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災害の後
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スタンピードが過ぎ去った後、ゴンドワナ帝国とローラシア王国側の被害の状況を調査する事にした。
ただ休戦協定を結んでいる帝国はまだしも、ローラシア王国へは堂々と越境する訳にはいかないので、フーガ達諜報部隊に任せる事にする。
「ローラシア王国の救助活動もフーガの判断でしてくれて構わない。ポーション類は足りるか?」
「はっ、食料品を含めポーション類も十分マジックバックにあります。
周辺の調査と原因究明を目指します」
フーガはそう言うと、部下を連れてローラシア王国方面へと向かう。
「カイト様、王家からゴンドワナ帝国のサダムート皇帝より正式に救助要請を受けたと連絡がありました」
「じゃあ、ランカスとバルデスは一部の部隊を率いて、救助活動を第一に魔物の残党を討伐してくれ。ボーデンはこの場の後片付けが終われば、帰還してドラーク領の防衛任務に戻ってくれ」
「分かりました。準備が出来しだい出発します」
ランカスが準備に向かう。
「私もルキナちゃんと帰るわね」
エルがルキナの手を繋ぎ近寄って来た。子供達の事もあるので、エルは戻るようだ。
「あゝ、家の事は頼むよ。
ルキナもジーク達の事を頼むな」
「うん、ルキナに任せてなの。
パパもお仕事頑張ってなの」
ルキナがピョンと抱きついて来るのを受け止めて抱き上げる。
「出来るだけ早く帰るからね」
ルキナの頭を撫でてから、エルにルキナを任せる。
「私もエルレイン様と戻りますね」
「うん、子供達の事は頼むね」
ルシエルもエルと屋敷へ戻る事になり、俺とイリア、オウカの三人と、ユーファンとエピルを連れて帝国領へと向かった。
俺がブリッツにユーファンがラヴィーネに乗り、俺の後ろにイリア、ユーファンの後ろにオウカが乗って、普及型ゴーレム馬にエピルが乗り、ゴンドワナ帝国領に入った。
そこは一言で言えば地獄だった。
小さな村は壊滅し、そこかしこに人だったモノが散乱していた。
大きめの街でも被害は大きかったようで、俺達が索敵して魔物を狩りながら、怪我人へ回復魔法をかけてまわる。
ある程度の大きさの街には、兵士が常駐していたようで、被害は大きいが街が壊滅するには至っていなかった。逆に小さな村落や町では、避難出来た住民は少なかった。
赤ちゃんから老人まで、多くの被害を出したスタンピードは、一応の収まりを見せていたが、まだ原因究明が済んでいない。
「帝国とローラシア王国の国境付近から魔物を溢れたようですね」
獣人族の鋭い嗅覚で、魔物が流れて来た方向を推測するイリア。
「フーガの報告を待って原因の排除に向かおう」
原因究明と言っても、ダンジョンの魔物が溢れた事によるスタンピードだという事は分かっている。その大体の位置やダンジョンの規模も、ランカスやルシエルの推測では、中規模から小規模なダンジョンだと予測していた。
それは大規模なダンジョンなら、その濃密な魔素により周囲の地形に与える影響が大きいので、まず人目につかず魔物が溢れるまで見逃す事はあり得ない。小規模から中規模のダンジョンで、周囲の地形に影響が少ない為に、誰にも気付かれなかったのだろうと推測出来た。
俺は亡くなった人達を埋葬して、壊滅した村ごと浄化してまわった。そうしておかないと、この辺りはアンデッドの土地になるだろう。
土魔法で穴を掘り、火魔法で焼いてから埋める。最後に浄化すると、周囲の空気が軽くなる気がした。
「どのくらいの被害が出たんでしょうね」
俺が埋葬と浄化をしている間、エピルが糸の結界を張って護衛してくれている。
「どうだろうな、俺達の領地には戸籍があるけど、帝国がどういうシステムで国民を管理しているのか知らないからな」
今回のスタンピードで、ゴンドワナ帝国とローラシア王国がどの程度被害を受けたのかは分からない。ひょっとすると国として成り立たなくなるかもしれない。
ただ俺はサーメイヤ王国の行く末に不安を持っていた。前王のバージェス三世の時代は、そのカリスマによって国を引っ張っていた。
王位を継いだクレモンと弟のノーランは、懸命に国を治めようとしているが、権謀術策にたけた高位貴族達に立ち向かうには幼過ぎた。
現在、サーメイヤ王国には、貴族派、王家派、中立派に別れているが、バスターク辺境伯とドラーク伯爵が属する中立派の戦闘力が突出している所為で、貴族派と王家派が中立派への対立を強めている。
