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カイト、部族ごとスカウトする
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ローラシア王国との国境に近い街、マドゥークまでエルと転移で飛んで来た。そこからゴーレム馬のブリッツとラヴィーネで国境を越える。
エルもラヴィーネに随分慣れたみたいだ。
バドックまでは、ブリッツとラヴィーネなら、あっという間だった。
「相変わらずこの国は亜人差別が厳しいみたいだな」
バドックの街に入り、街行く人々を見て思う。獣人も歩いているのを見掛けるが、100パーセントに近いくらいの確率で奴隷だ。
「ねえ、カイト。ローラシア王国の辺境には獣人の部族が住む集落があると聞くわ。いっその事部族ごと移住して貰うっていうのはどう?」
「それはアリかもしれないな」
ローラシア王国にすれば、税金の減収になる訳だから、表立って移住を勧める訳にはいかない。あくまでも自主的に、ドラーク子爵領に逃げて来て貰う。当然、手助けはするが。
以前来た奴隷商の前に来ると、店主が出て来て挨拶をして来た。
「これはこれは、カイト様。いえ、ドラーク子爵様と呼んだ方が良いですかな」
「情報が早いな。何処から情報を仕入れているのか?」
「ホッホッホッ、こういう商売、情報が大切ですからな。まぁ、立ち話もなんですから、どうぞ中へ」
店主に促され、店の中に入り応接室のソファーに座る。メイドがお茶を淹れて出て行くと、店主が話を始める。
「そろそろドラーク子爵様が来られると思い、あらゆる手段を使って人員を確保しました。特に、奴隷狩りの犠牲者は、出来る限り集めています」
「ありがとう。犯罪奴隷や博打などでの借金奴隷じゃなければ全員買おう」
そこではやはり獣人が多かったが、人族も含めて30人の奴隷を買った。店主には多めにお金を払っておいた。
俺が来るまで、掛かった経費を含めて払っておいた。
それからは大変だった。領地までの長距離転移を繰り返し、30人全員をピストン輸送した。
領地では、獣人族の男はバルデスやボーデンに、獣人族の女性はイリアやユーファンに、人族は男はランカス達に、女性はルシエルに世話を任せた。
本人達の希望を聞き、農民、職人、製塩事業、教師、兵士と希望にそう職業について貰う。
子供達は、全員無料で通える学校を造ったので、読み書き計算を教える。
ここでの生活に慣れた頃に、領都へ移って貰う予定だ。
新しく連れてこられた奴隷達も、自分達の与えられた環境が、思いのほか待遇が良く、差別なく普通に人として接して貰える事に喜んだ。
バドックの奴隷商で買った、奴隷達も落ち着いたので、虎人族のバルデスと熊人族のボーデンを連れてバドックの街近くに転移した。
バルデスとボーデンは、獣人族の集落を探す手伝いと、同じ獣人の立場から移住を勧めて貰うためだ。
「カイト様、先ずは北西部の辺境へ向かいましょう。北西部の海岸付近から、エルフの国サーリット王国近くから、ローラシア王国近くまでを探しましょう」
「了解」
バルデスの意見通りに、北西部の辺境へ行くため、車をアイテムボックスから取り出し、早速乗り込む。
俺達は道無き道を、北西部へ向けひた走る。
夜になると家に転移で戻り、また転移で昨日進んだ場所から走り始める。
ひたすら走り続けること3日、北西部の海岸にたどり着く。
「この辺りは、ローラシア王国の外れになるのか?」
「いや、この辺りはローラシア王国から外れている筈だと思います」
「……ここは、どこの国にも属さない」
バルデスとボーデンの言うには、ローラシア王国の国境から外れた地域だと言う。
獣人族は、ローラシア王国の圧政から逃れるために、この様などこの国にも属さない土地に集落を造る事があるそうだ。
国の統治から外れた土地故、全て自給自足で生活しないといけない。もともと獣人族は、自給自足の生活を部族ごとに送っているが、外との交易もない状態では、日々を生きる事に精一杯だと言う。
国の統治から外れた土地では、魔物の脅威からも自分の身は自分で守らなければいけない。
「じゃあ、広範囲に探知するよ」
人の気配が密集している場所を、探索しながら車を走らせる。
「うん?50~60人規模の気配があるな。集落にしては少なくないか?」
「少ないでしょうな。その規模の集落では、先細りのジリ貧でしょう。近隣に他の集落を見つけられないと血が濃くなり過ぎますし」
集落のあるだろう場所へハンドルを切る。
暫く走ると、簡素な柵に囲まれた、小さな集落が見えてきた。
たどり着いた集落は、粗末な小屋の様な建物が10軒ほど建つ、本当に小さな集落だった。
いや、ローラシア王国から逃れた獣人族の集落は、この様な規模の集落が殆どかもしれない。
俺達が車から降りて、歩いて集落に近付くと、集落から数人の男達が、粗末な武器を手に警戒していた。
この集落は、戦闘にあまり向かない種族が集まり作られたみたいだ。
山羊人族、羊人族、鼠人族の三種が、僅かな畑を耕して暮らしていた。
「おっ、お前らは何だ!奴隷狩りか!」
この集落のリーダーなのか、山羊人族の老人が警戒している。
「落ち着け、我等の首に首輪は無いであろう。
今日は、この集落の民に提案を持って来た。それを聞いて断るも良し、我等は直ぐに退散する」
同じ獣人族の方が、少しでも安心するかと、バルデスが話をする。
「……そ、それで、何の用だ!」
「ここに居られるのは、サーメイヤ王国のドラーク子爵様だ。この度、領地を賜わり移住者を探しておられる。我等が領地では、種族間差別は存在しない。我等ももともとは、ローラシア王国の奴隷狩りに会い、奴隷商で売られていた所をカイト様に救って頂いた」
バルデスが移住の話をすると、ヒソヒソと話し合っている。いきなり現れて、何処にあるかも分からない場所に移住と言われても、戸惑うのは当然だろう。
と思っていたけど、直ぐに彼等は移住する事に同意した。俺が不思議に思っていると、山羊人族の老人(一応村長なのだそう)が、その理由を教えてくれた。
「我等を見てもらえれば分かると思いますが、この集落は限界なのです」
村長が言うには、この集落には若い男が居なかった。この場所まで逃げるうちに、少しでも戦える若い男は、魔物との戦闘で死んだそうだ。
俺がそう言われ、集まって来た集落の人達を見ると、年寄りと女子供しか居なかった。確かにジリ貧だろう。
「これが、そちらの方のように虎人族や熊人族なら、また違ったのでしょうが……」
それから村長に、住居と畑を提供する事。初年度の税金は取らない事などを伝え、ドラーク子爵領への移住に同意して貰った。
少ない荷物を纏めて、俺のアイテムボックスへ収納して、一旦海沿いの町へピストン輸送した。
領都予定地の下水道整備を、先にしないとダメだな。俺は、次回はこの地点から探索を始める事にして、領都予定地で移住者の受け入れ準備を先にする事にした。
エルもラヴィーネに随分慣れたみたいだ。
バドックまでは、ブリッツとラヴィーネなら、あっという間だった。
「相変わらずこの国は亜人差別が厳しいみたいだな」
バドックの街に入り、街行く人々を見て思う。獣人も歩いているのを見掛けるが、100パーセントに近いくらいの確率で奴隷だ。
「ねえ、カイト。ローラシア王国の辺境には獣人の部族が住む集落があると聞くわ。いっその事部族ごと移住して貰うっていうのはどう?」
「それはアリかもしれないな」
ローラシア王国にすれば、税金の減収になる訳だから、表立って移住を勧める訳にはいかない。あくまでも自主的に、ドラーク子爵領に逃げて来て貰う。当然、手助けはするが。
以前来た奴隷商の前に来ると、店主が出て来て挨拶をして来た。
「これはこれは、カイト様。いえ、ドラーク子爵様と呼んだ方が良いですかな」
「情報が早いな。何処から情報を仕入れているのか?」
「ホッホッホッ、こういう商売、情報が大切ですからな。まぁ、立ち話もなんですから、どうぞ中へ」
店主に促され、店の中に入り応接室のソファーに座る。メイドがお茶を淹れて出て行くと、店主が話を始める。
「そろそろドラーク子爵様が来られると思い、あらゆる手段を使って人員を確保しました。特に、奴隷狩りの犠牲者は、出来る限り集めています」
「ありがとう。犯罪奴隷や博打などでの借金奴隷じゃなければ全員買おう」
そこではやはり獣人が多かったが、人族も含めて30人の奴隷を買った。店主には多めにお金を払っておいた。
俺が来るまで、掛かった経費を含めて払っておいた。
それからは大変だった。領地までの長距離転移を繰り返し、30人全員をピストン輸送した。
領地では、獣人族の男はバルデスやボーデンに、獣人族の女性はイリアやユーファンに、人族は男はランカス達に、女性はルシエルに世話を任せた。
本人達の希望を聞き、農民、職人、製塩事業、教師、兵士と希望にそう職業について貰う。
子供達は、全員無料で通える学校を造ったので、読み書き計算を教える。
ここでの生活に慣れた頃に、領都へ移って貰う予定だ。
新しく連れてこられた奴隷達も、自分達の与えられた環境が、思いのほか待遇が良く、差別なく普通に人として接して貰える事に喜んだ。
バドックの奴隷商で買った、奴隷達も落ち着いたので、虎人族のバルデスと熊人族のボーデンを連れてバドックの街近くに転移した。
バルデスとボーデンは、獣人族の集落を探す手伝いと、同じ獣人の立場から移住を勧めて貰うためだ。
「カイト様、先ずは北西部の辺境へ向かいましょう。北西部の海岸付近から、エルフの国サーリット王国近くから、ローラシア王国近くまでを探しましょう」
「了解」
バルデスの意見通りに、北西部の辺境へ行くため、車をアイテムボックスから取り出し、早速乗り込む。
俺達は道無き道を、北西部へ向けひた走る。
夜になると家に転移で戻り、また転移で昨日進んだ場所から走り始める。
ひたすら走り続けること3日、北西部の海岸にたどり着く。
「この辺りは、ローラシア王国の外れになるのか?」
「いや、この辺りはローラシア王国から外れている筈だと思います」
「……ここは、どこの国にも属さない」
バルデスとボーデンの言うには、ローラシア王国の国境から外れた地域だと言う。
獣人族は、ローラシア王国の圧政から逃れるために、この様などこの国にも属さない土地に集落を造る事があるそうだ。
国の統治から外れた土地故、全て自給自足で生活しないといけない。もともと獣人族は、自給自足の生活を部族ごとに送っているが、外との交易もない状態では、日々を生きる事に精一杯だと言う。
国の統治から外れた土地では、魔物の脅威からも自分の身は自分で守らなければいけない。
「じゃあ、広範囲に探知するよ」
人の気配が密集している場所を、探索しながら車を走らせる。
「うん?50~60人規模の気配があるな。集落にしては少なくないか?」
「少ないでしょうな。その規模の集落では、先細りのジリ貧でしょう。近隣に他の集落を見つけられないと血が濃くなり過ぎますし」
集落のあるだろう場所へハンドルを切る。
暫く走ると、簡素な柵に囲まれた、小さな集落が見えてきた。
たどり着いた集落は、粗末な小屋の様な建物が10軒ほど建つ、本当に小さな集落だった。
いや、ローラシア王国から逃れた獣人族の集落は、この様な規模の集落が殆どかもしれない。
俺達が車から降りて、歩いて集落に近付くと、集落から数人の男達が、粗末な武器を手に警戒していた。
この集落は、戦闘にあまり向かない種族が集まり作られたみたいだ。
山羊人族、羊人族、鼠人族の三種が、僅かな畑を耕して暮らしていた。
「おっ、お前らは何だ!奴隷狩りか!」
この集落のリーダーなのか、山羊人族の老人が警戒している。
「落ち着け、我等の首に首輪は無いであろう。
今日は、この集落の民に提案を持って来た。それを聞いて断るも良し、我等は直ぐに退散する」
同じ獣人族の方が、少しでも安心するかと、バルデスが話をする。
「……そ、それで、何の用だ!」
「ここに居られるのは、サーメイヤ王国のドラーク子爵様だ。この度、領地を賜わり移住者を探しておられる。我等が領地では、種族間差別は存在しない。我等ももともとは、ローラシア王国の奴隷狩りに会い、奴隷商で売られていた所をカイト様に救って頂いた」
バルデスが移住の話をすると、ヒソヒソと話し合っている。いきなり現れて、何処にあるかも分からない場所に移住と言われても、戸惑うのは当然だろう。
と思っていたけど、直ぐに彼等は移住する事に同意した。俺が不思議に思っていると、山羊人族の老人(一応村長なのだそう)が、その理由を教えてくれた。
「我等を見てもらえれば分かると思いますが、この集落は限界なのです」
村長が言うには、この集落には若い男が居なかった。この場所まで逃げるうちに、少しでも戦える若い男は、魔物との戦闘で死んだそうだ。
俺がそう言われ、集まって来た集落の人達を見ると、年寄りと女子供しか居なかった。確かにジリ貧だろう。
「これが、そちらの方のように虎人族や熊人族なら、また違ったのでしょうが……」
それから村長に、住居と畑を提供する事。初年度の税金は取らない事などを伝え、ドラーク子爵領への移住に同意して貰った。
少ない荷物を纏めて、俺のアイテムボックスへ収納して、一旦海沿いの町へピストン輸送した。
領都予定地の下水道整備を、先にしないとダメだな。俺は、次回はこの地点から探索を始める事にして、領都予定地で移住者の受け入れ準備を先にする事にした。
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