異世界立志伝

小狐丸

文字の大きさ
13 / 163

魔法鍛治師

しおりを挟む
 結局、今日もギルドに行くのを諦めた。

 今日は、日本人の心、男のロマン、刀を打つつもりだ。打つと言っても、鍛治魔法と錬金術のレベルが高いと、殆どの事は出来てしまうので、余り打つという感じではない。


 工房でオリハルコンにミスリルを2パーセントと炭素を0.6パーセントの合金を錬成する。

 錬金術で錬成すると、イメージしだいの所もあるけど、均一な組織のオリハルコン合金が出来あがる。
 これが刃鉄と皮鉄に使う硬い金属になる。

 さらにミスリルを増やし炭素の量を少し減らした、粘り強く靭性に富む物を作り出す。

 これを心鉄と棟鉄のもとに使う。

 成形魔法モーディングで成形した材料を四方詰に組み合わせる。

 ここで魔力炉で加熱し、素延べで形を作るが、ここで土魔法を併用しながら、金属組織の調整をしながら槌を叩く。

 成形魔法モーディングと研磨魔法ポリィシュを使い、形の調整をする。

 刃側に薄く、棟側に厚く土置きし焼き入れをする。ここでも土魔法で、オリハルコン合金の刃側の結晶構造を、操作しながら焼き入れする。

 低温で焼戻し、モーディングとポリィシュで最終調整をする。

 刀身に龍が剣に巻きつき、剣先を飲み込もうとする倶利伽羅の彫刻を施す。
 その瞬間、刀身に神聖な炎が宿ったように感じた。


 エビルトレントの木材を使って、柄と鞘を作成する。柄にはワイバーンの飛膜を、鮫皮風に加工して貼り付け、柄糸を巻き付ける。柄糸は、スパイダーシルクの糸とミスリルを加工して糸にした物を撚りあわせて作った。
 鞘にはレア個体の黒いワイバーンレザーを貼り付ける。

 アダマンタイト合金で鍔を作る。三日月武蔵鍔を参考にした。要はコピーした。

 ハバキを嵌め込み、鞘の小尻をアダマンタイトで補強する。
 鞘に、剣帯に取り付けるための金具を付けておく。



 ・倶利伽羅の太刀
   等級  神話級ミソロジー

   自動修復
   硬度強化
   靭性強化
   斬撃強化
   腐蝕耐性
   闇属性特攻
   光属性強化

 刃長80センチの太刀が完成した。バランスも問題ないようだ。

 かなり良い出来だと思う。まあバルデッィシュがメイン武器なのは変わりないんだけど。




「エル!装備出来たよ~!」

 俺がリビングに行くと、エルはソファーで寝ていた。

「……う、う~ん、カイト」

 俺が部屋に入ると、ちょうとエルが目覚めた。

「装備全部出来たの?」

 エルが寝ぼけながら聞いてくる。

「あゝ、一度フル装備して試してみる?」

 そう言うと、エルはパアッと顔を綻ばせる。

「うん!うん!着てみる!」

 俺達は、自分達の部屋に向かう。

「カイトの前で着替えるの?」

 エルが恥ずかしそうにする。

「今更じゃない?」

 俺はズボンを、エルはミニスカートとその下にスパッツを履き、鎧下、革鎧、籠手、ブーツと装備していく。
 ベルトを締め、左腰に剣を、右腰に魔導銃を差し込む。

 最後にローブを羽織り、お互いの姿を確認する。

「カッコイイよ!カイト!」

 エルは気に入ったようだ。

 黒をベースに、竜の鱗の深い緑がアクセントになっている。


「この魔導銃ってどういう物なの?」

 エルが白銀のレイジングベヒモスを手に取り眺めている。

「魔導銃は、魔法を高速で放つ魔導具だよ。自分に適正のない属性でも、魔力を流して引き金を引くだけで、魔法を放つ事が出来る魔導具さ」
「凄いじゃない!私が適正のない属性でも使えるのね」
「火・氷・電・土・風・光の六属性の魔法を撃ち出すことが出来るよ。込める魔力で威力も上がるし」


 俺とエルは、せっかく装備をつけたので、街の外に出て、魔導銃の試し撃ちをする事にした。




 ノトスの街から少し離れ、広い草原で周りに人が居ない事を確認してから、30メートルくらい離れた場所にある、岩を的に試射をする。

 ちなみにノトスの街から南に広がる草原地帯だ。さすがに北側は、深淵の森があるため、離れてはいるが、強い目の魔物が出没するらしい。


 ドガッ! ズドンッー!!

「うん、込める魔力の量で、威力もしっかり上がってる。狙いもイメージで補正出来てる」

 隣ではエルも試射をしている。


 バァーン! バンッ! バチィ!

 バキッ! ドンッ! ジュッ!


 六属性の魔法の弾丸を試したエルがふらつく。

「……き、気持ちわるい」

 魔力が涸渇して辛そうだ。

「だからエルには、まだ無理だって。魔法系の職業レベルを上げて、魔力量を増やしてからじゃないと、6発撃つと倒れるよ」
「う~~、カイトおんぶして~」

 もたれ掛かるエルを抱き止める。

「はい、はい」

 エルをおんぶして、ノトスの街に帰る。


「エルは魔法使いのレベル上げを早急にしなきゃいけないね。このままだと魔導銃を数発撃てば、魔力切れになっちゃうようじゃ、万が一の時に魔導銃が使えなくて危ないから」
「う~、分かってるわよ~。明日、レベル上げを兼ねて依頼を受けるから、カイトも手伝ってくれるよね」
「いっその事、深淵の森の外縁部でレベル上げをするかい?魔物が強いから、一気にレベルもスキルも成長するよ」
「無理無理無理無理、絶対無理よ!」

 あれ?エルと初めて会ったの、深淵の森を出た所だったよな。

「いや、エルを助けたの、深淵の森の外縁部だったじゃない。4人パーティーで森に入るつもりだったんじゃないの?」

 エルが背中でブンブンと首を横に振っている。

「森に入る訳ないじゃない!森から時々出て来る弱った魔物を待ち伏せするのよ!」

 なんと言うか、気の長い話だな。

「じゃあ今日の草原に居た、弱い魔物で馴らしてからにする?」
「えっ!側に魔物が居たの!」

 気配察知スキルもないのか。

「うーん、気配察知は後回しにして、魔力感知を取得しようか。まあ、今の装備だとあの草原に居る魔物程度じゃ、かすり傷もつける事は出来ないと思うけど」

 ノトスの南に広がる草原には、一角兎や狼系の魔物、後はゴブリンくらいしか居ない。
 狼系の魔物とゴブリンは群れるので、その辺りだけ注意しておけばいい。

「じゃあ明日お願いね」



 恥ずかしがるエルをおんぶしたまま、門をくぐり家へ帰った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...