161 / 163
最悪のシナリオ
しおりを挟む
サーメイヤ王国の中立派が地盤を固め、国王派や貴族派へのプレッシャーをかけていた。
俺の義父を中心に、準備を始めてしばらくすると、ゴンドワナ帝国とローラシア王国から思いもよらぬ情報が届いた。
それは、ゴンドワナ帝国とローラシア王国両国で、少しの時間差はあれど、ほぼ同時に内乱が発生し、それにともないサーメイヤ王国国内も不穏な空気が漂い始めた。
ちょっと考えてみれば、ゴンドワナ帝国やローラシア王国は、内乱が何時起こっても不思議ではない状態だったのだろう。
度重なる戦争、敗戦続きのゴンドワナ帝国はもとより、ローラシア王国も対帝国では勝ちきれずに国力だけが疲弊していた。
「ゴンドワナ帝国、ローラシア王国、どちらの内乱も終息の兆しが見えません。
内乱には一般の市民だけでなく、一部の兵士や騎士まで参加している模様で、より混乱が拡大しているようです。
我が領と、バスターク辺境伯領の国境は、既に固めています」
フーガからもたらされた報告は、国内の地盤を固める為に奔走していた、俺や義父であるバスターク辺境伯にとって最悪のタイミングだった。
「はぁ……、確かに、ゴンドワナ帝国もローラシア王国も、何時内乱が起こっても不思議じゃない状態だよな」
小競り合いを含め、あれだけ頻繁に軍を動かしていれば、その戦費は結局国民がツケを払う事になるのだから。
「それで、義父上の所へも報告してくれたんだよな」
「はい、バスターク辺境伯を始め、中立派へは警戒を促しています」
バスターク辺境伯家にも、優秀な諜報部門があるだろうけど、中立派で情報を共有しておく必要がある。
「ランカスとバルデスに新兵の訓練を兼ねて、魔物の領域での食肉確保を勧める様に言っといてくれ。
確実にサーメイヤ王国にも大きな影響があるからな。
特に食糧確保は早急に進める必要がある」
今までもゴンドワナ帝国とローラシア王国からは、流民が多数流れて来ていたが、戦争難民が大量に流入して来る事が予想される。
「我が領とバスターク辺境伯領なら、まだある程度戦争難民を受け入れる事が出来るでしょうが、他領では支えきれないでしょう」
「そうだよな」
そうなった場合、治安の悪化どころか、サーメイヤ王国内で内乱が起こるかもしれない。それも他国の難民、自国の国民、王国と三つ巴の内乱が……。
「国内の貴族家で、体力がない家も多いからな」
「はい、我ら中立派はまだマシですが、国王派と貴族派の中には、借金で首が回らない家も多いですから」
「そんな家にかぎって、見栄だけでパーティーばっかり派手にやってるんだから救えないよな」
貴族家が大金を使ってパーティーを開いたり、移動途中の街でお金を使うのは、国内市場にお金を回す意味もあるので無駄な訳でもない。ただ、領民に重税を課してまで見栄を張り、血税を散財する貴族家の多いことか。
「今のままでも、中立派以外の領地持ち貴族家なら、どこで領民が蜂起しても不思議ない状態ですからな」
諜報部が集めた情報から、フーガが分析したところによると、サーメイヤ王国は、俺達中立派以外の貴族家は、今の時点でギリギリの家が多いと言う。
その中で、例外的に問題ないのがベルトルト公爵家という辺りが、さすがと言うか何と言うか。
「万が一、俺達の領地以外に難民が流入した場合、出来ればバスターク辺境伯領とドラーク伯爵領へ誘導する様にしてくれ。
馬鹿な貴族家が、難民を奴隷に落としたり、最悪虐殺しかねんからな」
「…………やりかねない家が数家ありますな。
分かりました。その様に取り計らっておきます」
「難民の中に、間者が混ざってないかのチェックもしなければいけませんね」
そこで、ずっと横でイリアが懸念を示す。
「そうだな。それだけじゃなく、選民思考が強い人間は、ウチの領地じゃトラブルの元だから、その辺の問題も起こるかもしれないな」
サーメイヤ王国は、種族間差別を法律で禁止している。その中でも、俺のドラーク伯爵領では、人族以外の割合が、サーメイヤ王国内で最も多い。
獣人族、エルフ、ドワーフ、ホビットを合わせると、その割合は半数を超える。
その中に、種族間差別が根強いゴンドワナ帝国やローラシア王国からの難民が流入すれば、トラブルが起きない訳がない。
今までは、流民の意識改革しながら受け入れて来た。それでも全くトラブルがなかった訳じゃない。これが、大量に難民が流入する様になると、俺達の対応にも限界があるだろう。
「難民村を建設するしかないか。
フーガ、即応部隊を増強する様に指示を頼む」
俺は、工兵部隊への難民村建設と、何時でも軍を動かせる準備を指示した。
この大陸南にある、三国騒乱の時代が訪れようとしていた。
