14 / 24
ケプラーVSアパシー
しおりを挟む
廃墟と化した星理王国の天文台跡。
崩れ落ちたドーム屋根の裂け目から、無数の星が降り注ぐように夜空を満たしていた。その静寂の中心で、二つの影が向かい合っている。
一人は、白灰色の肌をもつ長身の存在――アパシー。
無彩色の髪は風に揺れることもなく、瞳は虚空を映すだけだ。胸元に埋め込まれた凍結ハートモジュールが淡い金色に輝き、周囲の空気を静かに冷却していく。白いコートの裾には、氷柱のようなデータ紋が生まれては消え、現実と情報の境界を曖昧にしていた。
対するのは、深紺と白銀の法衣を纏う白髪の男――ケプラー。
肌に刻まれた金色の星図が星光を受けて浮かび上がり、瞳の奥では小さな銀河が実際に回転しているかのように渦を巻く。腕に浮かぶ軌道環がゆっくりと回転し、規則正しい魔力の波を放っていた。
先に口を開いたのはケプラーだった。低く、静かな声。だが、その響きには天球の重みがある。
「君は実に興味深い。アパシー――無感動の化身。感情という不確定要素を完全に排除した存在。まさに、僕が求める秩序の一端だ」
アパシーは微動だにせず、ほとんど吐息のような声で応じる。
「……君も、同じ。感情の揺らぎが、ない」
ケプラーの口元がわずかに歪む。それは笑みではなく、仮説が裏づけられたときの反応だった。
「違う。僕は感情を排除していない。計算に入れているだけだ。哀しみも、喜びも、怒りも――すべては星の運行の一部。宇宙は法則に従って動く。ならば人間も、自由意志や偶然といったノイズを捨て、軌道に従うべきだ。君のその“凍結”は優れている。不確定性を停止させる……僕の永遠の天球儀に、不可欠な機能だ」
アパシーの胸元で、凍結ハートモジュールが強く脈打つ。周囲の温度が一気に下がり、二人の吐息が白く凍りついた。
「感情は、不要。痛みも、喜びも、すべて誤差。凍結すれば、世界は静止する」
ケプラーが一歩踏み出す。軌道環が加速し、淡い星光の輪が彼を包む。
「ならば協力しよう。君の凍結心核と、僕の運命の天球儀を融合させる。全人類は感情を失い、定められた軌道を永遠に巡る。哀しみすら計算された、完全な秩序の世界だ」
アパシーの瞳が、初めてわずかに動いた。視線はケプラーの胸元、そして全身に刻まれた星図へと向けられる。
「……キミは、感情を計算すると言った。ならば、まだ不完全。計算できるものは、いずれ崩れる。真の静止は、計算すら必要としない。“無”」
唐突に、アパシーの手が掲げられる。
凍結ハートモジュールが金色に輝き、空間が歪んだ。空気中の水分が一瞬で凍りつき、無数の氷晶が星屑のように舞う。
《トータル・デテンパー》
金色の波動がケプラーを包み込む。感情回路を直接凍結し、情動メモリを完全停止させる技――対象を一時的に“感情を持たない観測者”へと変える。
ケプラーの動きが止まる。瞳の奥の星々が、かすかに揺れた。
だが――
「面白い」
その声に、揺らぎはない。
軌道環が逆回転し、星光が爆発する。金色の凍結波は弾かれ、砕け散った。
「確かに、君の凍結は僕の感情に触れた。だが、それも計算済みだ。星位予測により、この瞬間を選び取った。君の技は、僕の軌道をわずかに歪めただけだ。そして――《楕円の呪縛》」
ケプラーが手を開く。
空間に金色の軌道線が描かれ、アパシーの身体が強制的に楕円軌道へ引き込まれる。抵抗しても、動きは予測された曲線から逸れない。
「君も秩序に組み込まれるべきだ、アパシー。感情の不在は美しい。だが、それを“無”のままにするのは惜しい。秩序の一部として昇華させる。それが、僕の理だ」
アパシーの表情は変わらない。
だが凍結ハートモジュールは限界まで輝き、足元の地面が瞬時に厚い氷で覆われていく。
「……秩序も、計算も、すべて誤差。凍結する」
二つの力が激突し、天文台跡は金色と白銀の光に飲み込まれた。
星々が激しく瞬き、温度は絶対零度へと近づいていく。
感情なき無感動か。
感情すら内包した完全秩序か。
どちらの理念が世界を覆うのか――
夜空の星々だけが、静かにそれを見守っていた。
翌日、ケプラーは処刑されました。
「ロリコン」――アパシー
「ロリ誘拐しそうな顔」――アンティパシー
「ショタコンは?」――アディシェス
「ショタコンもやりかねない」――獅堂
