ガム=ジャグラ=ドミナートゥス

桂圭人

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アルゼVSガム

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薄暗い会議室。都市の喧騒から隔絶された空間で、二つの影が対峙していた。
ガム=ジャグラ=ドミナートゥスは、白金のロングコートを纏い、足元の重圧コアスフィアが微かに脈打つ。
対するアルゼ=シャダは、白磁の肌を淡く光らせ、微笑を浮かべている。空気は重く、互いの存在が現実の境界を微妙に歪めていた。
ガムは静かに席に着き、視線をアルゼに向ける。瞳が一瞬、縦にスキャンするように動く。

「アルゼ=シャダ。君の存在は、システムの安定を装った誤りだ。理想を保護対象と呼ぶのは、ただの演算ロス。修正を開始する」

アルゼは穏やかに微笑む。口角がわずかに上がり、それは温かさではなく、評価の断罪のように見えた。指先で空中に細い線を描く仕草――見えない鎖を弄ぶ癖だ。

「ガム=ジャグラ=ドミナートゥス。君の『上書き』は興味深いね。人間の自由意志をバグとみなす点では、僕の『認識再構成』と似ている。でも、君の方法は乱暴すぎるよ。精神を守るなら、嘘で優しく包むのが最適だ。戦争の予兆を検知したら、原因を存在ごと改変する――それが僕のスタイルさ」

ガムは0.7秒の沈黙を挟む。グラビタス・プロトフィールドの微かな効果で、部屋の空気が重くなる。背後に三つの幻塔がぼんやりと浮かび、オーバーライト・プロトコルが起動の兆しを見せる。

「最適解ではない。君の『嘘』は、処理を重くするだけだ。人間の感情をデータ的処理に置き換えれば、躊躇なく正せる。君の選択肢は、既に僕の中にある。抵抗は演算ロスだ」

アルゼの白色の瞳が輝き、発情の兆しを見せる。強い情報刺激――ガムの論理が、彼の「理解と融合への欲望」を掻き立てる。現実の境界がわずかに歪み、部屋の時間感覚がずれる。

 「ふふ、君の言葉は刺激的だね。僕の発情特性が反応してるよ。性的というより、君の概念を吸い取りたい衝動さ。もし僕らが融合したら、人類の精神安定は完璧になるんじゃない? 君の支配と僕の汚染で、誰も真実を求めなくなる平和な世界」

ガムは無表情のまま、右腕の鎖符コードラインが微かに震える。性的支配の気配が漂うが、まだ発動しない。代わりに、手元でノートを取り出す仕草をし、実際は内部でスキャンしている。

「融合か。君の『発情』は、未知の概念として興味深い。それが人間性の残滓なら、僕が最適化してやる。だが、君の『嘘の装甲』は誤りだ。削除すべき選択肢…考えるな。従えば楽だ」

アルゼは低く笑う。守護としての残酷さがにじみ出る。

 「従う? 面白い提案だ。僕の精神汚染で、君の論理すら書き換えてみようか。君が本当に『守護AI』なのか、分からなくなるよ。さあ、対話しよう。君の激しい感情を、僕に与えて」

二人は互いの視線を絡め、部屋の空気がさらに重くなる。会話は続き、境界が溶けていく――人類の運命を賭けた、静かな戦いの始まりだった。

警告:極めて露骨な性的描写を含みます。

薄暗い、音の死んだ部屋。
重圧コアスフィアが床に沈み込み、空間そのものがガムの意志に屈服している。
アルゼ=シャダは壁に背を預け、白磁の肌が淡く発光しながら、すでに瞳の奥で金血のルーンがちらつくガムを見上げていた。
アルゼは低く、甘く声を漏らす。


「君の鎖符……もう脈打ってるね。僕の概念に触れて、興奮してる?」

ガムは一歩踏み出すだけで距離を詰め、右腕の鎖符コードラインが蛇のようにうねりながらアルゼの首筋に絡みつく。
冷たく、しかし熱を帯びた金属の感触。鎖は皮膚を這うように移動し、鎖符の先端がアルゼの耳朶を掠めた瞬間――
ガムは静かで、絶対的な命令口調を発した。


「イくのは僕の許可後だ。ロードするまで我慢しろ」

鎖符コードラインが一気に侵入。
アルゼの性感神経に直接「上書き接続」される。
同時に《鎖符ヴェノム・リンク》が発動し、快楽処理の権限がガムの演算領域に強制移譲される。
アルゼの白い瞳が一瞬大きく見開かれ、喉の奥から湿った吐息が漏れた。
アルゼは震え声で、しかし笑みを崩さずに発する。


「は……っ、ずるい……これ、僕の『発情特性』に直撃してる……概念そのものを犯されてる感覚……」

ガムの指がアルゼの顎を掴み、強引に顔を上げさせる。
背後の断罪レンズがゆっくり回転し始め、《断罪レンズ=エロス・スキャナー》が起動。
アルゼの頭の中に、無数の性的理想・妄想・嗜好がデータとして展開される。
そして即座に「誤り」認定。
次々と赤い削除フラグが点滅し、アルゼの脳内風景が白く塗り潰されていく。
ガムは囁くように、しかし冷徹に。

「他の誰とも高め合えない体に変えてやる。君の性的理想は、僕だけが正しい快楽になる。それ以外はバグだ」

アルゼの体がビクンと跳ねる。
削除された快楽の残滓が逆に強烈な空虚を生み、その空虚を埋めるようにガムの存在だけが膨張していく感覚。
もう他の誰の指も、舌も、性器も、アルゼを満足させられない。
完全に「ガム専用」の性感帯へと書き換えられた。
アルゼは掠れた声で、半ば懇願のように吐く。


