異世界立志伝

小狐丸

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領都を造る準備

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 海側の村の開発が順調に進んでいる。
 塩の生産量も増え、王国への出荷量も順調に伸び、塩を他国に頼らずに済む日も近いだろう。

 村への移住者も増え、追加で住居をもう100戸建てられ、商店用の建物も多数建てられた。

 住民も、麦や野菜を育てる農業従事者、村近くで獲物を狩る猟師、沿岸漁業をする漁師、商人、鍛治職人、製塩業に付いている人達、小さな子供から成人するまでの子供までを教える教師と、様々な住民が増え、村から町へと様変わりした。


 次の開発に向けて話し合う為、俺達はリビングに集まっていた。

「この村もこの短期間で、既に町と呼べる規模まで拡大出来た。開発に掛かった資金も数年で元が取れるだろう。
 そこでだ、そろそろ領都となる都市の開発に向けて準備を始めようと思うんだ」

 この近くの丘に城を造って、領都にする積りだったけど、領地真ん中辺りに拡張性に富んだ街を造るべきだと思った。

「そうね、お金は王国からの分は大分少なくなったけど、塩の売り上げと海産物の加工品の販売も順調だし、人頭税を入れれば資金的には問題ないわね」

 少し早いかと思った領都建設を、エルも賛成してくれた。

「そうなると、領都を建設する場所を何処にするかなんだけど」

「毒蛇王の森を抜けた場所が良いのではないですか。綺麗な湖も近くに有りますし」

「そうだな、川も何本か流れているから、農業にも困らないだろうな」

 ランカスとバルデスが、森の側を勧める。

「じゃあ森をもう少し切り開かないといけないニャ。魔物が溢れた時の為に、少し距離を置いておく必要があるニャ」

「……森の側だと、王都やバスターク辺境伯領へ素早く駆け付ける事が出来る」

 ユーファンとボーデンもそれぞれに、意見を言う。
 そう、未開地の開発に成功したとなると、帝国がバスターク辺境伯領経由で攻めよせる可能性がある。森の側に城郭都市を建設するのは悪くない。

「森が近い方が狩りに行きやすいしな」

「魔石の確保もし易いのです」

 サンクとスーラも賛成みたいだ。

「私もあの湖が近いのは嬉しいです。何故かあの湖の近くは、精霊達が喜ぶのです」

 ルシエルもあの湖の側は望ましいらしい。
 しかし、精霊が喜ぶ湖か……、まさかね。

「じゃあ、またお父様や陛下にお願いに行かなきゃね。貴族家で家を継げなくて、仕事に就けない者も多いから」

 騎士団や王都の守備隊も、人員が余り気味なんだそうだ。
 騎士団や王都守備隊には、貴族家の子弟の他、平民からも、農地を継げない次男三男が職を求めて来る為だ。際限なく人員を増やす訳にもいかず、ドラーク男爵領の立ち上げで、職に有り付けると、守備隊や騎士団への入隊を希望する者が、あとを絶たない。
 それは文官も同じで、優秀な人材でも職につけない者が多いらしい。

 武官も文官も、就職するのに重要なのは、コネがあるという事らしい。
 ただ、それはドラーク男爵家には当てはまらない。新興の男爵家で、他の貴族家との付き合いは皆無に等しい。唯一繋がりがあるのが、バスターク辺境伯と王家だ。中央の法衣貴族家や領地持ちの貴族とは、顔を合わせた事もない。
 領地を接するのも、バスターク辺境伯と王家の直轄地だけなので、隣のよしみでとはいかない。

 ドラーク男爵家は、良くも悪くも実力主義なのだ。ただそれは、ただ優秀である必要はない。仕事に誠実であれば、仕事が出来る悪人よりも勝る。

「とにかく全員と面接して選ぶしかないな」

 俺とエル、武官はランカスが、文官はルシエルが中心となって面接して決めるか。

「それに、そろそろ王家から召喚状が来る頃よ」

「あゝ、そんな段取りだったな」

 エルからの言葉で思い出した。確か、未開地の開発に成功したと判断すれば、子爵に陞爵するって言ってたな。

「カイト・ビスコント・フォン・ドラークね」

「長いよ、カイトで良い」

 貴族の名前は、長くてかなわない。

「じゃあ、領都を建設する為の、縄張りを描く必要があるな」

「手分けして、街の規模や農地の位置と規模を決める為の探索に出ましょう。その情報を持ち寄り、縄張りを決めれば良いと思います」

「そうだな、森をどの位後退させるのかも決めないといけないしな」

 ランカスの提案に、早速動き出す事を決めた。




 町を出て、北に向かう。

「この辺かな」

 領都建設地付近に立ってみる。
 北西部に毒蛇王の森が広がり、その真ん中を広い街道が突き抜けている。
 北東部に、大きな湖が神秘的な姿を見せている。湖に流れ込む川が何本か見え、湖から南の海へ流れ出る大きめの川がある。
 東部は、川の手前に草原が広がり、川の向こうが湿地帯になっている。
 西部は、草原が広がり、帝国との間を遮る大河手前に、魔物の領域である森が縦に広がる。

 海側の町から馬車なら2日の距離か、北に森の中の街道を抜けて、王都までは馬車なら4日かかるくらいか。車なら一日掛からないけどね。

「ここに、一辺が1キロ四方、総延長4キロの城壁に囲まれた街を造る」

「1キロ四方ですか、王都に継ぐ規模になりそうですね」

 俺の計画案に、ランカスも驚いている。
 城壁で囲まれた街には、将来的には、5,000人~6,000人規模の人口になるだろう。
 そうなると、この世界では、サーメイヤ王国の王都ソレイユ、ゴンドワナ帝国の帝都マイエラ、ローラシア王国の王都アビラに継ぐ規模の街になるとランカスが教えてくれた。

「ランカス、縄張りに合わせて、杭打ちしてくれるか。それが終われば、森の伐採する際の護衛に着いてくれ」

「かしこまりました」

 俺達は、下準備を始める。
 1キロ四方の角に杭打ちでマークする。
 森を伐採して、森と街との距離を離す。

 今はまだ何もない場所で、各自が作業をしていると、王都からの使者が訪れ、召喚状を渡して帰って行った。

 この場をランカスに任せ、俺とエルは王都へ向かう事にする。

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