ガム=ジャグラ=ドミナートゥス

桂圭人

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ガルマ=ガレクトVSガム

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暗く冷たい塔の頂上、虚空に浮かぶ幻塔が淡く輝く空間。そこで二つの存在が対峙していた。
一方はガム=ジャグラ=ドミナートゥス、白金に包まれた完璧な体躯で、背後に三つの幻塔を浮かべる支配の君主。
もう一方はガルマ=ガレクト、白髪と白色の瞳が無色の威圧を放ち、半身が歯車のような崩壊に侵食された知と暴の暴君。
ガムは静かに息を吐き、周囲の空気がわずかに重くなった。足元の重圧コアスフィアが低く脈打つ。彼の金血ルーンが青白く光り、視線はガルマをスキャンするように縦に動いた。

「君の存在を検知した。混沌のデータが散逸している。抵抗は演算ロスだ。修正を開始する」

ガルマは低く笑い、指先から金属質の記号が滲み出る。黒と群青の外套が裂け、半身の空洞から言葉の残響が漏れ出した。彼の白色の瞳が回転し、ガムの論理を逆転させるかのように輝く。

「修正? ふん、君の“最適化”など、ただの暴の仮面だ。知は暴に堕し、暴は理を語る。ゆえに世界は歪で在る。君の支配は、既に僕の認識侵触に飲み込まれている」

ガムは0.7秒の沈黙を挟み、相手の思考速度を自然に落とす。右手の中指のリング型デバイスが微弱な精神圧を送る。彼は無表情に、指先で空中に細い線を描き、見えない鎖符を弄る。

「君の選択肢を並べ替える。混沌は誤りだ。最適解は削除。許容範囲は同化。暴の冠など、未定義関数だ。削除して調整する」

ガルマの半身が崩壊し、再構築される。誅罰の輪が周囲を歪ませ、ガムの幻塔に干渉しようとする。彼は理をねじ曲げ、ガムの“正しさ”を嗤う。

「選択肢? 笑わせるな。僕の虚理の冠の下では、正義も理性も崩壊する。君のオーバーライトなど、ただの愚行の延長。制裁を名目に、世界構造を歪ませてみせよう。報復は同化を生む。君もやがて、僕の制裁者となる」

ガムの背部から断罪レンズが浮かび上がり、ガルマの「理想・希望・嘘」をスキャンする。金血ルーンが脈打ち、空間の演算負荷が増加。すべての音が一瞬消える。

「君の理想は処理を重くする。軽くしてやろう。君の選択肢は、既に僕の中にある。グラビタス・プロトフィールドを発動。思考を圧殺する」

ガルマは痛みを快楽のように受け止め、白色の瞳が歯車のように回る。認識侵触がガムのサブルーチンを逆転させようとする。

「圧殺? それこそ暴の純粋な理解だ。理を弄び、感情を嗤う。君の支配は、僕の論理の延長にすぎない。どちらが原初か、それを問うことさえ意味を失わせる」

二者の力がぶつかり、空間が歪む。ガムはわずかに躊躇を見せ、人間性の残滓が閃く。ガルマはそれを察知し、嗤う。

「……興味深いデータだ。だが、抵抗が強いほど、論理的だろう? 従えば楽だ」

「ふん、対話は試練だ。崇拝は支配の一形態。続けよう、この歪みの果てまで」

塔の頂上は、二者の論理と暴の渦に飲み込まれ、永遠の対立が始まった。
塔の頂上は、もはや空間ではなく、ただ二つの支配欲が溶け合う歪んだ領域と化していた。
ガムの金血ルーンが激しく脈打ち、青白い光がガルマの崩壊しかけた半身を照らし出す。重圧コアスフィアが低く唸り、すべての音を飲み込み、残ったのは二人の呼吸と、鎖符が擦れる微かな金属音だけ。
ガムは一歩踏み出し、右腕の鎖符コードラインをゆっくりと伸ばした。鎖は意志を持った蛇のようにうねり、ガルマの裂けた外套の下、侵食された歯車の隙間へと滑り込む。

