20 / 163
カイト食を改善する
しおりを挟む
俺のやり過ぎたゴーレム馬車造りから少し経った頃、冒険者ギルドの依頼も簡単なものは受けている。
ゴーレム馬車と言う名の装甲車両を造る際、深淵の森で狩った魔物の素材は、必要無いものを売ったので、また大金を得る事になった。
「もう働かなくても良いんじゃない」なんて考えない。死んであの世に行った時に、ドルファレス師匠に怒られる。
そんな鍛錬と依頼を繰り返す日々だが、最近どうしても食事に不満を覚えることが多い。
独り小屋で暮らしていた時は、食べれたら良いやって思っていたけど、ノトスに来て食事をするようになり、やっぱり美味しい物が食べたいという欲が出て来た。
「カイトおにいちゃん、まだ~」
「もう出来たかな?……おぉ、見た目は成功かな」
俺が何をしているかと言うと、庭に造った石窯でピザを焼いていたんだ。
ピザの焼ける匂いに、ルキナも待ちきれないのか、さっきからしきりにまだかと聞いて来る。
取り出したピザを庭に置かれたテーブルセットの所へ持っていく。
「さて、味はどうかな」
皆んなに焼きあがったピザを配り試食をする。
「うわ~!チーズが溶けてて美味しい!」
ルキナが夢中になって食べている。
「ピザと言う食べ物は初めてですが、美味しいですね」
アンナさんも感心しているようだ。
「本当ね、カリッとした所とモチッとした感触とチーズのトロける感じ、トマトソースも美味しいわ」
エルにもおおむね好評のようだ。
「ルキナ、慌てなくても焼いてあげるからね」
口の周りをベタベタにしながら、ピザを食べるルキナの口を拭いてあげる。
ノトスの街は北方寄りなので、ライ麦パンが主食だった。俺はライ麦パンは、あまり好きじゃなかった。
サーメイヤ王国の中央部から南では、小麦が主食なので、ノトスでも小麦は高いが手に入る。俺は小麦で作ったパンのほうが高いけど好きだった。
今日も強力粉が手に入ったので、ピザに挑戦してみた。
野菜も名前が分からないけど、見知った物が多く、トマトソースを作るのも困らなかった。
お約束のマヨネーズも作ったけど、こういった食品加工をする時に、活躍したのが【浄化】の魔法だった。お陰で生卵のサルモネラ菌汚染を解決出来た。
使い手が少ない浄化魔法を、こんな使い方しているのは俺ぐらいかもしれない。
俺としては味噌や醤油が欲しいけど、米の存在が確認出来ていないので、米を探すのが先だと思っている。呼び方が違うだけで似た物が有るかもしれないし。
「カイトおにいちゃん、ジュース」
「はい、はい、ちょっと待ってね」
ルキナに果物を絞ったジュースを入れてあげる。
テーブルではエルとアンナさんが、ピザ片手に二人で冷えたエールを飲んでいる。
「ふぅ~、冷えたエールは最高ですねお嬢様」
「そうねアンナ、でも飲み過ぎないでね」
ジュースもエールも、俺が造った冷蔵庫の魔導具で冷やしてある。
俺はルキナがピザを食べ終えたタイミングで、冷蔵庫からプリンを取り出し、ルキナの前に置く。
「わぁ~い!プリンだぁ~!」
ルキナがプリンを見てバンザイして喜んでいる。
始めてプリンを食べてから、ルキナはプリンの虜になった。
「「美味し~い!」」
いや、ここにも虜になった者がいた。
「何個でも食べれそうね」
「本当ですねお嬢様」
エルとアンナさん主従が、優雅にデザートを食べているが、アンナさんが段々とメイドじゃなくなってる気がするのは、俺の勘違いなんだろか。
この世界では、砂糖は高級品である。カイトは気にせずに大量に購入しているが、庶民の口には中々入らない。蜂蜜も存在するのだが、こちらも希少品である。ヒュージビーと言う、中型犬サイズの魔物の巣から採れる為、採取が難しく市場には出回らない。
今度、ヒュージビーの巣から蜂蜜をいただきに行こう。
きっとエルやルキナも喜んでくれるだろう。
「ねぇねぇ、カイトおにいちゃん。今日の晩ごはんなぁに?」
「なんだルキナ。今食べたばかりなのに、もう晩ご飯の話なの?」
ルキナも初めて会った頃から比べれば、随分とふっくらして子供らしい体形になってきた。
栄養状態も改善されたからか、薄いピンクがかった銀の髪もつやつやとしている。白い兎の耳も毛並みがよく、時おりピクピク動く。
体力も大分ついてきたので、もう少し大きくなったら、護身術でも教えようかと思っている。
「そうだな~、鳥肉がいっぱい余ってるから、鳥肉のクリームシチューにしようか」
「わ~い!クリームシチューだ~い好き!」
「ニンジンも食べなきゃダメだよ」
「ルキナ、ニンジン好きだよ!」
ルキナがそう言って、俺の膝に乗ってくる。いまだに、ルキナは常に俺がエルに触れていると安心するみたいだ。俺もエルもあえてルキナの好きにさせている。ルキナの心のキズが癒えるのは、時間がかかるだろうから、ゆっくりいこうとエルと話している。
「ルキナ、お姉ちゃんとお昼寝しようか」
エルがルキナをお昼寝に誘う。
「うん!エルおねえちゃんとお昼寝する」
ピョンと俺の膝から跳び下りると、エルのもとへ走り寄る。
エルとルキナが、手を繋いで家に入って行くのを見送って、アンナさんと後片付けを始める。
こんな平穏な日々も良いもんだな。この世界に来てから、鍛錬しかしていなかった時間が長いからか、こんな何でもない日々も良いと感じた。
