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叙勲と陞爵
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毒蛇王の討伐を無事に終え、俺達は王都へ帰ってきた。
王都の冒険者ギルドで大量の魔物素材を売却し、タイラントトライヘッドバイパーの解体も併せて頼んでおく。
「この後どうするの?」
「何時ものホテルで王宮からの連絡待ちかな」
エルからの問いに答えて、王都に来る度に泊まっているホテルへ向かう。
王都の貴族街の中にある屋敷で、肥って弛んだ身体を揺らしながら、一人の男が部下に喚き散らしていた。
「あの娘は、儂の妻に成るのではないのか!」
顔を真っ赤にして、口からツバを飛ばしている男は、ドロス・グラーフ・フォン・オースその人だった。
バスターク辺境伯の長女、エルフの血が入った美しい少女を我が物に出来ると信じていた、オメデタイ男である。
先代のオース伯爵が立派な人物だった関係で、バスターク辺境伯とも付き合いもあり、貸しもあると思っていた。実際にはそんなもの存在しないのだが。
「おい!儂の女に手を出した奴は何者だ!」
ドロスに聞かれた男は、汚れ仕事を専門にする組織の人間だった。
「閣下、あの男には近づかぬ方が良いかと思われます」
「何を訳の分からん事を言ってる!」
ドロスが益々興奮してくる。
「その男が何を成したか聞いておられませんか?」
「その男がどうしたと言うんだ!何時ものように始末しろ!」
男は首を横に振る。
「閣下、我等の組織には荷が勝ちすぎます」
「……どういうことだ」
「我等はこの件からは手を引かせて頂きます」
そう言うと男はドロスの前から去った。
「なんだ、なんだと言うんだ!」
ドロスが呆然と男の去った後を見ていた。
金で様々な汚れ仕事を請け負って来た男は、その銀髪の少年を見て、体の震えが止まらなかった。
十分な距離を取っていた筈だった。だが、簡単に気付かれてしまう。
そして確かにその男と目があった。
その目は確かに俺の「顔は覚えたぞ」と言っていた。
お得意様のオース伯爵からの仕事で、バスターク辺境伯の長女に付いた虫が何者か調べ、可能ならばその場で消す事を請け負った。
先ず何者かを調べた時点で、自分達の手に負える仕事じゃない事が分かる。
その男は単騎で、帝国軍10,000の軍勢に突撃し、撤退に追いやったという。
帝国軍の被害は3,000人以上だと言う。それは既に人の為すことではない。
お伽話の英雄達なら可能だろうが。
俺は王都を離れ暫くほとぼりを冷ます事にした。
「冗談じゃねえ、あんなバケモン相手にしてられるか」
この日を境に、王都で活動していた犯罪組織が姿を消した。
ホテルに王宮から迎えが来て、カイトとエルが王城へ向かった。
エルとカイトの服装はレイラが用意して着替えさせていた。
王城の控え室で待機して案内を待つ。
コン コン
ドアがノックされて、カイトを謁見の間へと案内する。
謁見の間に入ると、教えられた通りの場所で膝をつきこうべを垂れる。
「カイト・フライヘーア・フォン・ドラーク、面をあげて楽にせよ」
えっ?何その名前?俺は困惑しながらも顔をあげる。
「予はバージェス・サーメイヤだ。此度の毒蛇王討伐見事であった。
この功績により、ドラーク準男爵を男爵に陞爵する事とする。併せて聖龍勲章を与える」
いまだに名前の事で動揺しながらも、先に教えて貰った通りにする。
「……ありがたき幸せ」
「ふむ、あとは宰相のメルコムに任せる。メルコム後は頼む」
バージェス王は満足気に頷くと、横に控える男に声を掛ける。
「はっ、ではドラーク男爵への報償ですが、金銭とは別に、毒蛇王の森を含む、そこから南東に広がる未開地を領地とする事で、今回の報償とします」
そこで、その場に居合わせた貴族達が騒ぎ始める。
「王よ、新参者の男爵には過ぎた褒美ではないですか。どうかお考え直しを」
そこに一人の派手な衣装に身を包み、肥った男が王に反意を促す発言をする。
「オース伯爵か、この地は毒蛇王を討伐したとしても、冒険者ギルドの探索推奨Aランクの危険な場所よ。ドラーク男爵でなければ開発どころか、踏みいる事もかなわん。
なんならオース伯爵が、開発してみるか?」
「くっ、いえ、それは……」
法衣貴族のオース伯爵には、自前の騎士団がある訳でもない。オース伯爵自身の警護に数人の配下が居るだけだ。
「ではこの件はこれまでだ。ドラーク男爵、これからの活躍を期待している」
そう言うとバージェス王は退出して行った。
その後姿を真っ赤な顔をで睨みつけるオースがいた。
謁見が終わり、エルの待つ控え室に戻った。
「エル、なんか知らないうちに、名前が長くなっている」
「あら、何て名前?」
「カイト・フライヘーア・フォン・ドラークって、訳わかんないんだけど」
俺の言った名前を聞いてエルが説明してくれた。
「フライヘーアは男爵だから、子爵や伯爵になったら変わるの。フォンは前置詞ね。で、ドラークが姓ね。
まぁ、普段はドラーク男爵って呼ばれる事の方が多いと思うわよ」
正式な任命書を受け取り、俺は未開地を領地とする男爵となってしまった。
上手くエルに乗せられた感はあるけど、まぁそれも良いだろう。
王都の冒険者ギルドで大量の魔物素材を売却し、タイラントトライヘッドバイパーの解体も併せて頼んでおく。
「この後どうするの?」
「何時ものホテルで王宮からの連絡待ちかな」
エルからの問いに答えて、王都に来る度に泊まっているホテルへ向かう。
王都の貴族街の中にある屋敷で、肥って弛んだ身体を揺らしながら、一人の男が部下に喚き散らしていた。
「あの娘は、儂の妻に成るのではないのか!」
顔を真っ赤にして、口からツバを飛ばしている男は、ドロス・グラーフ・フォン・オースその人だった。
バスターク辺境伯の長女、エルフの血が入った美しい少女を我が物に出来ると信じていた、オメデタイ男である。
先代のオース伯爵が立派な人物だった関係で、バスターク辺境伯とも付き合いもあり、貸しもあると思っていた。実際にはそんなもの存在しないのだが。
「おい!儂の女に手を出した奴は何者だ!」
ドロスに聞かれた男は、汚れ仕事を専門にする組織の人間だった。
「閣下、あの男には近づかぬ方が良いかと思われます」
「何を訳の分からん事を言ってる!」
ドロスが益々興奮してくる。
「その男が何を成したか聞いておられませんか?」
「その男がどうしたと言うんだ!何時ものように始末しろ!」
男は首を横に振る。
「閣下、我等の組織には荷が勝ちすぎます」
「……どういうことだ」
「我等はこの件からは手を引かせて頂きます」
そう言うと男はドロスの前から去った。
「なんだ、なんだと言うんだ!」
ドロスが呆然と男の去った後を見ていた。
金で様々な汚れ仕事を請け負って来た男は、その銀髪の少年を見て、体の震えが止まらなかった。
十分な距離を取っていた筈だった。だが、簡単に気付かれてしまう。
そして確かにその男と目があった。
その目は確かに俺の「顔は覚えたぞ」と言っていた。
お得意様のオース伯爵からの仕事で、バスターク辺境伯の長女に付いた虫が何者か調べ、可能ならばその場で消す事を請け負った。
先ず何者かを調べた時点で、自分達の手に負える仕事じゃない事が分かる。
その男は単騎で、帝国軍10,000の軍勢に突撃し、撤退に追いやったという。
帝国軍の被害は3,000人以上だと言う。それは既に人の為すことではない。
お伽話の英雄達なら可能だろうが。
俺は王都を離れ暫くほとぼりを冷ます事にした。
「冗談じゃねえ、あんなバケモン相手にしてられるか」
この日を境に、王都で活動していた犯罪組織が姿を消した。
ホテルに王宮から迎えが来て、カイトとエルが王城へ向かった。
エルとカイトの服装はレイラが用意して着替えさせていた。
王城の控え室で待機して案内を待つ。
コン コン
ドアがノックされて、カイトを謁見の間へと案内する。
謁見の間に入ると、教えられた通りの場所で膝をつきこうべを垂れる。
「カイト・フライヘーア・フォン・ドラーク、面をあげて楽にせよ」
えっ?何その名前?俺は困惑しながらも顔をあげる。
「予はバージェス・サーメイヤだ。此度の毒蛇王討伐見事であった。
この功績により、ドラーク準男爵を男爵に陞爵する事とする。併せて聖龍勲章を与える」
いまだに名前の事で動揺しながらも、先に教えて貰った通りにする。
「……ありがたき幸せ」
「ふむ、あとは宰相のメルコムに任せる。メルコム後は頼む」
バージェス王は満足気に頷くと、横に控える男に声を掛ける。
「はっ、ではドラーク男爵への報償ですが、金銭とは別に、毒蛇王の森を含む、そこから南東に広がる未開地を領地とする事で、今回の報償とします」
そこで、その場に居合わせた貴族達が騒ぎ始める。
「王よ、新参者の男爵には過ぎた褒美ではないですか。どうかお考え直しを」
そこに一人の派手な衣装に身を包み、肥った男が王に反意を促す発言をする。
「オース伯爵か、この地は毒蛇王を討伐したとしても、冒険者ギルドの探索推奨Aランクの危険な場所よ。ドラーク男爵でなければ開発どころか、踏みいる事もかなわん。
なんならオース伯爵が、開発してみるか?」
「くっ、いえ、それは……」
法衣貴族のオース伯爵には、自前の騎士団がある訳でもない。オース伯爵自身の警護に数人の配下が居るだけだ。
「ではこの件はこれまでだ。ドラーク男爵、これからの活躍を期待している」
そう言うとバージェス王は退出して行った。
その後姿を真っ赤な顔をで睨みつけるオースがいた。
謁見が終わり、エルの待つ控え室に戻った。
「エル、なんか知らないうちに、名前が長くなっている」
「あら、何て名前?」
「カイト・フライヘーア・フォン・ドラークって、訳わかんないんだけど」
俺の言った名前を聞いてエルが説明してくれた。
「フライヘーアは男爵だから、子爵や伯爵になったら変わるの。フォンは前置詞ね。で、ドラークが姓ね。
まぁ、普段はドラーク男爵って呼ばれる事の方が多いと思うわよ」
正式な任命書を受け取り、俺は未開地を領地とする男爵となってしまった。
上手くエルに乗せられた感はあるけど、まぁそれも良いだろう。
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