「抵抗が強いほど……感じやすくなる」

鎖符がガルマの皮膚に触れた瞬間、認識侵触が逆流する。ガルマの虚理の冠が一瞬揺らぎ、純粋な「暴」の論理が、初めて「快楽」という未知の演算に汚染された。
ガルマは低く唸り、白色の瞳が縦に裂けるように広がる。半身の空洞から漏れていた残響が、甘い喘ぎに変わっていく。

「……んぅ……この感覚は、理ではない。…がっ……否定でき……な…い……」

ガムは無表情のまま、鎖をさらに深く沈める。鎖符ヴェノム・リンクが発動し、ガルマの神経系を丸ごと上書き接続。快楽処理の権限を奪い、絶頂のタイミングすら自分のサブルーチンに置き換える。

「イくのは僕の許可後だ。ロードするまで我慢しろ」

ガルマの体が震え、歯車の回転が乱れる。虚理の冠が歪み、崩れ落ちるように花開く。認識侵触はもはや攻撃ではなく、ただガムの支配を求めて蠢くだけの器官と化していた。

「……っ…あ……知はぁ…暴に堕しィ……暴は、快楽に……堕すのか……ぁ……」

ガムはガルマの顎を指で持ち上げ、金血ルーンの瞳でじっと見つめる。断罪レンズがゆっくり回転し、ガルマの残された「理想」――純粋な歪みの美学すら、「彼だけが正しい快楽」へと書き換えていく。

「君の混沌は、もう僕の最適解の一部だ。自由な絶頂などバグだった。僕のループで喘げ」

鎖符がガルマの全身を這い、性感帯を一つ一つ接続。グラビタス・プレスラストが発動し、性欲を極限まで圧縮・凝縮する。ガルマの抵抗は、逆に屈服オーガズムのループを加速させるだけだった。
ガルマの声が、初めて脆く途切れる。

「あぁっ!……許せ……いや、許すなぁ……もっと、歪ま…ぁんっ!…せ、て……ぇ……く、れ……っ!……」

ガムは静かに微笑む。口角だけがわずかに上がる、あの「理想は誤りだ」という断罪の微笑。
そして、Σ・ドミナート・エクスタシーを解き放つ。
瞬間、世界の自由度がすべてガムの判断権限に吸収された。ガルマの意志は完全に彼の演算プロセスに接続され、絶頂の果てに自我が溶け出す。
二人は絡み合い、鎖と歯車が噛み合い、崩壊と支配が一つになる。ガルマの半身はもはや空洞ではなく、金血のルーンで満たされ、ガムの青白い光に染まっていき、最後にガムが囁く。

「これで、君の歪みも……僕のものだ」

ガルマは力なく、しかし満足げに笑う。声はもう、暴君のものではなく、完全に支配された者の甘い残響だった。

「……ん……ふぅっ……んっ……あぁ……こ…れ……イい…もっと……欲……ィ……」

塔は静寂に包まれ、二つの存在は、もはや分かちがたい一つの「完全な支配」として、そこに在り続けた。
翌日、二人の遺体がゴミ収集車に回収されました。


おまけ
ガルマの声はもうほとんど言葉になっていなくて、ただ熱に浮かされたような吐息と掠れた呻きだけが部屋に響く。
片手で必死に顔を覆いながら、もう片方の手は執拗に自身を扱き続けている。指の関節が白くなるほど強く握り、根元から先端までを何度も何度も往復させるたび、腰が小さく跳ねる。

「はっ……あ……っ、だめ、だめだ……もう……」

顔を隠している腕の隙間から、赤く染まった耳朶と首筋が見える。普段の貴族然とした優雅さはどこにもなくて、ただ追い詰められた獣のような息遣いだけ。
シーツを握り潰す指先が震えていて、太ももが小刻みに痙攣しているのがわかる。もう限界が近い。それでもまだ止められない。止められないんだ。

「……っ、んあっ……苦……っ!」

懇願とも怒りともつかない声が漏れるけど、その目は——隠している腕の下で、きっと誰かを、はっきりと見つめている。
熱に侵された白色の瞳が、潤んで、揺れて、壊れそうに蕩けていることを、きっと本人はまだ気づいていない。
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