ゴーレム馬車と言う名の装甲車両を造る際、深淵の森で狩った魔物の素材は、必要無いものを売ったので、また大金を得る事になった。
「もう働かなくても良いんじゃない」なんて考えない。死んであの世に行った時に、ドルファレス師匠に怒られる。
そんな鍛錬と依頼を繰り返す日々だが、最近どうしても食事に不満を覚えることが多い。
独り小屋で暮らしていた時は、食べれたら良いやって思っていたけど、ノトスに来て食事をするようになり、やっぱり美味しい物が食べたいという欲が出て来た。
「カイトおにいちゃん、まだ~」
「もう出来たかな?……おぉ、見た目は成功かな」
俺が何をしているかと言うと、庭に造った石窯でピザを焼いていたんだ。
ピザの焼ける匂いに、ルキナも待ちきれないのか、さっきからしきりにまだかと聞いて来る。
取り出したピザを庭に置かれたテーブルセットの所へ持っていく。
「さて、味はどうかな」
皆んなに焼きあがったピザを配り試食をする。
「うわ~!チーズが溶けてて美味しい!」
ルキナが夢中になって食べている。
「ピザと言う食べ物は初めてですが、美味しいですね」
アンナさんも感心しているようだ。
「本当ね、カリッとした所とモチッとした感触とチーズのトロける感じ、トマトソースも美味しいわ」
エルにもおおむね好評のようだ。
「ルキナ、慌てなくても焼いてあげるからね」
口の周りをベタベタにしながら、ピザを食べるルキナの口を拭いてあげる。
ノトスの街は北方寄りなので、ライ麦パンが主食だった。俺はライ麦パンは、あまり好きじゃなかった。
サーメイヤ王国の中央部から南では、小麦が主食なので、ノトスでも小麦は高いが手に入る。俺は小麦で作ったパンのほうが高いけど好きだった。
今日も強力粉が手に入ったので、ピザに挑戦してみた。
野菜も名前が分からないけど、見知った物が多く、トマトソースを作るのも困らなかった。
お約束のマヨネーズも作ったけど、こういった食品加工をする時に、活躍したのが【浄化】の魔法だった。お陰で生卵のサルモネラ菌汚染を解決出来た。
使い手が少ない浄化魔法を、こんな使い方しているのは俺ぐらいかもしれない。
俺としては味噌や醤油が欲しいけど、米の存在が確認出来ていないので、米を探すのが先だと思っている。呼び方が違うだけで似た物が有るかもしれないし。
「カイトおにいちゃん、ジュース」
「はい、はい、ちょっと待ってね」
ルキナに果物を絞ったジュースを入れてあげる。
テーブルではエルとアンナさんが、ピザ片手に二人で冷えたエールを飲んでいる。
「ふぅ~、冷えたエールは最高ですねお嬢様」
「そうねアンナ、でも飲み過ぎないでね」
ジュースもエールも、俺が造った冷蔵庫の魔導具で冷やしてある。
俺はルキナがピザを食べ終えたタイミングで、冷蔵庫からプリンを取り出し、ルキナの前に置く。
「わぁ~い!プリンだぁ~!」
ルキナがプリンを見てバンザイして喜んでいる。
始めてプリンを食べてから、ルキナはプリンの虜になった。
「「美味し~い!」」
いや、ここにも虜になった者がいた。
「何個でも食べれそうね」
「本当ですねお嬢様」
エルとアンナさん主従が、優雅にデザートを食べているが、アンナさんが段々とメイドじゃなくなってる気がするのは、俺の勘違いなんだろか。
この世界では、砂糖は高級品である。カイトは気にせずに大量に購入しているが、庶民の口には中々入らない。蜂蜜も存在するのだが、こちらも希少品である。ヒュージビーと言う、中型犬サイズの魔物の巣から採れる為、採取が難しく市場には出回らない。
今度、ヒュージビーの巣から蜂蜜をいただきに行こう。
きっとエルやルキナも喜んでくれるだろう。
「ねぇねぇ、カイトおにいちゃん。今日の晩ごはんなぁに?」
「なんだルキナ。今食べたばかりなのに、もう晩ご飯の話なの?」
ルキナも初めて会った頃から比べれば、随分とふっくらして子供らしい体形になってきた。
栄養状態も改善されたからか、薄いピンクがかった銀の髪もつやつやとしている。白い兎の耳も毛並みがよく、時おりピクピク動く。
体力も大分ついてきたので、もう少し大きくなったら、護身術でも教えようかと思っている。
「そうだな~、鳥肉がいっぱい余ってるから、鳥肉のクリームシチューにしようか」
「わ~い!クリームシチューだ~い好き!」
「ニンジンも食べなきゃダメだよ」
「ルキナ、ニンジン好きだよ!」
ルキナがそう言って、俺の膝に乗ってくる。いまだに、ルキナは常に俺がエルに触れていると安心するみたいだ。俺もエルもあえてルキナの好きにさせている。ルキナの心のキズが癒えるのは、時間がかかるだろうから、ゆっくりいこうとエルと話している。
「ルキナ、お姉ちゃんとお昼寝しようか」
エルがルキナをお昼寝に誘う。
「うん!エルおねえちゃんとお昼寝する」
ピョンと俺の膝から跳び下りると、エルのもとへ走り寄る。
エルとルキナが、手を繋いで家に入って行くのを見送って、アンナさんと後片付けを始める。
こんな平穏な日々も良いもんだな。この世界に来てから、鍛錬しかしていなかった時間が長いからか、こんな何でもない日々も良いと感じた。
82
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる