浮気した彼氏のせいでNTRれた私

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過ぎいく夏

見事、喪女になってみせます!

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 19:00過ぎの我が家の玄関先にいたのは、白いTシャツに丈の短い黒のジレ、茶系のズボン姿の夏川先輩。部活が終わってから、一度、家に帰ってから来たようだ。

「こんばんは、実花ちゃん」

 夏川先輩は爽やかな笑顔なのに胡散臭く見える。
 頬が引き攣るのが自分でもわかった。思わず、声まで呆れたようなものになってしまう。

「コンバンハ、デス。こんな時間にどうしたんですか?」
「付き合うことになったけど、細かいことを言い忘れていたら言いに来たんだよ」

 は? 何言ってんの、この人。
 付き合っているって誤解はされたけど、それは誤解。実際に付き合うってことになったわけじゃない。
 とうとう、頭がおかしくなった?
 いや、元々か。
 彼女が浮気した相手にお前の彼女とヤらせろって言ったのはこの人だから、今更、頭がおかしくなったってわけじゃないよね。

「全然、付き合うことになってませんけど」

 呆れた口調になるのも仕方ない。

「学校じゃあ、付き合っていることになっているじゃないか」
「それはあんたが勝手にしたことでしょ。私は付き合っているとは認めません」
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃないか」

 付き合ってることを恥ずかしいなんて感じるか!
 それも好きでも何でもないあんた相手にそんなことを感じるか!
 あんたがおかしいから付き合っていることを知られて恥ずかしいって思うとしても、それを知っているのは私とあいつだけでしょ。それでどうやって、恥ずかしいって思えばいいのよ?!

「恥ずかしがっているわけじゃありません!」

 ツッコミどころがありすぎて、私は叫んでしまった。

 夏川先輩は肩をすくめ、辺りを見回して見せる。
 6月になり、まだ太陽の残光で仄明るい。時折、見える人影が光に照らされている。その中で近所の家々の窓には明かりが灯り、辺りに料理の匂いが漂わせていた。

「そんなに大きな声出さないで。近所に丸聞こえになるよ」

 夏川先輩の言う通り大きな声を出していたら、近所の人が何事かと出て来てもおかしくない。

「それはあんたが――!」

 声が大きくなってしまうので、できる限り小さくする。

「それはあんたが勝手に付き合ってるってことにしたからでしょ」
「付き合っているのは事実じゃないか」

 それは事実の反対なんですけど。
 夏川先輩はきっぱり言ってあげなきゃいけないタイプなの?

 よし。理解するまで言ってあげよう。
 有耶無耶にしたらまた好き勝手に解釈されてしまう。

「付き合ってません」
「友達として付き合っているだろ」

 屁理屈来たー!
 彼女だって、三年のクラスでも宮田にも散々言っておいて、友達として付き合ってるなんて、どうして言えるのよ?
 もしかして、友達の中にセフレも含まれるってこと?
 そりゃあ、セフレはそういう友達って意味だけど、私はそれが嫌だって何度も言ったよね?

「そんなの屁理屈です。学校で私のこと、彼女だって言ったじゃないですか。付き合ってるって言ってるのは、そっちのほうです」
「実花ちゃんもそんなに否定しなくてもいいじゃないか。相性良いし、僕の彼女になるのって、そんなに嫌なことかな?」

 やっぱりそっちの友達だったかー!
 そんなもんは嫌だって言ったのに、どうしてそう受け取ってんのよ?!
 もう、やだ。この人。
 友達として付き合っているがどうやったらセフレとして付き合っているになって、セフレと彼女が同じ意味になんのよ?

 友達=セフレ=彼女

 って、この公式おかしいでしょ?
 どう考えても、イコールにならないよね?

「そんなにどころか、絶対に嫌です! 誰が好き好んであんたみたいな人格破綻者と付き合いたいもんですか!」
「それは言いすぎじゃない?」
「言いすぎも何もないです! あんたは最低です! 告られたら付き合うなんて、付き合うことを軽く見すぎです! そんな気持ちで私は付き合えません!」

 告白してきたから黙ってヤらせてくれると思って付き合うようなあんたとは違うんです!
 尊敬とか好きになれるところがあって、互いに相手を大事にしていて、一緒にいて幸せな気持ちになる。そんな相手と私は付き合うの!
 ヤらしてくれるとか、相性良いとか、そういったものは関係ない!

「実花ちゃん。現実、見たほうがいいよ。好き合っていると思っても10代のうちは種を残そうとしている衝動なだけで、結婚になんて結びつく相手が見つかることはないんだよ。男の場合、それが顕著だから、いい歳して若い子にモテなくなるまで結婚なんか意識しない。運命の相手なんか待っていたらあっという間に30越えちゃうよ? そうなったらそうなったで経験浅いのは経験無いより嫌がられるから、ここは僕と付き合って『私、テクには自信あります』ってくらいにならないとキツイんじゃない?」

 あんた自分で言っている通り、衝動だけで付き合いたいだけでしょうが!
 男の事情なんか知るもんか!
 夏川先輩は知らないだろうけど、喪女になると決めている私に結婚なんか意味はない。
 なんと言われようと、平気。

 フフン。

 夏川先輩と付き合っても、結婚とは縁のない喪女になる私にはメリットなんかいっこもないのだ!
 お父さんも目が黒いうちは嫁に行かなくてもいいって言ってくれたしね。

「フフフフ・・・。残念ですが、私はお一人様予定です! 見事、喪女になってみせます! お父さんも嫁に行くなと言ってくれたので、親のサポート付きでお一人様生活は万全です!」

 私が自信満々に言うと、夏川先輩は目をパチクリとした。

「お一人様はわかるけど、なんでまた喪女に?」
「お一人様は喪女だからです!」

 夏川先輩は残念な子を見るような目をしてきた。ついでに、大袈裟な溜め息までした。

 なんか文句でもあるの?!

「いや、お一人様は喪女じゃないよ。喪女っていうのは恋人もいない経験が無い女性であって、お一人様は恋人とか普通にいるから」
「?」

 お一人様は喪女じゃない?

 それに喪女は男性経験がないといけない?!
 その時点で無理じゃない!

 お一人様には恋人がいる?!

 なんなの?!

「お一人様は結婚とかすると色々制約があって面倒だから結婚しないってだけだよ」
「面倒だから結婚しない?」

 何それ?
 面倒だから結婚しないって、どういうこと?
 喪女とどう違うの?

「そう。恋人やセフレがは作っても、趣味やら仕事が忙しくて、それを邪魔するしか夫はいらないっていうのが、お一人様。だから、春原や僕と付き合ったことのある実花ちゃんは喪女にはなれないんだよ。喪女は恋人もいなくて、経験があったらいけないから」

 夏川先輩は私が理解しているみたいに話すことを一生懸命に理解しようと聞いた。
 ・・・。
 ・・・。
 ・・・。
 つまり、お一人様には恋人やセフレがいてもいいけど、喪女には過去現在未来のどの段階にもそういうのがいちゃ駄目ってこと?

「って、ことは? 私は喪女にはなれない?」
「お一人様にはなれるけど、喪女はちょっと無理かな」
「いやー! もう!」

 喪女になれないなんて!
 それに夏川先輩の言う彼女になった時点で、私はお一人様になっちゃうんじゃない?
 確か、お一人様って、いい歳しないとできないと思っていたけど、この歳でそんなのになりたくない!

「喪女みたいな寂しいお一人様を選ぶくらいなら、やはり僕と付き合ったほうがいいよ。我慢のし過ぎも身体に悪いからね」
「は? 我慢?」

 なんでそこに我慢とか出てくるの?
 アニメやゲームに嵌まらないといけないから?

「喪女になるにはストレスが溜まるから」

 アニメやゲームのことをいつも考えているのはストレスになるかもしれないけど、だからって、どうして夏川先輩と付き合うことになるのかわからない。

「? 喪女になるのにどうして夏川先輩と付き合うことになるんですか?」
「そりゃあ、実花ちゃんは喪女に向いていない性格だからだよ。実花ちゃんみたいにオープンな性格してたら、ストレスと欲求不満を溜めて取り返しのつかない行動、とっちゃうからね」

 この下半身で生きる生き物め!
 要はあんたがヤりたいから、セフレになったほうがいいと言ってるだけでしょ!

「結局はそこか!」

 声を抑えて話していたけど、もう無理だった。
 そんな私の気持ちを嘲笑うように、お母さんがリビングから声をかけてくる。

「実花。そこで立ち話もなんだから上がってもらったら?」

 神も仏もどうやら一ヵ月ほど前から旅に出ているようです。
 そして、残るお一人は試練を与えたようです。

 信者でもないから、そんな試練いらない!

 お母さんの招きに「お邪魔します」と夏川先輩が答え、私の腕の下をするりとくぐり抜けて行った。
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