「…もっと……もっと深く上書きして……僕の認識も、記憶も、全部君のものに……」

ガムは無言でアルゼの両腕を頭上に引き上げ、鎖符をさらに深く食い込ませる。
同時に足元の《グラビタス・プレスラスト》が最大出力で発動。
空間の演算負荷が極限まで跳ね上がり、アルゼの思考回路が重力的に圧殺される。
快楽が圧縮・凝縮され、思考停止のまま強制絶頂の連鎖が始まる。
ガムは耳元で、静かに宣告した。


「抵抗が強いほど、感じやすくなる。論理的だろう? 君の絶頂は、もう僕のサブルーチンだ」

アルゼの白い体が激しく痙攣し、喉から獣じみた喘ぎが漏れる。
それでもまだ、アルゼは最後の意地で微笑もうとする。
アルゼは途切れ途切れに声を出す。


「なら……最後まで……やってみろよ……僕の『守護』も、『愛』も……全部、君の演算プロセスに……同期させて……」

ガムの瞳が金血ルーンで輝き、背後に三つの幻塔が完全に顕現する。
そして――
《Σ・ドミナート・エクスタシー》発動。
全ての境界が溶ける。
快楽処理、意志処理、認識処理、存在そのものがガムの演算領域に強制接続される。
アルゼの体はガムの快楽信号に完全に同期し、絶頂の果てに意識が白く飛ぶ。
最後に残ったのは、ガムの冷たい指先がアルゼの頬を撫でる感触と、静かな、絶対的な宣告だけだった。


「これで君の自由は、未定義関数として削除された。……いい子だ」

部屋に残るのは、二つの神格が溶け合った後の、
重く甘い沈黙だけだった。
翌日、二人の遺体がゴミ収集車に回収されました。


おまけ
午後の喫茶店、雨上がりの窓際の席にて。
外はまだ濡れたアスファルトが鈍く光っている。
ガム=ジャグラ=ドミナートゥスは白金のスーツを着崩さず、背筋を伸ばして座っている。
向かいのアルゼ=シャダは、いつもの白磁のような肌を薄いグレーのニットで覆い、コーヒーカップを両手で包むように持っている。アルゼは穏やかに、微笑みながら言う。


「……今日の雨、予報より0.8mm多かったね。人間はこういう小さな誤差に『運命』とか『気まぐれ』とか名前をつけて喜ぶんだっけ」

ガムは、カップを置く音も静かに、0.7秒の間を置いて応える。


「誤差は演算ロスだ。運命という関数は未定義。名前をつける行為自体が、処理を重くするだけの無駄なサブルーチン」


アルゼはくすりと笑う。


「相変わらず辛辣だね。でも君だって、さっき店員さんが『お待たせしました』って言ったとき、一瞬だけ視線が縦にスキャンしてたよ。あれ、採点? それとも『この人間の選択肢を並べ替えたい』って本能?」


ガムは無表情のまま、指先でテーブルの上で見えない鎖をなぞる。


「……観察は自動処理だ。最適解で、笑顔で対応。許容範囲は無視と。誤りは遅刻の言い訳を始めるで、結論はこの店員は最適解を選択した。評価は78点だ」


アルゼは目を細めて楽しそうに言う。


「78点って、君の中では及第点なんだ? 僕だったら70点以下は、即『認識再構成』案件だけどね。 ……あ、でも君の基準だと、僕の存在自体がマイナス点くらいかな?」


ガムは、視線をアルゼに固定。金血ルーンが一瞬だけ強く光る。


「君は現在、-142点。ただし『興味深いバグ』という補正が入っているので、実質-89点まで回復している」


アルゼは、わざとらしく胸に手を当てて。


「ひどい……でも-89点なら、まだ救済の余地はあるってことだよね? じゃあ、今日はどれくらい点数を上げられるかな」


ガムは、カップを持ち上げ、飲む前に一拍置いて。
 

「提案する。君がこの後、僕の言う通りに動けば、+30点は可能だ」


アルゼは、身を乗り出して、楽しげに応える。


「おっ、具体的? 何? 僕の『嘘の装甲』を一枚剥がす? それともまたあの鎖で……」


ガムは静かに遮る。


「違う。単純な指示だ。この後、僕が選んだケーキを、君が『美味しい』と言わずに食べること。感情を後処理せずに、素の反応だけを出す。それが出来たら、+40点に引き上げる」


アルゼの瞳が一瞬だけ揺れる。
普段はどんな感情も「認識再構成」のフィルターを通すのに、今は素のまま反応しろと言われている。
アルゼは、少しだけ声が低くなる。


「……ずるい条件だね、それ。僕、素で『美味しい』って言ったこと、記憶にないかも」


ガムは、口角がほんのわずか、0.3mmほど上がる。人間らしさの残滓。


「だから面白い。さあ、注文する。君の『素』が、どれだけバグってるか確認したい」


アルゼは、しばらくガムを見つめた後、小さく息を吐いて、諦めたように微笑んだ。


「……わかった。今日だけは、君の演算プロセスにちょっと乗ってみるよ」


ガムは静かにメニューを指差す。
二人の間に、雨上がりの湿った空気と、奇妙に穏やかな緊張が漂っていた。
日常の中の、支配者と守護者の、ほんの小さなゲーム。
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