浮気した彼氏のせいでNTRれた私

プラネットプラント

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過ぎいく夏

チャラ男じゃなかったら、眼科に行ったほうがいいと思う

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 夕方の駅前のコンビニは客と店員が戦争状態だ。学校帰りの学生が来る時間帯と会社帰りの社会人が来る時間帯は異なっているけど、5時を過ぎれば部活を終えた学生も社会人と混じって、てんやわんやの騒ぎ。
 電車が到着して波のように押し寄せた客がさばききれずに長いレジ待ちができている。
 おかげで商品の補充を任せられていたバイト三日目の私も、バイトの先輩の急な欠勤でレジを任せられた。
 レジ打ちとかは教えて貰っていて打ち方はわかるし、客が少ない時間帯には実際に接客させてくれていたけど、これはもうパニック起こしそうなほど別物。急病になったバイトの先輩を恨みたくなる。

「ありがとうございましたー」

 まだ慣れていないせいか、イライラしながら私の手元を見ていた客にこわばった笑顔でお辞儀する。
 やっと一人が終わっても、レジ待ちの客は終わらない。
 次の人もまたイラついてないといいなあ。
 げんなりした気分で、次の人の機嫌がいいことを祈る。

「次の人、どうぞー」

 レジ待ちの先頭にいた男の人は既に不機嫌だ。
 ドシンと音を立てて、カウンターに買い物籠を置く。

「いらっしゃいませ。お品物お預かりします」
「・・・。7番」

 レジカウンターに置かれた商品のバーコードを読み取ろうとするところに、タバコの注文が入る。私は手を止めて、カウンターの内側にあるタバコの銘柄表を見て、タバコを手に取ろうとする。

「はい。7番、セブンスムーンですね」
「秋山」

 隣のレジを打っていた同じ高一でバイトの先輩である冬野さんが接客しながら、こちらを見ずに声をかけてくる。
 夏川先輩が王子様系なら冬野さんは目付きの鋭いワイルド系のイケメンだ。とはいっても、髪も染めていないし、短気だとか怖いという感じでもない。バイトをし始めた初日からの付き合いしかないけど、面倒見もよくて一匹狼というより、子連れ狼のような人だ。

「はい」
「先に弁当を温めるかきいてそっちやって」
「はい」

 言われた通り、レジカウンターに置かれた商品にはお弁当がある。
 冬野さんが言いたかったことは温めるなら弁当を先に温めている間にレジ打ちや袋詰め、他の客の対応をしろ、ということ。説明は受けていても、こう慌ただしいと間違えてしまう。

 それにしても、冬野さん。接客してんのにどうしてお弁当があるって、知ってんの?

 接客しながらこちらの客のこともチェックしている冬野さんに驚いた。慣れれば、冬野さんみたいにできるのかもしれない。
 今、対応している客の後ろにも十人くらい待っている人がいる。もう一人のバイトが休みなので、冬野と二人でこの人数を乗り切らないといけない。

「お弁当は温めますか?」

 ほぼ確実に「はい」と返ってくる質問をしながら、私は初めてのバイトで働くってことの大変さに溜め息がつきたくなった。
 でも、今日の勤務はまだ何時間も残っている。



「大変だったな、秋山」

 忙しさとパニックで疲れ果てた私に冬野さんが言った。
 店は客の波がなくなり、色々なことを教えて貰っていた時のように閑散としている。
 電車が到着するたびに波のように人が押し寄せて客がさばききらないほどレジが長くなるのに、電車と電車の間の時間が大きく空いた時はレジ待ちが一人もいない時もある。今はその隙間の時間だ。

「・・・もう駄目。辞めたい」

 言葉通り、辞めたい。
 立ちっぱなしはきついし、接客は大変だし、空いた時間は色々しないといけないし、コンビニバイトって、すっごく疲れる!

「慣れたら平気だって。崎山さんがいきなり辞めなかったらこんなことなかったんだけど、人には人の事情もあるから仕方ないしなあ」
「・・・」

 冬野さんがいう崎山さんは私の前のバイトの人。コンビニバイトは学生バイトの定番だからか、入れ替わりが激しいらしい。かく言う私も、学生バイトの一人だけど。
 新学期が始まる前の3月や4月からバイトを始める人が多いらしいけど、前にやったバイトが合わなかったとかで、今の時期(6月)に始める人も多い。
 バイトデビューの私は6月始まりのバイトの流れに乗ったのだ。

「秋山はよくできてるよ。入ってこれだけで、この時間帯のレジができるっていうのはすごいから、自信持ったらいいよ」
「そんなこと言われても・・・」

 冬野さん、過大評価しすぎ。
 励まされても、今の私には嬉しくない。
 足が痛い。今日もふくらはぎがパンパンだ。

「それに秋山が入ってくれたおかげで可愛い後輩ができて、俺は嬉しいかな」
「ははは・・・、そうですか」

 私は乾いた笑い声をあげ、冬野さんに胡乱な目を向けてしまった。

 聞いていて、飄々としながらしつこく付き合おうと言ってきた夏川先輩が思い浮かぶ。
 どうして、私の周りにはこういう人しかいないんだろうか?
 会って三日とかその日に付き合いたいとか、可愛いとか平然と言う人種は夏川先輩だけで充分。なんでそんなおかしなキャラが寄ってくるのよ?
 もっと、こう、苦労を一緒にして何かを成し遂げたり、一緒にいるうちに気付いたら、とかあればいいのに、どうして数日なの?!
 苦労って言っても、さっきのアレぐらいだよね?
 一目惚れなんか、ドラマと小説の中だけにしていて。
 実際遭ったら、怖いって。ヤンデレとかストーカーとかそっちじゃない?

 特に、イケメンやら才能ある人とかなら尚更、犯罪じみたものしか感じない。
 夏川先輩もハイスペックだけど、あの人は身体の相性が良いって、ろくでもない理由で付き合いたがっているからそれはまだ理解できる。

 でも、一目惚れって、それはないと思う。
 私、どこからどう見ても平凡なんですけど?
 冬野さんみたいな顔が整っているイケメンが一目惚れするところ何もないんですけど?
 性格だって普通だし、それがわかるくらい付き合いないし、なんで可愛いとか言ってくるの?

 チャラ男じゃなかったら、眼科に行ったほうがいいと思う。だけど、冬野さんはこれが素な天然さん。
 初めて会った時から、ワイルドな外見からは似合わないこういう言葉を誰にでもかけていて、パートのおばちゃんから「冬野くんはいい子なんだけど、おばちゃんにも恥ずかしくなるようなことを普通に口にするから、あまり真に受けちゃ駄目よ。おばちゃんも時々、本気にしたくなるけど、本人は女性に優しくしているつもりなだけだから」とありがたい忠告を受けた。

「面接に来た時に一緒に働きたいな、と思った秋山が新しく入った子だとわかって、嬉しかったよ」
「アリガトウゴザイマス」

 褒めてくれるけど、冬野さんの実情を知っているからその言葉が滑る滑る。右から左へと勢いよく流れて行く。
 思わず、片言になっちゃったよ。
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