28 / 62
狼はお約束ですか
しおりを挟む
永禄九年(1566年)十一月 桑名城
京の二条城築城を半兵衛と十兵衛に任せ、桑名城へ帰って来た。別に子供達や妻達に会いたいからではない。多分。
家族との時間を過ごした後、工房へ向かいストレス解消の為の物造りに没頭しようとする。
「さて、確かカナダ辺りでは時々巨大な狼の個体が確認されていたよな」
遥か昔の記憶を紐解き、巨大なハイイロオオカミを造る事に決めた。
「やっぱりファンタジーだったら狼だよな。ファンタジーじゃないけど」
源太郎は自重を忘れて突っ走る。
体長六尺(約181.8cm)、尾の長さが二尺五分(約75.75cm)の巨大な狼を造っていく。
「子供なら乗れそうだな」
骨格を竜骨にアダマンタイトコーティングして使用。
筋肉もパワーとスピードを両立する様に何度もトライアンドエラーしながら最適解を探す。
「爪は竜の爪を成形魔法で変形させて使うか、牙も竜で良いか」
高出力に耐える高品質な魔石を使う。
動作制御とAI(人工知能)用にもAランクの魔石とSランクの魔石を使用して、犬型オートマトン同様、嗅覚センサー、聴覚センサー、赤外線暗視スコープを装備。また、微弱な魔力パターンを記憶して位置を把握することが出来る。
さらに源太郎と念話で意思疎通出来るように装置を組み込んだ。
毛皮に防汚と自動修復、耐火、物理耐性のエンチャントをかける。
術式を発動し起動する。
「そうだな……、よし、お前は【氷牙】だ」
『ヨロシクオネガイシマス』
念話機能も問題ないようだ。
「うわっ!でけぇ、バケモンみたいな狼だな」
佐助が工房に入って来た。
「あゝ佐助か。どう?凄いだろう」
「いや、凄いけど……、デカ過ぎないか?」
「いいんだよ、それで何か報告ですか?」
「いや、報告は猿に持たせただろう。今日は別件だよ。実はさ、小南の兄ちゃんや道順の旦那が俺の猿を羨ましがってさ、でも旦那達は殿にオネダリし辛いだろう」
「まあそうだな、佐助くらいだろうな。三匹も造らせるのは」
佐助は昔からそういうところが遠慮がない。小南と道順は源太郎に言い辛いだろう。
「で、何が欲しいんだ?猿じゃないんだろう」
「ああそうなんだ。道順の旦那と小南の兄ちゃんは烏か梟が良いんだとさ」
「空を飛ぶのを造るのか……、まぁやってみるか」
「本当か、じゃあ頼んだぞ殿」
「あゝ、出来たら道順と小南に連絡するよ」
佐助が去ってから、鳥型のオートマトンを設計を開始する。
「ちくしょう、鳥型か、盲点だったね。私も欲しくなるじゃないですか」
(烏や梟なら偵察にぴったりだな)
源太郎は一通り考察し、何種類かの設計図を描いて、術式を構築して魔石に描き込む。
鳥型オートマトンの目処がついた所で、伊賀崎道順と神戸小南を呼び出した。
幸い道順も小南も桑名近辺に居たため、翌日には源太郎の元にやって来た。ただ、道順と小南だけでなく、高山太郎次郎、太郎左衛門の高山兄弟と望月三郎の三人も一緒だった。
「殿、この度は我等の為に申し訳在りません」
道順がそう言うと小南と頭を下げる。
「いや、私も気晴らしになるから気にしなくて良いよ。それより道順と小南は何の鳥にする?
それと太郎次郎達が一緒に居るのは、そう言う事かな?」
「殿、申し訳御座いません。我等にも是非カラクリを頂きたく、厚かましくも参上致しました」
高山太郎次郎がそう言って頭を下げる。
「まぁ、ついでだから造るけど、何が良いか決まっているのか?」
「では某から、某専用の犬が欲しいです。他国の間諜を追うにも役立ちますし」
太郎次郎が希望を言う。高山兄弟は、北畠領内の間諜対策に就くことが多いので、犬型のオートマトンは有効だろう。現在も巡回警備隊には犬型が導入されている。それなら太郎次郎専用が有っても良いだろう。ただでさえ腕のいい忍びなのだから、その手札が増えるのは良いと思う。
「分かった。太郎左衛門は?」
「某は、兄者と組んで仕事することが多いので、探索、警戒に特化した鳶が良いです」
「良い組み合わせかもな、分かったよ。次は三郎か、三郎は何にする?」
「私は犬が欲しいです。犬ならば常に側に置いても不自然ではありませんし」
「分かった。それで道順と小南は決まった?」
「では某から、某は鴉でお願いします」
道順は鴉を選んだ。鴉ならどこに居ても怪しまれる事はないだろう。
「最後は私ですね。私には梟をお願いします。暗闇の中での仕事の補助になればと思いました」
「分かった。出来たら鴉、鳶、梟の実物が欲しい。手に入れられるか?」
「その程度の事は容易いことです。早速手に入れて参ります」
そう言って鳥型オートマトンを望んだ、道順、小南、太郎左衛門が消えた。
犬型オートマトンに関しては、既に何体も造っているので、骨格や魔石の質を上げ、特別仕様にしておいた。
スタイルとしては甲斐犬や秋田犬のような形にする。
聴力センサー、嗅覚センサー、暗視スコープを装備、AIもグレードアップしておく。
二頭の犬型オートマトンの次は、鳥型オートマトンの骨格、筋肉、制御術式、各種センサー、暗視スコープ、フィールドスコープを装備した。
クチバシと爪は、竜骨を成形魔法で変形して造る。
「鳥型で探索や警戒に使うなら要るよな」
源太郎は、ヘッドセットを三セット造る。鳥型オートマトンから送られてくる、映像や音声を受信して見る事が出来るようにした。
後日、道順達が持って来た鴉、鳶、梟の実物から羽根を移植する。羽根には自動修復と防汚をエンチャントする。
道順達にヘッドセットを渡す。
「なるほどこれは凄い!」
「片目で見る様にしたから、ヘッドセットをしてても周りの警戒は出来るだろう」
ヘッドセットのデザインも、近未来忍者風にしておいたので、そんなにおかしな事はないと思う。
自分用の狼型オートマトンを造るだけの積りが、色々造る羽目になったが、北畠忍軍の戦力アップと考えることにした。
京の二条城築城を半兵衛と十兵衛に任せ、桑名城へ帰って来た。別に子供達や妻達に会いたいからではない。多分。
家族との時間を過ごした後、工房へ向かいストレス解消の為の物造りに没頭しようとする。
「さて、確かカナダ辺りでは時々巨大な狼の個体が確認されていたよな」
遥か昔の記憶を紐解き、巨大なハイイロオオカミを造る事に決めた。
「やっぱりファンタジーだったら狼だよな。ファンタジーじゃないけど」
源太郎は自重を忘れて突っ走る。
体長六尺(約181.8cm)、尾の長さが二尺五分(約75.75cm)の巨大な狼を造っていく。
「子供なら乗れそうだな」
骨格を竜骨にアダマンタイトコーティングして使用。
筋肉もパワーとスピードを両立する様に何度もトライアンドエラーしながら最適解を探す。
「爪は竜の爪を成形魔法で変形させて使うか、牙も竜で良いか」
高出力に耐える高品質な魔石を使う。
動作制御とAI(人工知能)用にもAランクの魔石とSランクの魔石を使用して、犬型オートマトン同様、嗅覚センサー、聴覚センサー、赤外線暗視スコープを装備。また、微弱な魔力パターンを記憶して位置を把握することが出来る。
さらに源太郎と念話で意思疎通出来るように装置を組み込んだ。
毛皮に防汚と自動修復、耐火、物理耐性のエンチャントをかける。
術式を発動し起動する。
「そうだな……、よし、お前は【氷牙】だ」
『ヨロシクオネガイシマス』
念話機能も問題ないようだ。
「うわっ!でけぇ、バケモンみたいな狼だな」
佐助が工房に入って来た。
「あゝ佐助か。どう?凄いだろう」
「いや、凄いけど……、デカ過ぎないか?」
「いいんだよ、それで何か報告ですか?」