俺の義父を中心に、準備を始めてしばらくすると、ゴンドワナ帝国とローラシア王国から思いもよらぬ情報が届いた。
それは、ゴンドワナ帝国とローラシア王国両国で、少しの時間差はあれど、ほぼ同時に内乱が発生し、それにともないサーメイヤ王国国内も不穏な空気が漂い始めた。
ちょっと考えてみれば、ゴンドワナ帝国やローラシア王国は、内乱が何時起こっても不思議ではない状態だったのだろう。
度重なる戦争、敗戦続きのゴンドワナ帝国はもとより、ローラシア王国も対帝国では勝ちきれずに国力だけが疲弊していた。
「ゴンドワナ帝国、ローラシア王国、どちらの内乱も終息の兆しが見えません。
内乱には一般の市民だけでなく、一部の兵士や騎士まで参加している模様で、より混乱が拡大しているようです。
我が領と、バスターク辺境伯領の国境は、既に固めています」
フーガからもたらされた報告は、国内の地盤を固める為に奔走していた、俺や義父であるバスターク辺境伯にとって最悪のタイミングだった。
「はぁ……、確かに、ゴンドワナ帝国もローラシア王国も、何時内乱が起こっても不思議じゃない状態だよな」
小競り合いを含め、あれだけ頻繁に軍を動かしていれば、その戦費は結局国民がツケを払う事になるのだから。
「それで、義父上の所へも報告してくれたんだよな」
「はい、バスターク辺境伯を始め、中立派へは警戒を促しています」
バスターク辺境伯家にも、優秀な諜報部門があるだろうけど、中立派で情報を共有しておく必要がある。
「ランカスとバルデスに新兵の訓練を兼ねて、魔物の領域での食肉確保を勧める様に言っといてくれ。
確実にサーメイヤ王国にも大きな影響があるからな。
特に食糧確保は早急に進める必要がある」
今までもゴンドワナ帝国とローラシア王国からは、流民が多数流れて来ていたが、戦争難民が大量に流入して来る事が予想される。
「我が領とバスターク辺境伯領なら、まだある程度戦争難民を受け入れる事が出来るでしょうが、他領では支えきれないでしょう」
「そうだよな」
そうなった場合、治安の悪化どころか、サーメイヤ王国内で内乱が起こるかもしれない。それも他国の難民、自国の国民、王国と三つ巴の内乱が……。
「国内の貴族家で、体力がない家も多いからな」
「はい、我ら中立派はまだマシですが、国王派と貴族派の中には、借金で首が回らない家も多いですから」
「そんな家にかぎって、見栄だけでパーティーばっかり派手にやってるんだから救えないよな」
貴族家が大金を使ってパーティーを開いたり、移動途中の街でお金を使うのは、国内市場にお金を回す意味もあるので無駄な訳でもない。ただ、領民に重税を課してまで見栄を張り、血税を散財する貴族家の多いことか。
「今のままでも、中立派以外の領地持ち貴族家なら、どこで領民が蜂起しても不思議ない状態ですからな」
諜報部が集めた情報から、フーガが分析したところによると、サーメイヤ王国は、俺達中立派以外の貴族家は、今の時点でギリギリの家が多いと言う。
その中で、例外的に問題ないのがベルトルト公爵家という辺りが、さすがと言うか何と言うか。
「万が一、俺達の領地以外に難民が流入した場合、出来ればバスターク辺境伯領とドラーク伯爵領へ誘導する様にしてくれ。
馬鹿な貴族家が、難民を奴隷に落としたり、最悪虐殺しかねんからな」
「…………やりかねない家が数家ありますな。
分かりました。その様に取り計らっておきます」
「難民の中に、間者が混ざってないかのチェックもしなければいけませんね」
そこで、ずっと横でイリアが懸念を示す。
「そうだな。それだけじゃなく、選民思考が強い人間は、ウチの領地じゃトラブルの元だから、その辺の問題も起こるかもしれないな」
サーメイヤ王国は、種族間差別を法律で禁止している。その中でも、俺のドラーク伯爵領では、人族以外の割合が、サーメイヤ王国内で最も多い。
獣人族、エルフ、ドワーフ、ホビットを合わせると、その割合は半数を超える。
その中に、種族間差別が根強いゴンドワナ帝国やローラシア王国からの難民が流入すれば、トラブルが起きない訳がない。
今までは、流民の意識改革しながら受け入れて来た。それでも全くトラブルがなかった訳じゃない。これが、大量に難民が流入する様になると、俺達の対応にも限界があるだろう。
「難民村を建設するしかないか。
フーガ、即応部隊を増強する様に指示を頼む」
俺は、工兵部隊への難民村建設と、何時でも軍を動かせる準備を指示した。
この大陸南にある、三国騒乱の時代が訪れようとしていた。
49
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる