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ルーファリスとオウカ
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「意識が戻ったんだって?」
幻獣種麒麟族の女性が意識が戻ったと聞いて様子を見に来ていた。
「あっ、カイト様。
暫くは安静にする必要があるでしょうけど、リハビリを含めて一月もあれば日常生活は問題無く送れるようになると思います」
看病についていたコレットが彼女の状態を説明してくれた。
「ドラーク伯爵様、この度は命を救っていただきありがとうございます。そればかりか奴隷からも解放していただき「ちょっと待った!」」
身体を無理にお越し、感謝を伝える麒麟族の女性に待ったをかける。
「そこまで感謝する程の事でもないよ。これは俺の自己満足だし、俺にも自分の領地に領民を勧誘出来るという打算もあるんだし」
「それでも本来なら大金を積んでも叶わない身体の治癒を施して下さったばかりか、奴隷からも解放していただいたご恩を返さなければ、獣人族としての恥さらしになります。どうか伯爵様にお仕えさせて下さい」
そう言って麒麟族の女性が、ベッドの上で深々と頭を下げた。
「そういえば自己紹介もしていませんでした。
私は麒麟族のオウカと申します」
「俺はカイト、一応この地を治めている。
もともと平民だから、気軽に接してくれれば良いよ。敬語も必要ないし」
「カイト様は身分や種族にこだわりませんから、あまり緊張しなくても大丈夫ですよ」
俺とコレットがそう言ってもオウカは緊張がほぐれないみたいだ。普通は貴族相手ならそうなのかもしれないな。
「それとオウカがリハビリを終えて身体の調子が戻ったら、少しレベルやスキルの訓練をしてもらう。
幻獣種麒麟族という希少種族でも俺の領地なら危険はないと思うけど、出来ればある程度は自分の身は自分で護れるようにしておいた方が安心だからな」
「頑張ってカイト様のお役に立てる様になります」
「あゝ、だけど先ずは体調を戻さないとな」
「どうだった?」
エルおルシエルが待つ部屋に戻ると、オウカの様子を見て来た俺にエルが聞いてきた。
「あゝ、身体の方は暫くリハビリすれば大丈夫だろう。だけど彼女はドラーク領からあまり出ない方が良いな」
「そうね、今ならルーファリスの件もあって、領都の防衛機能も上がっているから丁度良かったかもね」
「そうですね、この屋敷は特に防衛機能が充実していますから、サーリット王国の国王や六長老も怖くありませんから」
「で、サーリット王国はちょっかい掛けてきそうかいルシエル?」
エルフの行動がいまいち読めない俺は、ルシエルの考えを聞いてみる。
「う~ん、そうですね。
フォランバード王は少し……いえ、大分王には相応しくない方ですから……」
「よくそんなのが王で大丈夫なのか?」
「まぁ、六長老がサポートしているので何とか国として成り立っているのでしょうね。以前に国の結界を壊してみせたのですから、普通の感性を持つ人なら私達に敵対する愚を犯さないと思うのですが…………」
ルシエルが困ったような顔をする。
「あぁ……、守備隊やフーガ達に領都の警戒レベルを上げる様に言っておくよ」
暫くは以前の結界壊しが脅しとして効いていたみたいだけど、どうやらエルフの国の王はあまり賢くないみたいだ。
「陛下、影よりの報告が入りました」
「ほぉ、それで?」
サーリット王国のフォランバード王のもとに諜報を専門とする影からの報告が入った。
「それでルシエル様の懐妊は誠だったのか?」
王の側で警護に立つ騎士団長スーロベルデが報告の先を促す。
「陛下、スーロベルデ殿、ルシエル様は既に女の御子を御出産されています」
「ルシエルの産んだ娘か、さぞかし美しく育つであろうの」
フォランバード王がニヤけた顔をみせる。
「陛下、ルシエル様の御子はハイエルフとの噂があります」
「なっ?!なんと!ハイエルフだと!」
影の報告に驚愕するフォランバード。
「下賤な人族との間に生まれたのがハイエルフだと」
「陛下、この国の巨大結果を破壊出来るような男との子ならばその可能性もあるでしょう」
スーロベルデの言葉もフォランバードには入ってこない。その顔は憎しみとも怒りともとれる表情で玉座を握り締めていた。
真っ赤な顔をしていたフォランバードが、ふと何かを思い付いたような顔になる。
「そうじゃ、ルシエルは儂のモノにならんかったが、ルシエルの娘でハイエルフなら寧ろそちらの方が良いではないか」
急にニコニコしだしたフォランバードにスーロベルデが顔をしかめる。
「陛下、どうかご自重を」
「何を言うスーロベルデ、ハイエルフじゃぞ、エルフの王である儂に嫁ぐのが当たり前であろう」
スーロベルデは至急六長老と相談せねばと溜息をつきたくなるのを我慢した。長老達がこの愚王を抑えてくれる事を祈って……。
幻獣種麒麟族の女性が意識が戻ったと聞いて様子を見に来ていた。
「あっ、カイト様。
暫くは安静にする必要があるでしょうけど、リハビリを含めて一月もあれば日常生活は問題無く送れるようになると思います」
看病についていたコレットが彼女の状態を説明してくれた。
「ドラーク伯爵様、この度は命を救っていただきありがとうございます。そればかりか奴隷からも解放していただき「ちょっと待った!」」
身体を無理にお越し、感謝を伝える麒麟族の女性に待ったをかける。
「そこまで感謝する程の事でもないよ。これは俺の自己満足だし、俺にも自分の領地に領民を勧誘出来るという打算もあるんだし」
「それでも本来なら大金を積んでも叶わない身体の治癒を施して下さったばかりか、奴隷からも解放していただいたご恩を返さなければ、獣人族としての恥さらしになります。どうか伯爵様にお仕えさせて下さい」
そう言って麒麟族の女性が、ベッドの上で深々と頭を下げた。
「そういえば自己紹介もしていませんでした。
私は麒麟族のオウカと申します」
「俺はカイト、一応この地を治めている。
もともと平民だから、気軽に接してくれれば良いよ。敬語も必要ないし」
「カイト様は身分や種族にこだわりませんから、あまり緊張しなくても大丈夫ですよ」
俺とコレットがそう言ってもオウカは緊張がほぐれないみたいだ。普通は貴族相手ならそうなのかもしれないな。
「それとオウカがリハビリを終えて身体の調子が戻ったら、少しレベルやスキルの訓練をしてもらう。
幻獣種麒麟族という希少種族でも俺の領地なら危険はないと思うけど、出来ればある程度は自分の身は自分で護れるようにしておいた方が安心だからな」
「頑張ってカイト様のお役に立てる様になります」
「あゝ、だけど先ずは体調を戻さないとな」
「どうだった?」
エルおルシエルが待つ部屋に戻ると、オウカの様子を見て来た俺にエルが聞いてきた。
「あゝ、身体の方は暫くリハビリすれば大丈夫だろう。だけど彼女はドラーク領からあまり出ない方が良いな」
「そうね、今ならルーファリスの件もあって、領都の防衛機能も上がっているから丁度良かったかもね」
「そうですね、この屋敷は特に防衛機能が充実していますから、サーリット王国の国王や六長老も怖くありませんから」
「で、サーリット王国はちょっかい掛けてきそうかいルシエル?」
エルフの行動がいまいち読めない俺は、ルシエルの考えを聞いてみる。
「う~ん、そうですね。
フォランバード王は少し……いえ、大分王には相応しくない方ですから……」
「よくそんなのが王で大丈夫なのか?」
「まぁ、六長老がサポートしているので何とか国として成り立っているのでしょうね。以前に国の結界を壊してみせたのですから、普通の感性を持つ人なら私達に敵対する愚を犯さないと思うのですが…………」
ルシエルが困ったような顔をする。
「あぁ……、守備隊やフーガ達に領都の警戒レベルを上げる様に言っておくよ」
暫くは以前の結界壊しが脅しとして効いていたみたいだけど、どうやらエルフの国の王はあまり賢くないみたいだ。
「陛下、影よりの報告が入りました」
「ほぉ、それで?」
サーリット王国のフォランバード王のもとに諜報を専門とする影からの報告が入った。
「それでルシエル様の懐妊は誠だったのか?」
王の側で警護に立つ騎士団長スーロベルデが報告の先を促す。
「陛下、スーロベルデ殿、ルシエル様は既に女の御子を御出産されています」
「ルシエルの産んだ娘か、さぞかし美しく育つであろうの」
フォランバード王がニヤけた顔をみせる。
「陛下、ルシエル様の御子はハイエルフとの噂があります」
「なっ?!なんと!ハイエルフだと!」
影の報告に驚愕するフォランバード。
「下賤な人族との間に生まれたのがハイエルフだと」
「陛下、この国の巨大結果を破壊出来るような男との子ならばその可能性もあるでしょう」
スーロベルデの言葉もフォランバードには入ってこない。その顔は憎しみとも怒りともとれる表情で玉座を握り締めていた。
真っ赤な顔をしていたフォランバードが、ふと何かを思い付いたような顔になる。
「そうじゃ、ルシエルは儂のモノにならんかったが、ルシエルの娘でハイエルフなら寧ろそちらの方が良いではないか」
急にニコニコしだしたフォランバードにスーロベルデが顔をしかめる。
「陛下、どうかご自重を」
「何を言うスーロベルデ、ハイエルフじゃぞ、エルフの王である儂に嫁ぐのが当たり前であろう」
スーロベルデは至急六長老と相談せねばと溜息をつきたくなるのを我慢した。長老達がこの愚王を抑えてくれる事を祈って……。
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