「いや、報告は猿に持たせただろう。今日は別件だよ。実はさ、小南の兄ちゃんや道順の旦那が俺の猿を羨ましがってさ、でも旦那達は殿にオネダリし辛いだろう」
「まあそうだな、佐助くらいだろうな。三匹も造らせるのは」
佐助は昔からそういうところが遠慮がない。小南と道順は源太郎に言い辛いだろう。
「で、何が欲しいんだ?猿じゃないんだろう」
「ああそうなんだ。道順の旦那と小南の兄ちゃんは烏か梟が良いんだとさ」
「空を飛ぶのを造るのか……、まぁやってみるか」
「本当か、じゃあ頼んだぞ殿」
「あゝ、出来たら道順と小南に連絡するよ」
佐助が去ってから、鳥型のオートマトンを設計を開始する。
「ちくしょう、鳥型か、盲点だったね。私も欲しくなるじゃないですか」
(烏や梟なら偵察にぴったりだな)
源太郎は一通り考察し、何種類かの設計図を描いて、術式を構築して魔石に描き込む。
鳥型オートマトンの目処がついた所で、伊賀崎道順と神戸小南を呼び出した。
幸い道順も小南も桑名近辺に居たため、翌日には源太郎の元にやって来た。ただ、道順と小南だけでなく、高山太郎次郎、太郎左衛門の高山兄弟と望月三郎の三人も一緒だった。
「殿、この度は我等の為に申し訳在りません」
道順がそう言うと小南と頭を下げる。
「いや、私も気晴らしになるから気にしなくて良いよ。それより道順と小南は何の鳥にする?
それと太郎次郎達が一緒に居るのは、そう言う事かな?」
「殿、申し訳御座いません。我等にも是非カラクリを頂きたく、厚かましくも参上致しました」
高山太郎次郎がそう言って頭を下げる。
「まぁ、ついでだから造るけど、何が良いか決まっているのか?」
「では某から、某専用の犬が欲しいです。他国の間諜を追うにも役立ちますし」
太郎次郎が希望を言う。高山兄弟は、北畠領内の間諜対策に就くことが多いので、犬型のオートマトンは有効だろう。現在も巡回警備隊には犬型が導入されている。それなら太郎次郎専用が有っても良いだろう。ただでさえ腕のいい忍びなのだから、その手札が増えるのは良いと思う。
「分かった。太郎左衛門は?」
「某は、兄者と組んで仕事することが多いので、探索、警戒に特化した鳶が良いです」
「良い組み合わせかもな、分かったよ。次は三郎か、三郎は何にする?」
「私は犬が欲しいです。犬ならば常に側に置いても不自然ではありませんし」
「分かった。それで道順と小南は決まった?」
「では某から、某は鴉でお願いします」
道順は鴉を選んだ。鴉ならどこに居ても怪しまれる事はないだろう。
「最後は私ですね。私には梟をお願いします。暗闇の中での仕事の補助になればと思いました」
「分かった。出来たら鴉、鳶、梟の実物が欲しい。手に入れられるか?」
「その程度の事は容易いことです。早速手に入れて参ります」
そう言って鳥型オートマトンを望んだ、道順、小南、太郎左衛門が消えた。
犬型オートマトンに関しては、既に何体も造っているので、骨格や魔石の質を上げ、特別仕様にしておいた。
スタイルとしては甲斐犬や秋田犬のような形にする。
聴力センサー、嗅覚センサー、暗視スコープを装備、AIもグレードアップしておく。
二頭の犬型オートマトンの次は、鳥型オートマトンの骨格、筋肉、制御術式、各種センサー、暗視スコープ、フィールドスコープを装備した。
クチバシと爪は、竜骨を成形魔法で変形して造る。
「鳥型で探索や警戒に使うなら要るよな」
源太郎は、ヘッドセットを三セット造る。鳥型オートマトンから送られてくる、映像や音声を受信して見る事が出来るようにした。
後日、道順達が持って来た鴉、鳶、梟の実物から羽根を移植する。羽根には自動修復と防汚をエンチャントする。
道順達にヘッドセットを渡す。
「なるほどこれは凄い!」
「片目で見る様にしたから、ヘッドセットをしてても周りの警戒は出来るだろう」
ヘッドセットのデザインも、近未来忍者風にしておいたので、そんなにおかしな事はないと思う。
自分用の狼型オートマトンを造るだけの積りが、色々造る羽目になったが、北畠忍軍の戦力アップと考えることにした。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
3,134
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる