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二百四十四話 今後の草原地帯
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俺は日を改めて草原地帯に来ている。ミルとララは、いつもの如く孤児院の友達ポーラちゃんの所だ。
草原地帯の城塞都市……そろそろ名前付けた方がいいという事になり、セブールやリーファ達と相談してみよう。その城塞都市に在る城と言うか、政庁と言うのか、中央に造られた建物の一室に俺達は集まっている。
「今日はごめんね。集まってもらって」
「いえいえ。この街の治安については、孤児院を預かる身としては他人事ではありませんから」
「そうだな。実際に何度かトラブルも起きている。増える事はあっても無くなる事はないだろう」
俺がテーブルについたメンバーに声を掛けると、アーシアさんとロダンさんも人の増える問題点は無視出来ないと言ってくれた。
孤児院は襲撃されているし、公園で遊ぶ子供も拐われかけた。ロダンさんとアーシアさんにとっては他人事では済まされない問題だ。
「魔王国と草原地帯の間の街道整備が進んだお陰で、この城塞都市を訪れる商人が増える事はあっても、減る事はないだろうしな」
「魔王国のキャラバンが行き来するお陰で、街道が通る途中の三ヵ国もうるおい始めているようですからね」
「オイフェス王国、ウラル王国、ゴダル王国ですね。魔王国からも街道の整備は各国にもお願いしていますし、資金や物資の援助もしていますから」
魔王国から草原地帯へと、大陸の中央付近を南北に走る一本の街道。その整備は本来なら他国である魔王国が干渉するなど無理な話なのだが、先代魔王が引き起こした大陸規模の大戦後、復興途中の三ヵ国は、国としての見栄より実利をとったようで、ダーヴィッド君が言うように、魔王国の協力もあり南北に走る草原地帯との街道整備が急ピッチで進んでいる。
魔王国のキャラバンも行き来する道が整っていた方がありがたい。多少の労力や資金も喜んで出すだろう。
それに伴い、草原地帯との交易で一旗上げたい商人が増えるのは自然な事だ。
「我が国から駐屯している兵士を増やしますか? 父上や宰相も許可すると思います」
「いや、魔王国だけに負担を強いるのは違うかな」
「そうですね。多少の増員は構いませんが、この街はあくまで旦那様が造られたものです。魔王国の兵士に治安維持を任せきりになるのは違いますね」
ダーヴィッド君から、治安維持に魔王国から駐屯する兵士を増やしましょうかとの申し出もありがたいが、俺とセブール的にはそれは少し違う。
この城塞都市は、俺の偽善で孤児院を造りたいが為に建設した場所だ。その後、魔王国との交易や移民やなんやらで、住民も増え人の行き来も増えたが、この場所に関しての責任者となると、それは俺なのは間違いない。
今はオオ爺サマ達古竜のお陰もあり、深淵の森から魔物が近寄る事もほぼ無いが、そもそもは俺が居なきゃ成り立たない土地だったからな。
「治安維持に兵士を多少増やすのはいいでしょう。商人の護衛がこの街に多く出入りするのは、子供達を預かる身としてはどうかと思います」
「アーシアの言うように、孤児院に来て日の浅い子供が拐われたばかりですから。シグムンド殿達のお陰で何事もなかったとはいえ、あの時は私たちもヒヤリとしましたから」
「そうだよなぁ」
孤児院に来て日が浅く、未だパワーレベリングをしていなかった子供が拐われた時、ミルやララ、ポーラが、従魔であるシロやクロ、マロンに乗り追いかけたんだよな。セブールや俺が居たから万が一も無いんだけど、何度も同じような事があるのは面白くない。
