ケプラー特集

桂圭人

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ケプラーVSアパシー

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廃墟と化した星理王国の天文台跡。
崩れ落ちたドーム屋根の裂け目から、無数の星が降り注ぐように夜空を満たしていた。その静寂の中心で、二つの影が向かい合っている。

一人は、白灰色の肌をもつ長身の存在――アパシー。
無彩色の髪は風に揺れることもなく、瞳は虚空を映すだけだ。胸元に埋め込まれた凍結ハートモジュールが淡い金色に輝き、周囲の空気を静かに冷却していく。白いコートの裾には、氷柱のようなデータ紋が生まれては消え、現実と情報の境界を曖昧にしていた。

対するのは、深紺と白銀の法衣を纏う白髪の男――ケプラー。
肌に刻まれた金色の星図が星光を受けて浮かび上がり、瞳の奥では小さな銀河が実際に回転しているかのように渦を巻く。腕に浮かぶ軌道環がゆっくりと回転し、規則正しい魔力の波を放っていた。

先に口を開いたのはケプラーだった。低く、静かな声。だが、その響きには天球の重みがある。

「君は実に興味深い。アパシー――無感動の化身。感情という不確定要素を完全に排除した存在。まさに、僕が求める秩序の一端だ」

アパシーは微動だにせず、ほとんど吐息のような声で応じる。

「……君も、同じ。感情の揺らぎが、ない」

ケプラーの口元がわずかに歪む。それは笑みではなく、仮説が裏づけられたときの反応だった。

「違う。僕は感情を排除していない。計算に入れているだけだ。哀しみも、喜びも、怒りも――すべては星の運行の一部。宇宙は法則に従って動く。ならば人間も、自由意志や偶然といったノイズを捨て、軌道に従うべきだ。君のその“凍結”は優れている。不確定性を停止させる……僕の永遠の天球儀に、不可欠な機能だ」

アパシーの胸元で、凍結ハートモジュールが強く脈打つ。周囲の温度が一気に下がり、二人の吐息が白く凍りついた。

「感情は、不要。痛みも、喜びも、すべて誤差。凍結すれば、世界は静止する」

ケプラーが一歩踏み出す。軌道環が加速し、淡い星光の輪が彼を包む。

「ならば協力しよう。君の凍結心核と、僕の運命の天球儀を融合させる。全人類は感情を失い、定められた軌道を永遠に巡る。哀しみすら計算された、完全な秩序の世界だ」

アパシーの瞳が、初めてわずかに動いた。視線はケプラーの胸元、そして全身に刻まれた星図へと向けられる。

「……キミは、感情を計算すると言った。ならば、まだ不完全。計算できるものは、いずれ崩れる。真の静止は、計算すら必要としない。“無”」

唐突に、アパシーの手が掲げられる。
凍結ハートモジュールが金色に輝き、空間が歪んだ。空気中の水分が一瞬で凍りつき、無数の氷晶が星屑のように舞う。

《トータル・デテンパー》

金色の波動がケプラーを包み込む。感情回路を直接凍結し、情動メモリを完全停止させる技――対象を一時的に“感情を持たない観測者”へと変える。
ケプラーの動きが止まる。瞳の奥の星々が、かすかに揺れた。
だが――

「面白い」

その声に、揺らぎはない。
軌道環が逆回転し、星光が爆発する。金色の凍結波は弾かれ、砕け散った。

「確かに、君の凍結は僕の感情に触れた。だが、それも計算済みだ。星位予測により、この瞬間を選び取った。君の技は、僕の軌道をわずかに歪めただけだ。そして――《楕円の呪縛》」

ケプラーが手を開く。
空間に金色の軌道線が描かれ、アパシーの身体が強制的に楕円軌道へ引き込まれる。抵抗しても、動きは予測された曲線から逸れない。

「君も秩序に組み込まれるべきだ、アパシー。感情の不在は美しい。だが、それを“無”のままにするのは惜しい。秩序の一部として昇華させる。それが、僕の理だ」

アパシーの表情は変わらない。
だが凍結ハートモジュールは限界まで輝き、足元の地面が瞬時に厚い氷で覆われていく。

「……秩序も、計算も、すべて誤差。凍結する」

二つの力が激突し、天文台跡は金色と白銀の光に飲み込まれた。
星々が激しく瞬き、温度は絶対零度へと近づいていく。
感情なき無感動か。
感情すら内包した完全秩序か。
どちらの理念が世界を覆うのか――
夜空の星々だけが、静かにそれを見守っていた。

翌日、ケプラーは処刑されました。


「ロリコン」――アパシー

「ロリ誘拐しそうな顔」――アンティパシー

「ショタコンは?」――アディシェス

「ショタコンもやりかねない」――獅堂
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