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日本人ならお米です
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村の規模が順調に拡張する今日この頃、俺は遂にお米に付いての有力な情報を手に入れた。
あれは、秋植えの麦を植えている農民のオジさんと雑談をしていたときだった。
オジさんに稲の特徴を説明して、知らないか聞いてみた。
「あゝ、白麦じゃなそれは。南方で育つ麦じゃが、水が大量に必要じゃから、あまり目にする事はないがの」
それを聞いた時、俺は小躍りしそうな位に嬉しかった。
「それは何処で手に入りますか?」
「王都なら商業ギルドで種籾を買える筈じゃ」
オジさんからの情報を得て、俺は早速、田んぼを作らねばと思ったが、湿地帯があった事を思い出した。あそこに田んぼを作って、その近くにもう一つ村を造るべきか。
それに幾ら南方とはいえ、植え付けは来年になるのだから、それまでに何とかするか。
「取り敢えず俺の食べる分が有れば良いか」
湿地帯の一画に水田を作り、俺が育てれば良い事に気付く。
そんな時間が取れるのかは別にして。
俺は早速、エルに王都へ行って良いか聞いてみる。
「はっ?ダメに決まってるじゃない」
「…………」
一言の元に却下された。
「だよね~」
エルが段々強くなってきてる気がする。
ただ、これで俺が諦めるなんて有り得ない。
俺の取った手段は単純だ。
開発出来る場所は、全て前倒しでやってしまう。ただそれだけだ。
やる事がなかったら、エルも俺が王都に行くのを許してくれるだろう。
よし、馬車馬のように働くぞ!
畑の魔物除けや防柵を設置、村の防壁も町へ拡張する糊代を考えて、広めに余裕を持たせた。
開発の合間に、ルキナと遊ぶ事も忘れない。
母親のイリアと再会して、随分とマシになったが、今でも俺に依存している部分が大きい。長く離れると不安になるみたいだ。だから、行儀はイリアやアンナさんに任せ、俺は全力で可愛がっている。
「パパ~~!」
ルキナが手を振って走ってくる。
俺が手を広げると、嬉しそうにピョンと跳んで抱きついて来る。
「あのね、ご飯の時間なの」
気が付けば、いつの間にか、日が暮れ初めていた。大分集中して作業をしていたみたいだ。
「呼びに来てくれたのか。じゃあ帰ろうか」
ルキナを抱いて、屋敷へ戻る。
ルキナと一緒に手を洗い、うがいをする。
そこで自分とルキナに【浄化】の魔法をかける。
(浄化の魔法で、手洗いうがいは必要ないけどな)
二人でダイニングに入ると、全員が揃っていた。全員と言っても、ランカス、ボーデン、バルデス、サンクは兵舎に移っている。なんでも兵士達との連帯感を持つ為に、ランカスが必要だからと言ってそうなっている。
だから、この屋敷には男は俺だけというハーレム状態だ。
「遅くなってごめんね。では頂きます」
全員が一斉に食事を始める。
「カイト、随分と開発頑張っていたけど、そんなに王都へ行きたいの」
「あゝ、お米が有るかもしれないんだ。行かない選択はないよ」
エルの問い掛けに即答する。
「なら、明日一日ルキナとイリアを連れて王都へ行って来たら」
「やったー!パパとお出掛けだー!」
ルキナがバンザイする。
「三人なら転移でも大丈夫でしょう」
「あゝ、いっその事、王都に家を買って、転移陣を設置しといた方が良いかもな」
「あら、それ良いわね。それならお母様とも簡単に会えるもの」
「どちらにしても、明日行って家買う訳にはいかないから、買い物だけして帰って来るよ」
「イヤイヤイヤ、転移陣ってなんですか!そんなもの設置出来るんですか!そんなのバレたら不味いじゃないですか!」
アンナさんに言われて、それもそうかと思う。いきなり相手の本拠地へ、軍を送り込む事も可能だと思われたら、さすがに不味いじゃ済まないか。
「じゃあ、ナイショって事で」
「……はぁ~、言える訳ないじゃないですか」
アンナさんは、意外と常識人だ。
次の朝、早くから起きて、ひと狩りした後、イリアとルキナを連れて、王都の近くに転移する。
さすがに、街中に突然人が現れると不味いので、歩いて王都の門をくぐる。
「フンフフン、フン、フン」
俺とイリアで、ルキナを挟むように手を繋ぎ、王都の市場へ行く。
ルキナは朝からご機嫌で、鼻歌を歌いながら、スキップするように歩いている。
先ずは、玄米が売っていると聞いたので、麦を扱う店に行く。
「すいません。白麦は有りますか?」
「量は少ないが、扱ってるよ」
農家のオジさんが言ってた通り、白麦はあまり王国では食べないようだ。
「じゃあ、全部下さい」
ここは当然大人買いだ。
「200キロしかないが、それで良いかい」
「はい!」
200キロしかないのは残念だけど、来年にはドラーク男爵領でも生産するのだから、我慢、我慢。
「200キロなら40,000セルだな」
「じゃあ銀板4枚ですね」
俺は銀板4枚を店主に渡し、お米の入った麻袋を四つ受け取る。一袋40キロ入りみたいだ。
お米の袋をアイテムボックスへ収納すると、次は商業ギルドで種籾を買う。
俺の用事が済んだので、ルキナやイリアの服やアクセサリーを買ったり、露店で買い食いしながら王都を散策する。
「ルキナ、楽しかった?」
「うん!」
ルキナが良い笑顔で言ってくれたので、今日は連れて来た甲斐があったな。
今度は、エルやコレットも連れて来てあげないとな。
お米が手に入ったので、これは益々醤油と味噌にチャレンジしようと決意した。
あれは、秋植えの麦を植えている農民のオジさんと雑談をしていたときだった。
オジさんに稲の特徴を説明して、知らないか聞いてみた。
「あゝ、白麦じゃなそれは。南方で育つ麦じゃが、水が大量に必要じゃから、あまり目にする事はないがの」
それを聞いた時、俺は小躍りしそうな位に嬉しかった。
「それは何処で手に入りますか?」
「王都なら商業ギルドで種籾を買える筈じゃ」
オジさんからの情報を得て、俺は早速、田んぼを作らねばと思ったが、湿地帯があった事を思い出した。あそこに田んぼを作って、その近くにもう一つ村を造るべきか。
それに幾ら南方とはいえ、植え付けは来年になるのだから、それまでに何とかするか。
「取り敢えず俺の食べる分が有れば良いか」
湿地帯の一画に水田を作り、俺が育てれば良い事に気付く。
そんな時間が取れるのかは別にして。
俺は早速、エルに王都へ行って良いか聞いてみる。
「はっ?ダメに決まってるじゃない」
「…………」
一言の元に却下された。
「だよね~」
エルが段々強くなってきてる気がする。
ただ、これで俺が諦めるなんて有り得ない。
俺の取った手段は単純だ。
開発出来る場所は、全て前倒しでやってしまう。ただそれだけだ。
やる事がなかったら、エルも俺が王都に行くのを許してくれるだろう。
よし、馬車馬のように働くぞ!
畑の魔物除けや防柵を設置、村の防壁も町へ拡張する糊代を考えて、広めに余裕を持たせた。
開発の合間に、ルキナと遊ぶ事も忘れない。
母親のイリアと再会して、随分とマシになったが、今でも俺に依存している部分が大きい。長く離れると不安になるみたいだ。だから、行儀はイリアやアンナさんに任せ、俺は全力で可愛がっている。
「パパ~~!」
ルキナが手を振って走ってくる。
俺が手を広げると、嬉しそうにピョンと跳んで抱きついて来る。
「あのね、ご飯の時間なの」
気が付けば、いつの間にか、日が暮れ初めていた。大分集中して作業をしていたみたいだ。
「呼びに来てくれたのか。じゃあ帰ろうか」
ルキナを抱いて、屋敷へ戻る。
ルキナと一緒に手を洗い、うがいをする。
そこで自分とルキナに【浄化】の魔法をかける。
(浄化の魔法で、手洗いうがいは必要ないけどな)
二人でダイニングに入ると、全員が揃っていた。全員と言っても、ランカス、ボーデン、バルデス、サンクは兵舎に移っている。なんでも兵士達との連帯感を持つ為に、ランカスが必要だからと言ってそうなっている。
だから、この屋敷には男は俺だけというハーレム状態だ。
「遅くなってごめんね。では頂きます」
全員が一斉に食事を始める。
「カイト、随分と開発頑張っていたけど、そんなに王都へ行きたいの」
「あゝ、お米が有るかもしれないんだ。行かない選択はないよ」
エルの問い掛けに即答する。
「なら、明日一日ルキナとイリアを連れて王都へ行って来たら」
「やったー!パパとお出掛けだー!」
ルキナがバンザイする。
「三人なら転移でも大丈夫でしょう」
「あゝ、いっその事、王都に家を買って、転移陣を設置しといた方が良いかもな」
「あら、それ良いわね。それならお母様とも簡単に会えるもの」
「どちらにしても、明日行って家買う訳にはいかないから、買い物だけして帰って来るよ」
「イヤイヤイヤ、転移陣ってなんですか!そんなもの設置出来るんですか!そんなのバレたら不味いじゃないですか!」
アンナさんに言われて、それもそうかと思う。いきなり相手の本拠地へ、軍を送り込む事も可能だと思われたら、さすがに不味いじゃ済まないか。
「じゃあ、ナイショって事で」
「……はぁ~、言える訳ないじゃないですか」
アンナさんは、意外と常識人だ。
次の朝、早くから起きて、ひと狩りした後、イリアとルキナを連れて、王都の近くに転移する。
さすがに、街中に突然人が現れると不味いので、歩いて王都の門をくぐる。
「フンフフン、フン、フン」
俺とイリアで、ルキナを挟むように手を繋ぎ、王都の市場へ行く。
ルキナは朝からご機嫌で、鼻歌を歌いながら、スキップするように歩いている。
先ずは、玄米が売っていると聞いたので、麦を扱う店に行く。
「すいません。白麦は有りますか?」
「量は少ないが、扱ってるよ」
農家のオジさんが言ってた通り、白麦はあまり王国では食べないようだ。
「じゃあ、全部下さい」
ここは当然大人買いだ。
「200キロしかないが、それで良いかい」
「はい!」
200キロしかないのは残念だけど、来年にはドラーク男爵領でも生産するのだから、我慢、我慢。
「200キロなら40,000セルだな」
「じゃあ銀板4枚ですね」
俺は銀板4枚を店主に渡し、お米の入った麻袋を四つ受け取る。一袋40キロ入りみたいだ。
お米の袋をアイテムボックスへ収納すると、次は商業ギルドで種籾を買う。
俺の用事が済んだので、ルキナやイリアの服やアクセサリーを買ったり、露店で買い食いしながら王都を散策する。
「ルキナ、楽しかった?」
「うん!」
ルキナが良い笑顔で言ってくれたので、今日は連れて来た甲斐があったな。
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お米が手に入ったので、これは益々醤油と味噌にチャレンジしようと決意した。
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