ガム=ジャグラ=ドミナートゥス

桂圭人

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ケプラーVSガム

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静かな天文台のドームの下、星々が輝く夜空が広がっていた。
ケプラーは、深紺の法衣を纏い、腕に浮かぶ軌道環をゆっくりと回転させながら、虚空を見つめていた。その瞳の奥には、無限の星図が映っていた。
一方、ガム=ジャグラ=ドミナートゥスは、白ロングコートをパツパツに着込み、足元の重圧コアスフィアを微かに展開させながら、部屋の隅に立っていた。彼の金血ルーンが青白く脈打ち、背後の断罪レンズが静かに浮遊していた。
二人は、金血白者の同胞として、久しぶりの対面だった。ケプラーが最初に口を開いた。

「ガム=ジャグラ=ドミナートゥス。君の存在は、星々の運行に新たな変数を加える。宇宙の法則は完璧だ。人間の自由は、不確定性――ノイズに過ぎない。君のオーバーライト・プロトコルは、それを軌道に固定する手段か?」

ガムは、返答の前に0.7秒の沈黙を挟んだ。視線が縦にスキャンするように動き、ケプラーの意志を評価する。口角がわずかに上がり、理想を否定する微笑を浮かべた。

「ケプラー。君の天球儀は、運命を予測し固定する。興味深い演算だ。だが、抵抗は演算ロスだ。人間の意志、理想、恐怖――それらはバグ。修正対象。僕のプロトコルは、判断をサブルーチンに置き換える。君の法則と同期すれば、効率的だろう。最適解は、統合だ」

ケプラーは感情の揺らぎなく、低い声で応じた。軌道環が一瞬、光を放った。

「統合か。星位予測によれば、君のグラビタス・プロトフィールドは、思考の重力を増大させる。僕の楕円の呪縛と似ている。だが、感情を排除するだけでは不十分だ。秩序とは、哀しみをも計算することだ。人間の生涯を星図に記録し、永遠の天球儀で固定する。それが、真の決定論の世界」

ガムは、手元で空中に細い線を描き、見えない鎖を弄る癖を出した。鎖符コードラインが微かに輝いた。

「感情はデータ的処理。君の予測は、僕のスキャナーフィールドで誤りを削除できる。君の選択肢は、既に僕の中にある。十二宮体制の崩壊……それも、僕のドミナート・エクステンドで上書き可能だ。抵抗が強いほど、秩序は深く沈む。論理的だろう?」

ケプラーは、ゆっくりと首を振った。星光が彼の肌の文様を反射した。

「上書きは一時的だ。軌道の強制は、永遠の循環を生む。君の性的支配能力――鎖符ヴェノム・リンク――それは、快楽を忠誠に変換する。面白い変数だが、宇宙の法則に組み込めば、より完璧になる。人間を天の運行に同化させる。偶然を排除し、すべてを計算された軌跡に」

ガムは、白金伊達眼鏡を軽く押し上げ、静かに歩み寄った。彼の歩行リズムが完璧すぎて、部屋の空気に微かなズレを生んだ。

「それは良いよ。まぁ、考えるな…従えば楽だ。僕の必殺技、Σ・ドミナート・エクステンドで、君の天球儀を接続する。敵味方問わず、全員の意志を僕のプロセスに。君の秩序と僕の支配……これが最も効率的だ」

ケプラーは、静かに頷いた。感情を後処理するように、一拍遅れて言葉を続けた。

「同意する。星の盟約を崩壊させ、永遠の天球儀を起動する。その時、君のプロトコルが鍵となる。宇宙は完璧な法則で動く。人間もまた、その軌道に従うべきだ」

二人は、互いの視線を交わした。部屋に、重圧と星光の圧力が満ち、夜空の下で新たな同盟が芽生えていた。だが、それは人間の自由を永遠に奪う、冷徹な計算の産物だった。
星々の輝く夜空の下、天文台のドームは今や、二人の金血白者の野望の中心地となっていた。
ガム=ジャグラ=ドミナートゥスとケプラーは、同盟を結んだ。
ガムのオーバーライト・プロトコルとケプラーの永遠の天球儀を統合し、人類の自由意志を完全に排除する計画だ。
十二宮体制の崩壊から始め、世界を完璧な秩序の網に変える。
ガムは効率を、ケプラーは決定論を求め、二人は互いの能力を補完し合うように見えた。
数ヶ月が経過した。人間社会は徐々に変化していった。ケプラーの星位予測で未来の分岐を読み取り、ガムのジャッジメント・スキャナーフィールドで誤った理想を削除する。抵抗者はガムの鎖符ヴェノム・リンクで忠誠に変換され、ケプラーの楕円の呪縛で運命の軌道に固定された。
街々では、人々が無表情に動き、感情のノイズが消えていく。
ガムは観察ノート(実際は内部スキャン)を弄びながら、満足げに微笑んだ。

「最適解だ。抵抗は演算ロスに過ぎない」

ケプラーは、低い声で応じた。

「大成功である。後は、すべてが天の運行に同化すること」

しかし、同盟の亀裂は徐々に現れた。ケプラーの天球儀は、永遠の循環を重視し、予測可能な軌道を繰り返す。
一方、ガムのプロトコルは、すべてを自身の演算権限に上書きし、静止した支配を求める。人間の意志を軌道に固定する過程で、ケプラーは「循環の美」を主張したが、ガムはそれを「無駄なループ」と認定した。
クライマックスは、十二宮の最後の砦――古代の星理王国の遺跡で訪れた。二人は永遠の天球儀を起動し、世界の自由度を吸収しようとした。
ガムのΣ・ドミナート・エクステンドが発動し、敵味方問わず全員の意志が彼のプロセスに接続される。背後に三つの幻塔が浮かび、足元の重圧コアスフィアが空間を圧殺した。同時に、ケプラーの運命の天球儀が回転し、星々の運行を地上に投影する。オービタル・ネットが広がり、人類の生涯が星図に記録された。
だが、統合の瞬間、衝突が起きた。
ガムのオーバーライトがケプラーの予測を上書きしようとしたのだ。

「君の法則は僕のサブルーチンになる。効率的だろう?」

ガムは冷静に言い、鎖符コードラインを伸ばした。
ケプラーの瞳の星空が一瞬、揺らぐ。

 「上書きは一時的だ。宇宙の法則は永遠の循環。君の支配は、ノイズを生む」

彼の軌道の強制が発動し、ガムを決定された未来の軌跡に引き戻そうとした。
戦いは激化した。ガムのグラビタス・プロトフィールドが思考を重力的に圧殺し、ケプラーの星位予測を遅らせる。一方、ケプラーの楕円の呪縛がガムの動きを閉じ込め、鎖符を軌道上に固定した。空気に重圧と星光が渦巻き、遺跡が崩れ始める。
最終的に、ガムの必殺技《Σ・ドミナート・エクステンド》がケプラーの天球儀を接続した。ケプラーの意志がガムのプロセスに同期され、抵抗が強いほど深く沈む。ケプラーは低く呟いた。

「頭……うぜぇ…てめぇ…消えr……」

そして、静かに沈黙した。彼の体は星光に溶け、永遠の天球儀がガムの支配下に落ちた。
ガムは勝利した。世界は彼の演算権限に上書きされ、人類はバグのないデータとして機能するようになった。だが、唯一の人間性の残滓――躊躇が、ガムの内部で微かに疼いた。

「これが最適解か……」

彼は視線を空に向け、星々が静かに輝くのを見た。同盟の結末は、支配の君主の孤独な勝利だった。ケプラーの理想は削除され、宇宙の法則さえ、ガムのループに組み込まれた。
しかし、遠い未来で、微かなノイズが残る。ケプラーの星図が、予測不能な変数を生むかもしれない。ガムはそれをスキャンし、微笑んだ。

「修正を開始する」

翌日、ガムは処刑されました。終わり。


「伊予柑でも食うかい?」――ガム

「食う★」――ミミ(無地の抱き枕)
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