「とはいえ草原地帯の入り口付近に造った、竜人族の集落のように、一目で過剰だと判る戦力を置くのも、この街や外の農地に住む住民がストレスを感じるでしょう」
「まあ、あれは竜人族だからありなやつだな」
二体の威圧感たっぷりなスパルトイに、アイアンゴーレム、そこにイモータルトレントときて、ダメ押しのキラープランツを従えるマザーキラープランツだ。脳筋な竜人族だからすんなり受け入れている。深淵の森でパワーレベリングする孤児院の子供達なら大丈夫だろうけど、外の農地の子供や、これから増えるだろう城塞都市内で暮らす人達にはストレスかもしれない。
「そこでどうでしょう。竜人族の集落とこの街の間に、冒険者が宿泊する用の小さな街を造るのは?」
「……いいんじゃないでしょうか。冒険者は野営に慣れていますから、それ程豪華な宿は必要ありませんし。それこそ外壁で囲われた広場でも十分です」
「それ、いいな。冒険者はまとめてしまえば面倒も減るか」
そこでセブールが一つ提案してきた。竜人族の集落とこの城塞都市の間に、冒険者用の街を造るというものだ。それにはダーヴィッド君も賛成する。
「竜人族の集落で篩にかけるのですね」
「竜人族には申し訳ないですが、私もその案に賛成です。子供達と接触が少なくなる方が安心です」
ロダンさんとアーシアさん的にも冒険者がこの街に増えるのは嫌みたいだな。
「街を造る旦那様と、不良冒険者をチェックする竜人族の皆さまには申し訳ないですが、新たに街を設けるのが最善の策ではないでしょうか?」
「魔王国としても街の建設に協力します。そうすれば、駐屯の兵士を増やしても西方諸国から文句も出ずらいでしょうし」
セブールが俺と竜人族の負担を指摘するが、俺としては街一つ造るくらいなんでもない。竜人族の集落に居るメンバーは、若くて戦える者が中心だから負担も少ないだろう。
ダーヴィッド君としても、この俺が全て造った城塞都市に、多くの兵士を駐屯させずらい問題があった。それを街の建設に協力する事によって、新たに兵士を増やしやすい。
まあ、それでも文句を言う国はあるんだけどな。ジーラッド聖国とか。ジーラッド聖国とか。ジーラッド聖国とか。
ダーヴィッド君も馬鹿な不良冒険者や、西方諸国から流れてきたテロリストを見てきたから、魔王国として何か出来ないか考えていたんだろう。この機会に少しでも駐屯する兵士が増やせればと思ったんだろうな。魔王国の兵士は馬鹿な事はしないからな。魔王国でここに来る人間は、俺の事を知っているからな。
「とはいえ宿屋や消耗品を補充する店は必要だな。それをどうするか」
「そこは冒険者ギルドとも相談してはどうだろう」
街を造るのは片手間でも出来る簡単な仕事だ。だけどその街の運営をどうするかが問題になる。それを俺が口に出すと、ロダンさんから冒険者ギルドと相談すればとのアドバイスされた。
「ロダンさん。冒険者ギルドですか?」
「ええ。素行の悪くない引退間近の冒険者をスカウトするって手もあります」
「なら程。真面目な冒険者のセカンドキャリアですか。いいかもしれないですね」
「いいのではないでしょうか。引退後遊んで暮らせる超一流は別にして、引退後も働きたい者は多い筈です」
「はい。それに半端な不良冒険者にも負けないでしょうし」
ロダンさんが言うように、そこそこ腕のあるベテラン冒険者の引退後の仕事として、宿屋や雑貨屋の店主はいいかもしれない。不良冒険者が暴れてもある程度対応できそうだしな。
「なら僕の方で冒険者ギルドのマスターと面談のアポを取っておきます」
「じゃあそっちはダーヴィッド君に任せようかな。場所は竜人族の集落とここのちょうど中間地点でいい?」
ダーヴィッド君が冒険者ギルドのマスターと話し合ってくれるみたいだから任せよう。俺は街の建設だな。
実際に冒険者の街を造る場所を確認しておく。
「それで問題ないかと。ここからでも目視可能な距離です。最低限の護衛で大丈夫です」
「寧ろ護衛なんて必要ないですな」
「はい。この付近はアスラさんのお陰もあって、森から魔物が出て来る事はなくなりましたから」
セブールとロダンさん、アーシアさんが集落と城塞都市の中間地点で問題ないと頷く。
アーシアさんが言うように、この付近は俺やオオ爺サマの影響だけじゃなく、定期的に俺の眷属であるグレートタイラントアシュラベアのアスラが巡回警備している。深淵の森でも上位の上澄みであるアスラの気配で魔物除けになるし、それが分からない馬鹿な魔物は直接アスラの実力行使により駆除される。結果、最近じゃ草原地帯の入り口付近から城塞都市までなら護衛も必要ないんじゃないかな。
「必要な宿の数と大きさ、その他の建物の数と大きさも教えてくれるかな」
「……宿は少し高級なものを一軒と、安宿を大きめなものを一軒で大丈夫でしょう」
「それもそうか。無制限に商人を受け入れる訳じゃないしな」
「はい。商業ギルドとは敵対していますから」
必要な宿の数や大きさを聞くと、セブールからは取り敢えず高級なのと安宿との二つでいいらしい。確かに、商人が増えると言っても、現状商業ギルドとは険悪な関係で、深淵の森の素材の窓口は、合同買取所を運営する魔王国と冒険者ギルド、錬金術師ギルドに薬師ギルドだ。商業ギルドがハブられた状態になる。なのでおおっぴらに草原地帯に進出できる大商会はなく、当面個人の小さな商会か中堅の商会が来るくらいだと思っている。
商会としてそこそこの規模のローズ商会も、大規模な商隊を組んで来るなんて事はしなかったからな。
「大規模なキャラバン組まれて来られても叩き返すしな」
「ええ。小規模な取り引きなら合同買取所からなら認めているだけですしね」
商人が増える事を懸念しての護衛の冒険者用区画なのだが、そもそも商業ギルドがハブられている状況で、大規模な商会が隊列を組んで来る事はない。
「竜人族の集落を抜ける時に、チェックする関所でも設けるか」
「魔王国内の竜人族の集落も、少しでも多くの人員を送りたいでしょうし、役目が増えるのは喜ぶのではないでしょうか」
「シグムンド殿。一度、冒険者ギルドや錬金術師ギルド、薬師ギルドと竜人族の方々も含め会合を設けませんか。錬金術師ギルドや薬師ギルドも、冒険者向けの街ならポーション類の販売を考えるかもしれません」
「そうだな。造る前に話をしておく方がいいか」
「ですな」
竜人族の集落に関所を設置する話をセブールとしていると、ダーヴィッド君から冒険者ギルドや錬金術師ギルド、薬師ギルドも含め、竜人族とも話し合った方がいいのではと提案され、もっともだとセブールと二人頷く。
竜人族の集落の中に関所を設置するなら、竜人族に話を通すのは当たり前だし、新しく冒険者の街を造るとなれば、冒険者ギルドは当然として錬金術師や薬師の需要もあるだろう。
「なら竜人族の集落とこの街の間に、冒険者用の街を造るのは決定として、細かな縄張りや施設の数と大きさなんかは、竜人族の長老や商業ギルドを除いた各ギルドとの話し合い後って感じだな」
「ええ、それで大丈夫でしょう。もしかすると冒険者用の街にも教会をと本部辺りが言い出すかもしれませんが」
「ああ、さすがに竜人族の集落には教会は無理だもんな」
「はい」
「まぁ、その辺りは今はどっちでもいいか」
取り敢えず詳細を詰める為に、もう一度会合を設ける事に決まった。ロダンさんは、新しく造った街に教会を造れと本部が言い出すかもと眉間に皺を寄せるが、今はその辺はどっちでもいい。もう俺としては深淵の森を含めた草原地帯も責任を持つと決めたからな。誰かの好き勝手にはさせない。
さて、セブールとリーファを連れて現地の視察でもしておくか。地下の水脈の確認は必須だからな。
草原地帯の城塞都市……そろそろ名前付けた方がいいという事になり、セブールやリーファ達と相談してみよう。その城塞都市に在る城と言うか、政庁と言うのか、中央に造られた建物の一室に俺達は集まっている。
「今日はごめんね。集まってもらって」
「いえいえ。この街の治安については、孤児院を預かる身としては他人事ではありませんから」
「そうだな。実際に何度かトラブルも起きている。増える事はあっても無くなる事はないだろう」
俺がテーブルについたメンバーに声を掛けると、アーシアさんとロダンさんも人の増える問題点は無視出来ないと言ってくれた。
孤児院は襲撃されているし、公園で遊ぶ子供も拐われかけた。ロダンさんとアーシアさんにとっては他人事では済まされない問題だ。
「魔王国と草原地帯の間の街道整備が進んだお陰で、この城塞都市を訪れる商人が増える事はあっても、減る事はないだろうしな」
「魔王国のキャラバンが行き来するお陰で、街道が通る途中の三ヵ国もうるおい始めているようですからね」
「オイフェス王国、ウラル王国、ゴダル王国ですね。魔王国からも街道の整備は各国にもお願いしていますし、資金や物資の援助もしていますから」
魔王国から草原地帯へと、大陸の中央付近を南北に走る一本の街道。その整備は本来なら他国である魔王国が干渉するなど無理な話なのだが、先代魔王が引き起こした大陸規模の大戦後、復興途中の三ヵ国は、国としての見栄より実利をとったようで、ダーヴィッド君が言うように、魔王国の協力もあり南北に走る草原地帯との街道整備が急ピッチで進んでいる。
魔王国のキャラバンも行き来する道が整っていた方がありがたい。多少の労力や資金も喜んで出すだろう。
それに伴い、草原地帯との交易で一旗上げたい商人が増えるのは自然な事だ。
「我が国から駐屯している兵士を増やしますか? 父上や宰相も許可すると思います」
「いや、魔王国だけに負担を強いるのは違うかな」
「そうですね。多少の増員は構いませんが、この街はあくまで旦那様が造られたものです。魔王国の兵士に治安維持を任せきりになるのは違いますね」
ダーヴィッド君から、治安維持に魔王国から駐屯する兵士を増やしましょうかとの申し出もありがたいが、俺とセブール的にはそれは少し違う。
この城塞都市は、俺の偽善で孤児院を造りたいが為に建設した場所だ。その後、魔王国との交易や移民やなんやらで、住民も増え人の行き来も増えたが、この場所に関しての責任者となると、それは俺なのは間違いない。
今はオオ爺サマ達古竜のお陰もあり、深淵の森から魔物が近寄る事もほぼ無いが、そもそもは俺が居なきゃ成り立たない土地だったからな。
「治安維持に兵士を多少増やすのはいいでしょう。商人の護衛がこの街に多く出入りするのは、子供達を預かる身としてはどうかと思います」
「アーシアの言うように、孤児院に来て日の浅い子供が拐われたばかりですから。シグムンド殿達のお陰で何事もなかったとはいえ、あの時は私たちもヒヤリとしましたから」
「そうだよなぁ」
孤児院に来て日が浅く、未だパワーレベリングをしていなかった子供が拐われた時、ミルやララ、ポーラが、従魔であるシロやクロ、マロンに乗り追いかけたんだよな。セブールや俺が居たから万が一も無いんだけど、何度も同じような事があるのは面白くない。
「とはいえ草原地帯の入り口付近に造った、竜人族の集落のように、一目で過剰だと判る戦力を置くのも、この街や外の農地に住む住民がストレスを感じるでしょう」
「まあ、あれは竜人族だからありなやつだな」
