそれなりの人数だしな」
「わざとでしょうが、ローズ商会の護衛も質の良くないものが混ざっていましたから」
「こんな辺境に護衛依頼で来る冒険者だからな。そりゃまともじゃないのも混ざるか」

 ローズ商会が連れてきた護衛の中に、良くない質の冒険者が混ざっていた。まあ、アレはわざとなのは分かっている。で、この冒険者というより盗賊と言った方がしっくりくる奴らは、期待通りにやらかそうとし、きっちりと撃退訓練のモルモットになってくれた。

 しかもこれまたラッキーな事に、ジーラッド聖国が懲りもせず、草原地帯入り口付近に造られた竜人族の集落に侵攻して来てくれた。

 竜人族の集落とは言うものの、その堅固な造りは砦なみ。しかも中の戦力は、ジーラッド聖国如きが総力で攻めても蹴散らせるレベル。

 当然のように被害ゼロで撃退し、竜人族の若者達の良い実戦経験にもなった。

「旦那様、ここはダーヴィッド殿下や教会のロダン殿を含めて、相談してはいかがでしょうか?」
「それもそうだな。俺たちは森が拠点だしな。ここに暮らす人達と話し合うのが一番か」

 セブールが一度この草原地帯の拠点。城塞都市擬きで実際に暮らしているロダン司祭や、魔王国からここに派遣されているダーヴィッド君を交えて話し合った方がいいのでは? と提案してくれた。

 この地の治安維持に関わる話だしな。魔王国の第二王子で、魔王国の駐屯地の責任者であるダーヴィッド君は勿論、ロダンさんだけじゃなく、孤児院を任せていてこの場所を造った当初から居る古参のシスター、アーシアさんやメルティーさんにも話を聞きたい。

「リーファ、ロダンさん達のスケジュールを確認お願いできる?」
「承知しました。旦那様」
「では、ダーヴィッド殿下の方は私にお任せください」
「ああ、頼むよ」

 セブールの孫娘で俺の眷属であるリーファに、教会のロダンさん達の都合を聞いてもらうよう頼むと、セブールはダーヴィッド君の方を引き受けてくれた。

 人が増えて賑やかになるのは良い事だけど、要らぬ馬鹿も増えるからな。こればかりは仕方ない。ここに住む人にとっては、プラスの方が大きいんだから。



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