異世界立志伝

小狐丸

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橋の完成

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 ドラーク子爵領とゴンドワナ帝国の旧チラーノス辺境伯領(現ドラーク子爵領)を隔てる大河に架ける橋の工事が、俺の魔法での力技によるゴリ押しで建設が進んでいた。

 魔力量の関係で、一日に完成する橋脚の数は、四本が限界だった。およそ3キロの橋の橋脚約二百本が完成するのに一月半かかった。

 作業中、水棲の魔物が襲って来る事も無く、橋脚に付けられた魔物避けの魔導具の効果も実感出来た。
 その頃には、両岸の街道工事も終了し、ランカス達には通常任務に戻って貰っている。俺の護衛は時折気が向くと来るルキナだったりする。その度にフーガには付き合わせて悪いと思うけど。

 ランカスやバルデス、ボーデン、ユーファン、サンク達は、新兵の訓練と新領の治安維持に忙しい。
 そこで橋梁工事の合間に、人材募集をする事にしたんだけど。

 まぁ、俺も少しは予想していたけど……。

「……ランカス、ちょっと多くないか?」

 領地が広がり、守備隊や騎士団の増員の為、文官を含めて募集してみたところ、予想をはるかに上回る人数が集まって来た。

「最近、帝国領からの保護を求める難民も多く……」

 サーメイヤ王国内から移住する者もいるが、貴族間のしがらみもあり、その数はそこまで多くない。他国に居た獣人族が、ドラーク子爵領に希望を持って移住するケースも多いが、今俺達の目の前には、3,000人の仕事を求める男女が溢れていた。

「なんか年齢も幅が広いな」

「ちらほらと知った顔が有りますね」

 ランカスの話だと、チラーノス辺境伯軍の中隊長クラスが居るらしい。チラーノス辺境伯は、その領地が半分になり、領軍も縮小せざるをえなくなって、大量のリストラが行われたそうだ。それは文官も同じらしく、年齢問わず募集をかけた所為もあって、様々な年齢層の人が集まって来ていた。
 本来なら国内の貴族家から、コネを使って人材を斡旋してくるのだけど、なにせ俺が付き合いのある貴族と言えば、義父のバスターク辺境伯ぐらいなもので、そのバスターク辺境伯にしても、テンプルトン伯爵領が増えた分、人手不足でこちらまで中々まわってこない。

「即戦力になれそうなベテランもいそうだけど?」

「おそらく平民出身か、領地を持たない騎士爵、あるいはあまり裕福でない貴族家の三男以下かと」

「敵国だよな……、これって大丈夫なの?」

 王弟モーティスによるバージェス王弑虐から始まった、ゴンドワナ帝国とテンプルトン伯爵率いる反乱軍との戦いが終結し、漸く落ち着きを取り戻しつつある王国だけど、永年にわたり争って来た帝国の元軍人や文官を雇っても良いのかランカスに聞いてみる。
 俺的には貴族と三男や、軍の隊長クラスが応募してくるとは思っていなかった。

「平時なら不味いでしょうが、今のチラーノス辺境伯は、領地も支配する街や村も半分になっています。当然、今まで通りの軍も維持できないでしょうから、身分の低い者から首を切られたのでしょう。我が領に亡命して来たと考えれば良いんじゃないですか」

「まぁ今だけだから我慢して面接するか」

 そう、俺達はこの人数を面接しないといけない。
 俺の鑑定とランカスやコレットバルデスが見極めて行く。正直言って、俺的には犯罪者じゃなきゃOKなんだけど、それでも出来れば優秀な人材を欲しいのは当たり前だよな。

 面接は、鑑定で犯罪者の称号持ちを除き、その後手分けをして面接をして行った。
 予想していたけど、ゴンドワナ帝国とローラシア王国の間者がかなり混じっていたのと、犯罪者もかなり混ざっていた。

 結局、間者と犯罪者を除外して二次面接に進む人を決めるのに一日かかった。

 二日間に渡る面接の結果、約2,000人の武官、文官、侍女がドラーク子爵領に就職する事になった。

 騎士団や守備隊候補は、早速ランカス達が新兵訓練に連れて行った。元騎士や兵士達も、ウチのレベルにはほど遠いので、基礎訓練から始めてもらう。
 文官や侍女は、妊娠中で申し訳ないが、エルやルシエル、アンナさんやコレットが対応してくれる。



 人材募集の面接が終わり、俺は橋梁建設に戻った。
 橋脚が完成したあと、上に架ける橋は鋼鉄に靭性強化、軽量化と防錆のエンチャントをかけた、長い鋼材を橋脚に載せて行く。
 3キロに渡る鋼鉄の橋が出来上がる。後はこの上に軽量エンチャントをほどこした石材で仕上げていくと完成だけど、ここからは工兵や職人も入って人海戦術で工事が進んで行く。

 それから二カ月かかって、四台の馬車が余裕を持ってすれ違えるだけの、全長3キロに渡る橋が出来上がった。

 これで飛び地だった領地と橋で繋がり、ドラーク子爵領が益々発展していくだろう。

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