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6巻
6-1
しおりを挟む一話 こっそり覗き見
最弱の魔物ゴーストから、この世界最強の存在である特殊なバンパイヤロードであるエレボロスロードにまで進化し成り上がった俺――シグムンド。
深淵の森に続いて、俺は草原地帯にも城塞都市という確固とした拠点を築いた。そこに古竜の長である黄金竜のオオ爺サマが移り棲み、眷属である竜人を創りだしたのだが、彼らを崇める魔王国の竜人族にそのことを知られてしまった。
そもそも竜人族っていうのは、オオ爺サマが属性竜という竜種の遺したアイテムを使って生み出した眷属を祖先とする一族らしい。それでオオ爺サマや、先祖と同じ方法で創られた竜人を崇めているわけだな。
そこから始まる竜人族たちの大騒ぎ。竜人族の長老は、オオ爺サマ詣でがしたいばかりに、西方諸国でも希少で高価な竜人族の高級茶葉で城塞都市と交易しようと考えた。
俺的には、美味しいお茶が飲めるのならと、これまで魔王国としていた交易の回数を増やすのを了承したんだ。
魔王国の第二王子で、魔王国と俺との窓口として城塞都市の駐在員のようになっているダーヴィッドは、その件で魔王国に一旦戻り、魔王や幹部たちと話し合いを行うことにしたらしい。
そこで、俺はこっそりと姿と気配を消して会議を覗き見ることにしたんだ。
バンパイヤである俺なら、霧になり魔力と気配を隠蔽すれば、魔王でも気が付かないからな。
◇
ここは西方諸国に近い魔王国の国境近く。かつて魔王国が西方諸国に仕掛けた戦争も終わり、その西方諸国との交易の窓口として栄える街。
魔王国では珍しく、高い外壁に守られた街の、その中でも見るからに守りを固めた砦のような建物――街の代官所でその会議は行われていた。
そこに魔王国の宰相デモリスと文官の長アバドン、竜人族の長老、商業ギルドの本部長、冒険者ギルドの支部長、錬金術師ギルドの長老、薬師ギルドの本部長と、そうそうたる面々が集う。
一癖も二癖もありそうな面々を前に、魔王国宰相デモリスが話し始める。
「今日、わざわざお主らを呼んだのは、他でもない。耳のいいお主らなら知っているだろう、草原地帯についてじゃ」
草原地帯というワードに、集まった各ギルド関係者が騒つく。
どこの国も、どんな者も手をつけられなかった草原地帯に、突如城塞都市が出現したという話は、耳聡い者ならおそらく知っているだろう。
特に、そこに金の匂いを嗅ぎつけた商業ギルドなどは、既に何度か冒険者を派遣し調査している。
とはいえ現状、魔王国のキャラバン以外を受け入れていない城塞都市では、正規の手順を踏んでいない者に関しては門前払いしている。そのため、中の情報は魔王国の依頼で護衛をした冒険者経由でしか入ってきていない。
その上、ダーヴィッドが護衛の冒険者まで慎重に選別しているため、守秘義務を犯して情報を売る冒険者も少なく、草原地帯に城塞都市が確かにあるという事実以外は、ほぼ何も分かっていない状況だった。
もちろん、ダーヴィッドが主導して移民事業が行われていたし、貧しい砂漠の小国ウラル王国でも纏まった人数の移民を募集したことなどは知られている。だが、各種ギルドは一切噛んでいないので、ダーヴィッドが中心になって動いていることもあり、草原地帯の城塞都市は魔王国の飛び地という認識だ。
それを踏まえて、本題に入る前にアバドンからの説明が始まる。
「まず言っておこう。あの草原地帯にある城塞都市は、魔王国とは関係ない。一応、駐在することを許され、なおかつ信頼関係から仕事を依頼されたり交易を行ったりしてはいるが、そもそも魔王国に、草原地帯に城塞都市を造り維持する力などない」
誤解のないよう、チラリと商業ギルドの本部長を見て最初に釘を刺すアバドン。
そこまで聞いて最初に口を開いたのは、冒険者ギルドの支部長グランツだった。彼は、現役時代Aランクの冒険者だった叩き上げながら、調整能力や事務処理能力にも秀でる。近い将来、本部長――いわゆるグランドマスターと呼ばれる冒険者ギルドのトップになると目されていた。
「……草原地帯に古竜が現れたという噂は俺も聞いている。子供の頃、お伽噺で聞いた神の使徒様だ。まさか、古竜が支配しているのか?」
「いえ、古竜様が治めているわけではありません。あの地は、その黄金竜様が助力を頼むような存在が統べる地と言えば分かるでしょうか」
「オイオイ、マジかよ」
グランツは魔王国の二人を除けば、一番、草原地帯について情報を得ていた。それはそうだ。ダーヴィッドが率いるキャラバンの護衛にも冒険者はいたのだから。
その関係で、古竜にちょっかいを出した馬鹿が排除されているのも知っていた。
そこにアバドンから、あの地は黄金竜の力で成り立っているのではなく、それ以上の存在が治める地だと聞かされ、驚きのあまり口調が乱れてしまった。
「まあ、そんな話はいいではないですか。我らを集めたということは、深淵の森の素材を売ってくれるのでしょう? 少し前から、少量ですが、魔王国で深淵の森の素材が出回っているのは知っていますよ」
「待てモーガン。そんなことは後にしろ。草原地帯の支配者がどんな存在なのか分からなければ、商売以前の問題だろう!」
グランツとアバドンのやり取りを前に、どうでもいいと話を変えようとしたのは、商業ギルドの本部長モーガン。そのモーガンが望むのは、深淵の森の貴重な素材のみ。古竜がどうとかいうことは関係ない。いや、むしろ古竜の素材を得られないか、密かに考えているような男だ。
「そんなこととは何ですか。私どもも魔王国が深淵の森の貴重な素材を独り占めするのではと、抗議する用意をしていたところに、ちょうどお話が掛かったのです。その話をして何が悪いのです」
「お前は、その深淵の森の素材を誰が供給しているのか考えないのか!」
「まあまあ、お二人とも落ち着いて」
商業ギルドの利益しか頭にないモーガンと、それ以前に草原地帯という不可侵だった地を治める存在について知るべきだと主張するグランツがぶつかり、それをアバドンが諌める。
「まず、商業ギルドに言っておきたい。草原地帯を統べる方は、別に深淵の森の素材を魔王国に売る必要はないということを。現在、交易が続いているのは、ひとえにダーヴィッド殿下の努力と城塞都市側の魔王国への配慮によります」
アバドンがそう続けて説明し、グランツが頷く。
「そうだろうな。あの先代魔王ですら外縁部に入るのが精一杯だった深淵の森だ。その南の草原地帯は、下手すりゃあ森の魔物の餌場になりかねない。そんな場所を統べているってことは、森の魔物が恐れて近付かない存在ってことだぞ。分かってるのか?」
「ふん。どうせ何かカラクリがあるんだろう。どちらにせよ、素材を魔王国が独占するのは容認できん」
しかし、モーガンは二人の説明にも納得していない。
「わしらは、貴重な深淵の森の素材を少しでも回してもらえればいい」
「そうじゃな。今まで諦めていた病を治すことができるかもしれん」
その点、そんな風に口をそろえて言う錬金術師ギルドと薬師ギルドは謙虚だ。
錬金術師ギルドは触媒として森の魔物素材を、薬師ギルドは希少な薬草類を望んでいるだけだ。身の程を弁えているのか、手に入ればラッキーくらいに考えている。
ただ、モーガンは失敗したかもしれない。
(なぁ、あの太った奴、がめつくないか?)
(あの男は典型的な利を追い求める商人ですから)
(そうですね。ご主人様がご不快なら消しますか?)
