異世界立志伝

小狐丸

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海岸線を探索してみる

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 季節は秋、しかしドラーク男爵領は、王国の南に位置するので、冬になっても大雪が降る事はない。

 村が造られたのは海沿いだが、将来的には領都はもう少し内陸部に移す積りだ。未開地の中央部の広い場所を領都として開発する積もりだ。

 今日は、エル、イリア、ルキナを連れて海へ来ていた。

「パパー、投げてー」

 白い耳をピョコピョコさせて、ルキナが俺に釣竿を渡す。今日は、仕事を休みにして、海へ釣りに来ていた。

「よし!任せとけ」

 ルキナから釣竿を受け取ると、沖に向かって仕掛けを投げ入れる。

 ルキナに竿を渡して直ぐにアタリがあった。

「あっ!パパー!グンッてなった!」

「ルキナ、落ち着いてリールを巻いてごらん」

 うんしょうんしょ、とルキナが一生懸命リールを巻いている。普通の幼女なら重くて巻けない様なモノでも、ルキナには当てはまらない。基礎ステータスがレベルアップで上昇しているので、釣り糸が切れないかぎり、少々大物でも平気で釣り上げるだろう。

「やったー!釣れたよ、パパー!」

 ルキナが大型の鯛の様な魚を釣り上げる。

「おお~、凄いなルキナー」

 ピョンピョン跳ねて喜ぶルキナの頭を撫でる。

 長い間未開地だっただけあって、入れ食い状態だった。
 俺達は、海側を移動しながら釣りを続ける。

 ドラーク男爵領となったこの地は、海岸線も変化に富み、白い砂浜が続く遠浅の場所、波の穏やかで水深が深く港に出来そうな場所、入り組んだ海岸線があったりと、水産資源が期待できる。

「魔物の気配も近くには無いわね」

 エルが索敵して水生の魔物を探している。

「多分、船を出すと寄って来るだろうな。これだけ海側に拓けた土地があるのに、隣のゴンドワナ帝国が手を出さない訳がない」

「川を渡るのも難しいものね」

「あゝ、ゴンドワナ帝国側に広がる森と湿地は、厄介な魔物が多そうだからな。川にも魔物の気配があるから、船を出せないんだろう。ひょっとしたら何度かチャレンジしたかもしれないけどね」

 カイトの言うとおり、ゴンドワナ帝国も過去に何度かこの地を支配しようと、兵を送り込んだ事がある。だが、苦労して多数の兵を失い森を抜け、やっとの思いで川を渡ろうと船を出すと、そこで魔物の餌食となって全滅した。
 それではと、海へ船を出すた所、巨大な水生の魔物に、船団が全て沈められるという被害に、帝国はこの地を諦めた。

「沖に出ての漁業は難しいかもな」

 エルの探知範囲には、魔物の気配が無かったみたいだが、俺の探知範囲にはしっかり大型から小型まで、色々な魔物の気配を掴んでいた。

「海に出なくても大丈夫な漁を考えないとダメかもね」

「パパー、また釣れたよー」

 ルキナが今度は、鰤の様な大型の魚を釣り上げていた。

「凄いな~ルキナは」

 カイトの足にしがみつき、抱きつくルキナの頭を撫でる。褒められて嬉しいルキナが、グリグリと頭を腰に擦り付ける。

「さて、今日はこの位で帰ろうか。釣った魚を料理して貰おう」

「うん!」

 跳び上がったルキナを片手に抱いて、エルとイリアと帰路につく。




 領主館へ帰って、俺はアンナさんとイリア、コレット、ルシエルが、ルキナの釣った大量の魚を料理して行く。

 ブイヤベース風から、塩焼き、フライ、と大量に作っていく。
 刺身はさすがに諦めた。生の魚を食べる習慣がこの国にはないし、何より醤油が無い。


 ダイニングテーブルに、所狭しと並べられた魚料理に、全員が歓声を上げルキナを褒める。

「うん、美味いな」

「おいし~い!」ルキナも大満足みたいだ。

「「「………………」」」

 男どもは、無言でひたすら食べ物を口に入れている。

「ランカス、海岸線の探索はどうだった?」

 俺達が釣りをしていた時、ランカス達に海岸線の探索を頼んでいた。
 ランカスは、新たに加わった兵士を連れて、訓練がてら海岸線の探索に行っていた。

「カイト様の予想通りでした。
 海岸線の何ヶ所かで、船の残骸が見つかりました。多分帝国軍の軍船の残骸で間違い無いでしょう」

「やっぱりか、川や海から侵攻しようとして失敗していたか」

「普通の木の船では、川を渡るのも、海から侵攻するのも無理だったようですな」

「では、当分の間は海や川からの侵攻に対する防衛は考えなくて良いな」

 大型の鉄製の船でも無い限り、海や川からの侵攻は、心配しなくて大丈夫だろう。そうなると領地を接する、バスターク辺境伯にゴンドワナ帝国やローラシア王国が侵攻した時に、援軍を送れる準備だけで良い。

「じゃあ、後はウチがどれだけ精鋭の部隊を育てれるかだな」

「それはカイト様や奥方様達の助けがあれば、推奨ランクCの魔物の領域での格上げが出来ますから、どこの騎士団よりも精鋭に育てる事が出来ると思います」

 最初は、俺達がサポートすれば、後はランカス達だけでも大丈夫になるだろう。

「そうよね、少数でも精鋭の騎士団を造るのが目標ね」

「カイト様の負担が減りますから」

 エルとアンナさんがそう言うと、バスターク辺境伯領に侵攻した帝国軍を、カイトほぼ一人で撃退した事を知らないメンバーは、不思議そうな顔をする。

「そうね、一騎当千とまで言わなくても、少なくとも騎士の100人や200人は、相手に出来る様になって貰いたいわね」

「……一騎当千?カイト様は千の敵を相手にされたのですか?」

「違うよー!」

 ランカスが聞くと、ルキナが否定する。ランカスがホッとする間も無く、ルキナが続けて爆弾を落とす。

「パパは、もっといっぱいの騎士さんをやっつけたの~!」

「そうね、帝国軍一万を相手にしたのよね~」

「「「「………………」」」」

 さすがに、現場に居た者以外全員が絶句する。

「カイトの1/100なら出来そうでしょう」

「いや、別に飛び抜けて強くなる必要はないよ。武官は領民を護れるだけの力があれば」

「……精進します」

 ランカスが何とかそう言って、その場はお開きになった。

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