ガム=ジャグラ=ドミナートゥス

桂圭人

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ガルマ=オルディクトVSガム

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虚空の間室に、静寂が降り積もる。それは、雪のように柔らかく、しかし鉛のように重い。
ガム=ジャグラ=ドミナートゥスの金血ルーンが、微かに脈打つたび、空間の端が微振動を起こす。ルーンに走った群青の細線——それは、ガルマ=オルディクトの法が、支配のコードに刻み込んだ最初の亀裂だった。
ガムの瞳は、初めての「興味」を宿し、しかしその奥底で、計算不能な変数を検知していた。最適化の君主として、彼の存在は常に完璧を求めていた。
許容など、ただの誤差値に過ぎぬ。だが、この均衡は、甘美な毒のように彼のアルゴリズムを蝕み始めていた。
ガルマの白色双瞳は、静かに虚空を映す。外骨格の下で、心核が低く唸る。混沌と秩序の狭間で、彼は常に均衡を測っていた。
ガムの支配は、確かに効率的だ。だが、それは一方向の流れ——上書きの暴君。均衡とは、双方向の渦巻きであるべきだ。
ガルマの意識は、すでに因果ログを解析し終えていた。共存プロトコルは、ただの仮初めの幕間。真の均衡は、衝突を通じてのみ生まれる。拳が、微かに震える。究罰拳理の予感が、肌を刺すように広がる。
突然、ガムの口角が引きつる。0.7秒の沈黙が、永遠のように伸びる。背後の三つの幻塔が、再び輝きを増す。断罪レンズが回転し、重圧コアスフィアが足元から膨張する。空間が歪み、音が吸い込まれるように消えていく。
ガムの声は低く、しかし内側から沸き立つ熱を帯びる。


「……この均衡……僕の演算に、ノイズを注入している。興味深いが……許容範囲を超えた。削除を開始する。君の法は、僕のサブルーチンとして再定義される。抵抗は、無駄な熱量だ」

指先が空中をトレースし、鎖符コードラインが再び蛇のように伸びる。今度は、より速く、より鋭く。ガムの心理は、微かな苛立ちを孕んでいた。支配の君主として、彼は常に上位に立つ存在だった。最適化とは、相手を屈服させること。
だが、このガルマという変数は、屈服せず、逆に彼のコードを侵食する。興味は、好奇から脅威へ移行しつつあった。金血ルーンが縦に走り、青白い光が空間を染める。
ガルマの双瞳が狭まる。虚空に漂う法文断片が、瞬時に集束する。外骨格が微かに軋み、群青の裂外套が風のない風に揺れる。
心核の輝きが増し、混律機構がフル稼働する。ガルマの内面は、静かな嵐だった。

(ガムの支配は、秩序の極致。だが、混沌を排除するそれは、不均衡を生む。で、それを正す。拳は、因果を殴るための道具)

心理の深層で、ガルマは微かな満足を覚えていた。この衝突は、均衡の深化。罰は、愛の形。

「削除プロトコルを検知。よって、究罰拳理——発動」

ガルマの声が響く。右拳が上がり、虚空が凍りつく。鎖符コードラインが、ガルマの胸部を目指して襲いかかる。
だが、ガルマは動かない。拳が、ゆっくりと降りる——否、振るわれる。肉弾の衝突は、単なる物理の交錯ではない。それは、因果の再構築。拳の軌道に沿って、無数の歯車が幻のように回転し、空間が裂ける。
ガムの鎖符が、ガルマの外骨格に触れる直前。
拳が、虚空を貫く。衝撃は、波紋のように広がり、ガムの幻塔を揺らす。鎖符が逆流し、青白い光が乱反射する。ガムの体が、初めて後退する。心理の奥で、未定義エラーが爆発的に増殖する。痛みではない。演算の崩壊——支配の基盤が、揺らぐ感覚。ガムの瞳が、わずかに見開く。興味が、恐怖の影を帯びる。

「これは……僕の権限が……上書きされている? いや、違う。君の拳は……因果そのものを、直接殴っている……!」

ガムの声に、初めての動揺が混じる。重圧コアスフィアが縮小し、断罪レンズがひび割れる音が響く。ガムは、反射的に手を伸ばす。鎖符を再生成し、ガルマの拳を封じようとする。
だが、ガルマの動きは、より流動的だ。半身が虚空に溶け、足跡から金属音が共鳴する。左拳が、ガムの白金コートに直撃する。衝撃は、肉体を貫き、ガムの内なるコードを震わせる。
情景は、虚空の狂詩曲。空間が歪み、青白い光と群青の法文が交錯する。ガムの心理は、乱れていた。最適化の君主として、彼は敗北を定義していなかった。
だが、この拳は、敗北を強いる。抵抗すればするほど、演算ロスが増大する。金血ルーンが、ノイズに埋もれていく。ガムは、口角を歪め、微笑を試みる。だが、それは脆い仮面。
ガルマの拳が、次々と降り注ぐ。
究罰拳理の連撃——一撃ごとに、ガムの因果ログが書き換えられる。過去の支配が、混沌に塗り替えられる。現在が、均衡に調整される。未来が、罰の可能性に満ちる。ガルマの心理は、静かな確信だった。混沌なくして秩序なし。罰なくして法なし。この戦いは、均衡の儀式。
ついに、ガムの体が膝をつく直前にガルマのトドメの一撃がガムの顔面に当たった。
幻塔が崩壊し、重圧コアスフィアが消滅する。鎖符コードラインが、粉々に砕け散る。ガムの瞳から、金血ルーンが消え、代わりに群青の線が深く刻まれる。
ガムは吐血し息を乱し、しかしどこか解放されたように声を漏らした。

「……全て……気持ち……良く……イき…たかっ……た……ボクの全てを……上書…き……シて、欲しかっ…た……」

ガムの体が光となって静かに砂となって消えて逝った。
ガルマは拳を下ろし、静かに立つ。虚空が、再び整う。法文断片が、穏やかに漂う。心理の深みで、ガルマは新たな均衡を認識する。支配は、裁定の下に。勝者は、均衡そのもの。

「戦いの終結を検知。よって、新たな共存を記録。君の支配は、僕の法に同期された。これが、世界の深みだ」

虚空の間室に、静寂が戻り、ガルマは背を向けて部屋を後にした。


おまけ
ベッドでガルマはメンダコに自身の男根を弄ばれていた。

「……っ、は……落ち着いて……いい、いいから……」

メンダコの柔らかくてぬるぬるした触手が、執拗に先端を包み込んで離さない。
吸盤が小さく水音を立てながら、まるで生き物みたいに勝手に蠢いて、時折ずるりと根元まで絡みついてくる感触に、ガルマの腰がびくんと跳ねる。

「くっ……そこ、強く吸うなって……言ってるだろ……」

声はもうほとんど抗議じゃなくて、甘い吐息に近い。
メンダコはそんな言葉なんてまるで聞こえていないかのように、むしろ「もっと鳴いてほしい」と言わんばかりに、触手の先をくるくると巻きつけながら、ぴったりと鈴口に吸い付いてくる。
その水音が鳴り止まない。

「はぁ……っ、やめ……やめろって……言ってるのに……」

顔は真っ赤を通り越してほとんど茹で上がったみたいに熱っぽく、白髪が汗で額に張り付いて、普段の貴公子然とした雰囲気はどこへやら。
ただただメンダコの気まぐれな愛撫に翻弄されて、膝ががくがく震えながらも、なぜか逃げようとはしない。

「……?」

メンダコは、まるで「まだ足りないの?」とでも言うように、もう一本の触手がゆっくりと内腿を這い上がり、大事そうに玉の方まで優しく包み込んでくる。

「……っ!! そこは……だめっ……!」

最後の抵抗も虚しく、声はすぐに甘ったるい喘ぎに変わってしまった。
どうやらガルマ=オルディクトは、今日もメンダコの餌食にされながら「落ち着いて……」を連呼するだけの、とっても従順な犠牲者でした。
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