この話し合いは、シグムンドと、その眷属でもある執事のセブールとメイドのリーファの三人が、姿を消して見ているのだから。
三人のモーガンへの好感度が、これ以上ないくらい低くなったのは当然だろう。
二話 荒れる会合
俺たちが隠れて見ている話し合い。
俺たちの存在がどういったものなのか、慎重に把握しようとしている冒険者ギルドのグランツには好感が持てる。
逆に、なぜ自分たちを噛ませないのかと、不満を隠さない商業ギルドのモーガンは嫌な感じだな。
ここで、ずっと我慢していた様子の竜人族の長老が口を開く。
「お主らのことなどどうでもいいんじゃ。そもそも、草原地帯との交易回数を増やしていただけることになったのは、ワシらの訴えを黄金竜様が認めてくれたから。魔王国としては筋を通してお主らに話しておく必要があったのかもしれんが、後から来て出しゃばるな小僧共!」
「なっ!? 小僧だと!」
「まぁ、竜人族の長老からすれば、人族の俺なんて小僧だろうな」
竜人族の長老に小僧呼ばわりされたモーガンが怒っている。それとは対照的に、冒険者ギルドのグランツは冷静だな。
「あの、長老……」
「分かっておる! あの地の主人が黄金竜様ではないことくらい!」
長老の口ぶりが、オオ爺サマが草原地帯を統べているように聞こえるとアバドンは注意しようとしたみたいだった。竜人族的には分かってはいても信仰の対象だからな。その辺は仕方ない。むしろ、オオ爺サマが責任者でも俺は全然構わない。
「でじゃ! ワシらは黄金竜様に詣でるために交易回数を増やして欲しいと願い出たんじゃ。それを森神様に聞き届けていただいた。ワシらは竜人族の茶葉を交易の柱にと考えておる。お主ら、深淵の森の素材と言うが、対価はあるのか?」
「ぐっ!? 竜人族の茶葉だと! 同じ重さの金より貴重なものではないか!」
……色々と突っ込みたいところがあるな。
(ご主人様を森神様と呼ぶとは、ピッタリですね)
(深淵の森の支配者ですから、竜人族の長老もなかなかセンスがいいですね)
(いや、神なんて畏れ多いから)
念話で話しかけてきたリーファとセブールに俺はそう答えた。
神に創られたオオ爺サマたちならいざ知らず、俺が神様扱いされるのは畏れ多いよ。
それに、先ほどから普通は俺と交易できないかのような口ぶりで話しているけど、今も少数だけど、ガッツある商人は魔物素材を求めて城塞都市に来ている。商人ってのは図太いよな。当然、売る素材は俺たち的にどうでもいいものにはなるけど、商人たちはそれを大金で買っていき、さらに大金で売るわけだ。
「何度も言うようだが、竜人族の長老が森神様と呼ぶ存在は、特にお金を欲していない。今は建材関係の需要はあるが、それもすぐに落ち着くだろう。竜人族の高級茶葉は、向こうも好感触だったようだが。実際問題、商業ギルドの助けは必要ないのだ。ただ、魔王国が利益を独占しているように勘違いされても困るので、あなたたちを招いて話し合いの場を設けたまで」
「なっ!? 魔王国は、商業ギルドが不要だと言うのか!」
「要らんじゃろう」
「長老」
アバドンが今回の会合の意味を説明すると、モーガンが喚き出す。それに追い討ちを掛けるように、竜人族の長老がモーガンを煽るようなことを言うもんだから、収拾がつかなくなりそうだ。まあ、見ている俺たちは面白いからいいんだけど。
「すまん。思ったことがつい口から出てしもうた」
「何という扱いだ! こんなに馬鹿にされたのは初めてだ!」
(竜人族の長老、わざと煽ってるな)
(竜人族は、竜を始祖とする特別な種族であるという高いプライドを持っていますからな。あのモーガンのような、無意識に魔族を下に見る輩にきつく当たるのも仕方ないかと)
(あれでも商業ギルドの本部長なのですが……)
俺の言葉に、セブールとリーファも呆れたような声を漏らした。
憤るモーガンに対して、醒めた表情のグランツが口を開く。
「なら、商業ギルドは出て行っても構わないんだぜ。現状、草原地帯は商業ギルドがなくても困らない。……魔王国は多少影響を受けるかもしれねぇが、それでも限定的だ。何なら冒険者ギルドが、商業ギルドの抜けた穴を埋める手伝いをしてもいい」
「うむ。錬金術師ギルドのネットワークも使えるぞ」
「薬師ギルドもですね」
「なっ!? お前たちっ!!」
グランツがモーガンにこの件から外れてもいいと言う。
彼の言うように、魔王国も商業ギルドが撤退すると多少の影響はあるが、あくまで多少だ。魔王国は、先代魔王の傍若無人な振る舞いから起こった長い戦争の影響で、以前は他種族の運営するギルドが存在しなかった。そのため現在でもそういったギルドの立場は高いとは言えず、魔王国内のランクの高い魔物素材や、竜人族の茶葉などの希少品を欲しているのは商業ギルドの側なのだ。
セブールが言うには、これが西方諸国なら違っただろうということだ。西方諸国では商業ギルドは、かなり大きな力を持っているらしい。
まあ、そんなことは置いておいて、デモリスやアバドンが草原地帯にモーガンのような人間をのさばらせる手助けをするわけがない。
俺は基本的に草原地帯に関してあまり口は出さない方だけど、移民を受け入れる際に、ダーヴィッド君に念入りに面接してもらってふるいにかけているからな。デモリスとアバドンも、あの手のタイプはダメだと分かっているはずだ。
「モーガン殿。繰り返しますが正直な話、草原地帯に商業ギルドは必要ないのです。魔物素材の買い取りも、魔王国の冒険者ギルドで済ませることが可能ですしね」
「草原地帯じゃ、魔物が強力すぎて高ランクの冒険者でも受ける仕事はなさそうだな。しかし、アバドン殿。可能なら冒険者ギルドの支部を置きたい。買い取りだけなら場所はどこでもいいが、魔王国より草原地帯で買い取りした方が西方諸国に売りやすいからな」
「待て! 待ってくれ!」
アバドンとグランツが、もう商業ギルドを外す方向で話し始め、そこでモーガンも本気で慌て始める。
(なぁ、会合って、こんなに時間かかるもんなのか?)
(今回は、様々な思惑が重なっていますからこんなものでしょう)
(魔族は長々と話し合うことを嫌う傾向はありますが、人族は分かりませんね)
俺の問いにリーファとセブールが答えてくれた。
まあ、僅かに残る記憶を思い起こしても、俺の前世でも会議なんてこんなものだった。
続けてセブールとリーファが言うには、魔族は脳筋だから、会議なんてするのは文官気質のデモリスやアバドンみたいな人だけで、今回のように長引くのは稀らしい。それもどうかと思う。
しかし、この交易の件に関しては、俺も後で魔王国側と相談した方がいいな
三話 サクッと打ち合わせ
あの後、商業ギルドの本部長モーガンは、プリプリ怒って帰っていった。
とはいえ、冒険者ギルドのグランツと錬金術師ギルド、薬師ギルドは無条件で魔王国に協力することを約束したので、その辺の条件を詰めるために、明日もう一度打ち合わせをすることになったらしい。
それで、俺たちはどうしたかっていうと、デモリスとアバドンの前に姿を現した。
「ッ!? シグムンド殿っ!」
「なっ!? セブール殿にリーファ殿までっ!」
「やぁ、見てたよ」
「はい。一部始終、拝見致しました」
突然、部屋に現れた俺たちに驚くデモリスとアバドンだけど、流石は魔王国を動かす重鎮だけあって、すぐに落ち着いたので、そのまま軽く話し合いをすることにした。
「竜人族の茶葉は俺的にもありがたいから、スムーズに交易できるようにダーヴィッド君にマジックバッグを預けたんだ。それで魔物素材も新鮮な状態で持ち帰れると思ったんだが……いろんな利権が絡んで、ごたつかせてしまったみたいだな」
「……西方諸国の人間からすると、魔王国からの魔物素材ですら貴重ですから。それが深淵の森の魔物素材となると、商業ギルドの本部長のように、何とかして食い込もうとする気持ちは分かります」
「モーガンはやたらとマウントを取りたがる男ですからの。我ら魔族のことも下に見ておるのを隠しきれていませんしな」
貴重過ぎる深淵の森の魔物素材も良し悪しだな。モーガンみたいに、いらぬ欲をかいてしまう。アバドンとデモリスも、多少は仕方ないと思っていたようだが、モーガンという男は想定以上に愚かだったみたいだ。
そこでセブールから提案があった。
「合同の買取所を設置するのはどうでしょう」
「商業ギルドはともかく、草原地帯の城塞都市に買取所を置くのはありだな。今も本当にごく少数ながらガッツある商人が来ているけど、いつも俺やセブールがいて対応できるわけじゃないからな」
一般的には素材の買い取りを仕切るのは商業ギルドってことになるらしいが、セブールはそうじゃない買取所はどうかと言ってきたわけだ。確かに、冒険者ギルドでも買い取りはするそうだし、薬草は薬師ギルドが買い取ってくれるだろう。錬金術に使えるものは錬金術師ギルドが買い取ればいい。
「合同買取所ですな。それはいい案かもしれません」
「ああ、商業ギルドもどうしてもと言うなら噛ませてもいいしな」
デモリスとアバドンも、セブールの提案に好感触な反応をみせる。
冒険者ギルド単体で買い取りをすると、魔物素材を中心に買い取るのだと所属する冒険者たちが誤解する可能性がある。
草原地帯の魔物なら普通の冒険者でも討伐可能だけど、森から出てきた魔物は無理らしいから、基本的にこれからも魔物素材は俺がとってくる形がいいだろうな。
まあ、そもそも森の魔物素材を欲するようなのは、依頼として張り出さないだろうけど。
「旦那様、合同買取所を建てるスペースは安価で貸し出し、建物の建設は各ギルドに任せた方がいいかと思います」
セブールの提案に俺は頷く。
「ああ、土地を売ってしまうのは問題あるか。それに俺が建物まで与えるのも違うよな」
「はい。その程度、各ギルドが協力すれば可能でしょうから」
合同買取所の建物は、自分たちで建てさせる形になりそうだ。確かに、集めた移民たちはともかく、利益を求めてやってくるギルドに俺が全部用意して与えるなんてやり過ぎだな。
「それがいい。シグムンド殿には、スペースの確保だけ指示していただければよろしいかと」
「ですね。商業ギルドは別にして、他のギルドは今のところ下手に出ているが、甘やかすと図に乗るかもしれないしな」
デモリスとアバドンも建物くらいは自分たちで用意させるという意見に賛成した。
「了解。空き地はまだまだあるから、適当な場所を用意するよ」
魔王国が駐屯する場所や建物は俺が用意したけど、これはダーヴィッド君たちにあれこれお世話になっているからだ。ギルド関係者にそこまでする必要はないっていうのが、みんなの認識だな。
「あとは竜人族の茶葉と森の魔物素材とのレートをどうするかだな。すごく貴重な茶葉なんだろ?」
「そうですな。魔王国どころか、西方諸国でもみなが金に糸目をつけず求める茶葉です」
茶葉が育つ環境や条件から、竜人族が住む地でしか採れない高級茶葉。先ほどの話し合いでも聞こえたが、同じ重さの金よりずっと高価なものらしい。
自然に生育するだけで人工的には増やせないそうで、大量に出回ることはないのも高額になる理由だとか。
ゴーレムたちに頼めば栽培はできそうな気もするけど、さすがにそれは茶葉の価値を下げてしまう形になってしまうからまずいだろう。
「まあ、その辺の細かな話はセブールに任せるよ」
「お任せください」
この世界の常識に疎い俺が交易のレートなんて決められるわけがない。そこはセブールにお任せだ。
実際、今も建材を買ったり、麦や塩を売ったりするのはセブールに一任しているしな。
「では、わしらは各ギルドと話を詰めて、買取所の建設打ち合わせをしておくかの」
「そうですね。ダーヴィッド殿下が監督した方がいいでしょうし」
デモリスとアバドンは、ギルドのサポートをするつもりのようだ。何気にダーヴィッド君に仕事が押し付けられているけど、魔王国が手綱を握った方がいいだろうし仕方ないか。
その後、竜人族も協力して合同買取所を建てることに決まったみたい。
なぜ、竜人族もかと言うと、単純に協力する流れでオオ爺サマに会いにいきたいからだろう。まあ、身体能力の高い竜人族なら邪魔にはならないし、許可しておいた。竜人族の始祖として崇められているギータたちは困るかもしれないけどな。
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