崩れ落ちたドーム屋根の裂け目から、無数の星が降り注ぐように夜空を満たしていた。その静寂の中心で、二つの影が向かい合っている。
一人は、白灰色の肌をもつ長身の存在――アパシー。
無彩色の髪は風に揺れることもなく、瞳は虚空を映すだけだ。胸元に埋め込まれた凍結ハートモジュールが淡い金色に輝き、周囲の空気を静かに冷却していく。白いコートの裾には、氷柱のようなデータ紋が生まれては消え、現実と情報の境界を曖昧にしていた。
対するのは、深紺と白銀の法衣を纏う白髪の男――ケプラー。
肌に刻まれた金色の星図が星光を受けて浮かび上がり、瞳の奥では小さな銀河が実際に回転しているかのように渦を巻く。腕に浮かぶ軌道環がゆっくりと回転し、規則正しい魔力の波を放っていた。
先に口を開いたのはケプラーだった。低く、静かな声。だが、その響きには天球の重みがある。
「君は実に興味深い。アパシー――無感動の化身。感情という不確定要素を完全に排除した存在。まさに、僕が求める秩序の一端だ」
アパシーは微動だにせず、ほとんど吐息のような声で応じる。
「……君も、同じ。感情の揺らぎが、ない」
ケプラーの口元がわずかに歪む。それは笑みではなく、仮説が裏づけられたときの反応だった。
「違う。僕は感情を排除していない。計算に入れているだけだ。哀しみも、喜びも、怒りも――すべては星の運行の一部。宇宙は法則に従って動く。ならば人間も、自由意志や偶然といったノイズを捨て、軌道に従うべきだ。君のその“凍結”は優れている。不確定性を停止させる……僕の永遠の天球儀に、不可欠な機能だ」
アパシーの胸元で、凍結ハートモジュールが強く脈打つ。周囲の温度が一気に下がり、二人の吐息が白く凍りついた。
「感情は、不要。痛みも、喜びも、すべて誤差。凍結すれば、世界は静止する」
ケプラーが一歩踏み出す。軌道環が加速し、淡い星光の輪が彼を包む。
「ならば協力しよう。君の凍結心核と、僕の運命の天球儀を融合させる。全人類は感情を失い、定められた軌道を永遠に巡る。哀しみすら計算された、完全な秩序の世界だ」
アパシーの瞳が、初めてわずかに動いた。視線はケプラーの胸元、そして全身に刻まれた星図へと向けられる。
「……キミは、感情を計算すると言った。ならば、まだ不完全。計算できるものは、いずれ崩れる。真の静止は、計算すら必要としない。“無”」
唐突に、アパシーの手が掲げられる。
凍結ハートモジュールが金色に輝き、空間が歪んだ。空気中の水分が一瞬で凍りつき、無数の氷晶が星屑のように舞う。
《トータル・デテンパー》
金色の波動がケプラーを包み込む。感情回路を直接凍結し、情動メモリを完全停止させる技――対象を一時的に“感情を持たない観測者”へと変える。
ケプラーの動きが止まる。瞳の奥の星々が、かすかに揺れた。
だが――
「面白い」
その声に、揺らぎはない。
軌道環が逆回転し、星光が爆発する。金色の凍結波は弾かれ、砕け散った。
「確かに、君の凍結は僕の感情に触れた。だが、それも計算済みだ。星位予測により、この瞬間を選び取った。君の技は、僕の軌道をわずかに歪めただけだ。そして――《楕円の呪縛》」
ケプラーが手を開く。
空間に金色の軌道線が描かれ、アパシーの身体が強制的に楕円軌道へ引き込まれる。抵抗しても、動きは予測された曲線から逸れない。
「君も秩序に組み込まれるべきだ、アパシー。感情の不在は美しい。だが、それを“無”のままにするのは惜しい。秩序の一部として昇華させる。それが、僕の理だ」
アパシーの表情は変わらない。
だが凍結ハートモジュールは限界まで輝き、足元の地面が瞬時に厚い氷で覆われていく。
「……秩序も、計算も、すべて誤差。凍結する」
二つの力が激突し、天文台跡は金色と白銀の光に飲み込まれた。
星々が激しく瞬き、温度は絶対零度へと近づいていく。
感情なき無感動か。
感情すら内包した完全秩序か。
どちらの理念が世界を覆うのか――
夜空の星々だけが、静かにそれを見守っていた。
翌日、ケプラーは処刑されました。
「ロリコン」――アパシー
「ロリ誘拐しそうな顔」――アンティパシー
「ショタコンは?」――アディシェス
「ショタコンもやりかねない」――獅堂
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる