異世界立志伝

小狐丸

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ルキナの一日

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 兎人族の幼女が、様々な種族の人間で溢れるドラーク伯爵領の街を散策している。

 幼女の名前はルキナ。

 サーメイヤ王国の西の端にあるマドゥークの街で偶然見つけた獣人族の親子。それがルキナとの出会いだった。

 残念ながら父親は助ける事が出来なかった。

 まだ三歳だったルキナを引き取るのに迷いはなかった。

 その後、サーメイヤ王国北端の街ノトスで活動していた時、奴隷商へ行った事、そこでルキナと似た魔力の波長を感じたのも奇跡だったと思う。

 そこで酷く傷付き四肢を欠損し、死を待つばかりだったイリアと出会う。

 回復したイリアは、俺の従者として常に付き従う様になり、それが何時の間にか妻の一人となった。

 その頃からルキナは俺を「パパ」と呼び、俺達は親子になった。


 この世界は常に危険と隣り合わせだ。

 だから俺は、俺の周りの人達を過剰に鍛え、装備を整え、魔導具やゴーレムを用意した。

 イリアとルキナにも過剰なパワーレベリングを敢行した。
 俺はルキナに魔導銃を与え、短剣術を教え、虎型ゴーレムのルフトを与えた。

 自重なくやり過ぎた俺の所為で、五歳になったルキナは、愛玩奴隷として狙われる兎人族という種族を超えて、トンデモない力を手に入れた。

 優しいルキナは、その力を産まれたばかりの弟や妹を守るために使う。



 そんなルキナの日常の一コマ。

 ルキナの朝は早い。

 朝起きると直ぐに顔を洗い、ルフトに乗って産まれたばかりの小さな弟や妹の部屋に行く。

「フフフッ、かわいいね~。
 ルル、ジーク、ルーファリス、おねえちゃんですよ~」

 三つのベビーベッドを見て回り、満足すると朝ごはんを食べに食堂へ行く。

 ルキナの食べる量は多い。あの小さな身体のどこにアレだけ入るのかと思う程食べる。
 まぁ、ルキナは朝から晩まで運動量も多いから大丈夫なんだろう。

 朝ごはんを食べ終えると、今度はエピルやラヴィン、フィーネ達と屋敷の中と外を見て回る。

「お家はルキナが守るの」らしい。

 見廻りが終わると、オウカと一緒に騎士団の訓練と魔物狩りに出掛ける。
 ルキナが言うには、オウカのパワーレベリングらしい。確かにウチのメンバーでオウカのレベルが一番低い。

 新兵が取り敢えず死なない様に、ある程度のレベルまで強制的にレベルアップさせる、毒蛇王の森での魔物討伐訓練に、ルキナはよく参加する。ルキナは護衛のつもりらしい。
 実際、ルキナは護衛として十分な働きをしているが、そんなルキナにも影守りとして、フーガの部下が付いて居る。最近はそれに加え、エピル達が自分達の訓練を兼ねて交代でルキナの側にいる。

 深淵の森で俺達と魔物を討伐していたルキナにとって、毒蛇王の森はルフトとのコンビネーションや新しい武器の使い勝手を試す場所になっている。
 魔物を相手に無双する兎人族の幼女を見て、新兵がひどく落ち込むのは恒例行事となっている。



 訓練から帰り弟や妹を愛でて、お昼ご飯を食べた後、今度は街の散歩と言う名の見廻りに出掛ける。
 ルフトに乗ったルキナは、街でも有名な存在で、ルキナが道を行くだけで、露店のオヤジ達が串焼きや焼き鳥をルキナに手渡す。
 最初の頃は、俺の娘になったルキナを誘拐しようとするバカな奴らや、他国の工作員も居たけど、ルキナ自身が、そんなゴロツキや工作員が束になっても敵わないうえに、フーガの部下が常に影警護しているので、根こそぎ退治出来ている。



 散歩から帰ると、イリアとエルから勉強を教わる時間だ。ルキナは何時も半泣きになって勉強している。

 勉強から解放されると、大喜びでジーク達の所へ逃げる様に突撃し、晩ご飯の時間まで弟や妹の世話をして過ごす。

 ジーク達の部屋では、オウカやエピル達と一緒になる事が多いので、彼女達には可愛がられている。
 ハーピーの子供達とも良く遊んでいるみたいだ。

 晩ご飯の時間になり夢中で食べていると、段々と船を漕ぎだすルキナ。

 今にも寝そうなルキナをお風呂に入れる。

 俺、エル、イリア、ルシエル、コレットが日替わりでルキナをお風呂に入れる。本当の母親はイリアだけど、エルやルシエル、コレットもルキナの事を自分の子供と思って接しているからだ。

 お風呂からあがって髪の毛を乾かすと、もうルキナは夢の中だ。ルキナの子供部屋へ抱いて連れて行き、ベッドに寝かせる。ベッドの傍にルフトがルキナを護るように寄り添っている。

 五歳児には濃厚過ぎる日々を、ルキナは楽しそうに過ごしている。
 ジーク達が産まれてから、俺と接する時間が減って、俺的には寂しいけど、ルキナが毎日楽しそうだから良しとしようかな。





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