ひきこもり×シェアハウス=?

某千尋

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俺、仕事を探す1

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 シェアハウスの家賃を払ってもらえるのは半年間だけ。渡された現金は30万円で、残念ながら俺にそれ以外の財産はない。
 だから、どうせ仕事は探さないといけないのだ。
 でも、どうせ仕事を探すなら、この心の余韻が残っているうちの方がやる気が出るってもんだろう。
 中里から母親の話を聞いた俺は、いよいよ就活をしよう、と決意した。

 職歴無しの三十五歳。
 最終学歴高卒で資格無し。

 ここだけみるとやばさしかない。
 でも、俺は卒業はしていないもののそこそこの私立大学には合格したんだ。高校もそこそこな進学校なんだ。
 俺は何故か、そうはいっても俺ってそこそこエリートだよね、と思っていた。

 もちろん、勘違いだった。



 職業斡旋所で最初に紹介されたのは清掃業だった。
 いや、俺力仕事とかできないし、なんでブルーカラーの仕事しなきゃいけないんだよ、と思った。肉体労働など却下だ。言えないけど。

「いやあの……俺事務員とかがよくて……」

 人と接するのは無理なので、接客は最初から考えていない。
 ネトゲばかりやっていた俺だが、ずっとパソコンしていただけあってタイピングは速いし事務系ソフトもそれなりに使いこなせる……はずだ。

「事務員ですか……以前そういった仕事をされたことは?」

「……ないです」

「パソコンはどれくらい使えますか?」

「……基本的な使い方は問題ないと……思います」

「事務員の募集はですね、そんなに多くないのと、パートタイム募集が多いんですよ。最近は派遣も多いですね。正社員の募集は人気なので、難しいもしれませんが面接申し込みますか?」

「……はい。お願いします」

 難しいと言われてカチンときた。別に高収入なところや有名企業を望んだわけじゃない。見せられた募集も、正社員といえど手取り20万円もいかない。こんなのに群がるようなやつらに俺が負けるわけがない、と思った。

 しかし、予想に反し、俺は面接すら受けることができなかった。
 履歴書の段階で落ちたのだ。

 その後もいくつか事務員の募集に応募したものの、軒並み履歴書落ちし続け、あっという間に1ヶ月が経過した。
 何度目かの履歴書落ちの際、斡旋所の人からは人手が足りていない介護職をすすめられたが、何で俺がそんな仕事しなきゃいけないんだと思って拒否した。
 俺は、ホワイトカラーの仕事がしたいんであって、力仕事とか汚い仕事は絶対やりたくない。そんな誰でもできるような仕事やりたくない。

 チョロいた思っていたのにうまくいかず、当初のやる気はすっかり萎んでしまって俺は再び家で引きこもり気味になっていた。
 ネトゲでフレンドとまたいつものように盛り上がる。
 ネット上ならこんなに自由なのに、なんで俺がこんな思いをしなければならないんだ。仕事なんて糞食らえだ。
 くさくさしていると、そんな俺を見かねたのか、また中里が俺の部屋にやってきた。

「その後どうだ野口さん」

 正直仕事については何も聞かれたくないし、触れられたくなかった。俺の能力があれば適当な事務員になるのは簡単だと思っていたにもかかわらず、今のところ全敗なのだ。面接すらしてもらえない。そんなこと、中里に知られたくない。
 けれど悲しいかな、俺はこの目つきの悪い若者を無視したり、邪険にしたりすることなんて怖くてできないのだ。

「なかなか……うまくは……」

 絞り出すように小声で返すと、中里はうーんと唸った。空気読んで出てけよ。うーんじゃねえよ。

「野口さん、まずはバイトでもなんでもいいからやりながら、希望の仕事関係の資格とか取ってアピールポイント増やしたらいいんじゃないか」

「……バイト……」

 三十五歳でバイト。いや、社会的にはそりゃ引きニートよりはいいのかもしれない。けれど、引きニートなら外に出ないから誰に馬鹿にされることもない。なぜなら誰も俺を知らないから。
 でも、バイトならどうだ。他のバイトなんて二十代そこそこの若者とか小遣い稼ぎしてる主婦だろう。その中に三十五歳の俺がいたら、浮くどころの話じゃない。絶対馬鹿にされる。もし優しくされたとしても、そんなの多分憐れみだろう。そんなのは、俺には耐えられない。

「まずは長く続けようとか正社員とかを考えすぎずにいろんな分野に応募してみたらどうだ」

 多分中里が言ってることは正しいんだろうし、俺を心配して言ってくれてるんだろう。
 でも、俺の中で沸き上がったのは怒りだった。
 だって、中里は関係ないだろう。家賃が払えなくなったら、俺がここから出て行くだけだ。頼んでもないのに口出しやがって。次々と言いたいことが頭に浮かんでくる。

「……考えてみます」

 でも、小心者の俺にそんなことは言えない。自分でも情けねえとは思うけど、言ったところで中里と険悪になるだけだし、言い返されたら俺は多分それ以上何も言えない。中里は親切な奴なんだろうが、口調も強いし怖いのだ。こういうのは、嵐が過ぎ去るのを待てばいい。

 頑なな俺の態度に呆れたのか、中里は一つため息をついて俺の部屋を出て行った。望んだ通りだったが、それがなんだか下に見られてるみたいで不快だった。

 ただ、頭に血が上ったことで、何がなんでも事務職に就いてやる、という気持ちになった。
 俺は怒りを抱えたまま職業斡旋所に向かった。
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