俺は幼いクララ王女がこれ以上悲しむ事態が起きないことを願った。
ただ休戦協定を結んでいる帝国はまだしも、ローラシア王国へは堂々と越境する訳にはいかないので、フーガ達諜報部隊に任せる事にする。
「ローラシア王国の救助活動もフーガの判断でしてくれて構わない。ポーション類は足りるか?」
「はっ、食料品を含めポーション類も十分マジックバックにあります。
周辺の調査と原因究明を目指します」
フーガはそう言うと、部下を連れてローラシア王国方面へと向かう。
「カイト様、王家からゴンドワナ帝国のサダムート皇帝より正式に救助要請を受けたと連絡がありました」
「じゃあ、ランカスとバルデスは一部の部隊を率いて、救助活動を第一に魔物の残党を討伐してくれ。ボーデンはこの場の後片付けが終われば、帰還してドラーク領の防衛任務に戻ってくれ」
「分かりました。準備が出来しだい出発します」
ランカスが準備に向かう。
「私もルキナちゃんと帰るわね」
エルがルキナの手を繋ぎ近寄って来た。子供達の事もあるので、エルは戻るようだ。
「あゝ、家の事は頼むよ。
ルキナもジーク達の事を頼むな」
「うん、ルキナに任せてなの。
パパもお仕事頑張ってなの」
ルキナがピョンと抱きついて来るのを受け止めて抱き上げる。
「出来るだけ早く帰るからね」
ルキナの頭を撫でてから、エルにルキナを任せる。
「私もエルレイン様と戻りますね」
「うん、子供達の事は頼むね」
ルシエルもエルと屋敷へ戻る事になり、俺とイリア、オウカの三人と、ユーファンとエピルを連れて帝国領へと向かった。
俺がブリッツにユーファンがラヴィーネに乗り、俺の後ろにイリア、ユーファンの後ろにオウカが乗って、普及型ゴーレム馬にエピルが乗り、ゴンドワナ帝国領に入った。
そこは一言で言えば地獄だった。
小さな村は壊滅し、そこかしこに人だったモノが散乱していた。
大きめの街でも被害は大きかったようで、俺達が索敵して魔物を狩りながら、怪我人へ回復魔法をかけてまわる。
ある程度の大きさの街には、兵士が常駐していたようで、被害は大きいが街が壊滅するには至っていなかった。逆に小さな村落や町では、避難出来た住民は少なかった。
赤ちゃんから老人まで、多くの被害を出したスタンピードは、一応の収まりを見せていたが、まだ原因究明が済んでいない。
「帝国とローラシア王国の国境付近から魔物を溢れたようですね」
獣人族の鋭い嗅覚で、魔物が流れて来た方向を推測するイリア。
「フーガの報告を待って原因の排除に向かおう」
原因究明と言っても、ダンジョンの魔物が溢れた事によるスタンピードだという事は分かっている。その大体の位置やダンジョンの規模も、ランカスやルシエルの推測では、中規模から小規模なダンジョンだと予測していた。
それは大規模なダンジョンなら、その濃密な魔素により周囲の地形に与える影響が大きいので、まず人目につかず魔物が溢れるまで見逃す事はあり得ない。小規模から中規模のダンジョンで、周囲の地形に影響が少ない為に、誰にも気付かれなかったのだろうと推測出来た。
俺は亡くなった人達を埋葬して、壊滅した村ごと浄化してまわった。そうしておかないと、この辺りはアンデッドの土地になるだろう。
土魔法で穴を掘り、火魔法で焼いてから埋める。最後に浄化すると、周囲の空気が軽くなる気がした。
「どのくらいの被害が出たんでしょうね」
俺が埋葬と浄化をしている間、エピルが糸の結界を張って護衛してくれている。
「どうだろうな、俺達の領地には戸籍があるけど、帝国がどういうシステムで国民を管理しているのか知らないからな」
今回のスタンピードで、ゴンドワナ帝国とローラシア王国がどの程度被害を受けたのかは分からない。ひょっとすると国として成り立たなくなるかもしれない。
ただ俺はサーメイヤ王国の行く末に不安を持っていた。前王のバージェス三世の時代は、そのカリスマによって国を引っ張っていた。
王位を継いだクレモンと弟のノーランは、懸命に国を治めようとしているが、権謀術策にたけた高位貴族達に立ち向かうには幼過ぎた。
現在、サーメイヤ王国には、貴族派、王家派、中立派に別れているが、バスターク辺境伯とドラーク伯爵が属する中立派の戦闘力が突出している所為で、貴族派と王家派が中立派への対立を強めている。
俺は幼いクララ王女がこれ以上悲しむ事態が起きないことを願った。
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