異世界立志伝

小狐丸

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毒蛇王討伐

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 次の日、朝早くから出発して毒蛇王の森へ向かった。

 森の近くで車を降りると、ルフトとテツオを出して、ルキナとクリストフ君の護衛を任せる。

「今回は真っ直ぐ、タイラントトライヘッドバイパーのもとへ向かうから。
 ただ、クリストフ君のジョブレベルを鍛える為に、探知に引っかかる魔物は狩っていくから」
「了解よ」
「「「はい!」」」「は~い!」

 全員が装備と持ち物の確認をして、森へと分け入る。

 標的のタイラントトライヘッドバイパーまであと少しの所で、野営する事にした。
 真っ直ぐ標的に向かって来たが、ここまでの移動に2日掛かった。

 その間に、クリストフ君がとうとう聖騎士職にジョブチェンジする事が出来た。
 俺を含め、皆んなも随分と強くなったと思う。この調子なら、深淵の森深部へ行ける日も近いだろう。

 ルフトとテツオに警戒させ、交代で休む。

 翌朝、軽く朝食を食べて移動を開始する。

「コレットとルキナは、魔導銃で遠距離攻撃。
 エルとイリアが右の頭。
 クリストフ君が左の頭を。
 俺は真ん中の頭を攻撃する。
 ルフトはルキナの護衛を、タイミングを見て法撃を頼む。
 テツオはクリストフ君のサポートだ。
 じゃあ、行くぞ!」

 目標の毒蛇王を目の前に、手早く指示を出すと走りだす。

 タイラントトライヘッドバイパーは、さすがにSランクに近いAランクと言われるだけあって、その威圧感は、ワイバーンや地竜に近いものがあった。
 その巨体は20メートルを超え、その名の通り3つある頭を支える胴回りは、直径2メートルはあるだろう。
 一つ一つの頭に続く部分でさえ、直径1メートルはある。



 コレットとルキナが魔導銃を放つと同時に駆け出す。
 俺も魔法を放ちながら正面から突っ込みヘイトを稼ぎ、ルキナやコレットに注意を逸らす。
 エルとイリアは、気配を消して右から回り込む。
 クリストフとテツオが左側から回り込む。

 ガキッ!

 真ん中の頭がカイトに大口を開けて襲いかかり、カイトのバルディッシュと牙がぶつかり、カイトが数メートル後ろに飛ばされ、毒蛇王も弾き飛ばされる。

「さすがに正面からぶつかると押し負けるか」

 俺は直ぐに追撃を仕掛ける為に間合いを詰める。


 左右の頭がカイトを狙う。それを見逃さずエルとイリアが右の頭に襲いかかり、首を連続で斬りつける。

 ギャーー!!

 右の頭が痛みにのたうち回る。

 ギャーー!!

 左の頭からも苦悶の叫びをあがる。
 クリストフとテツオの攻撃で深い傷を負う。



 カイトは襲い来る頭を蹴りあげる。

 ドガッ! 頭が上に跳ね上がる。

 怒り狂った毒蛇王がカイトを狙うが、そこにカイトの姿はなかった。

 ズバッ! ドサッ!

 一瞬で横に回り込み、飛び上がったカイトのバルディッシュが大上段から振るわれ、毒蛇王の中央の首を落とした。

 首を落とされた傷痕に、ルキナとコレットからの法撃が襲う。

 20メートルを超える巨体が、痛みと怒りでのたうち回る。

 ズドンッ!

 右の首が宙を舞い、地面に落ちる。

 ザシュ! ザクッ! ザンッ!

 クリストフとテツオの攻撃に、カイトが追い討ちをかけた。

 ドサッ!

 全ての首を落とされた、タイラントトライヘッドバイパーの身体がのたうち回る。

 やがて動きが鈍くなり、力尽きてその動きを止めた。

「ふぅ~、お疲れさま。これは丸ごと収納しておくね」
「お、お疲れさまです」

 緊張がとけたクリストフ君がヘタリ込む。初めての大物相手だから疲れもあるのだろう。

 トテトテトテ、 ドンッ!

 ルキナが飛び込んで来る。

「カイトおにいちゃん!ルキナ頑張った?」
「凄かったよ~、ルキナは強いな~」

 頭を撫でてあげると、二へへ~と笑う。

「この後どうするの?」

 エルが近付いて来て、この後どうするか聞いて来た。周辺の魔物を討伐するのかと言うことだろう。

「少し強い気配のする魔物を間引いておこうか」
「「はい!」」

 イリアとコレットは何時も返事が良い。しかも俺の意見に反対する事もない。その信頼なのか依存なのかは分からないけど、彼女達が望んでいるのなら仕方ないとも思う。

「じゃあ2日程かけて王都方向へ向かいましょうか、素材を売れば開発の助けになるし」

 エルの提案に皆んなが頷き、先頭に俺が立ち、真ん中にルキナを囲むような陣形で、森の中をサーチアンドデストロイで魔物を狩っていった。

 領域の主が倒され、その後釜を狙う魔物達を優先的に狩っていく。
 魔物の領域は蠱毒に似ている。たくさんの魔物が弱肉強食の争いを繰り広げ、やがて毒蛇王のような領域の主が君臨する。

 現在なぜ魔素の濃い場所が存在するのか、判明していない。
 ただ、魔素の濃い場所では木々の成長が早く、森を形成する事が多く、魔素の拡散を防ぐ役割を果たす。
 その木々の中から魔素の影響を受けた、トレントなどの植物系モンスターが誕生するのは知られている。

 人間は魔素の濃い場所で影響を受けないのか、と言う疑問がわくが、何故か人はアンデットに成らないと魔石が体内に生成される事はないらしい。
 これはドルファレス師匠が言っていたのだけど、アンデットの本人が言うのだから多分正しいのだろう。

 この毒蛇王の森も、木々を伐採して森を縮小し、木々の間隔を広く空けてしまえば、魔素が拡散し特別に強い個体が発生する事もないだろう。

 俺達は、2日掛けて森の外へたどり着く。その間、各自が目標とするジョブやスキルのレベル上げをしながら相当数の魔物を狩っていった。

「さあ、王都で報告して終了だな」

 俺達は車に乗り込むと一路王都へ帰った。

 いくら浄化で綺麗になっても、やっぱりゆっくりとお風呂に入りたいのが本音だった。

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