異世界立志伝

屋敷の警備体制強化

　俺は三人の子供が出来た事で、屋敷の警備体制を見直す事にした。

　ジークフリート、ルル、ルーファリスを護る為に、今のままでは足りないと感じていた。
　特にルーファリスがエルフの国、サーリット王国にとって特別視されているハイエルフとして産まれて来た事で、その必要性が確かなものになった。



「弟と妹達は、ルキナが護るの！」

　お姉ちゃんになって張り切るルキナが、赤ちゃん達を集めた部屋で、ルフトに跨り部屋の中をウロウロしている。

　俺達は主要なメンバーを集め、リビングで警備体制の強化をどうするか話し合っていた。



「今の警備体制はどうなってるの？」

　エルが諜報担当のフーガに聞く。

「現在は、正規の警護兵以外には屋敷の周辺を四交代で諜報部が警備しています」

「赤ちゃん部屋には、ルフトに跨ったルキナが張り切って見張っているわね」

　フーガの後にエルが楽しそうにルキナの事を話す。

「私が部屋に常に詰めるニャ」

　ユーファンが赤ちゃん部屋の警護に専念すると宣言した。

「スーラは屋敷の部屋に結界の魔導具を設置した方が良いと思うのであります」

「騎士団からの巡回警備を増やしますか」

　スーラとランカスが、それぞれに意見を言う。
　確かに魔導具で結界を張るのも有効だろうけど、そこまで屋敷に近付けない事も重要だよな。

「信用に足る部下を増やすのも勧めないといけないけど……」

「人は急に増やせませんものね」

　俺の単純に人を増やしたいという思いに、その難しさをルシエルが言う。

「そうなるとゴンドワナ帝国かローラシア王国で、奴隷を買うという手段も、考えないといけないのでは」

　バルデスの意見にボーデンも頷く。

　確かに奴隷という選択肢もあるけど、バルデスやボーデン達のような良い人材が、必ず手に入るとは限らない。

「守備隊と騎士団の人員増は続けるとして、精鋭の兵士や騎士の中から何人かは親衛隊扱いで屋敷に詰めた方が良くないか？」

「おお！サンクがまともな事言ってるよ」

「たまには俺だってマシな事言うさ」

　俺が少しからかった様に言うと、サンクが口を尖らせる。

「バドックの街の奴隷商、確かハヌックだっけか、あの爺さんの店に行ってみるか」

「我等が居た店ですな」

　俺が言った奴隷商は、ランカス達を買った店だ。

「そうね、私も一度あの店は見ておいた方が良いと思うわ」

　エルの賛同が得れたので、バドック行きは決定する。

「我等も違法奴隷を中心に、解放してもカイト様に忠誠を誓いそうな者を探してみます」

「あゝ、フーガの所でも引き続き、奴隷狩りの被害者達を含めて探してみてくれ」

　俺だけでは、ゴンドワナ帝国とローラシア王国内の奴隷商を全て見て回るのは無理なので、フーガ達諜報部にも手伝って貰おう。

　この世界に召喚術士って職業があれば良かったのに、わざわざゴーレムでルフトを造らなくても、従魔契約した魔物を召喚して護衛に出来たのに。

「やっぱりゴーレムか……」

「そうです！ゴーレムを造るのです！」

　俺がボソリと呟いたゴーレムというワードに、スーラが激しく食いついた。

「そうだな、スーラは騎士型ゴーレムの開発を頼めるか。俺はルフトみたいに、魔物をベースにしたゴーレムを考えてみるよ」

「了解であります！」

　俺がそう言うや否や、スーラは部屋を飛び出して行った。

「「「「「………………」」」」」

　うん、スーラだから良しとしよう。

「じゃあ、屋敷自体の防衛力強化。
　騎士団、守備隊、諜報部全体の人員の確保。
　奴隷の中で優秀な人材の確保。
　騎士型ゴーレム及び魔物型ゴーレムの開発。

　取り敢えずこんな所か……」

「申し訳ありません。
　ルーファリスは為に……」

「それは違うぞルシエル。
　ルーファリスだけじゃなく、ルルもジークフリートも大事な俺の子供達だ。その子達を護るのは親の務めだろう」

「そうよルシエル、私達にはエルフの事情なんて関係ないもの」

「カイト様、エルレイン様、ありがとうございます」

　ルーファリスがハイエルフに産まれ、サーリット王国から干渉があるかもしれない事に、ルシエルは随分気に病んでいるようだけど、俺とエルの言葉で少しは気が軽くなったようだ。

　その後、細かな事を話し合い、出来る事から進めていく事にした。