二体の威圧感たっぷりなスパルトイに、アイアンゴーレム、そこにイモータルトレントときて、ダメ押しのキラープランツを従えるマザーキラープランツだ。脳筋な竜人族だからすんなり受け入れている。深淵の森でパワーレベリングする孤児院の子供達なら大丈夫だろうけど、外の農地の子供や、これから増えるだろう城塞都市内で暮らす人達にはストレスかもしれない。
「そこでどうでしょう。竜人族の集落とこの街の間に、冒険者が宿泊する用の小さな街を造るのは?」
「……いいんじゃないでしょうか。冒険者は野営に慣れていますから、それ程豪華な宿は必要ありませんし。それこそ外壁で囲われた広場でも十分です」
「それ、いいな。冒険者はまとめてしまえば面倒も減るか」
そこでセブールが一つ提案してきた。竜人族の集落とこの城塞都市の間に、冒険者用の街を造るというものだ。それにはダーヴィッド君も賛成する。
「竜人族の集落で篩にかけるのですね」
「竜人族には申し訳ないですが、私もその案に賛成です。子供達と接触が少なくなる方が安心です」
ロダンさんとアーシアさん的にも冒険者がこの街に増えるのは嫌みたいだな。
「街を造る旦那様と、不良冒険者をチェックする竜人族の皆さまには申し訳ないですが、新たに街を設けるのが最善の策ではないでしょうか?」
「魔王国としても街の建設に協力します。そうすれば、駐屯の兵士を増やしても西方諸国から文句も出ずらいでしょうし」
セブールが俺と竜人族の負担を指摘するが、俺としては街一つ造るくらいなんでもない。竜人族の集落に居るメンバーは、若くて戦える者が中心だから負担も少ないだろう。
ダーヴィッド君としても、この俺が全て造った城塞都市に、多くの兵士を駐屯させずらい問題があった。それを街の建設に協力する事によって、新たに兵士を増やしやすい。
まあ、それでも文句を言う国はあるんだけどな。ジーラッド聖国とか。ジーラッド聖国とか。ジーラッド聖国とか。
ダーヴィッド君も馬鹿な不良冒険者や、西方諸国から流れてきたテロリストを見てきたから、魔王国として何か出来ないか考えていたんだろう。この機会に少しでも駐屯する兵士が増やせればと思ったんだろうな。魔王国の兵士は馬鹿な事はしないからな。魔王国でここに来る人間は、俺の事を知っているからな。
「とはいえ宿屋や消耗品を補充する店は必要だな。それをどうするか」
「そこは冒険者ギルドとも相談してはどうだろう」
街を造るのは片手間でも出来る簡単な仕事だ。だけどその街の運営をどうするかが問題になる。それを俺が口に出すと、ロダンさんから冒険者ギルドと相談すればとのアドバイスされた。
「ロダンさん。冒険者ギルドですか?」
「ええ。素行の悪くない引退間近の冒険者をスカウトするって手もあります」
「なら程。真面目な冒険者のセカンドキャリアですか。いいかもしれないですね」
「いいのではないでしょうか。引退後遊んで暮らせる超一流は別にして、引退後も働きたい者は多い筈です」
「はい。それに半端な不良冒険者にも負けないでしょうし」
ロダンさんが言うように、そこそこ腕のあるベテラン冒険者の引退後の仕事として、宿屋や雑貨屋の店主はいいかもしれない。不良冒険者が暴れてもある程度対応できそうだしな。
「なら僕の方で冒険者ギルドのマスターと面談のアポを取っておきます」
「じゃあそっちはダーヴィッド君に任せようかな。場所は竜人族の集落とここのちょうど中間地点でいい?」
ダーヴィッド君が冒険者ギルドのマスターと話し合ってくれるみたいだから任せよう。俺は街の建設だな。
実際に冒険者の街を造る場所を確認しておく。
「それで問題ないかと。ここからでも目視可能な距離です。最低限の護衛で大丈夫です」
「寧ろ護衛なんて必要ないですな」
「はい。この付近はアスラさんのお陰もあって、森から魔物が出て来る事はなくなりましたから」
セブールとロダンさん、アーシアさんが集落と城塞都市の中間地点で問題ないと頷く。
アーシアさんが言うように、この付近は俺やオオ爺サマの影響だけじゃなく、定期的に俺の眷属であるグレートタイラントアシュラベアのアスラが巡回警備している。深淵の森でも上位の上澄みであるアスラの気配で魔物除けになるし、それが分からない馬鹿な魔物は直接アスラの実力行使により駆除される。結果、最近じゃ草原地帯の入り口付近から城塞都市までなら護衛も必要ないんじゃないかな。
「必要な宿の数と大きさ、その他の建物の数と大きさも教えてくれるかな」
「……宿は少し高級なものを一軒と、安宿を大きめなものを一軒で大丈夫でしょう」
「それもそうか。無制限に商人を受け入れる訳じゃないしな」
「はい。商業ギルドとは敵対していますから」
必要な宿の数や大きさを聞くと、セブールからは取り敢えず高級なのと安宿との二つでいいらしい。確かに、商人が増えると言っても、現状商業ギルドとは険悪な関係で、深淵の森の素材の窓口は、合同買取所を運営する魔王国と冒険者ギルド、錬金術師ギルドに薬師ギルドだ。商業ギルドがハブられた状態になる。なのでおおっぴらに草原地帯に進出できる大商会はなく、当面個人の小さな商会か中堅の商会が来るくらいだと思っている。
商会としてそこそこの規模のローズ商会も、大規模な商隊を組んで来るなんて事はしなかったからな。
「大規模なキャラバン組まれて来られても叩き返すしな」
「ええ。小規模な取り引きなら合同買取所からなら認めているだけですしね」
商人が増える事を懸念しての護衛の冒険者用区画なのだが、そもそも商業ギルドがハブられている状況で、大規模な商会が隊列を組んで来る事はない。
「竜人族の集落を抜ける時に、チェックする関所でも設けるか」
「魔王国内の竜人族の集落も、少しでも多くの人員を送りたいでしょうし、役目が増えるのは喜ぶのではないでしょうか」
「シグムンド殿。一度、冒険者ギルドや錬金術師ギルド、薬師ギルドと竜人族の方々も含め会合を設けませんか。錬金術師ギルドや薬師ギルドも、冒険者向けの街ならポーション類の販売を考えるかもしれません」
「そうだな。造る前に話をしておく方がいいか」
「ですな」
竜人族の集落に関所を設置する話をセブールとしていると、ダーヴィッド君から冒険者ギルドや錬金術師ギルド、薬師ギルドも含め、竜人族とも話し合った方がいいのではと提案され、もっともだとセブールと二人頷く。
竜人族の集落の中に関所を設置するなら、竜人族に話を通すのは当たり前だし、新しく冒険者の街を造るとなれば、冒険者ギルドは当然として錬金術師や薬師の需要もあるだろう。
「なら竜人族の集落とこの街の間に、冒険者用の街を造るのは決定として、細かな縄張りや施設の数と大きさなんかは、竜人族の長老や商業ギルドを除いた各ギルドとの話し合い後って感じだな」
「ええ、それで大丈夫でしょう。もしかすると冒険者用の街にも教会をと本部辺りが言い出すかもしれませんが」
「ああ、さすがに竜人族の集落には教会は無理だもんな」
「はい」
「まぁ、その辺りは今はどっちでもいいか」
取り敢えず詳細を詰める為に、もう一度会合を設ける事に決まった。ロダンさんは、新しく造った街に教会を造れと本部が言い出すかもと眉間に皺を寄せるが、今はその辺はどっちでもいい。もう俺としては深淵の森を含めた草原地帯も責任を持つと決めたからな。誰かの好き勝手にはさせない。
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