異世界立志伝

小狐丸

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橋をかける

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 ドラーク子爵領と新しく領地となった、元チラーノス辺境伯領とは大きな河で遮られている。
 それが俺の領地へと帝国が攻め込めなかった理由だが、俺はそこに橋を架けようと思いたった。
 もともと大河に棲む魔物と、その川の両岸にある小規模な魔物の領域の所為で、川からの侵攻が出来なかった経緯がある。
 この世界にある船は、漁師が使う小型の木造船しかない。それは外洋には大型の魔物が多く棲息している為、海に漕ぎ出る事が出来ないからだ。
 大型の船を建造しても、海竜などの大型の魔物には通用しない。かえってその大きさが魔物を惹きつける事になる。

 魔物に負けない船の開発も楽しそうだけど、橋梁を建設する方が先だろう。橋が架かれば、俺が治める事になった、旧チラーノス辺境伯領までショートカット出来る。今は俺が転移を使っているが、いつまでも転移で資材や人材の運び屋をしている訳にはいかないのだから。

 ただこの大河を渡す橋梁となると、魔法と錬金術無しには造れない。橋脚に魔物避けの結界を付与したり、考えないといけない事は多い。

 橋の資材となる鋼材や石材を大量に確保する為、王国中から買い付けるとともに、俺自ら鉱石の採掘や石材の切り出しに大陸を飛び回っている。





「カイト、資材は揃ったの?」

 屋敷のリビングでエル、ルシエル、イリアの妊婦組と、ルキナに皆んなのサポートにアンナさんとコレットがいた。
 橋梁建設用の資材確保に飛び回っていた俺は、屋敷で束の間の休息を取っていた。

「あゝ、資材は全部アイテムボックスに収納してあるよ」

「じゃあ魔物の領域を切り拓いて、街道を敷かなければいけませんね。お手伝い出来る事があればおっしゃって下さいね」

 ルシエルが赤ちゃん用の靴下を編みながら言ってくれる。

「いや、街道工事と魔物の領域を切り拓くのは、ランカスとユーファンが指揮をとって進めてくれているんだ。旧チラーノス辺境伯領側もボーデンが指揮して街道工事を進めてくれているよ」

「お側で護衛する事が出来なくて申し訳ありません」

「イリアも自分の身体を第一に考えないと。今が一番大事な時期だろう」

 何時も俺の側に付き従っていたイリアが、済まなそうに言って来るけど、安定期に入るまでは自重してもらう事にした。

「じゃあ、ちゃっちゃと橋脚建ててくるよ」

「ルキナも行くー!」

 ルキナが大型の虎型ゴーレムのルフトに飛び乗った。

「魔物の領域に行くから危ないよ」

「いくのーー!」

 俺が橋脚の建設に集中すると、ルキナを見ていてあげれないと思って、危ないと言ったのだけど、ルキナは行くと言って聞かなかった。
 ルキナは小さな幼女だけど、パワーレベリングにより、その実力は自分の身は自分で守れるレベルだとは思うんだけど……。

「私がルキナ様の護衛につきましょう」

 リビングに諜報部隊の隊長で、黒豹人族のフーガが入って来た。

「カイト様は工事に集中している間、ルキナ様の護衛はお任せ下さい」

「諜報部隊の隊長に悪いな護衛を任せて。
 じゃあフーガにルキナの護衛をお願いするよ」




 その後俺はルキナとフーガを連れて橋梁建設予定地に向かう。

 魔物の領域を切り拓いての街道工事は、ドラーク子爵軍の魔法師部隊の中で、土魔法の得意な者たちと、工兵部隊が協力して進めてくれていた。

 風魔法で魔法師部隊が木の伐採を行い、溢れでる魔物をランカスとユーファンの部隊が狩って行く。
 拓かれた場所を土魔法で整地し、街道を石畳で整備した後、魔物避けの魔導具で仕上げる。

「さて、取り敢えず今日中に橋脚まで建ててしまうか」

 大河の河辺に立ち、設計図をもとに橋脚の位置を確認する。大河と言っても河幅は2キロもないので、橋の長さは3キロ程度になるだろう。

「パパー!この辺で遊んでていいー!」

「遠くに行っちゃダメだよ」

「わかったー!」

 ルフトに跨ったルキナが、護衛のフーガと離れて行った。

「よし!」

 気合いを入れると、先ず一本目の橋脚を建てる。

 設計図にしたがい、予定する場所の水を魔法で取り除く、川底に穴を開けてアイテムボックスからあらかじめ製作していた橋脚を置く。穴を埋めて土魔法で固める。ゆっくりと水をもとに戻して一本目の橋脚を建てることに成功した。橋脚は芯を金属製に、周りを石で覆っている。

 川の中に巨大な橋脚が一本立ち上がり、魔物避けの効果も確認出来た。
 俺は橋脚のてっぺんに降り立つと、対になる橋脚の建設にうつる。

 橋脚の数は多い、まだまだ作業は始まったばかりだ。

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