中の御所奮闘記~大賢者が異世界転生

小狐丸

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丹波・丹後制圧後

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 永禄十一年(1568年)五月 山城国  二条城

 源太郎こと北畠具房は、雪が溶けるのを待ち、丹波と丹後に攻め込んだ。
 京方面からと、若狭側からの二面作戦を決行する。

 龍の如き馬を駆る、異形なる紅い軍団に刃向かう者は、瞬く間に叩き潰され、その命を刈られていく。
 北畠家と戦うことを選んだ国人や豪族達は、身を以てその身に恐怖を刻む事となる。

 北畠の大軍に攻められた、丹波の波多野、赤井、宇津、丹後の一色は、ある者は降伏し、ある者は敵対し滅んでいった。


 これで京の北を気にする事なく本願寺に対応する事が出来ると源太郎は考えた。
 石山を片付ける時が来たと……。

 摂津は北畠家と織田家で支配され、和泉、河内も平定された。畿内では織田家に臣従した大和国の松永久秀を残すのみだ。
 三好三人衆と袂を分かったといえ、兄弟子を殺された事で、モヤモヤとした物がある源太郎だった。
 足利義輝も将軍の器ではなかったかもしれない。いや、足利将軍家自体の力が既に無いに等しく、権威も地に堕ちている。足利将軍家の力が堕ちているから足利義輝は殺されたとも言えるのだが。
 松永久秀も北畠具房に臣従するより、織田家の方が頭を下げ易かったのだろう。

「これで本願寺に専念できますな」

 源太郎に竹中半兵衛が、やっと本願寺の手足をもぎ、孤立させた事を言う。
 制海権は、北畠家のモノだ。毛利からの補給路は潰した。
 丹波、丹後を押さえた事で、本願寺を四方から圧力をかける事が出来ている。

「あゝ、後は気がかりは武田信玄の動きだけだな」

 源太郎がそう言うと、本多正信が少し心配そうな顔をする。

「弥八郎、武田の物の動きを注視しておけ」

「いえ、殿、某はもう北畠家の家臣です。お気遣い無用です」

「いや、武田が動けば、義兄上も動かざるをえんだろう。これは徳川殿だけの問題ではない。場合によっては、我等に援軍を要請するやもしれん」

「そうですよ弥八郎殿、旧主を心配する事は悪い事ではありません。ただ、北畠家を第一に考えてさえいれば良いのです」

 源太郎と半兵衛の言葉で、本多正信の気も少し晴れたようだった。
 一向一揆で一向宗側に立ち敵対はしたが、三河は故郷に変わりない。

「弥八郎、武田の米の流れを注視して、ウチもいつでも援軍を派遣出来るように準備しておいてくれ。場合によっては私が出陣する」

「はっ!」

 本多正信が源太郎に礼をした後、部屋を後にした。

「まぁ、相手が武田では心配にもなるでしょうね。いくら敵対した旧主とはいえ……」

「あゝ、武田に蹂躙された土地は悲惨だからな」

「織田殿と徳川殿では五分ですか」

 織田家と徳川家対武田軍団では、どっちに転ぶかは分からなかった。

「徳川殿だけだと難しいだろう。織田家の援軍があって、初めて勝負になるという位か」

「武田が動かす兵は、最大で四万ぐらいでしょうか」

「まぁ、三万から三万五千といったところだろう」

「織田・徳川合同で二万ぐらいでしょうか」

 半兵衛が織田家と徳川家の兵数を計算する。
 武田が遠江の徳川家康を攻めるならば、東美濃を別働隊が攻める事が、歴史的にも戦略的にも分かっていた源太郎は、信長に岩村城とその周辺の防備を固めることを進言。
 信長は直ちに岩村城を堅固な城へと改築、周辺に砦と後詰の城を整備する。
 その事もあり、徳川家への援軍に出せる兵数は、最大で二万程、実質的には一万五千がいい所だと半兵衛は考えた。

「多分、出せて二万だろうね。織田家は東美濃の防備を固める必要があるからな」

「ですね、岩村城を落とされると厄介ですから」

 源太郎と半兵衛が頷く。
 源太郎は史実で、岩村城を任された織田信長の叔母にあたるおつやの方が、秋山虎繁に寝返り、長篠の戦いで武田軍を破ると、織田信忠らに岩村城を落とされた後、長良川付近で磔になっている。
 史実とは時期も違うし、おつやの方は岩村城に入っていない為、大丈夫だと思う。

「まぁ岩村城は大丈夫だろう。ウチの工兵部隊もあの近辺の防備を固めるのを手伝ったからね」

「どちらにしても武田が西へ動き出すのは、来年以降だと思いますが……」

「そうなるだろうね。でも念のため、米、塩、皮、硝石他の流れは掴んでおく必要があるね」

「では、道順殿に伝えて置きます」

 そう言うと半兵衛が退出して行った。


 明智十兵衛光秀は、丹波・丹後の整備と統治に奔走している。
 島左近清興は、河内・和泉の反抗勢力の討伐と、領内整備を指揮している。

 紀伊・和泉・河内も随分と落ち着き、領民も北畠家の下での豊かな生活の恩恵に、積極的に北畠家の統治を望むようになってきた。

 時間が経つ毎に、北畠領内は安定して行き、一揆や小豪族の反乱も下火になっていく。
 結果、本願寺顕如は追い詰められて行く。

 追い詰められいたのは、本願寺だけではなかった。平島公方を担ぐ三好家、義秋を擁する朝倉家、勿論、義栄や義秋本人も任官さえままならぬ現状に、その不満は爆発寸前だった。

 爆発した所で、北畠家にはほぼ影響がない。

 一時、畿内を制した三好家も、生き残る道を模索し始めていた。

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